【カオ転三次】『俺たち』閑話集   作:塵塚怪翁

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今回は、とある女性になった転生者のお話。

時系列としては、ガイア連合が自衛隊と協力して日本神の解放を次々に成し遂げている頃です。
あと、TS表現や軽い精神的BL表現に注意。


 とある『女性』転生者の誕生と旅立ち

 

 ここに一人の『少年』がいる。名前は【熊野武彦】、年齢は18歳だ。

 地頭が少しよろしくないが、武骨で真面目な優しい性格で郷土愛には溢れている好青年でもある。

 

 そんな彼は通っていた高校も冬休みに入り、あと少しで卒業も間近である。

 卒業後は他に就職先のないこの町で父のコネで入り込めた地元の役場で働きながら、実家であるここの神社の跡取りになる予定である。

 

 彼が他人と違う所を上げるとするならば、父譲りの身長190cmに届くそのゴリラのような体躯と容姿に、代々伝わっている家伝の剣術『飛燕流』を修めている事と【前世の記憶】がある事ぐらいだろうか。

 前世の記憶と言っても、田舎の不良から長距離トラックの運転手になってそこそこに生きて寝不足で事故を起こして死んだぐらいである。

 

 奈良県の山だらけの辺鄙な地方の田舎町に建っている寂れた神社が彼の家である。

 何やら都会の方では『ガイアグループ』とか言う新興の大企業が、全国の都市部の再開発をしたり全国の空港や港湾の再開発を請け負ったりというニュースもあり、こんなど田舎では関係がないなと友人と噂しあっていたものだ。

 廃仏毀釈や神仏習合に加え、戦後のGHQの統制と焼却で何の神さまを祀っているのかも失われた神社でほとんど惰性で祭られ続けていても、まだ霊能の才のある父や彼には異界に眠る祭神の存在は感じられるために剣術の修行と封印から抜けてくる餓鬼や悪霊を倒していた。

 

 ただ、これといった祭りをする事もないために麓の町からも参拝客は殆どなく、山の中腹まで掛かる石段と長い参道という立地のお陰でさらに誰かが参拝に来るのを阻んでいる状態だった。

 さてそんなある日、年明けの初夢で幼い頃は何度か見ていたが、最近ではあまり見ていなかった妙な夢を見た。

 

 

『武彦よ。武彦よ。目覚めるのです』

 

「ううん、むにゃ。誰だ、うるさいなぁ」

 

『起きろと言っているでしょう?』

 

「おぐぅ!」

 

 

 的確に鳩尾に拳を叩き込まれた衝撃で武彦は飛び起きた。

 声のするの方を見ると、薄ぼんやりとした女性のような影が浮かんでいた。

 どうも殴ったのはそいつらしいと気付いた彼が向き直ると、その女性の影は彼に話しかけて来た。

 

 

『起きましたね、武彦? さあ、妾の話を聞くのです』

 

「え? 幽霊か?」

 

『失敬な。妾はここの祭神である【神功皇后】になるぞ』

 

「……すまない。マイナー過ぎて知らない」

 

『本当に失敬な信者の子孫よな。

 まあ、よい。妾はかの八幡神にも匹敵する戦の女神よ。

 此度に現れたのは、そろそろ幼き頃にした約定を果たして貰うためよ』

 

 

 首をひねって考えるが彼は思い出せなかった。

 ちなみに、彼が勉強が出来なくて大学を諦めたのは関係ない。

 

 

「……約定?」

 

『よいか? 妾の権能的に女性の巫女が必要不可欠なのだ。

 それなのに妾を奉ずるこの家では男しか生まれず、嫁も巫女をやりたがらない。

 その方、小さき頃に夢枕に立った際、可愛いお嫁さんを連れて来て巫女にすると快諾したであろう?

 そして、二人で力を合わせて妾を封印から解放すると。

 その約定、いつになったら果たすのだ?』

 

「記憶に無いんだが??」

 

『記憶にあろうとなかろうと契約はしたので関係ないわ。

 代わりに、こちらはなけなしの力で無病息災にしたであろうが!

 だというのに、その方は彼女はおろか女友達すら家に連れて来ぬではないか。

 挙げ句、鏡面でピコピコ音のなる物の中の女性にうつつを抜かしおって!』

 

「この面で女性にモテるはずがないだろうが!

 近付いただけで怖がられるんだぞっ!」

 

『お主の父は、美人の嫁を拝み倒して連れてきたというのに本当に情けない。

 本霊が遠き地で解放されたというのに、妾はまだ囚われたまま。

 流石の妾も、もう堪忍袋の尾が切れたわ。

 よって分祀の際に、本霊より下賜された秘蔵の宝剣をそなたに渡す。

 そなたの素質ならそれで役目を果たせるであろう。

 妾はもうここまでだ。疾く来るのを待っているぞ』

 

「いや、待て。待って!」

 

 

 叫びながらガバっと跳ね起きた武彦は辺りを見回した。

 辺りはまだ夜明け前で薄暗いが、右手に何か重いものがありガチャリと音を立てた。

 右手を見ると黄金色の柄がついた長剣が目に入った。そして、何故か体格にあった服を着ていたのに圧倒的に袖が長すぎるし、自分の右手もほっそりとして白い肌で小さい。

 

 

「あれ? 何だこれ? ……ある。あ、無い」

 

 

 思わず出した声が、まるでCV『梁田◯之』からCV『平松◯子』に変わったように高いし胸が息苦しい。

 全身をバタバタと触り顔を青ざめると、ぶかぶかのズボンを引きずりつつ立ち上がりタンスの鏡を覗き込んだ。

 そこには、青みがかった黒髪を伸ばした亡くなった母の若い頃にそっくりの美少女が映っていた。

 

 

「な、何だこりゃああああ!」

 

 

 

 ーーーーーーーーーー             

 

 

 

 翌日から『彼女』に変わった『彼』の忙しい日々が始まった。

 

 父の【武蔵】は息子の変わり果てた姿に困惑し、祭神のいる異界の最奥にあるはずの宝剣の【七支刀】の存在に困惑し、祭神の神託にも困惑し応援を呼ぶことにした。

 身内でもある武彦の年上の従姉の【熊野由美】である。

 彼女は地元の役場で働き、時々武彦が行なう異界の探索にも協力していた。

 武蔵は武彦が成人したら婚約者にするつもりだったからとバラし、彼女に全面的な協力を求めた。

 

 由美はそれを受け、表情には出さないが内心狂喜していた。

 実は彼女は、重度の夢女子でカプ厨で百合も薔薇も逝けるヲタクであった。

 滅多にないこんなシチュエーションに喜ばないはずがない。

 『是非とも、この娘を理想の美少女に仕立て上げる』とそう決意し、半ば武彦の意思は横に置き由美は祭神様の御神託を盾に取り彼女の大改造を始めた。

 

 股の間の物が無くなったり胸が出来たりで体の構造が変わったことによる体の操縦に慣れることから始まり、排泄や入浴を含めた日常生活における女性の動き方に、今までのようなやり方と違う剣の振り方にと付きっ切りで特訓を行ない、服を全て買い替えて下着や女性特有の服の着方や最低限の化粧も、この美少女と結ばれる誰かの様子を自分も含めた数多くのシチュを妄想しながら叩き込んだ。 

 

 そして、冬休みが終わる頃には特訓の成果と宝剣の加護のせいか、一通り最低限は女性として過ごす事の出来る『彼女』がいた。

 彼女の名前は『熊野フェイ』とされ、外向きには父の武蔵が外国で作って引き取った隠し子で武彦は武者修行のために日本漫遊へと旅立ったというカバーストーリーになり、小さな町での二人の評判が下がる事になったがそういう事になった。

 

 

 

 ーーーーーーーーーー             

 

 

 

 学校にはもう出なくていいとなっていた『フェイ』は、異界の攻略が終われば元の姿に戻れるかもしれないという考えに一縷の希望を乗せて冬休み明けから異界にひたすらに籠もって進んでいた。

 現実をあまり考え込まないように、ひたすらに両手で剣を振るっていた。

 

 彼女の持つ剣【戦神七支刀】は、別の神社に納められた物と同じ全長74.8cm、剣身の左右に段違いに3本ずつ、6本の枝刃を持つ剣である。ただ、向こうは普通の鉄剣だがこちらは刀身も柄も黄金に輝く何かよく分からない金属で出来ているようだった。鞘は無いので布を巻いて代わりにしていた。

 退魔の力も込められているらしいこの剣は、彼女の剣技もあり並の餓鬼や悪霊なら一刀のもとに切り伏せる事で彼女が異界の奥に進むのを助力していた。

 

 そんな彼女を、武彦の友人だった【木出隆司】は気にかけていた。

 武彦とは昔からの付き合いで生真面目で優等生だった氏子総代の息子の彼は、宮司の息子の武彦に付き合って異界にも潜っていた。

 その友人が居なくなり、代わりに現れた彼女に疑問を持った彼は異界に潜る彼女について行った。

 

 

「【ハマ】!」

 

「【なぎ払い】!」

 

 

 隆司の魔法とフェイの範囲攻撃で周囲にいた餓鬼や悪霊が一掃される。

 もう随分潜っているせいか、彼女らは休憩する事にした。

 荷物からペットボトルの水を取り出した隆司は、汗を拭くために巫女服の胸元を大きく開けて手を突っ込んでいるフェイから視線を逸らしつつ一口飲むと彼女に話しかけた。

 

 

「なあ、熊野さん。今、いいかい?」

 

「あ、えっと、たか……じゃなくて木出くん、何だ?」

 

「君、その剣もすごいけど、剣技の方はどうしたんだい?

 まるで、『飛燕流』の戦い方そのものなんだけど?」

 

「あー、えー、私生まれは(中国といえばそこしか知らない)台湾でね。

 この剣技は、(どこか知らない)生まれ故郷で父がいる時に教えて貰ったんだ。

 こっちに来るまでに、えっと、父にこの剣技を見せたいと思って猛練習していたんだ」

 

「なるほど、そうだったんだ」

 

「ああ、そう(いう事に話し合って決めたから)だよ」

 

 

 考え込む彼の手元を見て、喉が乾いたなと思ったフェイはそのペットボトルを手に取って一口飲んで彼に返した。

 

 

「あ、良いの持ってるんだな。一口貰うから。

 ……ぷはぁ、あ、ありがとな!」

 

「い、いや、これぐらいどうって事はないさ。

 さ、さあ、もう少し奥へ進もう」

 

「ん? まあ、いいか。じゃ、手助けよろしく」

 

 

 何気なく彼女に返されたペットボトルを見て、彼は赤い顔でそれをバッグにしまい込むと彼女に先を促して進み始めた。

 

 

 

 ーーーーーーーーーー             

 

 

 

「か、彼女だ。彼女が帰って来てくれたんだ。 

 もう一度だ、もう一度。今度こそ、彼女を俺のモノして幸せに暮らすんだ。

 へ、へへ、へへへへ」

 

 

 彼らの後をつけている男がいた。

 その中年にも老人にも見えるその男は、フェイの後ろ姿をじっと見つめていた。

 

 この男は若い頃、かつての京都の方で才を鼻にかけ傲慢に振る舞う名家の男だった。

 当主の妾を母に持つも、正室の兄弟より才が上だった。

 そして、奈良の名家の娘で評判の美人とされる女性に目を付け、妻にしてやると声を掛けていた。

 しかし、彼女はある日行方が分からなくなった。

 家人は彼女は別の家に嫁入りしたと彼に伝え、それを信じなかった彼は彼女の実家に談判に行き追い返されたことで本当だと気付いた。

 それに発狂した彼は家を出奔し、術を磨きつつダークサマナーとなりながら彼女の行方を執念深く探し始めた。

 

 彼の成果が実ったのはそれから数年後、彼女が嫁いだ熊野武蔵の息子を出産し、産院から帰るために実家の人間とタクシーに乗る所を偶然に発見したのだ。

 幸せそうに赤子を抱く彼女のそれを見て一層狂気に落ちた彼は、彼女を自分のものにするべく行動した。

 彼女の後をつけて熊野の家を見つけると潜み、異界から来た悪霊の群れを村の者が必死に対処をしている時に遠隔から彼女を呪殺した。

 それに満足した彼は、この町を離れ行方をくらませた。

 

 それから、さらに十数年後。

 ようやく彼らを正面から殺せる力を手にれたその男は、暫く振りにこの町へと戻って来た。

 そして、彼は見つけたあの彼女と瓜二つの娘を。

 そして、彼は決めた。あの娘を今度こそ嫁にして暮らすんだと。

 

 彼は、日本では珍しい【那井居士と名乗る黒い肌の僧侶】から手に入れた悪魔入りの札を握りしめて笑った。

 

 

 

 ーーーーーーーーーー             

 

 

 

 事態が動いたのは、ようやくたどり着いた最奥の封印の前だった。

 これまでの何度も潜った末に、メキメキとついたフェイの実力と細かいことに気が付きフォローする隆司によってたどり着いたのだ。

 ここを守るボスだった強烈な炎を吐く【幽鬼エンク】を傷だらけでようやく倒し、後は封印の要を壊すだけになったその時だった。

 要の石に向けて剣を振りかざしたフェイに向かって、飛びかかり斬りつける者がいた。

 

 

「オンナ、キル!」

 

「熊野くん、危ない!」

 

「隆司っ!?」

 

 

 フェイを突き飛ばし代わりに攻撃を受けた隆司は、そいつの持っていたナイフで深く斬りつけられその場に倒れ込んだ。

 振り向いた彼女が隆司の前に走り寄ると、彼に斬りつけた骸骨の顔をして黒い服を着込んだ子供のような悪魔【外道ジャック・リパー】はひらりと後ろへと跳んだ。

 そして、その後ろから剣を構えるフェイの前に薄笑いを浮かべる男が現れた。

 

 

「へ、へへ。久しぶりだなぁ、『伊織』。

 ようやく会えたなぁ。

 もうどこかに行っちゃ駄目だぞう?」

 

「『伊織』?

 お前、何で母さんの名前を知っているんだ!?」

 

「かあさん? ……ああ、そうかぁ。

 なんだ、伊織の娘だったのかぁ。

 じゃあ、伊織の代わりはお前でいいなぁ。

 おい、あの女を動けないようにしろ。殺すなよ」

 

「メンドウダナ。マア、イイカ」

 

「くっ」

 

 

 鋭く斬り掛かって来るジャック・リパーのナイフを剣で弾き、まだ完全に治っていない火傷を気にしつつ斬りつける。

 ひらりひらりと熟練のナイフ使いのように攻撃するジャック・リパーと切り結ぶこと数合、ついにフェイは太ももを斬られ膝を付いてしまった。

 膝をつく彼女の全身を舐めるように見ながら、男はロープを取り出すとジャック・リパーに命じた。

 

 

「おい、捕まえて持ち帰るんだから剣を取り上げて押さえつけろ」

 

「チッ、ホントウニメンドウダナ」

 

「【アギ】!」

 

 

 ゆっくりと近づく二人に向けて、完全に注意を払われていなかった隆司が魔法を放った。

 気が付かれないように【ディア】で傷を治していた彼は、最後のMPで不意を打つように攻撃した。

 

 

「ギャアアアッ!」

 

「おい!」

 

「今だ、【捨身の一撃】!」

 

「ゲボッ! ココマデカ、モットキリタカッタ」

 

 

 不意を打たれる形で受けた弱点の火炎魔法で怯んだ所を、フェイのスキルの入った一撃を喰らいジャック・リパーはマグネタイトに変わり消えてしまった。気を失った隆司をかばうようにふらふらと立ち上がったフェイは男に剣を向けたが、ニヤニヤ笑いを続ける男は懐からもう一枚札を取り出すと宣言した。

 

 

「あいつ1匹だけと思ったのか?

 残念だったなぁ、使い捨ての札ならもう一枚あるんだよ。

 おい、出ろ。カクエン」

 

「オ、オレノデバンカ?

 アノオンナハ、オカシテイイノカ?」

 

「あいつは俺のだ。

 後で適当に町の方で捕まえてやるから我慢しろ。

 いいから、抑えつけろ」

 

「ワカッタ」

 

 

 やっと一体倒したかと思ったら、さっきの幽鬼と同じくらい強そうな奴が出てきた。

 そう思い絶望する表情のフェイに近づく猿のような姿の【妖獣カクエン】は、男と同じく薄ら笑いを浮かべていたが彼らのさらに後方から飛んできた豪炎とも言うべき火炎に全身を包まれた。

 

 

「【トリスアギオン】!」

 

「ギィアアアア!」

 

「レベル14、物理耐性、火炎耐性、衝撃弱点ねぇ?

 厄介だねぇ。なら、【精密射撃】っと」

 

 

 耐性を貫通する豪炎と綺麗に頭部を撃ち抜いた拳銃の弾丸により、そのままカクエンもマグネタイトへと変わり消えてしまった。

 呆然とそちらを見るフェイを他所に、オリジナルの軍服を着た若い男と拳銃を持った縒れたスーツの男が現れた。

 スーツの男は拳銃を向け、札を失って怒り顔の男に声を掛けた。

 

 

「やっと捕まえたぜ、ストーカー野郎。

 狂ってる癖に逃げ隠れだけは異様に上手いんだよなぁ、お前」

 

「き、貴様ぁ、お、俺の……」

 

「御託はいいから。すずか」

 

「はーい。【ドルミナー】と」

 

 

 スーツの男が眠りの魔法で崩れ落ちる男をロープで拘束し始めたのを見て、脱力するように崩れ落ちたフェイに軍服の男が近づき持っていた魔石を使った。みるみる怪我が治るのを驚いているフェイに、軍服の男が話しかけた。

 

 

「君が『熊野武彦』君だね?

 どうやら間に合ったようで、間に合わなかったようだ。

 私は【大佐ニキ】。もう一人の彼は、【カンユーニキ】だ。

 よろしく、転生者の同胞よ」

 

 

 さて、これで封印からこの地の祭神は解放される事になった。

 狂人のストーカーだったダークサマナーの男は連れて行かれ、情報を抜き出された後はもう彼らに危害を加える事は出来なくなった。

 怪我を負っていたフェイと隆司の二人も、ガイア系列の病院へと護送されて入院となった。

 

 ただ、「これにて一件落着」とならないのが現実である。

 

 『熊野フェイ』と『戦神七支刀』の調査の結果、肉体や魂の変容はもう不可逆となる状態で安定してしまっており、もう元の男に戻るにはシキガミの体に入るなどの人を辞めないといけない事態となっていた。

 転生者が知るべき事も含めて全てを彼女に説明したショタオジは、彼女にどうするかを尋ねた。

 彼女が下した決断は……

 

 

 

 ーーーーーーーーーー             

 

 

 

『当代の宝剣の担い手よ。

 頭古代のままでこんな事を仕出かして本霊に更迭された前の妾の事は、本当にすまなく思っておる。

 しかし、この地の平和はお主が誰かを婿にとって跡継ぎを産まぬと続かないのだ。

 今の妾が言えた義理ではないが、くれぐれ考えておいておくれ?』 

 

「武彦、いやフェイよ。その、身体には慣れたか?

 いや、娘が出来て嬉しいとかそういう意味ではないんだぞ。

 まあ、跡継ぎ云々についてはまだ若いんだしゆっくり考えていいんだぞ。

 それはそれとして、これらの釣書には目を通しておいてくれ、な?」

 

「元気に戻って来てくれて、お姉さん安心したよー。

 これでまた、修行やお務めの合間に『乙女』としての訓練も続けられるね?

 え? もう必要ない?

 そういう事はね、椅子に座る時に無意識に足を広げるのを止められるようになってから言いなさい。

 これからは女の子として生きて行くんだから、オンナとしてはまだまだ努力が足りないのだからね?」

 

 

 結局、彼女は彼女のまま宝剣を振るって故郷を守る道を選んだ。

 ただその結果、祭神様(新)には婿を取って子どもを産むように要請され、父は複雑だがどこか嬉しそうな表情で釣書を勧めてきて、従姉の由美は喜々として彼女を日々女性らしくする事に熱を上げるようになっていた。

 そして、もう一人。

 

 

「熊野、……いや、フェイくん。

 これから次の依頼の場所に行くんだろう?

 準備はいいのか?」

 

「たか……木出。

 ああ、準備は終わってる。

 由美姉や親父にはもう言ったから行こう」

 

 

 どこかおっちょこちょいな所のあるフェイの補佐として、あの日共に死線を潜った木出隆司は異界での修行や町の外に行く依頼の時は一緒に行動する事が多くなっていた。

 『彼』から『彼女』に変わった事ははっきりと言い出せないまま、フェイはモヤモヤとした思いで友人から一番気になる相手へと変わりつつある自分を呼ぶ彼の元へと走って行った。




後書きと設定解説


・主人公

名前:熊野フェイ(熊野武彦)
性別:男性→女性
識別:転生者(ガイア連合)・18歳
職業:高校生
ステータス:レベル12・アタック型(力・速)
耐性:破魔無効・呪殺耐性(装備)
スキル:捨身の一撃(敵単体・中威力の物理攻撃)
    なぎ払い(敵全体・中威力の物理攻撃)
    物理鋭化(物理攻撃のダメージが1.1倍になる)
    武道の心得(物理スキル使用時のHP消費量が半分になる)
    戦神の加護(クリティカル率が大きく上昇する)
装備:戦神七支刀(『神功皇后』の加護が付与された宝剣)
   巫女服(家伝の防具霊装)
   詳細不明のお守り(呪殺耐性の付与された家伝の霊装)
詳細:
 奈良県の山の中にある『神功皇后』を祀る寂れた住吉系神社の跡取り息子だった
 起源がはっきりしない代々伝わる退魔剣術『飛燕流』の後継者でもある
 前世では普通に生きて仕事の途中で交通事故で死んだ男性だった
 自分の封印を破らせる為に祭神の神託でこの剣を手に取らされた
 逸話的に戦いと安産と子宝の女神のため、むくつけき大男から美少女になった
 青みががかった黒髪をポニーテールにした出る所は出た鍛えたスタイルの容姿
 名前の由来は、本名はもう名乗れないのでゲームでよく使っていた名前を使用した
 対外的には父に相談し、父が中国で作った隠し子だったで通している
 容姿の元ネタ:成人向け同人ゲー『戦乱のヘキサ』のフェイ

・アイテム

【戦神七支刀】
この剣は戦後の焼却からも守り抜いた祭神の加護が詰まった家伝の宝剣
ダーク悪魔へのダメージ増加と【豊穣鎮懐】のスキルが付与されている
【豊穣鎮懐】は、逸話の通りに戦場に行っても子宝と安産が保証されるスキル
また、持ち手の“女性”は好きな時に妊娠でき男女の産み分けも出来るようになる
なお、この剣は祭神に選ばれた“女性”の持ち手にのみ装備できる

・関係者

名前:熊野武蔵
性別:男性
識別:異能者・48歳
職業:住吉神社神主/地元役場職員
ステータス:レベル7
耐性:破魔無効
スキル:ヤマオロシ(敵単体・小威力の物理攻撃)
    ハマ(敵単体・低確率で即死付与)
詳細:
 熊野武彦の父親で地元の神主と役場の職員もしている
 息子のゴリラのような体格と容姿は彼譲りであった
 地元の霊能組織の代表でもあり昔の戦いの際に妻を亡くしている
 息子が娘になって亡き妻にそっくりになったので困惑している

名前:熊野由美
性別:女性
識別:異能者・21歳
職業:地元の役場職員
ステータス:Lv3
耐性:破魔無効
スキル:ハマ(敵単体・低確率で即死付与)
詳細:
 熊野武彦の従姉で本来なら成人後に婚約者になるはずだった女性
 武彦が戦神七支刀を取って変わったのは好意的に見ている
 傍で見るタイプの重度の夢女子でカプ厨で百合も薔薇も逝けるヲタク
 容姿の元ネタ:成人向け同人ゲー『戦乱のヘキサ』の自由戦士

名前:木出隆司(きいでたかし)
性別:男性
識別:異能者・18歳
職業:高校生
ステータス:Lv6
耐性:破魔無効 
スキル:アギ(敵単体・小威力の火炎属性攻撃)
    ハマ(敵単体・小威力の破魔属性攻撃。
       弱点を突いた時、確率で即死付与)
    ディア(味方単体・HP小回復)
詳細:
 武彦の友人で一緒に異界に臨んでいた氏子総代の息子
 メガネを掛け短く髪を刈り込んだ生真面目な容姿の優等生
 都会の大学を受験して村おこしのために勉強に出るつもりだった
 容姿の元ネタ:2ch/やる夫スレオリジナル
 
【神功皇后】
神功皇后は、日本武尊の第2子・14代仲哀天皇の皇后
15代応神天皇の母と日本書紀に記される人物
夫の崩御から息子の即位まで摂政として約70年間君臨したとされる
神託に従い、熊襲や三韓征伐を成し遂げた勇ましい武の側面をもつ
また、危険な状況の中でも無事、子を出産し、立派に育て上げた逸話がある
その逸話から安産祈願や子育大願の神としても祀られている
彼女の分霊が今回の元凶で戦犯

・敵対者

名前:不明
性別:男性
識別:異能者・40代?
職業:ダークサマナー
ステータス:レベル14
耐性:破魔無効・呪殺耐性(装備)
スキル:悪魔召喚(カクエン、ジャック・リパー)
    遠当ての術(ザン)
    うしの刻参り(ムド)
装備:悪魔を納めておける札
詳細:
 かつて熊野武彦の母を横恋慕し殺したダークサマナー
 地方の名家の出だが才能だけはかなりあった
 悪魔を使った子供や女性の誘拐や暴行を主な仕事にしていた
 神主の熊野を激しく憎んでいる狂人

【外道ジャック・リパー】
レベル10 耐性:物理耐性・火炎弱点・破魔弱点・呪殺耐性
スキル:テタノスカット(敵単体・中威力の物理攻撃)
    勝利の小息吹(戦闘勝利時、HPが小回復する)
詳細:
 ダークサマナーと祭具で契約している悪魔
 19世紀末のロンドンに実際に出没した連続猟奇殺人犯を模した悪魔

【妖獣カクエン】
レベル14 耐性:物理耐性・火炎耐性・衝撃弱点
スキル:ベノンザッパー(敵全体・中威力の物理攻撃・毒付与)
    アギラオ(敵単体・中威力の火炎攻撃)
    ポズムディ(味方単体・毒消去)
詳細:
 ダークサマナーと祭具で契約している悪魔
 人間の女性を浚い子どもを産ませる伝説のある猿の妖怪

ここの祭神だった分霊はやらかしがカマプアアの件よりアウトだったので、
一発アウトで消滅・回収が決定し、平謝りに謝罪した本霊が新しいのを派遣しました。


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