副題:半終末剣豪伝~葛葉星杖鬼獄変
時系列としては、半終末に突入してしばらくした頃です。
「星杖ニキさん、これ美味しいですよ」
「私はもう入りませんからね。これで充分です。
……ふむ。ずんだ餅を初めて食べましたが、なかなか。緑茶にも合いますね」
宮城支部の食堂でマーボー焼きそばといくらの乗った炊き込みご飯のはらこ飯を食べている【樋口まどか】の横で、数ヶ月前に山梨を出てあちこちに行った【星杖ニキ】はお茶を飲みつつずんだ餅に舌鼓を打っていた。
今彼らは、強者で有名な各地の黒札や支部長に会うべくあちこちを旅していた。
既に彼は、東海道霊山同盟支部の代表の仮面ライダーギルスこと『鷹村ハルカ』や新潟魚沼支部の代表の『田舎ニキ』と会って闘い、今度は宮城支部の『幼女ネキ』に会うべく宮城支部に来ていた。しかし、幼女ネキはちょうど中国へと遠征中で戻るのはしばらく先になると聞き、それならば帰るまで待たせてもらおうとここ宮城県に滞在していた。
同行していた樋口まどかは修行用の異界として最近整備されたという悪路王異界で鍛えつつ宮城観光やグルメを楽しんでおり、星杖ニキはというと彼女の観光に付き合ったり、腕が鈍らない程度にここの異界攻略や悪魔の湧き潰しなどの依頼を受けて過ごしていた。彼女が中国から戻るまでの間とは言え、傍目にはすっかり腰を落ち着けている孫に付き合う祖父にしか見えない二人であった。
食事も終わり一息ついたところで、まどかは星杖ニキに話しかけた。
「そう言えば、あの戦った二人はどうでしたか?」
「流石と言えますね。あれほど楽しい手合わせは久々でしたから」
山梨を出て地方の強者と戦うと決めたのはいいものの、すぐに会って戦うという訳にはいかなかった。
山梨にいた『セツニキ』は彼とすれ違うように修羅勢を率いて大異界の下層と深層の攻略中のために連絡が取れず、呉の支部長はメルカバーの相手で今は手一杯だと戦うのは拒否されていた。
鷹村ハルカと田舎ニキの方はといえば、星杖ニキが山梨の家に死蔵していた中層や下層のフォルマやアイテムを幾つか譲渡する事で話が決まり、お互いに回復薬・シキガミは無しの身一つのルールで戦うことになった。
「半シキガミとなりあのデモニカをまとう彼は将来が楽しみですね。
彼との一戦も片腕は斬れましたが、彼の踵の一撃で背中から胸を抉られて負けましたからね。
『肉を切らせて骨を断つ』。この言葉通りの見事な一撃でした。
避けるのは得意ですが、ああして至近距離で体力の削り合いになるとどうもいけませんね」
「見ているこっちは気が気じゃなかったんですよ。星杖ニキさん」
「私も彼も死の際で踏み留まるスキルがありましたからね。
お互いにそれを使った時点で決着と、決めてありましたから問題はないですよ。
万が一に死んでも、地返し玉も反魂香も用意してありましたので」
「そういう問題じゃないんですよ! ……もう」
「彼には頑張って欲しいものです。強さに終わりはありませんからね。
少なくとも、彼が誰かを守るために強くなる道を歩むのならば私は応援するつもりです。
間違った方向へ行くのならば、周囲の大人が正してやるべきですしね」
「私達も現地民と言われる人達も、みんな同じ日本人ですからそうですね。
あの子の戦い方もすごいですけど、新潟の田舎二キさんの魔法もすごかったです」
正面からの手合わせとなった鷹村ハルカと違い、氷結系術師の田舎二キの方はルールが変更になっていた。
曰く、『耐久スペル』ルールである。
術師の方は相手を殺すつもりで魔法を放ち、受ける側は攻撃はせずに魔法を受けるなり回避するものであった。その決着は、攻撃側のMPが尽きるか受け手のHPが尽きるかで終わるサドンデス方式だった。
結果はと言うと、星杖ニキの粘り勝ちであった。
普段下層の悪魔達の魔法を始めとして同じ修羅勢達の不意打ちの魔法、それに加えショタおじの魔法を斬って無効化した経験を持つ彼の方が有利であった為だ。今まで自分の魔法を受け止めたり躱した相手はいても、刀で斬って無効化するという初めての相手に動揺してMPの配分を間違えたのが彼の敗因であった。最初は渋々と始めた彼も、終わりの方ではかなり悔しがっていたのが星杖ニキには好ましく見えていた。
「田舎二キくんの魔法は、樋口さんも参考になったのではないですか?」
「ええ。あれほどまですごい氷結魔法を見たのは初めてでした。
私には、ちょっと無理だと思います。
でもそれ以上に、飛んで来る魔法を斬り裂いて消してしまう星杖ニキさんの方が非常識です」
「神主殿の受ければ終わる万能魔法を斬り裂く事に比べればまだ簡単でした。
彼の魔法の癖は何度か受ける内に解りましたので斬れました。
次に機会があれば、神主殿や他の修羅勢の彼らのように対策されてそうそう簡単には出来ない様にされるでしょう。
次の機会が楽しみです」
「向こうも忙しいのですから、すぐには無理ですよ。星杖ニキさん」
そうやって昼食後に話している二人に、ここ宮城支部の『レン子ニキ』と呼ばれる男性が現れて切羽詰まった様子で声を掛けてきた。
「ああ、良かったわ。ここにいたのね、星杖ニキ。頼みたいことがあるの」
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「“大嶽丸の復活”とは酒呑童子の復活に比する凶事ですね」
頼まれ事を引き受けた星杖ニキは現地に向かう車の中で、レン子ニキから聞いた凶事の内容を思い出していた。今回は流石に危険が過ぎるという理由で、彼はシキガミのオルガノだけを連れまどかは宮城支部で待つことになっていた。
始まりは、『福島の地で凶事が起きる』という占術の結果を複数の術師が受けた事であった。すぐに調査が開始され、間もなく京都の伏見派出所の藤野から報せが届いた。
『八坂神社の鈴鹿権現が宿敵の大嶽丸が自分のいる鈴鹿山より東の地に現れると気づいた』
その一報を受けて改めて占術や現地の関係者で調べたところ、福島県田村市の【鬼穴】と呼ばれる場所に荷物を持った不審な男が出入りしているのが分かった。この鬼穴と呼ばれる鍾乳洞は朝廷の軍勢に抵抗した地元の豪族『大多鬼丸』の根拠地と言い伝えられる場所で、追い詰められた本人が自害したとされている場所であった。そして、その話も後世に坂上田村麻呂の鬼退治の伝説となって伝わっていた。
しかも、復活した大嶽丸は尋常ではない強さで、付近にいる黒札で対処が出来そうな強さの持ち主が一番近い宮城県にいる幼女ネキであり山梨支部はそれを連絡したが彼女は折り悪く中国へ遠征中であった。その対処に苦慮したレン子ニキは、たまたま滞在中であった星杖ニキに話を持って来たのだった。
「しかし、日本三大妖怪のうちの一つとは。今までどこに眠っていたのやら」
中世日本の平安京で畏れられ、酒呑童子や玉藻前(白面金毛九尾の狐)と並んで日本三大妖怪の一角に数えられる日本最強の鬼神にして異名を“鬼神魔王”ともいう鬼、大嶽丸。
その伝承の起源は、平安初期の政変である『薬子の変』と滋賀県甲賀市の田村神社の文献に起因する。その田村神社の由緒によると「坂上田村麻呂が鈴鹿山の悪鬼を平定した」といい、鈴鹿山の大嶽丸伝承の起源が窺える。
大嶽丸の事を記した『鈴鹿(田村)の草子』によると、鈴鹿峠に現れて暴れる大嶽丸は朝廷の軍勢千人を退ける鬼神であったが、婚姻した鈴鹿御前の助力を受けた坂上田村麻呂に退治されたとされている。
その中で大嶽丸は数日間嵐を呼び雷霆を撃ち炎を降らせて軍勢を退かせ、決戦時には身の丈十丈(約30m)となり、強烈な眼で睨みつけ天地を響かせる唸り声を上げ、氷のような剣や矛を投げつけ数千の鬼に分身したという記述がある。この日本の古典文学の中でも飛び抜けてパワーインフレを起こしているため、日本最強の鬼神魔王とされているのだ。
その資料をめくっていた星杖ニキに運転手が慌てたように声を掛けた。
「あ、あの空を見てください! あそこの下、目的地のはずですよ!」
「……これは何とも禍々しい。
ただ、周囲の車に異常が無いようですので覚醒者にしか見えていないようですね」
見れば車の向かう先と思われる場所から赤い光の柱が天へと立ち、柱が消えた後もその上空で赤黒く発光した雲が渦を巻いているのが彼らには見えた。ただ、一般人にはそれが見えていないためか普通にしているのがかえって不気味であった。
「運転手君、急いでください。
最悪、私があそこで時間を稼いで幼女ネキくんか神主殿の到着を待つ必要があります」
「は、はい! わかりました!」
急加速して道交法を無視した速さで進む車の中で、星杖ニキは突入のための準備を始めていた。
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鍾乳洞の奥にて目覚めた鬼女は、自分が何者であるかを思い出し傍に倒れる木箱を持ったままの男の躯を無視し嗚咽していた。
『……ああ……ああ。……あな悲しや……あな苦しや……ああ……憎い憎い憎い!
……この地に眠る妾と同じ鬼よ……その存念、妾と兄上に捧げよ……。
……その想いその願い……妾達が叶えよう……。
……この世の全て……何もかも……滅びてしまえばいい!』
般若の形相となったその鬼女が顔を上に向けると、その身体から赤いマグネタイトの光の柱が天空へとそそり立ち彼女の兄が眠る赤き花の桜と檜舞台、そこに続く回廊からなる異界が形成されていく。
『兄上、今暫しお待ち下さい。今度こそ、日ノ本を我らの手で滅ぼしましょうぞ』
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「……オルガノ。これで終わりにします」
『…………!』
『『『ガアアアッ!』』』
星杖ニキの【雲陽の太刀】とオルガノの【千烈突き】が、襲い掛かって来ていた大勢のオニやモムノフを斬り払い消滅させ彼らは異界の最下層にある檜舞台へとたどり着いていた。
観光地であった鍾乳洞を抜けて彼らが踏み込んだ異界は、下へ下へと続く回廊が連なる異界であった。幅2m程のまるで平安の頃の渡り廊下のような屋根の付いた木製の回廊が立体的な構造の通路となり、端には柵と軒先には無数の灯籠が飾られそれが最下層にある深紅の花の咲いた桜の木と根本にある檜舞台へと続いていた。
その回廊を群がる鬼達を斬り伏せながら星杖ニキは一気に走り下りて、舞台の中心であるその場所にいる平安時代の貴族の女官が着る着物を纏った二本角の美女の姿の鬼女の前に立っていた。
その彼を憎々しげに見つめながらその女性、【鬼女クスコ】は話し始めた。
『あの回廊を抜けて来るとは……、雑兵共と数多の罠は役にただなんだか。
その方、見れば剣を持っているな?
検非違使の手の者か? それとも、田村丸の手の者か? 答えよ』
「あの罠を仕掛けたのは貴女でしたか。
それとどこの手の者かですか、……強いて言うならば検非違使が近いでしょうか。
それで、貴女はオオタケマルに相違ありませんか?」
『ホホホ。兄上に目通りを求めるとは愚か者よの。
今度こそ、日ノ本を都を滅ぼすのだ。邪魔をするでない、痴れ者!』
そう言うとその鬼女は無言で斬りつけて来た星杖ニキの一閃を掠りながらも躱し、宙へとふわりと浮かび上がった。着物の端が斬り裂かれているのに気づいた鬼女は、文字通りの般若の顔になると宙を舞いながら次々と魔法を放ってきた。
『おのれ! 老いぼれの分際で、よくも帝より頂戴した着物を! 死ぬがいい!』
「見たところ、魔法の強さはだいたい精鋭の修羅勢達の強さほどですか。
レベルだと50前後でしょうか。
彼らと比べると、術の稚拙さが目立ちますがね」
『何故、当たらぬ? 何故、躱せる? 何故、踏み抜かぬ? 老いぼれ!』
「ちょっとしたコツですよ。それにしても、これは少し厄介だ」
星杖ニキの刀の届かぬ間合いの外を飛び回り、鬼女は火炎弾を電撃を降らせ身体を吹き飛ばす勢いの強風を吹かせる魔法を放つ。しかし、星杖ニキは身体をそらし数歩違う位置に跳び刀を振るう事でそれらを全て躱していた。さらにこの舞台の床にも、回廊に仕掛けられていた燃え盛る炎が吹き出すダメージ床や毒床に落とし穴の罠が仕掛けられていたようだが星杖ニキはそれらも避けていた。
それは長い修練で彼が編み出した【縮地法】のスキル、相手との間合いを詰める為の歩法を昇華した『戦闘時、“あらゆる障害物を無視した”移動が出来る』効果を持つそれのお陰であった。それのお陰で彼は床に転がる敵の死骸やアイテムで転倒せず、応用するやり方で床に仕掛けられた罠を回避しダークゾーン内で見えずとも歩き回ることが出来た。
しばらく躱していた星杖ニキも、苛立つ事でさらに狙いが甘くなってきた鬼女を斬るべく行動を開始した。
『ええい! さっさと死んで早う去ねっ!』
「だいたいの動きの癖は読めました。行きますよ、オルガノ」
『どこへ行くと言うのか、老いぼれ! ……なっ!?』
「そこです。【一の太刀】」
『ぎゃあああぁあっ!』
鬼女の宙を舞う動きの癖を掴んだ星杖ニキは、飛び回る剣の姿の専用シキガミのオルガノに声をかける。鬼女と同じ様に宙を舞うオルガノを足場に空へと1回2回と跳んだ星杖ニキは、一撃を加え怯ませてさらに鬼女に痛烈な一撃を与え悲鳴をあげさせた。
斬り飛ばされた右腕の場所をもう一方の腕で押さえ、鬼女は逃げるように後ろに下がり距離を離す。
『嫌じゃ、嫌じゃっ! また、死にとうない!
また、首だけになって封ぜられるのは嫌じゃあ!』
「心配には及びません。魂魄諸共に斬り、地獄へと送り返しましょう。
逝きなさい、【気合】【一の太刀・ニ連】」
『……がっ! ……ああ、あな口惜しや……。……兄上、あにうえぇぇぇ!!』
星杖ニキの刀が二度振るわれ、鬼女の首を刎ねた後に身体諸共に縦に切断する。
しかしその瞬間、断末魔で兄を呼び叫ぶ鬼女の身体が黒い炎に包まれると、その炎は舞台の奥に咲く血染めの花の桜の木に吸収された。しばらくして異界全体に振動が走ると、桜の木が砕けて消滅し一体の鬼の姿が現れた。
檜舞台が崩れ、その下にある岩場に星杖ニキもオルガノに乗りながら着地する。
彼と同じ地面に立ち向かい合うその鬼は、氷で出来た大太刀を持ち二本角に赤銅色の肌をした3mに及ぶ体格の鬼の姿をしていた。下に袴と草履を履き、両腕の手首に金属の輪を付けたその鬼【妖鬼オオタケマル】は、チッと舌打ちをすると大太刀で肩を叩きながら星杖ニキを見下ろし話し出した。
『妹の薬子を殺すとは腕に自信があるようだな、老いぼれ。
ここにあった大多鬼丸の残滓も薬子の魂も飲み干し、俺はだれよりも強くなったぞ!
伏して命乞いをするなら、その魂も喰ってやろう』
「その割には、少々小柄なようですが?
仮にも、藤原長者の血を引く者がここまで堕ちるとは。
それに鈴鹿御前に愛剣を奪われたままで、鬼神ではなくただの鬼のままではね」
『囀るな、老いぼれ!
俺には分かるぞ! もう少し時が経てば、日ノ本は根の国に落ちる!
そうすれば、ここから出て直々に鈴鹿山まで赴き剣を取り戻してあの小生意気な女も犯し尽くしてくれる!
お前らニンゲンも、残らず喰ろうてくれるわ!』
「神主殿や他の方を呼ぶまでもない。その前に、私が貴方を斬り伏せます。
久方ぶりの格上の悪魔との戦い、滾りますね!」
砕けた桜から舞い散る花びらが大嶽丸の目から星杖ニキの姿を隠したその時、彼は瞬時に間合いを詰めて大嶽丸に斬り掛かった。相手の防御力を無視して断つ彼の愛刀の『杖刀“斬鋼”』は、彼に振るわれるまま大嶽丸を斬り裂く。
だが、その手応えの浅さと返す刀で振るわれる大嶽丸の大太刀の一撃から躱すために星杖ニキは後ろへと跳び退った。妙な手応えを感じ注意深くこちらを見る星杖ニキを、大嶽丸はニヤリと嘲笑って大太刀を構え直す。
『カカッ! 俺に侍の刀は通じぬし急所を狙うも不可能よ!
田村麻呂とて、あの女が渡した“ソハヤの剣”が無くば俺の首は断てなかっただろうよ!
ましてや、老いぼれの鈍らに斬れるものかっ!』
「この手応えは、他の物理相性でなく物理耐性のもの。
あとは、何がしかの能力で急所狙いを封じているというところですか。
それだけ判れば充分。地道に削るだけです」
『抜かせ、老いぼれ! 【狂気の暴虐】!』
大嶽丸の大太刀が二度三度と星杖ニキに振るわれる。
一撃で胴体を寸断できる勢いのそれを、星杖ニキは躱しいなし受けるダメージを減らす。
返す刀で一撃を加えるも、あの鬼の言う通りにいつもより与えるダメージが少ない。
『どうした手詰まりか、老いぼれ!』
「まだまだこれからです」
一合ニ合三合四合と、スキルも混じえた剣術の振り方で大太刀を振るう大嶽丸と躱しいなし逸らし大太刀を掻い潜りながら楽しげに刀を振るう星杖ニキ。しばらく続いた何合も続くその剣戟にも転機が訪れた。
『しぶとい老いぼれが!』
「ぬっ!?」
『死ねっ、【氷龍撃】!』
「……ぐっ」
床に降り積もる桜の花びらを大嶽丸は蹴り上げて星杖ニキの目潰しに使い、その隙に作った氷槍を掴むと星杖ニキに投げつける。氷の槍は星杖ニキの腹を貫くとそのまま凍りつかせ始め彼の動きを止めた。
勝利を確信し、大嶽丸は大太刀を振り上げ渾身の力を込めて振り下ろす。
『勝った、逝ねい! 【怪力乱神】!』
確かに両断した手応えと、宙に舞う桜の花びらと彼の黒いマントに笑みを浮かべる大嶽丸。
しかし、その笑みも長くは続かない。
「【雲耀の太刀】」
『ぎっ、ぐおおおおっ!? お、俺の指がっ!?』
「【不屈の闘志】を使わせるとは、流石。ですが、これまでです」
大太刀を振り下ろしていた大嶽丸の両手の指を数本斬り飛ばした星杖ニキは、右手で刀を構え左手で血まみれでボロボロになった防具を脱いだ。叩き斬られ踏み止まった瞬間に彼は後ろに下がって大獄丸の死角に移動すると、それでも離さなかった刀を一閃させたのだ。
大太刀を取り落とし刀を構える星杖ニキを見た大嶽丸は不利を悟り、周囲に声を掛け鬼達を呼び出そうとした。
『お、お前ら! 怪我が治るまでこいつを押さえろぉぉぉっ!!』
『…………!』
その声で周囲に召喚された鬼達も、不意に虚空に現れたオルガノの【千烈突き】で切り刻まれて消える。
こちらに歩み寄る星杖ニキと鬼達を斬り刻みこちらに浮遊して近づく剣のオルガノを見て、絶望の表情を浮かべながら大嶽丸は後ずさった。
『おかしいぞ、おかしいだろう! 田村麻呂の奴は寿命ではるか昔に死んでいる!
なぜ、千年以上もたったこの時代にこんな武人がいるのだっ!?
なぜ、黄泉帰ってすぐに俺の前に現れるっ!?
俺は“鬼神魔王”なのだぞっ!!』
口元の血を拭い、その言葉に星杖ニキは言った。
「鬼は人間に退治されるものです。貴方もその例外ではなかっただけです。
妹の後を追いなさい、大嶽丸いや『藤原仲成』。【気合】【一の太刀・三連】」
そう言うと、星杖ニキは大嶽丸に向けて素早く刀を三度振るった。
ーーーーーーーーーー
その後の事を語ろう。
大嶽丸を倒しその異界の崩壊を見届けた星杖ニキは、オルガノの【トラエスト】で脱出した。
上空にあった不吉な雲の渦も消えて、空は満点の星空となっていた。
大嶽丸とその妹の鬼女は消え、この地も元の安寧に戻るだろう。
星杖ニキは、地元のガイア連合関係者と共に迎えに来た樋口まどかにその惨状を見られ泣きながら怒る彼女に手を引かれ宮城支部に戻った。
その数週間後。
星杖ニキは悪路王異界の中で中国から帰還した幼女ネキと対峙していた。それは、彼がこの件の報酬で望んだのが、彼女との全力の果たし合いであったからだ。
まどかを始めとする両者の関係する者達や悪魔と神々もこの戦いを見物していた。
この死合いの審判として取り仕切っていたここの異界にいるスカアハが、二人に声を掛けそれに応じて二人も前に進んで名乗った。
『両者、前へ!』
「……ふむ。手合わせ感謝します、幼女ネキ。では、葛葉流退魔剣士『葛葉星杖』参る!」
「……! 14代目の遺産を受け継ぎし『鵺原リン』参る!」
『それでは、いざ尋常に勝負!』
後書きと設定解説
・主人公
名前:星杖ニキ(星丈・ほしたける)
性別:男性
識別:超人(ガイア連合)・65歳
職業:ガイア連合山梨支部所属退魔剣士
ステータス:レベル72・アタック型(力・速)
耐性:破魔無効・呪殺無効(装備)
スキル:一の太刀(敵複数・1~3回の大威力の物理攻撃。
低確率で即死を付与する)
雲耀の太刀
(敵全体・力依存による大威力の万能属性攻撃)
気合(自身の次の物理攻撃のダメージを2倍にする)
無拍子(ダッジカウンター)
(自身が物理や魔法で攻撃された時、確率で回避し反撃。
クリティカル率の高い大威力の通常攻撃)
物理ギガプレロマ(物理攻撃の威力が大きく上昇する)
剣鬼の反応(敵の先制攻撃率が低下し、
自身の命中率と回避率が大きく上昇する)
会心(クリティカル率が上昇する)
奈落のマスク
(状態異常になる、即死する確率を大きく減少させる)
縮地法(夢幻の具足)
(戦闘時、あらゆる障害物を無視した移動が出来る)
老練の武芸(貫通)
(物理攻撃が反射以外の物理相性を無視して貫通する)
不屈の闘志
(HPが0になった時、1度だけHP全回復で復活する)
武道の心得(物理スキル使用時のHP消費量が半分になる)
鋭い勘(何かに気づく判定(運判定)に+修正で判定できる)
装備:杖刀“斬鋼”(実家から持ち出した妖刀を仕込んだ仕込み杖)
禍除けのケープマント(魔法回避率が上昇するマント)
大和手甲(呪殺無効が付与された手甲)
生命の根付(最大HPが20%上昇する)
アイテム各種の入った腰のベルトポーチ
詳細:
前世と現世の両方の殆どを剣術に捧げてきた修羅勢の転生者
普段、他の人には「星杖(せいじょう)ニキ」と名乗っている
穏やかな笑みを浮かべた紳士的な振る舞いの好々爺の老人
戦後すぐの頃に京都で生まれた転生者の初期世代の一人
葛葉家の分家の傍流が市井に降りて剣術道場を開いていた家の出身
前世は関東の新富流の道場で老齢で死ぬまで剣術のみに打ち込んでいた
現世でも家に伝わる退魔も含めた新陰流に偽装した葛葉流を修めている
己を磨く事と未知の相手との戦闘が一番の趣味である剣術家
メガテンの基礎知識はあるが興味はなく、家の再興より剣術優先
現世の家では独身のまま師範代として剣術に打ち込んでいた
家の修練の過程で覚醒し自衛隊と協力し始めた頃に合流した
現在は日本全国津々浦々を強者を求めて行脚の旅を続けている
今回は宮城支部にいる時に起きた異変に遭遇し向かった
容姿は「ワールドトリガー」の「ヴィザ翁」にそっくり
【杖刀“斬鋼”】
彼の先祖が実家から持ち出して保存していたライドウ用の刀の影打ち
家から持ってきたそれを連合の刀匠に修復と仕込み杖に加工して貰った逸品
彼が使うと「斬鉄」を越えた「斬鋼」を可能に出来る太刀になる
ゲーム的効果としては斬る対象の防御力を無視して切断が可能になる
ダッジカウンター時、相手の攻撃を切断して斬り払う事も出来る
【禍除けのケープマント】
星杖ニキが身につけているつなぎ目に赤いラインの入った黒いマント霊装
ケープのような襟の付いた部分があり首と口元を隠せるのが特徴
普通の防具としての機能に魔法回避率の上昇とアナライズ隠蔽効果がある
デザイン違いにナルトの暁や進撃の調査兵団など各種の漫画の物が販売されている
・関係者
名前:樋口まどか
性別:女性
識別:転生者(ガイア連合)・18歳
職業:ガイア連合山梨支部所属黒札
ステータス:レベル17
耐性:破魔無効・呪殺無効(装備)
スキル:ブフ(敵単体・小威力の氷結属性攻撃)
マハブフ(敵全体・小威力の氷結属性攻撃)
メディア(味方全体・HP小回復)
マリンカリン(敵単体・中確率で魅了を付与する)
氷結ブースター(氷結属性攻撃の威力が上昇する)
装備:改造ブレザー制服(ガイア連合製防具霊装)
G・ラダーズ(呪殺無効が付与された腕時計型霊装)
精強のペンダント(睡眠・混乱・魔封・魅了耐性付与)
COMP(アナライズ、エネミーソナー)
詳細:
半終末後にガイア連合に参加した女子高校生の転生者
ボブカットの左目の泣きぼくろが特徴的なクールな容姿の美少女
何事に対してもクールでシニカルで、常に澄ました佇まいを崩さない
…はずが諸々の事態が続きその余裕も吹っ飛んで積極的に動いている
前に起きた祖父の事件後、無事に東京から山梨へと引っ越しできた
山梨のガイア系企業に両親が就職した関係で高校もこちらに転校
男性の好みは年上で、最近はやや枯れ専気味のおじ専
専用シキガミはこの旅が落ち着いてからにしようと思っている
高校も卒業し星杖ニキの旅に同行し少しづつ強くなっている
名前:オルガノ
性別:女性
識別:シキガミ・20代相当
職業:星丈の専用シキガミ
ステータス:レベル64
耐性:物理耐性・破魔無効・呪殺無効
スキル:トラフーリ(ボス以外の戦闘から脱出できる)
トラエスト(瞬時に異界から脱出する事ができる)
デクンダ(味方全体・能力低下効果を消去する)
デカジャ(敵全体・能力上昇効果を消去する)
千烈突き(敵複数・2〜7回の小威力の物理攻撃。
速の値が対象より高いほど回数増加)
カバー
(味方単体・味方のダメージを代わりに受ける)
エネミーソナー(周囲の敵体反応を感知する)
迅速の寄せ(素早さと先制攻撃率が上昇する)
シキガミ契約のため主人以外からの精神状態異常無効
スキル(汎):念話・飛行・虚偽感知・隠蔽化
詳細:
星丈が補助のために購入した浮遊する剣型の専用シキガミ
白い刀身と女性を象った意匠のある白色の柄が付いたブロードソード
かなり早い速度で飛び回り、主人一人なら乗せて飛行が可能である
剣なのは彼が姿を指定しなかったので原作を知る製造班が気を利かせた
彼が連合に来てしばらくしてからの仲で忠実な従士のように接している
他人とは話そうとしないが主人にはかなり饒舌である
最近は樋口まどかの護衛を命じられて少し不満気味
・敵対者
【鬼女クスコ】
レベル52 耐性:火炎無効・衝撃弱点・破魔耐性・呪殺反射
スキル:アギラオ(敵単体・中威力の火炎属性攻撃)
ジオンガ(敵単体・中威力の電撃属性攻撃)
マハザンマ(敵全体・中威力の衝撃属性攻撃)
コロシの愉悦(クリティカル率が上昇する)
変化(生前の女性の姿に変化できる)
詳細:
三重県と滋賀県の県境にある鈴鹿山にいたという伝説の鬼
日本3大妖怪の一つに数えられ、伝承では田村麻呂に首を落とされている
大嶽丸の伝承は元々は「薬子の変」と言う政変が伝説化したもの
実は大嶽丸は二人組で先に討たれたのは薬子の兄の藤原仲成の怨霊
この個体は封印されていた妹の藤原薬子の怨霊が変化した方の鬼
鈴鹿御前の夫の坂上田村麻呂に兄共々鬼の首を落とされ退治されている
伝説の「宇治の宝蔵」に封印されていたがメシア教に解き放たれた
宝蔵は戦後のメシア教により暴かれ焼失した後、封印物も失われた
彼女の首はダークサマナーが金銭目的で持ち出しそのお陰で復活した
人の世への復讐と憎悪に燃え日ノ本を滅ぼしたがっている
能面のように整った冷たい顔の平安調の着物を着た二本角の美女
福島県の鬼穴に眠る同じ鬼の大多鬼丸を喰らいこの強さとなった
【妖鬼オオタケマル】(ボス)
レベル76 耐性:物理耐性・火炎弱点・氷結耐性・破魔無効・呪殺無効
スキル:怪力乱神(敵単体・大威力の物理攻撃)
狂気の暴虐(敵複数・1~3回の中威力の物理攻撃。
低確率で恐怖状態を付与する)
氷龍撃(敵単体・力依存の中威力の氷結属性攻撃)
ミナゴロシの愉悦(クリティカル率が大きく上昇する)
物理ブースタ(物理攻撃の威力が上昇する)
変化(ニンゲンの男性の姿に変化できる)
鬼神魔王の理
(即死効果とクリティカルを無効化する。
また、最大HPが上昇する)
眷属召喚
(分身ではなく配下となる鬼を召喚する)
ボス補正によりHPMP増加、破魔・呪殺無効、状態異常耐性
詳細:
三重県と滋賀県の県境にある鈴鹿山にいたという伝説の“鬼神魔王”
日本3大妖怪の一つに数えられ、伝承では田村麻呂に首を落とされている
大嶽丸の伝承は元々は「薬子の変」と言う政変が伝説化したもの
後の創作により東北各地にも坂上田村麻呂伝説と共に広がっている
実は大嶽丸は二人組で先に討たれたのは薬子の兄の藤原仲成の怨霊
この個体はその妹の藤原薬子によって召喚され黄泉帰った兄の方の鬼
両手持ちの武器を持ち二本角に赤銅色の肌をした3mに及ぶ体格の鬼の姿
福島県の鬼穴に眠る同じ鬼の大多鬼丸を喰らいこの強さとなった
鈴鹿御前に愛刀の「三明の剣」は奪われたままのため本来の力は出せない
幼女ネキ・レン子ニキ・スカアハ:
タマヤ与太郎さん著「【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策」より出典
鷹村ハルカ:
ボンコッツさん著「霊能力者、鷹村ハルカは改造人間である。」より出典
田舎ニキ:
名無しのレイさん著「【カオ転三次】故郷防衛を頑張る俺たち」より出典
セツニキ:
Lilyalaさん著「【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 」より出典
呉の支部長:
石は転がるさん著「【カオ転三次】DRUG FATE」より出典
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