ステンノという愛について【完結】   作:AIRUNo(旧AIRU)

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Final Wave 2

 

 煌びやかな神の玉座の間に、1つの影が疾る。

 ライダーの持つ2本の短剣。

 その後ろで揺れる鎖は、伸縮自在に伸びる鞭となり、女神トリニティーの頭部目掛けて左右から撃ち降ろされた。

 

「「「甘い」」」

 

 女神はそれを右手で払うだけでキィンと弾いた。

 だがライダーの戦い方はただの一撃で終わらない。

 素早く接近し、一瞬女神の視界から消えるほど低くしゃがんだがと思うと、その長身をグルリと横に大きく回転し、腹の中央目掛けて蹴りを繰り出した。

 

 多少のけ反る女神に、背後からランサーの鎌が迫りくる。

 しかし上半身が床につくほどにしなやかにのけ反って避けると、そのまま片手を床につけて倒立し、独楽のように勢いよく回って両脚で二人を何度も蹴りつける。

 

 一旦二人が離れたところを、女神の放った魔弾が追従し、部屋全体を駆けまわり、撃ち落として回避していく。

 その魔弾の一つが立香の元へ向かい、当たる寸前のところを、ライダーは弾を蹴り飛ばし、立香を小脇に抱えて、再び疾走する。

 

(メドゥーサ)

 

(……マスター、了解です)

 

 立香からライダーに小声で指示が伝わる。

 ライダーは一旦遠くに立香を降ろしたかと思うと、再び音速に近い速度で女神にとびかかり、右手を伸ばして短剣で女神を貫こうとする。

 それをたったの二本指で受け止められる。

 が、その好きに女神の脚に鎖を巻き付けて、その怪力で動きを封じようとする。

 

「「「遅い」」」

 

 が、逆に女神の足の力に負けて身体が引っ張られよろめき、地面に倒されてしまった。

 その様子に、女神は微笑み、そしてライダーと目が合った。

 

「いえ、これが狙いです」

 

 メドゥーサの目が光り、『魔眼』が発動する。

 神性の高い女神を石化はしないものの、一時的に動きを封じた。

 

 そこにランサーの持つ、不死身殺し(ハルペ―)の刃が右肩から腰まで切り落とした。

 更に素早い速度で鎌は振るわれ、全身にダメージを与えていく。

 

「「「小賢しい……!」」」

 

 女神は初めて怒りの表情を立香たちに見せると、衝撃波を放って二騎を壁際まで吹き飛ばした。

 やはり、と立香は確信する。

 

(この女神自身に、戦闘力はあまりない)

 

 かつて何度も様々な神霊サーヴァントと戦った経験のある立香。

 ギリシャ神話、インド神話、バビロニア神話……様々な神々と出会い、肉弾戦から人類の脅威相手まで様々な女神を見てきたが、彼女たちは戦闘のための霊基を調整していた。

 しかし、女神トリニティーは、元々非戦闘のステンノの神核を元にしているせいか、戦闘能力はあるもののこれまでの女神には及ばない。

 自らが完全体となるべく、信仰を集め、巨大な神殿を作ることにのみに特化したサーヴァントであるのだろう。

 だが、危険は禁物だ。

 

「「「うぬぼれるなよ、堕ちた三流神らが」」」

 

「いえ……貴方が慢心しているだけでは」

 

「「「驕るな!!」」」

 

 一層気合の入った女神は、圧が高まっていく。

 羽化のために貯めていた魔力を、癪ではあるが使用する。

 立香の目には、様々な強化魔術(エンチャント)を付与していくのが分かった。

 切りかかろうとするランサーに、立香は視線で待てと合図する。

 このまま攻撃しても、まずダメージが通らないことは経験則から分かる。

 では勝てないと潔く諦めるのか。いや、最後まで生き残る術を考え続ける。

 まずは、溜めた魔力と女神本体の接続を切り離さなくては。

 

「ランサーは防衛を、ライダーは攪乱を頼む!!」

 

 ランサーは跳躍し、立香の一歩手前に来ると、飛んでくる魔弾を撃ち落とす。

 ライダーは立香に攻撃が集中しないよう、敵の注意を高速移動で引きつけ、視界に鎖を張り巡らして魔弾の狙いを遮る。

 

「令呪をもって命ずる。来い、アヴェンジャー!!」

 

 一画を切り、叫んだ途端、目の前に赤き魔法陣が浮かび上がり、女神トリニティー目掛けて光線が放たれた。

 

「「「なに!?」」」

 

「いいぞ、よくぞ私を呼び寄せた。丁度外での攻防にも飽いていたところだ」

 

 現れたのは、何やらご機嫌そうなアヴェンジャーのメドゥーサ。

 呼ばれるや否や、敵に光線を浴びせ続け、地面に髪の先を伸ばして結界を侵食していく。

 それは女神の蓄えた魔力を、逆に吸い取っていた。

 

「この魂を食らう神殿は、私と相性がいい。破壊は容易どころか、逆に私の腹を満たしてくれる。それも私が、元はお前と起源を同一とする存在だからか」

 

「「「なんだと、化け物風情が私と同一などと!!」」」

 

「そう……同じではない。お前が完全なる三相一体の女神というなら、我ら姉妹は不完全な三姉妹。その三相一体を壊した者こそが、成長する私、メドゥーサである」

 

 完全な三相一体(トリニティー)で存在する女神神話の中で、唯一特例なのが一人だけ異なって生まれ、それが三相一体の終焉をもたらしたゴルゴーン三姉妹。

 つまり概念としては、女神トリニティーの前にメドゥーサが存在すること自体が破滅的であり、特に女神から怪物となる直前のアヴェンジャーは天敵そのものであった。

 

(未来の私……普段よりテンション高いですね。怪物であることを認めはしても、あそこまで自慢するのは珍しいです)

 

 小さいランサーは、そう思いつつ言葉を飲み込んだ。

 戦闘の中、立香はカルデアと通信を取る。

 

「ダヴィンチちゃん、外の様子は? マシュは大丈夫?」

 

『君たちが神殿内部に突入してから、砲撃は止んだようだ。マシュも無事避難しているよ。それより立香くん、よくメドゥーサたちが敵の弱点だと閃いたね』

 

「ああ、うん……それは直感というか。でも、ヒントは散りばめられていたから」

 

 女神トリニティーは三つの声で同時に話しかけていたが、その口調はどこかゴルゴーン三姉妹と似ていた。

 しかし一方でクラス解析では、アーチャー、アサシン、バーサーカーとカルデアにいる姉妹のうち、メドゥーサに当てはまるクラスがなかった。

 そして今眠っているステンノを、完璧な女神ではなく成長する存在に憧れていた彼女を、不要なものとしてトリニティーが切り捨てたこと。

 これらは、一見三姉妹を模しているようで、三柱のうち成長する女神メドゥーサの存在を徹底的に除外していた。

 そこに立香は勝機を見出していたのである。

 

 しかし、だからといって容易に勝てることはない。

 アヴェンジャーの侵食により、魔力供給が不完全となった女神トリニティーは、最後の意地を見せようとする。

 

「「「想定を修正……神殿の損傷は度外視だ」」」

 

 部屋に亀裂が奔る。

 アヴェンジャーからの妨害されるのなら、それ以上に魔力を吸い上げればいい。

 しかしそれは水道管に、限界以上の水量と圧をかけているのと同様、この神殿に張り巡らされた回路にも過剰な負荷がかかる。

 文字通り、なりふり構わない状態である。

 

「「「滅びろ、カルデアどもめ」」」

 

「これは……少々面倒ですね」

 

 強化(バフ)が重なり、より硬く、より強力となる女神。

 いくら元々が戦闘に不向きな存在だとしても、地域一帯から魂と魔力をかき集めれば、強力な存在となる。

 だが、少々やりすぎた。

 

 大理石の床にピシリと亀裂が入る。

 まずい、そう皆が思ったときには遅かった。

 壁が横に揺れ、ヒビは天上にまで到達し、部屋は崩壊した。

 崩壊する瓦礫の中、立香たちは球体の虚月神殿の暗い底にまで落下していく。

 

 

 

 立香にできたことは、即座にステンノを抱えることだけであった。

 

 

 

 

 




20時までにあと1話投稿する予定です(気力は途切れない限り)。
メドゥーサ3人パーティーはゲーム中だとそこまで効率的でないかもですが、使うと楽しいです。
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