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人身売買の罪でボラを連行した後、俺はフェアリーテイルへと向かっていた。
「ナツさーん、なんで手を繋いでくれないんですか~」
ただし金髪娘ルーシーつきで。
「あのな、恋人同士でもないのにそんなことできるか!」
俺が怒鳴ると、ルーシーは顔を赤らめ、
「恋人同士ではないということは夫婦ということなんですね! でもその前に結婚式を挙げないと!」
と体を妙にモジモジさせながら言ってくる。
「違う、断じてそう意味じゃない!」
「なるほど、ナツさんは結婚に証はいらない! だなら結婚式など必要ないと」
「俺、そんなカッコいいこと考えていませんが!?」
「さあ、今こそ二人の愛の社交場フェアリーテイルへレッツゴー!」
「話聞こうかぁ!」
俺の悲痛の叫びも聞かずルーシーはフェアリーへと走った。
「私の影が薄く!?」
忘れかけていたハッピーの悲痛の声が聞こえてきた。
◇
薄暗い室内にて照明の変わりに巨大な魔方陣の出す光によって相手を認識しあう9人の者達がいた。
その中の一人、髭を蓄えた厳つい顔をした老人がいらただしげに怒声を上げる。
「まーた、フェアリーテイルのバカ共がやらかしおった!」
彼等は評議員。全魔導士ギルドの最高責任者である。彼等の主だった仕事は魔導士ギルドや魔導士が犯罪、問題を起こした時、もしくはその可能性や、危険性がある場合はこうして集まり会議を行うことだ。その他にも危険な魔導士を相手に裁判を執り行うこともある。
その評議員の一人である老人オーグは頭痛がするからか眉間を抑えながら必要以上に騒ぎたてる。
その場にいないフェアリーテイルに対し怒っても仕方がないとことだとわかっていたがそれでもこの怒りの感情を抑えることはできない。
その老人とはうってかわって隣の老人は、
「まあまあ。それでも一応は結果を残しているわけですし。それに最近じゃA級賞金首のエルダムにレベル5の怪物ガロリアンを退治してくれたではありませんか。確かそれをやってくれたのは赤髪のあの可愛らしい娘ではなかったかのぅ。ホッホッホ」
と自身の薄い髭を擦りながら宥める。
しかしこの老人。一見フェアリーテイルを庇っているようにも思えるが実はただ単に老人の言う可愛らしい娘がお気に入りなだけだ。いや、正確には若い娘全てに目がないのである。
しかしオーグは納得がいかず、
「その代償に町一個半壊されのではたまったものではないわ!」
さらに怒声を上げる。その声に一人の青年を除き、ヤレヤレ、確かにといった声が上がる。
「それにレイジ氏、フェアリーテイルのなんと言ったか、あの氷使いの娘の名前は…… まあ、いい。奴は湖一帯を氷つかせた所か、あのS級賞金首、武器喰いのロンドを逃がしたそうではないか? これでは結果も残せずただ問題を犯しただけではないか!」
「むぐ……」
全ての若い娘がお気に入りの老人、レイジは言い返す言葉も見つからず黙ってしまう。
「落ち着きなさいオーグす。あんたの言うことも最もだ。だげんどもレイジすの言うことにも一理あるのもまたぁ事実」
オーグに癖のある喋り方をするのは小柄な老人ヤジマである。
レイジとは別の理由でフェアリーテイルをよく庇う者だ。そのせいかオーグからはあまりよく思われていない。
オーグが眉間にシワを寄せ黙って聞いているとこの中においてはかなり若い女性ウルティアもヤジマの意見に呼応するかのように言う。
「ヤジマ氏の言う通り、バカな連中ばかりだけど、それだけ有能な人材がいるのもまた事実じゃない。それに先程受けた知らせじゃ、余計な被害は一切なしでB級賞金首、プロミネンスのボラを捕まえたらしいし」
ナツによる仕事の結果は既に彼等に知れわたっていた。
その事を聞いたオーグは、まあ確かに…… と口には出さず心の中で呟く。
あえて口には出さないのはやはりフェアリーテイルを素直に認めたくないからだ。
すると今まで黙り込んでいた顔に刻まれたイレズミの目立つ若い青年ジーク・レインがふと口を開いた。
「奴等、妖精の申し子ような者達もこの世界には必要…… 今は放っとけばいいだろう…… いずれ世界の夜明けも近い…… ククッ」
この言葉を聞いたジーク以外の評議員達は全員同じ事を思った。
ーーああ、こいつ喋らない方がいいタイプだ。
◇
はあ、ついちまったよ。この子つきで。
俺はいつものハッピーとは別にもう一人ルーシーつきで
「ここがフェアリーテイルですか! では早速ギルドの人達に私達の関係を発表しましょう!」
ああ、本当に不本意だ。よりにもよってこんな頭の痛い娘に気に入られるとは。
俺の足は自然に重くなっていく。
このまま石像になっちまうと、思っていたら俺はルーシーに腕を引っ張られていた。
「てっ、ちょっ!」
「さあ、行きましょう!」
なんでこうなる!?
フェアリーテイルの扉が開く。
すると中からはバカ共と呼ばれるフェアリーテイルの仲間達が。
本当にいつも賑やかで騒がしいギルドだな…… でもやっぱここに帰るとホッとするな。
俺が感傷に浸っていると一発の拳が顔面に当たった。
「ブホォ!?」
ドゴオォォォンンンン!!!!
痛い! いきなりなに!?
ヒリヒリと傷む顔面を抑え拳を入れてきた張本人を確認するとそこにいたのは目つきの悪いエアリーショートの美少女グレイ・フルバスター。
なんとも女らしかぬ名前のせいか性格も男っぽい。
「グレイ、お前なにすんの!?」
「黙れ」
なっ! この娘、人を殴るところか黙れとおっしゃいましたよ!
グレイは相変わらず俺を睨み付けて話す。
「テメェ、一つの仕事を終わらせるのに時間かけすぎなんだよ。一体なにしてたんだ? 女遊びか、あぁん!?」
「はあ!? なんでそんなふうに思…… 」
俺は気づく。そういやギルドに入るとき……
「大丈夫ですか、ナツさん!」
この子と手を繋いでたね…… あ、泣きたい。
ルーシーはキッとグレイを睨みつける。
「私のダンナ様に何をするんですか!」
「はっ…… ?」
ルーシーの言葉にグレイに続き、またやってるよ見ていた仲間達の目が点になる。
そして静寂が生まれ、その静寂は、
「「「「「なにいぃぃぃぃぃぃぃぃ」」」」」」
と一瞬で壊れる。
ダンナ様だとぉ! あのナツに! 死ね! 消えろ! ナツウザい!
「っておい! なんで俺メッチャ責められてんの!?」
俺が悲痛の叫びを上げるとグレイが両手を構えこちらに殺気めいた目を向けてくる。
「テメェ…… やっぱりそういうことか……」
「いや、どういうことぉ!?」
ヤバイ! これ死ぬ!
と思った瞬間、いつの間にかグレイの背後にいた巨体の体を持つ男、いや、
「あらーん、こんなところで魔法使っちゃ駄目よグレちゃん。ヤキモチするのはわかるけど」
オカマのエルフマンがグレイを止めた。
倒したモンスターの力を吸いとる
「だれがヤキモチ焼くかぁ!」
「ゴファ!?」
だから何故俺を殴る!
「あらあら、ごめんなさいねナっちゃん。グレちゃん、あの武器喰いのロンドを取り逃がしてイラダってるのよ」
一応グレイに聞こえないようにエルフマンが説明をする。
武器喰いのロンドってS級賞金首の危ない奴じゃねーか。自分がS級の魔導士でもないくせに、まーた勝手に仕事の依頼を引き受けたな。
ん? そういやルーシーの奴意外に静かにしてるな。
と思ったらルーシーはグレイにケンカを売っていた。
いや、なにやってんの、君!
「聞き捨てなりませんね! ヤキモチとはどういうことですか! 貴方もナツさんが好きなんですか! LOVEなんですか!」
「はぁ!? テメェこそ出会って早々何言ってんだ!」
二人の間に火花が散る。
それを近くのイスに座りバカを見る目で見ていた美少女
が紅茶を飲みながら、
「今は神聖なるティータイムの時間です。ケンカなら外でやってくれないかしら?」
と高飛車な感じでグレイに言った。
彼女はカナ・アルベローナ。カードを使った魔法で攻撃や回復などをすることができる。
無類の紅茶好きでかたくなにティーカップを手放そうとしない高飛車な言動の目立つ女だ。
「うっせーな、カナ。アタシは売られたケンカを買ってやっただけだ」
「ケンカケンカって貴女はそんな考えしか持てないのかしら? 本当に野蛮ね」
「なにぃ……!」
今度こそ殺し合いが始まる! かと思ったときに一人の男が現れる。
「ヘイッ! ケンカハ、ヨークアーリマセンネーgirls!ミンナナカヨクナカヨクLOVE&pieceヨ!」
カタコトで話すのはイケメンなのに言動から全くモテない残念な男、ロキだ。
ロキはホルダー系の魔法マジカルリングの使い手である。
それ以外は全てが謎の男。誰もアイツのことを知らない。
本当にアイツ何なんだ?
「テメェまでうるせーぞロキ! こうなりゃ全員凍りつかせてやる!」
とグレイは服をバッと脱ぎ捨てる。
すると周りの汚い男達からウヒョーという声が上がる。
うん、勿論俺はそんな卑猥な考えは持たないがな!
しかしグレイの小さいながらもある胸を拝むことはなかった。
服の下にあったのは見られても大概大丈夫なタイプのブラ、つまりスポーツブラだった。
なーんだ。チッ。いや、これはこれで。どんだけ飢えてんだよお前。
男達の汚い発言に女達はゴミを見る目で見てくる。
あの、俺はそんなこと思っていませんからね!
それにしてもグレイの奴、相変わらずの脱ぎぐせだな。
グレイは氷の造形魔導士だ。氷により武器をあみだし敵を倒すテクニックのいる魔法を使うかなりの凄腕なんだが…… その氷の魔導士のせいなのかよくわからないがグレイにはとんでもない脱ぎぐせがある。
ところ構わず服を脱ぎ捨てようとするのでエルフマンが
青いスポーツブラをプレゼントしたらしい。
「ヘイ! girl! スグフクヲヌグノハイカンセント、チャイマッカー?」
いや、ロキ! お前なんか口調、変になってるよ!?
「うるせ」
「うぉぉ!!! 冷てぇ、なにしやがるうぅぅ!!」
「いや、お前カタコトじゃなくなってぞ!」
俺のツッコミを聞く暇もなくロキは吹っ飛ぶ。
するとエルフマンがグレイを宥め始める。
これでまあ、安心だろう。
俺が安堵しているとルーシーが腕を絡め、
「ナツさん! 浮気はいけませんからね!」
と怒鳴ってくる。
「なんの話だ! あと腕を絡めるのを止めろ!」
「良かったじゃないナツ。こんな可愛い子に好かれるなんて」
「なに言ってんだよ…… ミラ」
不本意な事を言ってくれるのは白髪の美人さん。ミラ・ジェーンだ。
エルフマンと同じくテイクオーバー系の魔法を使うのだがわけあって今は使えない。
「この人は、ミラ・ジェーンじゃないですか! あのグラビアでよく見る!」
あぁ、確かにいろんな雑誌で引っ張りだこだもんな。
ルーシーもやっぱそういうのに憧れとかあんのか……って、
「イダダダダダダ!!!! なにすんだ!」
ルーシーのやついきなりツネッてきやがった。
「どういうこですか! あのミラさんと仲が良いだなんて! これ浮気ですよねぇ」
「違う! ギルドの皆は家族みたいなものなの! みんな仲が良くて当たり前なの!」
「あらあら、本当に仲が良い…… クシュン!」
あ、ヤバイ……
俺は恐る恐るミラを見る。
するとそこには先程までのおっとりしたミラはいない。
いるのは目つきの悪い殺気まる出しのミラであってミラでない女。
「おい…… テメェ、ルーシーとか言ったな……」
「え、は、はい」
ミラの声のトーンは完全に変わっていた。
流石のルーシーも怖じけずく。
「テメェ、誰に断ってナツの嫁名乗ってんだ! ナツと付き合いたきゃアタシに認めてもらってからだこおらぁ!」
「ヒイィィ!! 姑の壁がまだ残っていました!!」
「いや、ミラは別に俺の母親じゃねーよ!」
ミラは二重人格の持ち主だ。温厚な性格の持ち主であるミラだが、クシャミをするともう一つの気性の荒い人格
通称ラミが発動するのだ。
ラミは何故か俺にたいし母親のような行動を取ってくる。
理由は本当にわからん。
そんなことを考えているとミラ、いやラミの顔面に氷の塊がぶつかった。
「あっ!?」
飛んできた方向を見るとそこにはグレイがいた。
どうやら他の奴等とまたケンカを始めたらしい。
「グレイ…… やってくれるじゃねえか……」
ラミが殺気全快で動き出す。
しかしそれにグレイも手を構える。
「チッ、ラミか。やってやるよ」
「こら、駄目よグレちゃん!」
「ヘイ! ヤッテクレタナgirl!」
「もう、私の怒りゲージもマックスよ。折角のティータイム邪魔してくれたこと後悔させてあげるわ」
「こらぁ! 俺の紹介もしろ!」
「黙れよモブキャラ!」
「んだと!」
「ナツさん、好きです!」
「ルーシー! どさくさに紛れてなに言っているのかな!?」
今、フェアリーテイル大戦が勃発する!
かに思えたその時、巨大な黒い影が現れ、
「止めんかバカたれえいい!!!」
と一喝した。
すると全員の動きが止まる。
よ、良かった……
「あ、あのナツさん! このおっかない人なんですか!?」
俺の代わりにハッピーが答える。
あ、ハッピーいたんだ。すっかり忘れてた。
「あの人は我等を束ねるお方……」
そうこのジイさんは、俺達の……
「「マスターだ」」
こんなんだ良かったのかと不安な気持ちになります私。
しかしそれでもめげずに頑張ります。
感想などお待ちしています。