ミズキくんは女の子みたいで可愛いけど男です。
その日はとても暗い日でした。
天気は雨で風は冷たく、大通りには傘を指した人達が沢山歩いていました。
僕は人気の無い路地裏の、金属製の大きなゴミ箱の横でただ一人うずくまっていました。
昔の事はほとんど覚えていません。
でもその日、その時の事だけは今でも鮮明に覚えています。
片目が機械の銀髪の女性が二人、僕に近ずいてきて、僕を助けてくれました。
その日から、僕の人生は動き出しました。
朝の七時半。
スマートフォンでセットしたアラームに起こされて、ベッドから起き上がる。
寝起きはどうしても右目が痛いので目薬をさしてから、洗面所で髪をとかし顔を洗ってから部屋を出ます。
「おはようミズキくん!」
「おはようございます。」
部屋を出てすぐに声をかけてきたのは、この階層の清掃を担当している掃除係さんだった。
昨日の朝は確かエレベーターの整備士さんだったかな?
とりあえず最初は妹達を起こしに行ます。
妹達の部屋には目覚まし時計が無いので、皆を起こしに行くのも僕の日課です。
ノックをして部屋に入ると珍しく起きていた妹が抱きついてきた。
「お兄ちゃん!おはよー!」
「おはようエミー。今日は起きるの早かったね。」
「うん!エミーはお姉ちゃんだから早起きして皆を起こしてあげたんだよ!」
「うんうん偉いねエミー。さすが一番お姉ちゃんなだけはあるよ。」
「えへへ、それほどでもあるかなぁ。」
「えんうん、えらいえらい。」
エミーが早起きした日は、大抵他の皆の機嫌が悪い日です。
何故ならエミーが妹達を起こす時は、大抵上に乗っかってたたき起こすからです。
(エミーが放出する幸福成分の性なのかどうしても褒めてあげたくなっちゃうなぁ……僕がしっかりしないといけないのに。)
僕には四人の妹がいます。
妹と言っても血は繋がってないですが、皆僕の大切な家族です。
長女のエミーは僕と同じ白髪に左目が紫色、右目がピンク色でのオッドアイで右目の莢膜だけが黒色、右腕と左足からは数本の細い触手が生えています。
次女のラブカは金髪に金色の鋭い目をした少し気の強い女の子で、首元や脇腹辺りにはエラ呼吸のための隙間があり、尾てい骨の辺りからは尾びれが生えています。
三女のエイラートはいつも笑顔を欠かさない紫髪の女の子で、コウモリの耳と翼が生えています。目が悪く光に弱いのでいつも目を包帯で隠しています。
四女のゼラスは四人の中で一番大人しい子で、真っ赤な髪の毛をまるで手足のように操れます。心臓と脳が複数あるとらしいのですが、それに関しては僕も詳しくは知りません。
「それじゃあ皆、朝ごはんを食べに行こうか。」
「うん!」
僕が暮らしている研究所は、地上四階層、地下四階層の全八階層で構成される大規模な研究施設で、僕の部屋は地上三階にあります。
朝食は一つ下の階の食堂で食べます。
五人で食堂に向かうと、既に一人朝食を食べている人がいました。
「おーミズキくん!それに我が愛しの子供達!朝ごはんを食べに来たんだね?一日三食適切な時間に適切な量の食事をバランス良く頂くことは健康状態を維持する上では非常に重要なことで…………」
この人はカイ博士。
あの日僕を拾った二人の女性の内の一人です。
カイ博士は生物学・薬学・遺伝子工学等の様々な分野に精通する、業界ではそれなりに有名な博士です。
「…………というわけだから皆で元気よくいただきますしようね!はい、いただきます!」
「「いただきます!」」
ふと気になって聞いてみた。
「そういえばゴトウ博士は居ないんですね。」
「ああ、姉さんなら今も研究室にこもりっぱなしだよ。新型アンドロイドの開発が最終段階なんだってさ。」
「もう最終段階なんですか?二週間前に始動したプロジェクトなのに……。」
ゴトウ博士は僕を拾ってくれたもう一人の恩人です。
今朝声をかけてきた清掃係のお姉さんも、昨日の朝声をかけてきた整備士のお兄さんも、実は博士が開発したアンドロイドの内の一人です。
ゴトウ博士は主に機械の開発を行う発明家なのですが、二足歩行ロボットやホバーボード、そして心を持つアンドロイドの開発に成功した天才発明家として世界中に名前を知られている人物でもあります。
「そうそう、姉さんが朝食を食べ終わったら研究室に来てほしいって言ってたよ。何か頼みたいことがあるんだってさ。」
「頼みたいことですか?はい、朝食を済ませたら行ってみますね。」
八時半頃、朝食を済ませた僕は言われた通りに地上一階にある研究室へ向かいました。
「失礼します。」
「うむ、来たか。まぁとりあえずこっちに来てくれ。」
ゴトウ博士は研究室の隅にあるソファーの上に座っていた。
「それで、頼みたい事って言うのは一体何でしょうか?」
「これを使いたい。」
そう言って博士が白衣の内ポケットから出したのは……えっと……肩たたき券?
「あの、これは一体?」
「肩がこったから肩たたきでもしてもらおうかと、肩もみでも構わないのならそっちが良いのだが……。」
「いえ、そうではなくてですね。この券は一体何なんでしょうか?」
「え…忘れちゃったの……?ほら、三年前にくれたじゃないか……私の誕生日に…。」
「…………ぁ。」
思い出した。
三年前、当時九歳だった僕が博士に送った手作りの肩たたき券だ。
「えっとつまり、これを使いたいから僕を呼び出したんですか?」
「……ダメ?」
「いえいえ!全然大丈夫ですよ!ただその、博士なら自分でマッサージ機とか作れば良いのではって思いまして。」
「……私だって……人肌が恋しくなる時もあるんだよ…人間だもの……。」
そういえば博士が最初に開発したアンドロイドはただ会話をするだけのアンドロイドだった事を思い出した。
博士は前から寂しがり屋だったんだ。
僕なんかでもその寂しさを埋められるなら。
「それじゃあ、肩、失礼しますね。」
「うむ、よろしく頼むよミズキくん。」
"家族"のためならこれくらいのことをするのは当然ですよね?
ゴトウ「肩揉み気持ちいい…病みつきになりそうだ…」
ミズキ「僕は今、凄く役に立っている!なんて素晴らしい幸福感!これが生き甲斐と言うやつですね!」
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