ステンノという愛について【完結】 作:AIRUNo(旧AIRU)
煌びやかな神の玉座の間に、1つの影が疾る。
ライダーの持つ2本の短剣。
その後ろで揺れる鎖は、伸縮自在に伸びる鞭となり、女神トリニティーの頭部目掛けて左右から撃ち降ろされた。
「「「甘い」」」
女神はそれを右手で払うだけでキィンと弾いた。
だがライダーの戦い方はただの一撃で終わらない。
素早く接近し、一瞬女神の視界から消えるほど低くしゃがんだがと思うと、その長身をグルリと横に大きく回転し、腹の中央目掛けて蹴りを繰り出した。
多少のけ反る女神に、背後からランサーの鎌が迫りくる。
しかし上半身が床につくほどにしなやかにのけ反って避けると、そのまま片手を床につけて倒立し、独楽のように勢いよく回って両脚で二人を何度も蹴りつける。
一旦二人が離れたところを、女神の放った魔弾が追従し、部屋全体を駆けまわり、撃ち落として回避していく。
その魔弾の一つが立香の元へ向かい、当たる寸前のところを、ライダーは弾を蹴り飛ばし、立香を小脇に抱えて、再び疾走する。
(メドゥーサ)
(……マスター、了解です)
立香からライダーに小声で指示が伝わる。
ライダーは一旦遠くに立香を降ろしたかと思うと、再び音速に近い速度で女神にとびかかり、右手を伸ばして短剣で女神を貫こうとする。
それをたったの二本指で受け止められる。
が、その好きに女神の脚に鎖を巻き付けて、その怪力で動きを封じようとする。
「「「遅い」」」
が、逆に女神の足の力に負けて身体が引っ張られよろめき、地面に倒されてしまった。
その様子に、女神は微笑み、そしてライダーと目が合った。
「いえ、これが狙いです」
メドゥーサの目が光り、『魔眼』が発動する。
神性の高い女神を石化はしないものの、一時的に動きを封じた。
そこにランサーの持つ、不死身殺し(ハルペ―)の刃が右肩から腰まで切り落とした。
更に素早い速度で鎌は振るわれ、全身にダメージを与えていく。
「「「小賢しい……!」」」
女神は初めて怒りの表情を立香たちに見せると、衝撃波を放って二騎を壁際まで吹き飛ばした。
やはり、と立香は確信する。
(この女神自身に、戦闘力はあまりない)
かつて何度も様々な神霊サーヴァントと戦った経験のある立香。
ギリシャ神話、インド神話、バビロニア神話……様々な神々と出会い、肉弾戦から人類の脅威相手まで様々な女神を見てきたが、彼女たちは戦闘のための霊基を調整していた。
しかし、女神トリニティーは、元々非戦闘のステンノの神核を元にしているせいか、戦闘能力はあるもののこれまでの女神には及ばない。
自らが完全体となるべく、信仰を集め、巨大な神殿を作ることにのみに特化したサーヴァントであるのだろう。
だが、危険は禁物だ。
「「「うぬぼれるなよ、堕ちた三流神らが」」」
「いえ……貴方が慢心しているだけでは」
「「「驕るな!!」」」
一層気合の入った女神は、圧が高まっていく。
羽化のために貯めていた魔力を、癪ではあるが使用する。
立香の目には、様々な
切りかかろうとするランサーに、立香は視線で待てと合図する。
このまま攻撃しても、まずダメージが通らないことは経験則から分かる。
では勝てないと潔く諦めるのか。いや、最後まで生き残る術を考え続ける。
まずは、溜めた魔力と女神本体の接続を切り離さなくては。
「ランサーは防衛を、ライダーは攪乱を頼む!!」
ランサーは跳躍し、立香の一歩手前に来ると、飛んでくる魔弾を撃ち落とす。
ライダーは立香に攻撃が集中しないよう、敵の注意を高速移動で引きつけ、視界に鎖を張り巡らして魔弾の狙いを遮る。
「令呪をもって命ずる。来い、アヴェンジャー!!」
一画を切り、叫んだ途端、目の前に赤き魔法陣が浮かび上がり、女神トリニティー目掛けて光線が放たれた。
「「「なに!?」」」
「いいぞ、よくぞ私を呼び寄せた。丁度外での攻防にも飽いていたところだ」
現れたのは、何やらご機嫌そうなアヴェンジャーのメドゥーサ。
呼ばれるや否や、敵に光線を浴びせ続け、地面に髪の先を伸ばして結界を侵食していく。
それは女神の蓄えた魔力を、逆に吸い取っていた。
「この魂を食らう神殿は、私と相性がいい。破壊は容易どころか、逆に私の腹を満たしてくれる。それも私が、元はお前と起源を同一とする存在だからか」
「「「なんだと、化け物風情が私と同一などと!!」」」
「そう……同じではない。お前が完全なる三相一体の女神というなら、我ら姉妹は不完全な三姉妹。その三相一体を壊した者こそが、成長する私、メドゥーサである」
完全な
つまり概念としては、女神トリニティーの前にメドゥーサが存在すること自体が破滅的であり、特に女神から怪物となる直前のアヴェンジャーは天敵そのものであった。
(未来の私……普段よりテンション高いですね。怪物であることを認めはしても、あそこまで自慢するのは珍しいです)
小さいランサーは、そう思いつつ言葉を飲み込んだ。
戦闘の中、立香はカルデアと通信を取る。
「ダヴィンチちゃん、外の様子は? マシュは大丈夫?」
『君たちが神殿内部に突入してから、砲撃は止んだようだ。マシュも無事避難しているよ。それより立香くん、よくメドゥーサたちが敵の弱点だと閃いたね』
「ああ、うん……それは直感というか。でも、ヒントは散りばめられていたから」
女神トリニティーは三つの声で同時に話しかけていたが、その口調はどこかゴルゴーン三姉妹と似ていた。
しかし一方でクラス解析では、アーチャー、アサシン、バーサーカーとカルデアにいる姉妹のうち、メドゥーサに当てはまるクラスがなかった。
そして今眠っているステンノを、完璧な女神ではなく成長する存在に憧れていた彼女を、不要なものとしてトリニティーが切り捨てたこと。
これらは、一見三姉妹を模しているようで、三柱のうち成長する女神メドゥーサの存在を徹底的に除外していた。
そこに立香は勝機を見出していたのである。
しかし、だからといって容易に勝てることはない。
アヴェンジャーの侵食により、魔力供給が不完全となった女神トリニティーは、最後の意地を見せようとする。
「「「想定を修正……神殿の損傷は度外視だ」」」
部屋に亀裂が奔る。
アヴェンジャーからの妨害されるのなら、それ以上に魔力を吸い上げればいい。
しかしそれは水道管に、限界以上の水量と圧をかけているのと同様、この神殿に張り巡らされた回路にも過剰な負荷がかかる。
文字通り、なりふり構わない状態である。
「「「滅びろ、カルデアどもめ」」」
「これは……少々面倒ですね」
いくら元々が戦闘に不向きな存在だとしても、地域一帯から魂と魔力をかき集めれば、強力な存在となる。
だが、少々やりすぎた。
大理石の床にピシリと亀裂が入る。
まずい、そう皆が思ったときには遅かった。
壁が横に揺れ、ヒビは天上にまで到達し、部屋は崩壊した。
崩壊する瓦礫の中、立香たちは球体の虚月神殿の暗い底にまで落下していく。
立香にできたことは、即座にステンノを抱えることだけであった。
20時までにあと1話投稿する予定です(気力は途切れない限り)。
メドゥーサ3人パーティーはゲーム中だとそこまで効率的でないかもですが、使うと楽しいです。