こっちだけ読んでも特に問題無いと思います。
先日知り合ったケンジさんという人、後から知ったのですがどうやらあの紅色の勇者レティーの弟子だったそうです。
彼は人を探していて、勇者に協力してもらう代わりに弟子にしてもらったんだとか。
戦い方を教わる相手がいるのは正直ちょっと羨ましいです。
僕もケンジさんの役に立ちたくて、博士の協力の元情報収集をしていました。
すると、ここ最近『ビーンズパーク』という遊園地に怪しい二人組が出没していると聞きました。
ケンジさんはその二人組の特徴を聞いて思い当たる人物がいると言い、翌日にはさっそくビーンズパークへ向かいました。
……ぼくを連れて。
「あの、何で僕も一緒なんですか?」
「嫌だった?」
「嫌では無いですけど……僕こういう場所に来るのは初めてで……どう楽しめばいいか……。」
「いや、俺達は遊びに来たんじゃないだろ?目撃情報について調査しに来たんだ。」
「あ、そうでしたね。すみません浮かれちゃって…。」
「ま、何もなかったら帰る前に少しぐらい遊んでもいいんじゃないか?来るの初めてなんだろ?ここのジェットコースターすげぇんだぜ?」
「そう……ですね……。」
思えば僕は遊園地に限らず誰かと遊びに出かけることはほとんど無かった。
妹達はまだ未熟で制御が不完全だから、外に出るのは危険だからと研究所の中で暮らしている。
僕も博士にお使いを頼まれたりしない限りは、自分から出かけることはあまり無かった。
きっと適当にお店を見て回るだけでもそれなりに楽しめるだろうけど、そういう気分になる事も無かった。
ドカン!
突然、少し離れた場所で爆発のような音が聞こえた。
急いで音の方へ向かうと、そこには情報通りの二人組がいた。
どうやら本当にケンジさんの知り合いだったようで、白髪の男の人はケンジさんと話をしている。
その様子を横から見ていたら、いつの間にか僕は知らない場所にいた。
あまりに突然の事で何が起こったのか分からない。
少なくともさっきまでいた場所とは明らかに違う人気のない場所だった。
状況整理をしようと周りを見渡すと、さっきの二人組のうちの一人、金髪に赤いリボンの少女がいた。
「きゅうにこんなばしょに呼んでごめんね。あなたに話したいことがあるんだ。」
「僕に、話したい事…?」
喋っている雰囲気は悪い人には思えなかった。
「とりあえず話ぐらいなら聞くけど…聞いたら元の場所に返してくれるの?返す気が無くても自力で戻るつもりだけど。」
「だいじょうぶ、話がおわったらかえっていいよ。」
怪しいけど、嘘をついている感じはなかった。
「……それで、話ってなんだい?」
「わたしのおねえちゃんをたすけてるの、てつだってほしいの。」
「っ!!」
予想外の話だった。
僕はてっきり姉を追って家を出たあと、悪人に洗脳を受けて手下になったのだと思っていた。
彼女が本心で話しているなら、彼女は敵組織に所属するフリをして僕と協力関係を結ぶつもりだと言うことだ。
「おねえちゃんに何かわるいものがついてるの。それを取ってほしい。それがわたしのおねがい。」
「君のお姉さんが今何処にいるか分かる?」
「わからない。」
「そうか……とりあえずケンジさんにこの事を伝えないと。」
「それはだめ!」
「え?」
「このお話はしんようできる大人の人にしか話しちゃダメだから。じゃないとわるいやつにバレちゃう。」
そこまで考えて行動していたのか。
僕の方が考えが甘かった。
「わかった。この話は僕が信頼する大人の人にだけ話す事を約束するよ。」
「ありがとう!それじゃあもうひとつのおねがい聞いてほしいな。」
「もうひとつのお願い?」
「アオバちゃんにも今のおはなしをつたえてほしい。」
アオバちゃん……おそらくはケンジさんの双子の妹のアオバさんの事だろう。
「何でアオバさんにもこの話を?」
「おにいさんはわたしとお話ししたからあやしまれるけど、アオバちゃんはわたしとお話ししてないからあんぜんでしょ?」
本当に情報が漏れないよう彼女なりに対策を徹底しているようだ。
僕は10歳児を甘くみていたのかもしれない。
「わかった。アオバさんには僕から説明する。それで問題無いかな?」
「うん!話はそれだけだからさよなら!」
彼女がさよならと言うと、次の瞬間には僕は元の場所に戻ってきていた。
魔法の類いなのだろうか。
魔法がほとんど使えない体質の僕にはよく分からない。
戻ってきてすぐに目に付いたのは地面が割れ街灯が折れた光景だった。
その次には砕けた岩の塊と少し疲れた様子のケンジさんが見えた。
「ケンジさーん!大丈夫ですか!?」
「ミズキお前どこ行ってたんだよ!」
「えっ、ええっと…。」
しまった、さっきの話は秘密だから、急にいなくなった事について何か言い訳をしないと。
「…あ!お花摘みです!お花摘みに行ってたんですよ!ほんとにすいません!」
そう!お花摘みに行っていたことにしよう!
「あぁトイレいってたのか。我慢しながらじゃやりずらいし仕方ない……のか……?」
上手くいった!ちょっと危なかった!
とにかくこの事はケンジさんには秘密という方向で進めないと。
ミズキ「街灯がへし折れてますね……ゴーレムのパワーと硬さは凄まじいですね。」
ケンジ「ああ、それ俺が叩きつけられた時に折れたやつ。」
ミズキ「え、それ骨折れてないですか?」
ケンジ「そんぐらいで骨折れないだろ。」
ミズキ(僕の常識が間違っているのだろうか…)
次回 鬼は悪者じゃなきゃいけませんか?