【カオ転三次】『俺たち』閑話集   作:塵塚怪翁

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今回は、とある山梨支部から飛び出した野生の修羅勢のお話

時系列としては、半終末に突入してしばらくした頃です。


 とある山梨支部の修羅勢の旅立ち

 

「…………参りました」

 

「……いや、一瞬ヒヤッとしたよ。流石、星杖殿だ」

 

 

 富士にあるガイア連合の本拠、その奥にある神社の一室で互いに向かい合いながら座禅を組む者達がいた。一人は言うまでもなくここの神主のショタおじで、もう一人の白が目立つ髪をオールバックにした好々爺という雰囲気の初老の男性であった。

 

 時間にして数分だろうか、初老の男性が降参し二人は目を開けた。

 

 

「いえいえ、これまでおよそ百十数年の研鑽を積んで一太刀のみ。

 これで4度目になりますが、今回は初見殺しが上手く嵌まっただけですな。

 すぐに、点から面の制圧に切り替えられて終わりました」

 

「いや、あの初見殺しは上手く嵌れば上位の悪魔でも討ち取れるだろう。

 俺でも少し本気を出さないと危ない所だったよ」

 

「しかし、時間の進みも思いのままとは電脳異界とは修行に最適ですな。

 はは。それにしても、修業を続けても続けても神主殿の背中が遠い。

 地力もそうですが、術の練度も流石というべきでしょう。

 これは一つ、久しぶりに外界に出て見つめ直すとしましょう」

 

 

 その男性の言葉にパチクリと驚いたように瞬きしたショタおじは、不思議そうにその男性に問いかけた。

 

 

「……外に行くのかい?

 今は半終末になって悪魔が出やすくなっているとはいえ、ここの大異界のように強い悪魔がいるとは限らないよ?」

 

「はは、それは重畳。

 流石に、下層に至るまでの絡繰り仕掛けに苦戦しているのでね。

 敵の悪魔は斬れば良いのですが、斬って解決できない仕掛けはどうにも。

 そこで、私に足りないものを探しに行く事にしようかと」

 

「外は半終末になっているし、少し心配だなぁ。

 かなり長い間、ずっと大異界に籠っていたんだし」

 

 

 心配げに首を傾けて問う彼に、その男性はニッコリと笑って答えた。

 

 

「なに。手持ちの資金は充分ですし、旧友と連絡をつければ大丈夫でしょう。

 修練仲間の若人たちの成長も楽しみですが、そろそろ外に出てみるのも悪くはないでしょう。

 無理をせずに続けてはきましたが最近、行き詰まりも感じていたのでね」

 

「いや、心配なのは君と外で出会う彼らなんだけど……。

 まあ、いいか。それで、外ではどう名乗るんだい?

 “俺たち”はみんな、通称を決めて名乗っているよ?」

 

「そうですな。本名を名乗る訳にはいきませんからな。

 まあ、そのまま【星杖(せいじょう)】でいいでしょう」

 

「それじゃあ、『星杖ニキ』だね。これからはそう呼ぶよ」

 

「はっは。なにか、こそばゆい呼び方ですな。

 それでは、久しぶりに猫又殿や隠形鬼殿とも手合わせしてから行くとしましょうか」

 

 

 そう言って立ち上がる星杖ニキに、ショタおじも笑って見送る事にしたようだ。

 こう声を掛けて二人は暫しの間、別れる事になった。

 

 

「では、しばしの別れですな。神主殿」

 

「道中、気をつけて星杖ニキ。いや、葛葉の生き残り『葛葉星杖』殿」

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 

 それから、数日後。

 山梨県韮崎市市内にある廃工場の建物に星杖ニキの姿はあった。

 

 彼の眼の前の室内には、すでに斬り伏せた武装したダークサマナー達と怒りに震える天使の姿があった。既に斬り伏せて事切れている彼らのリーダーだったメシアンが喚び出した天使の前に静かに歩み寄った彼は、その中世の騎士のような姿の天使に向けて冷静に語りかけた。          

 

 

「あなた方に一度聞いてみたいと思っていたのですがね。

 山の神であった彼は、いつ頃から全知全能となったのでしょうか?」

 

『おのれ、貴様! 我らが父を侮辱するのかっ!?

 全知全能である大いなる神に向かって、愚かな人がその経歴を問うなど不敬であるぞ!』

 

「……ふむ。ならば、かの神が作った天使がどれほど完璧か確かめてみるとしましょう、か」

 

 

 そう答えた星杖ニキが一瞬の間に杖から刀身を抜き払うと怒り心頭の天使を両断し、言葉を発する間もなくそれはそのままマグナネタイトの塵となり消えていった。そして廃墟の建物の中を見渡し杖をつくと、彼の纏う黒いマントの端を持って震えていた少女に話しかけた。

 

 

「一撃で終わりですか。……終わりましたよ、樋口さん」

 

「……え? レベル36の『天使パワー』ですよ?

 他にもメシア教の過激派だっていたのに、……あれ?」

 

「ああ、見ない方がいいですよ」

 

 

 彼の影に隠れていた彼女が部屋の中を見ると、その中では血まみれで倒れ伏す十数人のリーダーに扇動されテロ活動をしようとしていたダークサマナー達が倒れているのが見えた。スプラッタな光景に思わず口を抑えて、ここまで付き添って来ていた【樋口まどか】はしゃがみ込んだ。

 その彼女の背中を、中の様子が見ないように立ち位置を変えた彼は優しく撫でた。

 

 

「……オエッ、ゴホッ」

 

「ああ、言わない事ではない。大丈夫ですか?」

 

「ゴホッゴホッ。……ごめんなさい、もう平気です」

 

「気丈なお嬢さんだ。もうここには他に誰もいません。

 外に出て、襲撃をかけようとしていた彼らは全員倒したと報告してきて下さい」

 

「……はい」

 

 

 よろけてはいるがしっかりとした足取りで外に出ていく彼女を見送り、彼は数日前の事を思い出していた。

 

 彼女、『樋口まどか』は意気揚々と事務所まで来て混雑のためにどうするか思案していた彼を見かねて最近の事務手続きや依頼の取り方を教えてくれたのが縁で、金策のために依頼を探していた彼女へお礼代わりにいくつか依頼解決に付き合うことにして星杖ニキは同行していた。

 

 山梨支部付近の霊道の結界施設を敷設した派出所に、複数箇所に潜伏していたテロを敢行しようとしたダークサマナー達とそれを扇動した過激派思想のメシアンの情報を穏健派からのリークで突き止めたので奇襲をかけたのが今の件の経緯であった。

 

 複数グループのうちの主力を潰し、彼女がスマホ型COMPで呼んだ応援の一団とすれ違うようにして出てきた彼は、支部の販売機で買ったらしいペットボトルの緑茶味の傷薬を持って走り寄る彼女の元に行った。

 渡された飲み物を飲みつつ彼は、同じようにしてペットボトルの普通の紅茶を飲んでいる彼女に語りかけた。

 

 

「さて、ここは片付きました。次はどこですか?」

 

「……えっと、ちょっと待って下さい」

 

 

 そう言うと彼女は、複数枚あった依頼書の束をめくり1枚の依頼書を取り出した。

 そして、彼に見せつつこう言った。

 

 

「これで最後になります。

 内容は、閉鎖された甲府市の信玄の隠し湯温泉旅館の調査になります。

 周辺から複数人の女性の行方不明者が出ていて、そのほとんどがその旅館の泊まり客や従業員に近くにいた人と多岐にわたるそうです。

 1年前の閉鎖時に警察やこちらから出向いた調査員の調べでは異常は見当たらず、最近になってまた行方不明者が出たので再調査の依頼が来ています」

 

「……ふむ。それは、解決してしまって構わないものでしょうか?」

 

「これは異界が存在するならその位置と内容の調査、または解決できるならしてくれというものです。

 今まで解決したものも殆どはそうだったんですが、星杖ニキさんが皆んな斬り捨てて解決しているんですよ。

 さっきの場所だって、時間稼ぎをして応援を呼ぶのが順当なやり方だったんです!」

 

「はっは。

 目の前に悪漢と悪魔がいるなら斬るのが普通では?

 逡巡していると隙となり死ぬのが、今までいた場所の普通でしたので」

 

「どんな場所にいたのか想像も出来ません、まったく。

 支部の方に車を用意して頂いているのでこれから移動しますよ。星杖ニキさん」

 

「これが済めば、依頼の同行も一段落ですね。では、参りましょうか」

 

 

 呆れ顔の孫のような年齢の彼女に手を引かれて、ニコニコ顔の星杖ニキは引かれるまま彼女の後に付いて行った。

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 

「…と、まあそういう訳でして。ある日、友人に言われたのですよ。

 『一つのものを極めようとするなら、他のものにも目を向けるべきだ』、と。

 だからそれを見つけようと、こうして外に出て武者修行の旅でもしてみようかと思ったんです」

 

「この時期にそんな事を言うなんて、あの実力といい納得しました。

 星杖ニキさんはただのおじいちゃんじゃなくて、掲示板の人達が言う『修羅勢』って人なんですか?」

 

「掲示板は探すのに苦労するのであまり使いませんが、そう言われているようですね。

 彼らは、聖霊神社の異界の悪魔を倒し強くなる修業を人より続ける陽気な人々ですよ。

 少しばかり、他の方達より怪我や死に耐性があるだけの普通の人です」

 

「頭上から切り掛かられても、冷静に相手を斬り倒すような人がですか?

 ……ああ、もう。着いたみたいですよ!」

 

「いやあ。私の失態でしたが、あの鎌鼬の奇襲は素晴らしかった。

 もう着きましたか、降りるとしましょう」

 

  

 それから、2時間後。

 彼らは目的の閉鎖された古い木造の旅館跡へと着いた。

 

 築100年はしているかのような佇まいの昔の屋敷を模した造りのそれは、入り口を封鎖されているにも関わらずその横の金網を広げて人が通り抜けられる隙間が作られていた。

 

 入り口近くで車から降りそのままスタスタと近づく星杖ニキと違って、まどかは手に持ったスマホのCOMPを手にエネミーソナーを働かせ付いて行く。迎えの連絡をしたらまた来る予定の走り去る支部の車を背に、隙間を潜り建物へと歩いて行くそこへソナーが反応を示した。

 

 

「! ……後ろ!? あれ?」

 

『ギギィーーッ!』

 

 

 彼女が振り向くと、庭の池から現れた馬の頭をした半魚人が胸を白い剣によって刺し貫かれていた。その剣はそのままグルリと自身を回転することで傷口を捻ると、それがとどめになり悪魔はマグの塵になって消えていった。

 

 悪魔が消えたことで現れた柄の部分に女性の像が象られた全体的に白一色のブロードソードは、ふわりと星杖ニキの前に行きふわふわと浮いているのだが、あっけに取られていたまどかはその剣を指さして彼に尋ねた。

 

 

「…あの、星杖ニキさん。その宙に浮いている剣は何ですか?」

 

『…………!』

 

「よくやりました、オルガノ。

 ああ、この子ですか? 私のシキガミで【オルガノ】と言います。

 念話で話すので聞こえないかも知れませんが、今までも樋口さんを守っていたんですよ。

 この子は『隠蔽化』のスキルで透明になれるのでね」

 

「……武器の形のシキガミ。あ、それよりも悪魔が襲ってくるなんて!」

 

 

 ポンポンと柄の部分を撫でていた彼は、建物の方に視線をやりため息をついた。

 

 

「あの悪魔は、私も見覚えがありませんでした。

 女性が多数行方不明になっていて、ここしばらくの間誰もここには来ていないようです。

 それで樋口さんを標的に襲って来たという事は、たぶん女性に何かする事でマグを得る悪魔が潜んでいる事になります。

 予定では、中の様子を見てから樋口さんには付いてくるか外で待機してもらうか考えるつもりでしたが、これでは外で待っているのは危険なようですね」

 

「それじゃあ、私はどうしましょう?」

 

「あの悪魔は少し見ただけですが、そこそこ外では強いくらいでした。

 あれが複数いるのならば、今まで通り私の後ろにいれば大丈夫でしょう」

 

「……ええと、それじゃお願いします?」

 

「はい。では、悪魔探知の仕掛けでどこにいるか探しながら行きましょう。

 異界の入り口は、見つかりやすくなっているはずです。

 ここで襲って来たという事は、向こうは女性がいなくて焦れているのでしょうから。

 オルガノも頼みますよ」

 

『…………!』

 

 

 クルクルと彼らの周囲を飛び回る剣のオルガノとスマホを構えているまどかを連れて、星杖ニキは建物の中へと割れた大窓を踏み越えて入って行った。

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 

「……あ。…が…は、ぐ」

 

『ちっ、女が死んだぞ。新しいのは拐えてこないのか!?』

 

『『……ギギィ』』

 

 

 旅館内の枯れた温泉風呂のボイラー室の床に作られた秘密の仕掛け扉を抜けて入る元は初代支配人の秘密の趣味の座敷牢であったそこは、外様の神に紛れて日本に入り込んだ彼ら【妖魔グラシュティン】の巣窟となる異界の入り口となっていた。湿った洞窟状の異界の奥、馬の頭部をした毛深い半魚人姿のグラシュティン達を従えた彼らのリーダーでここの異界の主でもあるそれは憤っていた。

 

 『妖魔グラシュティン』は、イギリスのマン島に伝わる伝承の妖精もしくは馬姿の水妖である。女性の衣服を引きちぎるのが大好きらしく、水辺に潜み一人の女性を襲うか騙して水底に連れて行くという伝承のある悪魔であった。

 

 中世の吟遊詩人が着るような赤い派手な服を纏い手にバイオリンを持った馬耳の男、【妖魔ホム・ムール】は犯し殺した干からびた裸の女を蹴り飛ばすと、それを部屋の片隅にある白骨化した遺体の山に運んでいくグラシュティンを見ながら部屋の中にいる他の十数体はいるそれらに怒鳴りつけた。

 

 『妖魔ホム・ムール』は、同じ地域に伝わる伝承のグラシュティンの一種であるともされるバイオリン引きの妖精である。ただし、この個体は攫った女性達のマグで霊格を上げて、バイオリン引きの伝承のある悪魔の最上位である『魔人デイビット』に成ろうとしていた。

 

 

『ギギィ』

 

『あ? 他の生きているのは仲魔を増やすための者しか残っていない?

 マグが足りないだろうが! さっさと、新しいのを連れて来い!

 もう少しで俺は【魔人】になれるんだぞっ!』

 

『ギッギッ!』

 

 

 怒鳴っていたホム・ムールの所に1体のグラシュティンが走り込んで来た。

 それの話す事に笑みを浮かべると、周囲の連中に号令をかけた。

 

 

『若い女が一人、ジジイを連れて入って来たぞ。

 おい、そこで女の死体を食っているガキ共も連れて行け。

 どうやって見つけたのか知らないが、ジジイは殺して女を連れて来い!』

 

『ギイッ!』

 

『ギッギッ』

 

 

 ホム・ムールの命令で動き出したグラシュティンとガキの一団が移動しようと部屋を出た時、先頭の数体が斬り飛ばされて転がり後続の連中の動きが止まった。そこへ、片手に刀を持った星杖ニキがオルガノとまどかを連れて入って来た。

 

 

「それには及びませんよ。こちらから出向きました。

 さて、あなた方もこれで終わりです」

 

「…星杖ニキさん、アナライズ出来ました。あいつがボスです!

 レベル41、妖魔ホム・ムール。

 耐性は氷結耐性・電撃弱点・破魔無効・呪殺無効です!」

 

「やはり、聞いたことも見たこともない悪魔達ですね。

 どんな手を使うのか少しワクワクします」

 

『呑気に喋りやがって! お前ら、そいつを殺せ!

 おい、生産部屋の応援も呼んでこい!』

 

 

 喚き始めたホム・ムールに、いつもの表情のまま星杖ニキは言葉を返す。

 

 

「それには及びませんと言いましたよ。……ほら」

 

「破ぁーーーー!!」

 

『な、何だ!?』

 

 

 遠くから聞こえた叫び声と共にズシンという振動が此処まで伝わり、動揺する悪魔達に星杖ニキは告げた。

 

 

「いつも、何かトラブルのある場所に駆けつけてくれる頼もしい友人の仕業ですよ。

 ではこちらも。オルガノ、【千烈突き】を。はっ!」

 

『…………!』

 

『『『ギィッ、ギャアァァァッ!!』』』

 

 

 宙に浮かぶ剣であるオルガノが、彼の声に答えて幾重にも分裂し悪魔達を切り刻む。そして、そこへ星杖ニキの【雲耀の太刀】が一閃し、残りのグラシュティンとガキの一団を全て斬り裂き消滅させた。

 何がなんだか判らずに後ずさる唯一生き残ったホム・ムールに、刀を向けて星杖ニキは声を掛けた。

 

 

「さて、あなたの手番ですよ。どうぞ、何かしてみて下さい」

 

『な、舐めやがってぇっ! 狂えっ、【惑乱ラプソディ】!』

 

 

 ホム・ムールは手に持っていたバイオリンをかき鳴らす。

 敵全体を混乱と魅了に堕とし入れる怪しい音楽が星杖ニキとまどかに迫る。が、星杖ニキが刀を一閃させると音がかき消え、代わりに右腕を斬り飛ばされたホム・ムールの絶叫が響き渡った。

 

 

『ギィッ、ガアァァァッ!! お、俺の腕がぁぁぁっ!!』

 

「これは面白い。

 ブレスや魔法は何回も斬りましたが、音の波を斬ったのは初めてです。

 この感覚は忘れないようにしなくては。

 さて、このお礼にあなたにもお見せしましょうか」

 

『……や、やめろ。降参する! 俺は、魔人にっ!』

 

「【気合】。秘剣、【一の太刀・二連】」

 

 

 スッと星杖ニキの愛刀“斬鋼”が一閃し、首を刎ねる。

 首を飛ばされながらも食いしばってまだ生きていたホム・ムールを、返す刀で今度は縦に一閃しホム・ムールを身体諸共に首を両断してとどめを刺し戦いは終わった。

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 

 それから数時間後。

 すっかり日が暮れて山梨支部に戻る車中の中、星杖ニキはまどかに怒られていた。

 支部に預けていた伝言から応援として助けに来てくれた星杖ニキの友人の【Tさんニキ】は、救助された女性達の方に付き添うため「また会おう」と言い残してこの場にはもういなかった。

 

 

「私もいるのに、どうしてあんな危ないやり方をするんですかっ!?

 星杖ニキさん、少しは反省して下さいっ!」

 

「これは返す言葉もありませんね。

 友人の手助けもあったので少し油断をしましたか。

 つい、いつものやり方を続けてしまっていたのは本当に面目ない」

 

「……はあ。無事に終わりましたからもういいです」

 

 

 ため息を付いたまどかは、スマホから見ていた掲示板の情報を素早くメモに書くとそれを星杖ニキに渡した。

 

 

「……ふむ。これは?」

 

「強い悪魔がどこにいるかは分かりませんけど、それを倒した“俺たち”の情報です。

 武者修行の旅なら目的地は必要ですよね?」

 

「なるほど、少し拝見」

 

 

 暫しの間、注意深く読み込みそれを一通り見終わった彼は、嬉しそうに笑い出した。

 

 

「茨木童子を下した拳闘家に、大江山の酒吞童子を倒した僧侶と弟子の特撮ヒーローの少年、次代のライドウと目される少年に14代目の遺産を継承した宮城の少女、神霊クズリュウを倒した新潟の冷気使い、“神の戦車”と互角に戦う呉の支部長、ガイア連合の影の尽力者である磐長姫命の祭司の彼、そして、自衛隊のゴトウとトールマン大使。

 ははは、これはすごい。面白い方達ばかりですね!」

 

「お気に召しましたか、星杖ニキさん?」

 

「ええ、もちろん。

 すぐにでも会いに行って一手、手合わせをお願いしたいですね」

 

 

 ニコニコと喜んでそう言う彼に、まどかはこう答えた。

 

 

「それじゃ、会いに行きましょうか?

 どっかの格闘家の“俺たち”も、『俺より強いやつに会いに行く』そうですし」

 

「ふむ。事前の面会の約束を取り付けないといけませんね。

 地方にいるなら、それなりに忙しいでしょうし」

 

「なら、私が手助けしますね。こういう細かい交渉事は苦手でしょう?」

 

「……よろしいのですか?」

 

「両親は山梨で暮らしているのでいつでも会えますし、私も地方に旅行とかした事ありませんから。

 何より、乗りかかった船です。付いていきますよ」

 

 

 そう答えた彼女に星杖ニキは右手を差し出し、まどかはその手を握って握手を返す。

 

 

「それではよろしく。樋口さん」

 

「名前で呼んで下さい。そうでないなら、『おじいちゃん』と呼びますよ?」

 

「それは追々という事で。では、帰りましょう」

 

「はい!」

 

 

 こうして、終末まで続く彼らの旅は始まる事となるのだった。

 




後書きと設定解説


・主人公

名前:星杖ニキ(星丈・ほしたける)
性別:男性
識別:超人(ガイア連合)・65歳
職業:ガイア連合山梨支部所属退魔剣士
ステータス:レベル71・アタック型(力・速)
耐性:破魔無効・呪殺無効(装備)
スキル:一の太刀(敵複数・1~3回の大威力の物理攻撃。
         低確率で即死を付与する)
    雲耀の太刀
    (敵全体・力依存による大威力の万能属性攻撃)
    気合(自身の次の物理攻撃のダメージを2倍にする)
    無拍子(ダッジカウンター)
    (自身が物理や魔法で攻撃された時、確率で回避し反撃。
     クリティカル率の高い大威力の通常攻撃)
    物理ギガプレロマ(物理攻撃の威力が大きく上昇する)
    剣鬼の反応(敵の先制攻撃率が低下し、
          自身の命中率と回避率が大きく上昇する)
    会心(クリティカル率が上昇する)
    奈落のマスク
    (状態異常になる、即死する確率を大きく減少させる)
    縮地法(夢幻の具足)
    (戦闘時、あらゆる障害物を無視した移動が出来る)
    老練の武芸(貫通)
    (物理攻撃が反射以外の物理相性を無視して貫通する)
    不屈の闘志
    (HPが0になった時、1度だけHP全回復で復活する)
    武道の心得(物理スキル使用時のHP消費量が半分になる)
    鋭い勘(何かに気づく判定(運判定)に+修正で判定できる)
装備:杖刀“斬鋼”(実家から持ち出した妖刀を仕込んだ仕込み杖)
   禍除けのケープマント(魔法回避率が上昇するマント)
   大和手甲(呪殺無効が付与された手甲)
   生命の根付(最大HPが20%上昇する)
   アイテム各種の入った腰のベルトポーチ
詳細:
 前世と現世の両方の殆どを剣術に捧げてきた修羅勢の転生者
 普段、他の人には「星杖(せいじょう)ニキ」と名乗っている
 穏やかな笑みを浮かべた紳士的な振る舞いの好々爺の老人
 戦後すぐの頃に京都で生まれた転生者の初期世代の一人
 葛葉家の分家の傍流が市井に降りて剣術道場を開いていた家の出身
 前世は関東の新富流の道場で老齢で死ぬまで剣術のみに打ち込んでいた
 現世でも家に伝わる退魔も含めた新陰流に偽装した葛葉流を修めている
 己を磨く事と未知の相手との戦闘が一番の趣味である剣術家
 メガテンの基礎知識はあるが興味はなく、家の再興より剣術優先
 現世の家では独身のまま師範代として剣術に打ち込んでいた
 家の修練の過程で覚醒し自衛隊と協力し始めた頃に合流した
 修練相手として悪魔が斬り放題と聞き大異界に入り浸っている
 普段は山梨の大異界の中~下層に籠って強者を求めて徘徊していた
 ショタおじやその使い魔だけでなく強者が育ち戦えるのが楽しみ
 今の一番の目標はショタおじに本気を出させて立ち会う事
 容姿は「ワールドトリガー」の「ヴィザ翁」にそっくり

・関係者

名前:樋口まどか
性別:女性
識別:転生者(ガイア連合)・18歳
職業:高校生
ステータス:レベル14
耐性:破魔無効・呪殺無効(装備)
スキル:ブフ(敵単体・小威力の氷結属性攻撃)
    マハブフ(敵全体・小威力の氷結属性攻撃)
    メディア(味方全体・HP小回復)
    マリンカリン(敵単体・中確率で魅了を付与する)
    氷結ブースター(氷結属性攻撃の威力が上昇する)
装備:改造ブレザー制服(ガイア連合製防具霊装)
   G・ラダーズ(呪殺無効が付与された腕時計型霊装)
   精強のペンダント(睡眠・混乱・魔封・魅了耐性付与)
   COMP(アナライズ、エネミーソナー)
詳細:
 半終末後にガイア連合に参加した女子高校生の転生者
 ボブカットの左目の泣きぼくろが特徴的なクールな容姿の美少女
 何事に対してもクールでシニカルで、常に澄ました佇まいを崩さない
 …はずが諸々の事態が続きその余裕も吹っ飛んで積極的に動いている
 前に起きた祖父の事件後、無事に東京から山梨へと引っ越しできた
 山梨のガイア系企業に両親が就職した関係で高校もこちらに転校
 前の報酬の支払いで個人の蓄えが尽きて依頼を受け金策していた
 今回はその最中に親切心から星杖ニキの行動に巻き込まれた
 男性の好みは年上で、最近はやや枯れ専気味のおじ専

名前:オルガノ
性別:女性
識別:シキガミ・20代相当
職業:星丈の専用シキガミ
ステータス:レベル64
耐性:物理耐性・破魔無効・呪殺無効
スキル:トラフーリ(ボス以外の戦闘から脱出できる)
    トラエスト(瞬時に異界から脱出する事ができる)
    デクンダ(味方全体・能力低下効果を消去する)
    デカジャ(敵全体・能力上昇効果を消去する)
    千烈突き(敵複数・2〜7回の小威力の物理攻撃。
         速の値が対象より高いほど回数増加)
    カバー
     (味方単体・味方のダメージを代わりに受ける)
    エネミーソナー(周囲の敵体反応を感知する)
    迅速の寄せ(素早さと先制攻撃率が上昇する)    
    シキガミ契約のため主人以外からの精神状態異常無効
スキル(汎):念話・飛行・虚偽感知・隠蔽化
詳細:
 星丈が補助のために購入した浮遊する剣型の専用シキガミ
 白い刀身と女性を象った意匠のある白色の柄が付いたブロードソード
 かなり早い速度で飛び回り、主人一人なら乗せて飛行が可能である
 剣なのは彼が姿を指定しなかったので原作を知る製造班が気を利かせた
 彼が連合に来てしばらくしてからの仲で忠実な従士のように接している
 他人とは話そうとしないが主人にはかなり饒舌である

名前:Tさんニキ(寺内匠・てらうちたくみ)
性別:男性
識別:転生者(ガイア連合)・30代
職業:ある仏教宗派の遍歴僧
ステータス:レベル55
耐性:破魔反射・呪殺反射・精神状態異常無効
スキル:破っ(味方単体・HP全回復)
    破ぁ!!(敵単体・力依存による中威力の破魔属性攻撃。
         弱点をついた時、確率で即死させる)
    破ぁーー!!
        (敵全体・力依存による大威力の破魔属性攻撃。
         弱点をついた時、確率で即死させる)
    俺の後ろに隠れろ
      (味方全体・万能以外の攻撃を1回だけ防ぐ障壁を張る)
    破魔貫通
     (吸収・反射以外の耐性を無視して破魔属性攻撃を行える)
    破魔ブースタ(破魔属性攻撃の威力が上昇する)
    仏教知識(アナライズ)
    心眼(遭遇判定の失敗を成功に変更しその場に駆けつける)
装備:破ぁTシャツ(黒地に白抜きで『破』と書かれた服型防具霊装)
   首掛けの数珠(魔法防御力が上昇する)
   親父譲りのお守り(ハマ成功率UPが付与されている)
   実家の梅酒(アムリタと同効果の霊酒)
詳細:
 ネットミーム「寺生まれのTさん」を体現したような能力の転生者
 多くを語らないため生まれた寺や宗派、前世などは不詳のまま
 整った面立ちの中肉中背で細マッチョの年齢不詳な容姿の男性
 アルバイトをしながら日本全国を放浪しており連絡が付きにくい
 旅が趣味であちこちで突然現れては悪魔を調伏して回っている
 稀に各地の支部に現れては依頼を熟したりメンバーを助けている

・アイテム

【杖刀“斬鋼”】
彼の先祖が実家から持ち出して保存していたライドウ用の刀の影打ち
家から持ってきたそれを連合の刀匠に修復と仕込み杖に加工して貰った逸品 
彼が使うと「斬鉄」を越えた「斬鋼」を可能に出来る太刀になる
ゲーム的効果としては斬る対象の防御力を無視して切断が可能になる
ダッジカウンター時、相手の攻撃を切断して斬り払う事も出来る

【禍除けのケープマント】
星杖ニキが身につけているつなぎ目に赤いラインの入った黒いマント霊装
ケープのような襟の付いた部分があり首と口元を隠せるのが特徴 
普通の防具としての機能に魔法回避率の上昇とアナライズ隠蔽効果がある 
デザイン違いにナルトの暁や進撃の調査兵団など各種の漫画の物が販売されている

・敵対者

【妖魔グラシュティン】
レベル17 耐性:氷結耐性・電撃弱点
スキル:ザン(敵単体・小威力の衝撃属性攻撃)
    突撃(敵単体・小威力の物理攻撃)
    ダストマ(敵単体・中確率で幻惑を付与する)
詳細:
 イギリスのマン島に伝わる伝承の妖精もしくは馬姿の水妖
 人の男の姿にもなれるが耳が馬のままで完全に変身できない
 水辺に潜み一人の女性を襲うか騙して水底に連れて行くという
 伝承では女性の衣服を引きちぎるのが大好きらしい
 状態異常の幻惑で五感を狂わしてから連れ去るのが常套手段
 ここにいる彼らは鱗の生えた馬頭人身の半魚人のような姿

【妖魔ホム・ムール】(ボス)
レベル41 耐性:氷結耐性・電撃弱点
         破魔無効・呪殺無効・状態異常耐性
スキル:惑乱ラプソディ
    (敵全体・中確率で魅了、高確率で混乱を付与する)
    異常サバイバ
    (状態異常にする確率が15%増加し、
     自身が死亡するとき、一度だけHP1で蘇生する)
    狂い咲き(状態異常にする確率が20%増加する)
    眷属召喚(配下の妖魔グラシュティンを召喚する)
    ボス補正によりHPMP増加、破魔・呪殺無効、状態異常耐性
詳細:
 ここにいるグラシュティン達のリーダーで最強の個体
 元はグラシュティンの一種であるヴァイオリン弾きのケルトの妖精
 この個体は似通った性質の魔人デイビットの分霊に汚染されたもの
 中世の吟遊詩人の格好とヴァイオリンを持った馬耳の若い男の姿
 この個体は成長すれば新しい魔人デイビットになるのでそれが目標
 そのためグラシュティン達に隠し場の異界に女性を拉致させている
 すでに複数の女性を拉致してマグを吸収しここまで成長できた


明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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