ステンノという愛について【完結】   作:AIRUNo(旧AIRU)

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3つは1つということ

 

 

 

 ゴルゴン三姉妹と人は言った。

 三人で一つ、三神一体の存在であると。

 実際、メドゥーサが幼い頃は、全員外見も在り方もそっくりな存在だった。

 

 でもカルデアではどうだ。

 確かに成長したメドゥーサを除いて、ステンノとエウリュアレは相変わらず瓜二つに見えなくもない。

 しかし実際は、クラスもスキルも、霊基の階級(レアリティ)から宝具まで異なる。

 更に言えば一日観察しただけで、2人は随分と別の行動や性格をしているのが分かるだろう。

 

 加えて、ゴルゴン姉妹という、神霊ではあるが貧弱と思われる英霊が、なぜあえて協力せずバラバラの霊基で存在するのか。

 

 最近はディオスクロイや徴姉妹のように兄弟姉妹で2人1組、ワルキューレのように複数人で同一の霊基を所持するサーヴァントも増えてきた。

 彼、彼女らは、常に組となって逸話に語られ、「ペアであること」自体が英霊の概念に組み込まれており、通常戦闘でも共にいればいるほどお互いの存在を強調し、力を一層発揮する。

 

 しかし、ゴルゴン三姉妹は、そうはならなかった。

 三姉妹で共にありたいと常日頃から言いながら。

 昔のように三人でいたいと言いながら。

 三姉妹で同時に召喚されることはなく、実際バラバラな時期にカルデアへ1騎ずつ召喚された。

 

 

 そこに、彼女たちの思いがあるのなら。

 その意味は……

 

 

 

 □□□

 

「おや、少しばかり変化がありましたな」

 

 一軒家のベッドの上。

 深く眠ったままの立香は、陳宮らによって治療を受けていた。

 本来ならカルデアで治療を受けるべきだが、この昏倒の原因はどうやらこの地に満ちる悪意と関係がある。

 下手に帰還してこの地との繋がりを断てば、どこかに漂う意識と肉体との糸も断たれ、より目覚めなくなる可能性があると判断し、現地で治療を続けていた。

 マシュが立香の額に流れる汗を拭う横で、陳宮は薬を確認した。

 

「効果があったのは……愛の霊薬のみですか。女神ステンノの魅了でこのようになったとあれば、毒を以て毒を制す。効き目があるのかもしれませぬ」

 

「ですが……手元にこれ以上霊薬はありません。カルデアから転送してもらうしか」

 

 通信先のカルデアから、ダヴィンチが応答する。

 マスターのピンチともあって後ろがガヤガヤと騒がしい。

 

『うーん、それなんだけどね。確かに愛の霊薬は英霊召喚の失ぱ……副産物として大量にあったはずなんだけど、倉庫から消えちゃってるんだ。今、パラケルススたちに作らせているから、ちょっと待っててー。あ、キルケーが霊薬のやけ飲みを! オデュッセウス、君は魅了耐性持ってて効かないんだから被験体にならないの!』

 

 向こうも混乱しているようだと、マシュは肩を落とす。

 この中で唯一落ち着いているのは、皮肉にもバーサーカーであるカリギュラだった。

 家の扉の前に椅子を引っ張って座ると、上半身を少し崩しながら周囲を観察している。

 

「しかし、対症療法はここらへんが限界でしょう。ならば次にすべきことは原因を治療することです。というわけで、マシュ殿、行きましょう」

 

「え、どこへでしょうか。まさかマスター不在のまま、あの虚月神殿へ……」

 

「いえいえ、それもありますが。まずは手近なところからです。ああ、カリギュラ殿は結構。そのままマスターを守っていて下されば。我々2人だけで参りましょう」

 

 

 

 歩いて数分後。

 

 

 

「ご覧なさい」

 

 街の中心にやってきた陳宮は、それを指差した。

 マシュは、それに心当たりがある。

 あれは確か第二特異点、紀元1世紀の古代ローマ帝国でも見たことがあった。

 

「祭壇、ですか……」

 

 真っ白な石を積み上げ、英雄の彫刻が彫り込まれ、コリント式の柱で囲まれた豪華なギリシャ風の建物。しかし壁はない。

 正面には横幅の広い階段があり、その手前には果物、花束、料理に金貨と、様々な捧げ物がこぼれ落ちるほど捧げられた、幅5メートル程の三角形の祭壇があった。

 祭壇の方角は奥にある巨大な月、つまり祭壇前に立つと柱の奥へ丁度正中に虚月神殿が入る。

 ならば、あちらが本殿、この村にあるのが拝殿なのかと、マシュは判断した。

 

「マシュ殿もこの祭壇を中心に魔力が集まっているのを感じるでしょう。特に、董卓もかくやの過剰に溢れ返った捧げ物は品がない。これではかえって、神々が悦楽に浸っているかのようではありませんか? 」

 

「はぁ……確かにギリシャっぽくて大盛りな感じは、キルケーさんの宝具『禁断なる狂宴』を思い出しますが……」

 

「この村民にかけられた魔術は、カエサル殿がスキル『扇動』、の信仰版とでも申しましょうか。捧げ物が増すほど洗脳が深まり、遂には自らの精神を捧げてまで神を信仰するようになる」

 

 宗教にも色々あるが、基本的な概念は「信仰心」に他ならない。

 それが日々の幸せを喜び、明日への平和を願うものが原点にある。

 しかし時に、宗教は信じる者に狂信をもたらした。

 幸福のために供物を捧げるのでなく、捧げることこそ幸福となり、身をすり減らし、非道を行なってでも神を讃えなくてはならない、と。

 

「その結果が彼らでしょう。文字通り全てをここ神殿の神に捧げた彼らは、ああやって自我なくさまようだけの殭屍(きょんしー)となってしまった」

 

 黄巾党を率いた張角が聞けば、信者を蔑ろにするとは何事かと激怒を飛ばすような仕組みだ、とマシュは思った。

 

「さて、前置きが長くなってしまいましたが……要はあの神殿を破壊してしまえば良い。それで住民も幾分か正気に戻るでしょう」

 

 陳宮がパチンと指を弾くと、背後から中華風の模様が刻まれた投石器が2機現れた。

 

「陳宮さん、せめてあの神殿をもう少し調べたほうが……もしかするとステンノさんが中にいるかも……」

 

「兵は勝つことを(たつと)び、久しきを貴ばず。即ち、迅速な行動こそ必勝の道。まずは攻撃、自爆あるのみです!」

 

 陳宮は優秀な軍師であるが、戦略の多くは飛将軍こと呂布の強靭さに慣れているせいか、特攻戦法になりがちだ。

 その宝具「掎角一陣」もまた、味方の身体能力を最大限以上に引き出し、霊基が自壊するまでに暴れさせるというもの。

 そんなわけで、困ればまず攻撃という精神はここでも発揮されてしまった。

 

 石はビュンと空を切り、神殿の柱に見事命中した。

 だが、多少壁に傷はついたものの、逆にぶつかった石が弾かれてしまう。

 異常な頑丈さであった。

 

 

「あら、お客様? 乱暴なノックね」

「神殿を攻撃するとか、信じれない!」

「……一体どこの恐れ知らずでしょう」

 

 

 神殿の奥から少女の声。

 カツンカツンという足音と共に、中から人影が現れた。

 その顔をマシュは初めて見た。

 しかし、まるで同時に3回見ているかのような錯覚を覚えた。

 陳宮は、流石は軍師、余裕な態度を崩さない。

 

「……ほほう。サーヴァント、それも神霊ですか」

 

「クラス反応は……アーチャー、アサシン、バーサーカーの3つ!?」

 

 陳宮は顎をさすり、相手の情報を捉える。

 その白い一枚布を金具で止めた姿は、髪の色や背格好を含めステンノと似ている。

 しかし顔立ちは全く捉えられない。

 整った顔、無邪気そうな顔、侮蔑に歪んだ顔。

 一つの顔に三つの表情が同時に重なって見えている。

 

「あら、貴方たち初めてみる顔ね」

「どんな人間かと思ったら、とんだ間抜け面ね!」

「……サーヴァントとは厄介だ」

 

 三つの声が同時に響く。

 マシュは盾を構えながら、疑問を投げかけた。

 

「貴方は、一体何者なんですか!?」

 

 

 

「「「私はトリニティ。三相一体の女神である」」」

 

 

 

 




オリキャラというよりは、幕間によく出る台詞のみで名無しのシャドウサーヴァントやボスエネミーみたいなものと考えて頂ければ。ゲームだと3つ首ゴーストの立ち絵を使い回されてそう。
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