ステンノという愛について【完結】   作:AIRUNo(旧AIRU)

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なんとなく本編のゲーム方式を意識して書いてます。


Wave1 戦闘とよくある誤ち

 

 

 

 

「謎の月を調査せよ」という任務を受けてレイシフトしたマスターたち。

その第一陣として、マシュ、カリギュラ、メドゥーサ(ライダー)、陳宮たちも共にレイシフトする。

 

「あ……」

 

 

降り立った先で、目を開けるより早く、立香は懐かしい潮風の匂いを嗅いだ。

黄色や赤い花がマダラな雑草も、灰色の岩肌の多い丘陵も、空の高さも、それらは何百年経っても変わらない。

 

「ここが、1800年後に虚月館になる場所か」

 

「先輩が懐かしむ顔をしています。どうやら無事目標地点へ到着できた模様です」

 

横でマシュがダヴィンチたちと連絡を取っている。

ここは月の模型がある場所から、数キロ離れた地点。

まずは遠くから異常を観測、また現地調査を行う手筈となっていた。

 

「それで、『虚月神殿』はちゃんと見えるかな」

 

虚月館の場所にある月の模型を、便宜上『虚月神殿』と名付けた。

確かに巨大な球体は、ここからでもハッキリと見える。

それがただの土塊ではないのも、これだけ巨大にも関わらず周囲に一切影を落としていないことからもわかった。

 

「マスター、マシュ・キリエライト共に異常なしです。サーヴァントの皆さんも3人いますね。カリギュラさん、ステンノさん、陳宮さんの全員確認しました」

 

『こちら司令部、大丈夫そうだね〜……ってうん? マシュ、今なんて言ったかな?』

 

「はい? ええと、カリギュラさん、ステンノさん、陳宮さんの全員確認……あッ!?」

 

「悲鳴の上げ方も可愛らしいのね、マシュ。えぇ、そうです……駄妹に代わって……面白そうなので来ちゃった♪」

 

「ステンノさん!?」「おや」「ネロォォ!!」

 

各人がそれぞれ反応する中、マスターは出動直前、視界が光に包まれるまさにそのとき、メドゥーサの驚いた声がしたのはこのせいだったのかと知った。

今から追い返すのも時間がかかるし、もし必要となればまだ余っている魔力コストを使ってメドゥーサを呼び出せば、対応できないことはない。

慌てるマシュに、いつものステンノの悪戯に慣れている立香は冷静に対処する。

 

「マシュ、召喚サークルは使えそう?」

 

「はい、魔術妨害などはありません。霊基にもよりますが、1〜2騎はいけるかと!」

 

『ん〜、なら大丈夫かな〜。とはいえ女神様、人理を守る重要な任務を前に、自分勝手な行動は慎んで欲しいんだけど』

 

「ごめんなさいね、皆さん。そうね……反省しました。でもね、危険な任務に可愛い妹を連れて行かせたくない、姉の気持ちも分かってくだならない?」

 

「先輩、これは一見献身的なフリに見せかけて許されようとする罠です。騙されないで下さい」

 

「あら、マシュ。貴方は随分賢くなってしまったのね……私の言うことをちゃんと聞いて、メドゥーサと一緒に私を甲斐甲斐しく世話してくれた頃が懐かしいわ」

 

「そんなことをした記憶はありません、後でダヴィンチちゃんの然るべき処分をして貰いますからね」

 

「ひと段落ついたところで一つ宜しいかな、御二方。どうやら着いて早々に敵がお出迎えのようです」

 

陳宮の声に、パーティーは戦闘態勢へ入る。

どうやら虚月神殿の影響を受けてか、オオカミや半人半獣のウェアウルフが湧いているらしい。

まずカリギュラが吠え、傷を負うのも構わずに敵を蹴り飛ばして怯ませた。

その隙にマシュと陳宮が防御を張る。

敵の攻撃がマシュに集中し、カリギュラはより暴れやすくなった。

あっという間に5、6体程倒すと、奥から一際大きなウェアウルフがやってくる。

 

「マスター、群れのボスらしき個体がお出ましのようです。ここで一つ奇策(自爆)を披露致しましょうか?」

 

「いや陳宮、ここは倒せる。マシュは後退、ステンノ頼む!」

 

「あら……戦いは得意ではないのですけれど」

 

そうしてサッと降り立ったステンノは目を光らせた。

ボスは一瞬たじろぐ。そこへ更に追い討ちをかけた。

 

「じゃあ……歌いましょうか?」

 

魅惑の美声により、敵は魔眼を使われたように身動き一つできなくなる。

更に彼女が風を起こし、敵の急所がハッキリと見えた。

 

「なるほど、ここですか。実に単純」

 

陳宮が指刺すと、カリギュラに強化魔術が掛かる。バーサーカーに対して超強化を行うスキル「軍師の本懐」である。

2人のサポートにより、この瞬間カリギュラの力は最大限以上に発揮される。

カリギュラは雄叫びを上げ、空中を回転しながら敵の胸のど真ん中へキックした。

 

「捧げよ、その命、魂の全て!!」

 

全滅し、最後の一体が倒れる中、バーサーカーは咆哮した。

その横でステンノは、「中々良いパーティになったでしょう?」とも言わんばかりにウインクした。

偽物の月を背景に吠える戦士と、悪そうに微笑む女神、軍師の不敵に煌めく眼鏡。

まるで悪の組織に入ったみたいだね、立香とマシュはお互いの顔を合わせて頷いた。

 

「みんな、お疲れ様。周囲に敵影はないから、少し休憩しよう。それと近くに集落があるみたい。そこが次の目標点だ」

 

(ちょっと良いかしら、マスター)

 

ステンノに小声で呼びかけられ、マシュたちから少し離れて話を聞く。

 

「なんでしょう……なんだかあの月を見ると、私にしては珍しく嫌な予感がするの……」

 

「それは俺も感じてるけど……」

 

ステンノは俯きつつ、恐らく意識せずに立香の右手を両手で掴み、指と指を絡ませて手を開いたり閉じたりしてじゃれついている。

あまり装飾のない第一再臨の姿だから、指輪や鎖がない分密着しやすい。

同時に、一番布面積が多い格好でもあるから、身体についた交わりの跡も隠せていて、立香は安心できている。

 

「いいえ……多分これは、私だけが感じているもの。私の中の神核が、あまり近寄るなと告げているの」

 

「神核が……? うーん、分かった。一回集落で情報を集めたら、一旦離れようか」

 

「そうね、それとあともう一つ言いたいことがあるのだけど…」

 

彼女は更に立香の耳元により、口に手を当てて囁いた。

 

(貴方と……してから10日ほど経って、その…)

 

声がくぐもって聞こえにくい。

 

「その……できちゃったみたいなの」

 

だというのに、最後の言葉はハッキリと聞き取れてしまった。

バッと彼女の顔をみる。

頬を染めて、少し困ったように笑っていた。

そんな顔もまた、立香の初めて見る顔だった。

 

「ちょっと待って。じゃあつまり、そんな身体で特異点に来たってこと!?」

 

「そうね……でもだからこそ、来たのかもしれないわ……だって、ここで貴方にそのことを告げないと、最後の別れになってたかもしれないし……」

 

そんなことは、と言いかけながらも、自分が常に危険な任務に挑んでいたことを思い出す。

先ほどの戦闘も戦い慣れしていたとはいえ、安全とは程遠い。

 

「それに……私の右の横顔をよく見てくれないかしら……」

 

「……?」

 

「フフ……よろしいかしら、『女神の微笑』(スマイル・オブ・ザ・ステンノ)』

 

声を出す暇もなかった。

立香はそのまま崩れ落ちていく。

 

「大丈夫、殺すなんてしないから……ただ少し、動かないでいてくれればいいの」

 

遠くなる意識の中、彼女の声がする。

それが一体本当の声か、幻なのか。

エウリュアレの言っていた忠告が今になって反芻する。

 

『でもね、女神に恋する人間なんて、最後にどうなるか知っておきなさい』

 

 

最後に、どうなるのか。

彼には判断できないまま眠りについた。

 

 

 

「不気味ですねえ」

 

軍師は円筒の単眼鏡を覗きながら、マシュに告げた。

見ているのは、目的地とする村。

遠目からは、通りに家があり中央に広場がある、よくある小さな農村だ。しかし

 

「此度の特異点、あの虚月神殿を破壊するばかりの単純な任務と思っていましたが、いやはや的外れも的外れ」

 

軍師は不敵に笑った。

波の音が一際大きく響いた。

 

「これは、我々の手に余るかもしれませんぞ? マスター」

 




ステンノが顔を横にして宝具を使ったのは、ゲーム準拠とそれを見たマスターたちによる「正面で見ると即死してしまうので弱めてる」説を採用したためです。
もしFGOがノベルゲーなら、正面から見させてバッドエンド1にしました。
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