「お父さん……来たのね。
桐山くん、ありがとう。
妹たちを家に残さないで良かった……でも、戻ってきて良かった。
桐山くん……倒れてるなんて……」
あかりは涙を止めることができなかった。
大阪での将棋の対戦に、誠二郎との対話。
どれほど身体と精神を酷使させたのだろうか。
こんなにも私たちのために必死になってくれている彼のために何か報いることができるのだろうか。
「お父さん、何を言ってきたの?」
意識も朧げな零に問いかける。
自分の代わりに対峙して追い返してくれた零と少しでもその気持ちを共有したかった。
「あかりさん、ぼくはもうあいつを……この家に近づけさせたくないです……」
既に限界を超えていたのか、それだけを返して零は瞼を閉じ、ほとんど意識がない様子だった
「れいちゃん……」
ひなたも名前を呼ぶだけでこれ以上は何も言えない。
「今日はみんなここで寝ましょう」
言葉短く、布団を敷いて零の横にあかりは腰を下ろす。
ひなたも、ももと並んで寝転んだのを確認して電気を消す。
あかりは薄い月明かりが照らす零の横顔をじっと見つめる。
何度も見てきたまだ10代の少年のあどけなかった顔はどこか男らしくなっている。
偶然の出会いから関わりを持った男の子。
まるで迷子になって自分のことすらどうでもいいと生きることに必死で見ていられなかった。
弟のように思っていた少年。
弟のように思っていたはずなのに、気づけばこんなにも大きな存在になっている。
あかりは複雑な心の中を自問する。
放っておけないから?
見てられないから?
慕ってくれるから?
妹たちを大切にしてくれるから?
守ってくれるから?
きっとそれも正しくて、間違っている。
それだけじゃない。
全部あっての今があるのだ。
「桐山くん、好きよ」
ふわりと自然に微笑みと言葉がこぼれ落ちる。
意識せずにこぼれ落ちた言葉に誰よりも納得を得たのはあかり自身であった。
いつ好きになっていたんだろう。
恋なんてもうすることはないと思っていた心が蓋をしていたのだろうか。
「僕もあかりさんが好きです」
掠れた声で零が言葉を返す。
まさか起きているとは思っていなかったあかりは驚いて頬を赤く染めた。
「私を好きになってくれてありがとう」
寝ぼけ眼の零の頭を優しく撫でて今日は寝ましょうと促す。
「はい……」
もう怖くなかった。
もう一度誠二郎がきても毅然と振る舞えると心から思った。
だって、私はこんなにも幸せなんだもの。
この当たり前で大切な空間を守るためならどこまでも立ち向かえると、強さを、恋を教えてくれた零の頬にそっと口付けをするのだった。
あかりさんっぽくなってます?
作品の雰囲気だけは落としたくないので感想アドバイスあればお願いします。
多分次は零側に焦点当てます