時系列としては、半終末に突入してしばらくした頃です。
若干のBL表現に注意。
「おはよう。今日はどうしましょうか?」
「翔太! てめぇ、どうしてあの娘を指名しやがった!?」
「それはこっちの台詞だぞ、達也!
毎度毎度、風俗嬢が被るから考え抜いて指名したのに!
この変態野郎が!」
ここは地元霊能組織として対魔忍が、支部の所有異界にミナミィネキの夜魔異界がある群馬県のとある地方支部であった。そこにある人外ハンター協会の軽食コーナーで、二人の男が言い争いをしていた。
朝から人のいる場所で言い争いを続けるリーダーで前衛担当の【佐藤達也(さとうたつや)】と後衛で火炎魔法が得意な頭を茶髪に染めている【鈴木翔太(すずきしょうた)】が争うのを見て、挨拶しようとして面食らった【井筒菊之丞(いづつきくのじょう)】は一人だけ冷静に飲み物を飲んでいた坊主頭で回復担当の【田中拓也(たなかたくや)】に彼らを指さして尋ねた。
「彼らはどうしたんです?」
「ああ。この間、新潟の大規模戦に参加して功績を上げただろ?
その報酬でお前の面倒を見ている黒札の『プレシア』さんに山梨旅行をもらった時に、黒札御用達の娼館に行った事で喧嘩しているんだよ」
「新潟って、なんであんなに大規模な襲撃が何度も起きるんでしょうね?
……それはいいとして、悪魔娼館のどこかに不満でも?
一昨日、旅行から帰ってきたばかりじゃないですか」
「それがな……」
説明しようとする拓也に達也と翔太が怒鳴った。
「「拓也! 菊之丞に言うんじゃねぇ!」」
「『“性別自在の”アルプ』ちゃんだっけ?
それぞれ別の日に行った時に指名して“兄弟”になっちまったんだと」
「……なるほど。被るの、3回目でしたっけ?」
「「ああああああっ!」」
止める二人に構わずネタバラシをする拓也と冷静に受け止める菊之丞に、二人はまた叫んだ。
「「くそう、バラしやがって! お前なんかチームから追放だ!」」
ーーーーーーーーーー
彼らのチームは地元の幼馴染の4人が組んでいるもので、ついこの前近郊の新潟で起きた悪魔の大規模襲撃で成果を上げてランクをシルバーになれたお祝いに山梨支部へ2泊3日の旅行をしてきたばかりだった。
前衛担当で切り込み隊長のリーダーである佐藤達也、火炎魔法と呪殺が使える後衛の鈴木翔太、破魔と回復役で寺生まれの田中拓也に、黒札に気に入られて大型のデモニカ【ビッグダディ・バウンサー】を手に入れデバフ係から前衛の切り札に化けた井筒菊之丞の高校生の4人組のチームであった。
4人ともガイア連合基準のレベルが10に達する優秀なメンバーで、先の戦いの際でも菊之丞のデモニカの一撃でレベル20になる悪魔を打ち倒した大殊勲を上げていた。そのため菊之丞の後見をしているプレシアは、友人と山梨を回りたいという菊之丞の希望から彼ら全員を山梨旅行に招待するという褒美をあげていた。
そして良かれと思って、達也と拓也に翔太の3人に旅行の目玉としてミナミィネキの悪魔娼館に招待したことがチームの分裂の危機を向かえる原因となっていた。
二人に怒鳴られた事により周囲にいる連中の視線も無視して、青筋を立てた拓也は立ち上がるとあわわと止めようとする菊之丞を手で制してじろりと彼らを睨んだ。
「……誰が誰を追放するだって?」
「「お前だよお前、拓也だ!」」
ビシッと指差す達也と翔太に、フンと鼻で笑って言い返す拓也。
「二人とも、3回も兄弟になる運命の真の仲間なんだから言い争いは止めろよ。
息もぴったりで、菊之丞も驚いているじゃないか。
きっとすごい絆だな、幼馴染で別の意味で兄弟だぞ。仲良くしろよ」
「……呆れているんですけど」
「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」」
呆れている菊之丞だが、二人が同じ嬢を指名した原因は彼にあった。
菊之丞の容姿は身長153cm体重50kg台の短髪の美少女にしか見えないものである。彼の世話をするプレシアの入念な手入れによってムダ毛は全て除去され、定期的に美容院に連れて行かれ薄く化粧までされている彼は女性の服を着れば人目には女性にしか見ないだろう。
その彼が手に入れた大型デモニカのビッグダディ・バウンサー搭乗時には、体のラインが浮き出る黒のライダースーツのようなボディスーツを着て乗り込むのだ。女っ気のない集団の中で長時間を過ごし、戦いの影響で昂った二人の性癖をかき乱すには充分な色気が彼のその姿にはあったのだ。
かくして、彼に似た嬢を指名した悶絶して叫ぶ二人に拓也は話を続ける。
「そもそも追放されるなら、翔太の方が先だろ?」
「……えっ、俺?」
名指しされるとは思っていなかった翔太が自分を指差す。
それに答える形で拓也は話を続ける。
「追放と言うより人生の墓場行きの方が正しいな、翔太」
「何を言っているんだよ、拓也」
「お前が初の風俗で誰を指名しようが関係ないが、知ってるか?
……やれば出来るんだよ」
「……え?」
「親父はさ、厳しい戒律の宗派の住職だけに子供には選択の自由って奴を尊重していたんだ。
後を継ぐのも恋愛も、本人の意志が重要だってな。
今回の戦いに行く前だよな、『戦いでいつ死ぬ運命が待っているかもしれません。僕に勇気を授けてください』だっけか?
三十路手前の嫁き遅れになりかけな姉貴を孕ましてくれてありがとうってな!」
拓也の姉『瑞希(みずき)』は地方の女子アナに応募できる程には美人であったが、現在は女子アナの採用に落ちて家で家事手伝いをしていた。出会うきっかけは翔太の家庭教師で、28歳と10歳差であるが距離が縮まり関係に至ったのである。
その後、菊之丞の色香に迷い悪魔娼館で似た嬢を指名する一幕もあったが、それはそれこれはこれである。
理解がおよび、血の気が引いて顔を青くした翔太に拓也は告げる。
「……孕んだのは初耳なんだが?」
「関係を持ったのは戦いの前だから1ヶ月ちょっと前か?
月末に月のものが来ないから調べたら、検査薬が陽性だったそうだぞ。
実家の寺に行こうか、翔太義兄さん。坊主の修行をしないとな」
「何でこんな事にーっ!」
「簡単だよ。避妊もしないでヤッたからだよ、義兄さん」
そこまで拓也が言った所で、今度は達也が口を出した。
「おっと、行く前に受付にいるお前のお客さんに会っていけよ拓也」
「あぁん? 今は客に構っている…暇…は…」
「拓也さん!」
拓也の視線の先にいるのは一人の女性であった。
その女性『夏羽(なつは)』はここの支部に資金面で色々と支援している地元の大きな会社の社長の娘であり、拓也の実家の寺の大口スポンサーの檀家でもあった。
近寄って来る彼女を示し、達也はニヤリと笑う。
「なあ、拓也。
彼女とは家同士で決まった許嫁なんだって聞いたぞ。
俺とは面識はなかったが、お前の幼馴染で家族ぐるみの付き合いだそうじゃないか」
「……彼女を呼んだのはお前か? 達也」
「連絡したのは確かさ。
それと翔太の事は言えないぞ、拓也。
同じような事を言って【僧侶枠】に及んだのは彼女に聞いているぞ」
今度は翔太でなく青ざめる拓也であったが、近寄ってきた夏羽が彼の腕を取りニコリと微笑む。
「拓也さん、これでお父様たちにも納得してもらって結納が出来ますわ。
何しろ、ガイア連合のシルバーランクは私達には栄誉とでも言うべきものですわ。
さあ、さっそくお父様に会いに行きましょう」
「……そうか。10代で独身とはおさらばか。
それはそうとおい、翔太義兄さん。どこに行こうとしてやがる?」
「…………ひっ!?」
この隙にと逃げ出そうとしていた翔太を捕まえると、夏羽とその護衛に囲まれ拓也と翔太は出荷されて行った。関わり合いになりたくないと周囲が視線を逸らす中、それを見届けると勝利を手にしたようにガッツポーズを取る達也は思った。
(これで邪魔な二人は消えた!
菊之丞と二人だけでも、菊之丞のデモニカがあればなんとか出来る。
そして、菊之丞は…キクノの尻は俺が独占できるんだ!
それに噂じゃ、ガイア連合では完全な女性に変われる性転換手術もあるらしい。
子供が欲しくなったら、キクノを口説いた後に相談すればいいな!)
一人、希望の未来にレディゴーな妄想に耽っていた達也に、彼の愛しの菊之丞が話しかけてきた。
「何かに浸っているところ悪いけど、達也にも会いに来ている人がいますよ」
「……ん、誰だ? これからの活動を菊之丞と相談しないといけないのに…」
「達也。久しぶりね?」
「……げっ、南!?」
達也の視線の先に立っていた女性である『南(みなみ)』は、地元では中堅どころの神社の家の娘でご多分に漏れず達也の幼馴染である。
地元ではいち早くガイア連合に恭順した彼女の家は、黒札の女性の庇護下にあるらしい菊之丞よりも落ちるがそれでも充分に有能な達也にアプローチを続けていた女性であった。
菊之丞とも顔見知りの今までずっと不快にならないギリギリの距離感で接触し続けていたその女性に、長年の友情と最近自分の尻にばかり熱い視線が行く彼の態度を天秤に乗せ考えた菊之丞は達也を引き渡すことに決めた。
「やあ久しぶり、南さん。
彼、功績を上げてシルバーランクになる程優秀になったんですよ。
こんな彼、魅力的だとは思いませんか?」
「…! まあ、それはすごいね。
ぜひとも、実家でお話を伺いたいな。達也くん」
「な、何を言っているんだよ、キクノ!? 自分はこいつの家には用は……」
「【ドルミナー】。自分はノーマルなんで、変な愛称で呼ばないでください」
「……ふへっ」
菊之丞の発言に慌てた達也は、思わず失言をしてしまった。
それにより完全に同情の余地も無くなった達也を、菊之丞は眠りの魔法で眠らせると南に話しかけた。
「こんなのでも一応は友人で幼馴染ですので、あまり手荒にしたらだめですよ。南さん」
「分かっているわよ、菊くん。今度、神社に併設して造った喫茶店にも遊びに来てね」
「それじゃ、このバカを頼みます」
「ええ、それじゃ」
眠ったままの達也を家人と共に運んでいく南を見送り、ウーンと伸びをすると彼は家に帰るべく歩き出した。
「あっという間にチームが無くなったなぁ。とりあえず、プレシアに会いに行こう」
こうして、金札に偽装していた実は黒札であった井筒菊之丞を含めた、地元では将来が有望視されていたパーティーから一人残らず追放されてしまいましたとさ。
どっとはらい。
後書きと設定解説
・主人公
名前:井筒菊之丞(いづつきくのじょう)
性別:男性
識別:転生者(ガイア連合)・18歳
職業:ガイア連合デビルバスター
ステータス:レベル13(デモニカ:レベル13)
耐性:破魔無効(デモニカ:物理耐性・氷結耐性・呪殺耐性)
スキル:ドリルアーム(敵単体・1~4回の小威力の物理攻撃)
アナライズ(名前・レベル・耐性が判る)
エネミーソナー(周囲の悪魔の敵対反応を検知する)
小気功(戦闘中、徐々にMPが微量回復する)
水中行動(潜水服型のため水中行動が自在な機能)
※以上がデモニカ装備時の使用可能スキル
マリンカリン(敵単体・中確率で魅了を付与する)
ドルミナー(敵単体・中確率で睡眠を付与する)
スクカジャ
(味方全体・命中、回避率が1段階上昇する)
装備:ビッグダディ・バウンサー(専用デモニカ)
黒のボディスーツ(革製ライダースーツなガイア連合製防具)
詳細:
小柄な女性にしか見えない容姿の成人である男性の転生者
身長が153cm体重が50kg台の美少女にしか見えない姿をしている
現世では一般の生まれでトラブル回避のために金札を装っている
前世は特に言う事のない独身で中年の時に事故死した普通の男性だった
両親は健在で地元の地方支部保護下の企業で働いている
非力な自分を何とかするため大型デモニカを購入し使用している
普段は幼馴染3人組と一緒にチームを組んでいた
シキガミ嫁は「リリカルなのは」の「プレシア・テスタロッサ」にそっくり
【ビッグダディ・バウンサー】
海底活動を視野に入れたデモニカタイプ「ビッグダディ」の一つ
これは小柄な松岡菊之丞用に手に入れた専用デモニカ
古めかしいデザインの潜水球に手足が生えたような極めて頑丈なデモニカ
MPを消費して回転する右腕に装備したドリルアームがメイン武装
ドリルアームは展開して右手を出すことも可能な仕組み
深海でも行動可能な装甲の厚さと水中でも素早く動ける可動性が売り
デザインはバイオショックの同名のエネミーの姿と同じ
・関係者
名前:佐藤達也(さとうたつや)
性別:男性
識別:異能者・18歳
職業:ガイア連合デビルバスター
ステータス:レベル10
耐性:破魔無効
スキル:スラッシュ(敵単体・小威力の物理攻撃)
ジオ(敵単体・小威力の電撃属性攻撃)
ディア(味方単体・HP小回復)
詳細:
幼馴染3人組の一人でリーダー
容姿が整っていて読モも出来るくらいの美形顔
地方霊能名家の生まれで前衛担当
菊之丞を密かに狙っていて噂のTS手術を計画中
名前:田中拓也(たなかたくや)
性別:男性
識別:異能者・18歳
職業:ガイア連合デビルバスター
ステータス:レベル9
耐性:破魔無効
スキル:ハマ(敵単体・低確率で即死を付与する)
マハンマ(敵全体・低確率で即死を付与する)
ディア(味方単体・HP小回復)
詳細:
幼馴染3人組の一人で坊主頭の男性
寺の生まれで破魔と回復担当
年の離れた三十路手前の姉がいる
名前:鈴木翔太(すずきしょうた)
性別:男性
識別:異能者・18歳
職業:ガイア連合デビルバスター
ステータス:レベル10
耐性:破魔無効
スキル:アギ(敵単体・小威力の火炎属性攻撃)
マハラギ(敵全体・小威力の火炎属性攻撃)
ムド(敵単体・低確率で即死を付与する)
詳細:
幼馴染3人組の一人でチャラい茶髪の男性
一般の生まれで攻撃魔法担当
性癖が菊之丞により拗れてしまっている
ざまぁ、婚約破棄に続くなろうの流行りものに挑戦してみました。
けどこれ、追放物になるのかな?
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。