あかりさん理解度が、、、
「あかり、桐山くんのプロポーズについてはどうするつもり?」
美咲はあかり以外に誰もいないタイミングを見計らい、腹を割って話そうと切り出す。
「ど、どうすればいいのかしら」
おろおろと常のあかりらしくないほどに未だに思考が定まらない。
「いつもはキッパリと断るあかりがここまで悩むってことは桐山くんは返事を迷うくらいの存在なのね」
妹を守るためと言って青春を捨て、店で出会ってきた男達の誘いを断り、深いところには距離を近づけさせなかったことをずっと見てきた美咲にとって、これは初めて見る姿だった。
あかりが答えを出せないのはきっとそれほどに彼女にとって桐山零という人間がかけがえのない存在だからだ。
「だって、まさか私とは思ってなくて……」
相変わらず自己評価の低い子だと美咲は思ってしまう。
気立が良く、美人の自慢の姪であるのだが、己を卑下してしまうのは間違いなくあの男のせいであり、追い払ったばかりのクズ男に再び殺意が湧き上がる。
「なら、弟のようにしか見れないって断ればいいんじゃない?
桐山くんならきっとそれで断っても何事もなくいつものようにこの家を支えてくれると思うわ」
これは確信があった。
桐山零は心の底から川本家の人間を信頼し、何をしてでも守りたいと思っている。
それこそ、一度断られた程度で諦めるとは微塵も思ってはいないのだが、あかりの本音を探るために美咲は試すように問いかけた。
「そうね……。
きっと変わらずにこの家に来てくれると思うわ。
だけど……」
「ねぇ、あかり……あなた気づいてる?
あなた、一度も妹のことを言い訳にしてないわよ」
歯切れの悪いあかりの言葉に美咲は口を挟む。
その表情はまるで子供に諭すかような穏やかなものだった。
「え?」
なんのことだと言いたげなあかりとは逆に美咲はようやく違和感に気づいた。
いつも彼女がいう言い訳は母の代わりに妹を育てる役目があるからという言葉だった。
しかし、彼女は一度としてそれを口にしない。
まるでそんな心配などないのだと言ってるようにしか思えなかった。
「桐山くんがひなとももを邪魔に思うことがあると思う?」
「絶対にありえないわ」
迷いも、思考する必要もない即答。
あかりにとって零はどこまでも信用に値する人間であった。
「私ね、きっと思うのよ。
あかりにとっての恋愛はもうひなとももを切り離せないものなんだって。
どんなに好きになったとしてもきっとあなたは優しいから妹たちのことを考えてしまって前に踏み出せないと思うのよ」
本当にこの子は優しすぎる。
言葉を吐きながら優しい子に育ったことを喜びつつも複雑な気持ちにさせられてしまう。
「………はい」
「きっと桐山くんはあかりにとって初めて恋愛対象となりえる存在なんじゃないかしら。
それに、彼は絶対に誠二郎さんのように裏切ったりしないわ」
零の境遇は美咲も知っている。
幼い頃に全てをなくし、生きるために将棋を指し、必死に孤独の中で足掻いて生きてきた。
そして、川本家というようやく得た心安らげる空間。
それを守るために必死なことは付き合いが浅い美咲にもわかることだ。
彼はきっと失うことにもう耐えられないだろう。
無自覚に求めて欲してやまないものを手に入れた彼がそれを手放すようなことはあり得ないと言ってよかった。
「うん……」
心の中にある恋愛という恐怖と忌避を見破られたあかりは小さく頷きを返すことしかできない。
怖いのだ。
好きになった人が自分を捨ててどこかに行ってしまうことが怖くてたまらない。
もう二度とあんな思いをしたくないという記憶が深いところに根付いていた。
「あんたがこれまで自分の青春を捨ててまで妹たちを守ってきたのは知ってるわ。
だけど、そろそろ自分の幸せを考えてあげてもいいと思うわ。
別に相手は桐山くんじゃなくてもいいの。
あかりが幸せを掴める相手なら誰でもいいからもう少し自分の将来のことも考えてね」
ここまで言ってなおきっとあかりは妹を優先するのはわかりきっていた。
美咲は桐山零という突如現れた起爆剤を存分に利用してあかりの意識を改革することを決意していた。
求める条件に合致する相手が少なすぎるのが難点なため、美咲は心から零を応援する。
がんばれ桐山少年!
あかりの未来はあなたにかかっているのよと……。
ぶっちゃけ、あかりさんってお店の客とかに告白されまくってると思うんですよね