ステンノという愛について【完結】   作:AIRUNo(旧AIRU)

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最終確認の前に寝てしまった……すみません。昼ですが投稿します。


Final Wave1

 

「『騎英の手綱(ベルレフォーン)!!』」

 

 ライダーのメドゥーサが魔法陣より呼び出した宝具は、白き翼を持つ一頭の伝馬(ペガサス)

 彼女が手綱を握り、その背中に立香と小柄なランサーのメドゥーサが乗る。

 

「マシュ、動けぬお前は私の背後にいろ。小娘一人、私が守ってやろう。ただし、髪先の蛇には近づきすぎるなよ」

 

「ありがとう、アヴェンジャーのメドゥーサ!」

 

「マスター、お前は早く行け。この茶番を終わらてくるがいい」

 

 白馬が飛び立ち、その背中をマシュとアヴェンジャーは眺める。

 確かに天馬は空を自在に速く駆けるが、敵の大きな射撃宝具相手には全てを避けるのは難しい。

 そこで、迎撃をするべく、アヴェンジャーは大きく胸を逸らし、まずスキルを発動した。

 マシュは耳を塞ぎ、それに備える

 

「Ahhhhhhhh!!」

 

 スキル『畏怖の叫び』は、周囲の村々にまで響き渡るほどの恐ろしき咆哮。

 洗脳された村人や魔獣たちは、それを受けて次々に脊髄から本能的な死と絶望を味わい、意識を失うか、動けなくなる。

 

「さて、どうやら敵は私と同じく、内部にいるものを侵食する結界を張り巡らしているらしい。この供給を減らせば多少は弱体化するか」

 

「メドゥーサさん、なにを?」

 

「少しばかり弱めた宝具を放ってやろうか……む」

 

 女神トリニティーは異変を感じ、ゴルゴーンに向けて射撃を連発する。

 

「目障りよな。女神風情が怪物に勝てると思ったか?」

 

 アヴェンジャーが笑うと、地面に赤赤しい魔法陣が現れ、空に向かって紫光の魔力球が打ちあがる。

 それはさながらブラックホールのように、敵の射撃と衝突し、触れた場所から内側に飲み込んで大きく膨れ上がる。

 

「そら、日頃の怨嗟も込めて倍返しだ」

 

 そして逆に虚月神殿を睨むと、魔球を撃ち返してしまった。

 突然のことに防御を張っていなかった神殿は、外壁に穴が開く。

 それは同時に女神トリニティーを逆上させ、更なる猛攻へと発展していく。

 空には無数の砲撃が星のように降り注ぐ。

 

「フハハハハ!! 単純だ性格だな……良いだろう、千魔眼、解放。全ての呪詛を返してやろう。『強制封印(パンデモニウム)万魔神殿(ケトゥス)』!! ……の簡易版だ」

 

 

 その魔力の高まりによる重圧から地面がひび割れ、髪が伸びて張り巡らされていく。

 そして女神トリニティーの作り上げた神殿回路を上から溶かして侵食し、逆に魔力を搾り取っていく。

 そうして自らも巨大な赤黒い光線を同時にいくつも放って応戦していく。

 敵がいくら魔弾を撃ち込んでも、それらを撃ち込み、溶かし、力へと変換することで、一歩も引くことない迎撃が繰り広げらていた。

 

「フハハ、ハハハハハハハハハハハハハ!!!!」

 

「きょ、今日のメドゥーサさんはなんだかご機嫌です!」

 

「当たり前だ……姉に一杯食わせられる機会なぞ、昂らずにいてどうする!! フハハハハ!!」

 

 

 

 一方、その攻撃の飛び交う空中では、ライダーのメドゥーサが必死に手綱を持って攻撃を回避していた。

 単純に暴れているようで、その実アヴェンジャーの攻撃は上手くメドゥーサに降りかかる砲撃を迎撃し、道を作り出している。

 

「マスター、口を閉じててくださいね。舌を噛みますよ」

 

 風を切り、肌は上空の冷気と爆発の熱を感じていく。

 視界の中で海面と空がグルグル揺れ、時に天地が一回転もする。

 それでも立香はメドゥーサの背中にしがみつき、その後ろを小さいながらもしっかりとした身体能力をもつランサーのメドゥーサがしっかりと支える。

 

(ジェ、ジェットコースターみたいだ……!!)

 

 立香の頭に走馬灯のようなものが走る。

 そう、あれはステンノと遊園地デートをしたとき。

 世界一怖いと銘打ったジェットコースターに一緒に乗ろうと言っていたのに、その直前で「身長制限で無理だったわ」と手を振って見送られ、自分だけが悲鳴をあげたあの日。

 魂が抜けてよろよろと歩く立香の姿を見るステンノが、その日一番の笑顔を見せていた。

 ……って、違う。今のはステンノに見せられていた夢の中での出来事だ。

 

(でも夢なら身長制限とかなくして、一緒に乗れたんじゃ……)

 

「マスター、到着します。身をかがめてください!」

 

「へ……」

 

 背後のランサーにぎゅっと頭を押されて、立香は上半身を前に倒した。

 気付けば虚月神殿は目の前で、先ほどの戦闘で空いた穴から天馬は内部に突入した。

 肌に感じる風が弱くなり、衝撃に備えていた立香はおそるおそる目を開ける。

 

 虚月神殿の内部は、殆どが空洞だった。

 天球ドームのように、上には白い石が積み上げられ、下には蓄えた魔力塊でできた水晶の山と、その中心に大きな屋敷。

 

「あの建物に上姉様の気配がありますね。砲撃も来ないようですし、行きましょうか」

 

 中庭にひらりと着地して、ぐるりと見まわした立香は、この場所に見覚えがあった。

 そうだ、いつかの夏この場所で事件に巻き込まれたのだ。虚月館だ。

 

「多分、こっちだ」

 

 立香は記憶を頼りに屋敷の中へ入り、当主のいた部屋の扉を開けた。

 吹き抜けの大きな部屋、外側からは考えられないほど広く、煌びやかな部屋。

 これは記憶にない、ローマやフランスでみた王との謁見の場に近い。

 その前方には玉座がおかれ、女神トリニティーがこちらを見つめていた。

 

「「「ようこそ、我が神殿へ」」」

 

 重く冷たい声。

 歓迎する気はさらさらないことが伝わってくる。

 

「「「今の貴方に許されたことは2つです。ここで死ぬか、私に魂を捧げるか。選びなさい」」」

 

「手っ取り早くて助かりますね。マスター、戦闘です」

 

「ステンノは、どこにいる!」

 

 女神が指をさし、その先には寝転がっているステンノがいた。

 何かに縛られているわけでもなく、ただ放置されている彼女に立香は駆け寄った。

 外傷はない。ただ眠っているだけのようだ。

 

「心配ですか。その殆ど力のない抜け殻程度、私がなにかをすることはありません」

「むしろ私には余分なのも。飲み込むことすら汚らわしいわ」

「落ちぶれたものですね。人間に心配されるなんて」

 

 3つの嘲る声に、立香はステンノが無事なことに安堵しながら怒りを覚えた。

 2人のメドゥーサは何も言わず、武器を構える。

 

「マスター……行きましょう」

 

「ああ、二人とも頼む!」

 

 

 

 最後の戦いが始まる。

 

 

 

 




次も今日の夕方までに投稿です
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