【カオ転三次】『俺たち』閑話集   作:塵塚怪翁

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今回は、地方でとあるネタ装備に振り回される女性異能者のお話。

時系列としては、半終末突入後すぐの頃です。


 とある現地民と女性用霊装の顛末

 

「このっ、【三日月斬り】!」

 

「ペルソナ、【ジオ】!」

 

『ギキィ!』

 

「あ、ちくしょう、インプが! このクソガキが!」

 

 

 小柄な少年にしか見えない姿の少女が持っていた鉈で切りつけた後に、その後ろにいた女性の背後に浮かんだ青色の肌の女性が放つ電撃に撃たれて小さい蝙蝠の羽を生やしてキーキーと騒ぎながら飛び回っていた【夜魔インプ】が煙のように粒子となって消えた。

 そのインプを操っていた派手なスーツ姿の男は、消えていく自分の使い魔を見て悪態をつく。

 

 ここは、富士山にほど近い御殿場市の市内にある競売物件になっているビルである。

 

 インプを使い魔にする男がリーダーを務めるダークサマナーのグループが何故ここにいたのかと言うと、ここのビルをガイアグループの企業が競り落としたからである。

 彼らはガイア連合の台頭で今までの商売が上手く行かなくなり、その能力を活かした地上げ屋や占有屋を請け負う商売に河岸を変えたダークサマナーの一団であった。

 

 今回、ガイア連合への嫌がらせも含めて、競り落とせなかった某フロント企業の不動産屋から依頼を受けて彼らは居座っていたのだが、まさかこんな些末な案件にガイア連合が異能者を送り込むなんて無いだろうという彼らの高を括った予想は裏切られ、最近保護して面倒を見ている弟子のような二人にちょうどいい相手を探していた黒札のカンユーニキに乗り込まれたのだった。

 

 周囲にいる取り巻きのチンピラたちを近づけさせないように、【精密射撃】のスキルを乗せた投石を相手の脛に当てるなどしていたカンユーニキが二人に声をかけた。

 

 

「油断するなよ。チンピラでもこいつらも覚醒者なんだからな」

 

「わかってます。カンユーさん」

 

「怪我をしたら治しますから、気をつけて!」

 

「くそったれ、このガキ! 死にやがれ、【ムド】!」

 

「く、この!」

 

 

 チンピラの男は目の前で切りかかって来ていた少女に向けて、彼の奥の手である呪殺呪文を放った。

 思わず硬直して両腕で体を庇おうとした少女の前で、呪殺呪文が無効化されてかき消されたように消えてしまう。

 その様子に放った方も受けた方も固まったのを見て、カンユーニキは近くのチンピラを殴り飛ばしてもう一度声を掛ける。

 

 

「呪殺対策の装備は渡したんだから当然だろう、文月?

 ほら、早く倒すんだ」

 

「…あっ、はい! この【怒りの一撃】!」

 

「こんなガキなんかに! ……ぐべっ」

 

 

 声を掛けられた少女はとっさに目の前にいる男めがけて右足を振り上げ、スキルの乗った重い一撃がチンピラの男に命中した。

 両足の間にある男の急所にクリティカルヒットを食らったリーダーの男が崩れ落ちここでの戦闘は終了した。

 

 

 

 ーーーーーーーーーー             

 

 

 

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 有線放送がCMから切り替わり、ヒットチャート上昇中のジュニア男の娘アイドルグループの曲『アイムトラップガール』が流れ始める。

 山梨第2支部内の喫茶店「翠」で、仕事を終えて帰ってきた二人の少女はこの店の自慢のケーキを食べながら悩んでいた。

 

 一人の名は、【文月明(ふみつきあきら)】。

 短く切った髪型と流線型のスタイルに動きやすいからと男性用の服を着ていることから、いつも男性に間違われる前衛担当の元高校生の少女。

 もう一人の名は、【若林青葉(わかばやしあおば)】。

 同じく短い髪型でパンツルックが多いが、明と違って立ってつま先が見えないほどには大きい胸をしたペルソナに覚醒した後衛担当の元大学生の女性。

 

 二人とも故郷の海辺の村が海から来た『何か』によって壊滅した時に、現地調査に来ていたガイア連合のチームの一人だったカンユーニキに保護されてデモニカなしでも戦える素質があった事から主力が『何か』を倒す間、3人で魚人と化した大勢の村の人達から逃げ回りながら生還し、そのまま彼に保護される形でデビルハンターに学生から転職する羽目になった経緯がある二人だった。

 

 カンユーニキは依頼の報告と後始末のためにこの場にはおらず、帰ってきた日の翌日である今日は二人は休暇となっていた。

 

 

「ねえ、明。もう少し、連携のやり方を考えた方が良いかもね?」

 

「う、それは悪いと僕も思っているよ。

 でも、戦いながら青葉さんの射線を考えるって難しいよ?」

 

「せっかくわたしたち、デモニカ?とかいうあのスーツを着ないでもある程度戦えるんだから頑張らないと。

 家族はみんな津波に飲まれるか、怪物になって村ごと消えたんだし。

 生活するにも先立つものがないと」

 

「でも、カンユーさんて黒札とかいう幹部クラスの人でお金を持っているんでしょう?」

 

「あまり頼り過ぎるのも駄目だよ。

 奥さんだっているんだし、友達の人の顔の怖いおじさんに睨まれるよ?」

 

「うん、そうだね」

 

 

 顔の怖いおじさんとは、カンユーニキの友人の【ドクオヤジニキ】である。

 生身の女性に良い記憶の少ない彼は、彼女らに顔見知り以上の対応を取ることがなかった。

 

 

「それで青葉さん、カンユーさんに内緒で相談したいことって何?」

 

「今回の依頼の報酬は、わたしたちの分はわたしたちだけで貰ったじゃない?

 あの連中、ここと提携している地方の組織の倉庫から霊装を盗んでいたみたいなの」

 

「まあ、あの連中ならやりそうだよね?」

 

「それで、その霊装が女性用だったから報酬の代わりに貰ってきたの」

 

「装備のことならカンユーさんに相談してもいいんじゃないのかな?」

 

「それは駄目。

 見せたら、取り上げられて売ることになりそうだし」

 

「いったいどんなものなの? 青葉さん」

 

「これだよ」

 

 

 そう聞かれた青葉は座っている一番奥のボックス席から周囲をキョロキョロと見渡すと、カバンから取り出した霊装の2つをテーブルに置いた。

 それは、黒猫を模した付け耳と付け尻尾のアクセサリーだった。

 

 

「へー、これが?

 この装飾品、着けると何か効果があるの?」

 

「説明書によると、これを装備すると力と体力と足の速さが増すんだって。

 それに、奇襲され難くなるスキルと状態異常に強くなるスキルが付いているそうよ」

 

「そんなにすごい物なら、内緒にしなくてもいいんじゃないのかな?」

 

「んー、それがね。そうしないといけないの。

 ねえ、明。

 これってどうやって身につけるか解る?」

 

 

 そう言われた明は、この2つを調べ始めた。

 

 

「付け耳の方はいいとして、この尻尾はどうやって付けるんだろう?

 根元にフックとか接着する部分とか無いし」

 

「それはね、…………ゴニョゴニョゴニョ」

 

 

 顔を赤くした青葉に耳元で付け方を囁かれた明は、青葉以上に真っ赤になって彼女に振り向き小声で話しかけた。

 

 

「…え? あの、それっておおおおしりに??

 嘘でしょ、青葉さん?」

 

「ほら、尻尾の根元にピンクの玉が3つ付いているでしょう?

 これを入れて固定するみたいなのよ」

 

「ほ、他の付け方は? 他のやり方はないの??」

 

「説明書にはちゃんと中に入れて装備しないと効果が出ないって書いてあるのよ。

 たぶん、服に何かで引っ掛けただけではただのアクセサリーになるみたい」

 

「……あー。

 確かにこれはカンユーさんが見たら、取り上げられちゃうね」

 

「カンユーさん、わたしたちを娘か妹みたいに見てる節もあるし。

 今度生まれるお子さんも女の子みたいだから、余計にそうなのかも?」

 

「…そ、それで、こここれは青葉さんがつ、付けるの?」

 

 

 そう聞かれた青葉はニヨニヨと笑うと、席を真向かいから耳まで赤い明の隣に座り直し手に持っていた説明書を彼女の前に置くと囁いた。

 

 

「これの強化は魔法を使うわたしより、どう見ても前衛の明向けだよねぇ?」

 

「そ、それって、え? 僕が、え? でも、おし……ええっ!?」

 

「大丈夫。

 ほら、この説明書にお尻のやり方も書いてあるから。読んでみる?」

 

「…あ、え、でも、おし…入れるのは。…! わ、わぁ!」

 

 

 

 ーーーーーーーーーー             

 

 

 

 その後、真っ赤になって説明書を読み耽る明を愉しそうに見ていた青葉はそれに夢中になって待ち合わせていたカンユーニキにその場を押さえられ、この耳と尻尾の装備を売却する事となった。

 青葉は罰として、ペルソナの第一人者のやる夫二キの所でしばらく猛特訓を受けることになった。

 

 そして、明の方はそれから半月の間、カンユーニキとは赤面しまともに顔も合わせられなかった。

 

 どっとはらい




後書きと設定解説


・主人公

名前:文月明(ふみつきあきら)
性別:女性
識別:異能者・17歳
職業:ハンター協会デビルバスター
ステータス:レベル8
耐性:破魔無効・呪殺無効(装備)
スキル:三日月斬り(敵単体・小威力の物理攻撃)
    怒りの一撃(敵単体・小威力の物理攻撃。
          命中率は低いが必ずクリティカル)
    一分の活泉(最大HPが上昇する)
装備:マチェット(ガイア連合製霊装の鉈)
   男子用学生服(ガイア連合製霊装)
   呪殺無効の指輪(ガイア連合製霊装)
   携帯電話型COMP(ガイア連合製品)
詳細:
 若林青葉の従姉妹でコンビを組んでいる元高校生
 悪魔事件で家族を失いカンユーニキに保護された
 ズボンで動きやすいために男性用の霊装を着ている
 短髪の地味な容貌で少年にしか見えないほど平坦
 悪魔は嫌いなのでCOMPはアプリのみ使用
 容姿はやる夫スレオリジナルの「文月明」

・関係者

名前:若林青葉(わかばやしあおば)
性別:女性
識別:異能者・19歳
職業:ハンター協会デビルバスター
ステータス:レベル8
耐性:破魔無効(平常時)
   火炎無効・氷結弱点・呪殺耐性(ペルソナ)
スキル:ペルソナ(女帝・ヴェスタ)
装備:ケブラージャケット(ガイア連合製霊装)
   ペルソナ起動具(P3モデルガン型霊装)
詳細:
 文月明の従姉妹でコンビを組んでいる元大学生
 悪魔事件で家族を失いカンユーニキに保護された
 覚醒時にペルソナに目覚めたが明と組む事を選んだ
 ショートカットの地味な容貌だが胸がかなり大きい
 容姿はやる夫スレオリジナルの「若林青葉」
 
【女帝・ヴェスタ】
スキル:アギ(敵単体・小威力の火炎属性攻撃) 
    ディア(味方単体・HP小回復)
    ジオ(敵単体・小威力の電撃属性攻撃)
詳細:
 若林青葉のペルソナ
 ローマ神話に登場する炉、家庭、家族を司る処女の女神
 後に、ギリシア神話のヘスティアーと同一視された
 青色の肌で肌も露わな服の両手に炎を持った女性の姿

名前:カンユーニキ(菅優・すがすぐる)
性別:男性
識別:転生者(ガイア連合)・30代
職業:ガイア連合地方派遣調査員
ステータス:レベル26・スピード型(速・体)
耐性:破魔無効・呪殺無効(装備)
スキル:精密射撃(敵単体・小威力の銃属性攻撃。
         クリティカル率高)
    アギ(敵単体・小威力の火炎属性攻撃)
    ムド(敵単体・低確率で死亡付与)
    宝探し(アイテム捜索の成功率が上昇する)
    サバイバル(野外生活で効率よく生き抜ける技術)
    隠密行動(姿を隠して情報収集する技術)
装備:呪殺無効の指輪
   魅了無効の結婚指輪
   封魔管(妖獣ガルム・レベル9)
   54式トカレフ(ヤクザから拾得した中国製品)
詳細:
 某むせるロボットアニメの小悪党にそっくりな転生者
 元探偵の経歴から全国を移動して調査依頼を熟している
 両親や家族と共に秋田から山梨支部に引っ越した
 一神教改宗済の元シスターの嫁が2人目の子供を妊娠中
 文月と若林の二人を独り立ちできるまで保護するつもり

・アイテム

【フェイクイヤー】

黒猫の耳を象った頭につけるアクセサリー
「警戒」のスキルが付与されている
フェイクテイルと同時に装備しないと効果がない
スケベ部製のガチャのハズレ品
地方組織の倉庫から盗まれていた盗難品

【フェイクテイル】

黒猫の尾を象った尻に挿れるアクセサリー
装備時、力・体・速が10%上昇する効果
また、「耐状態異常」のスキルが付与されている
フェイクイヤーと同時に装備しないと効果がない
スケベ部製のガチャのハズレ品
地方組織の倉庫から盗まれていた盗難品


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