【カオ転三次】『俺たち』閑話集   作:塵塚怪翁

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今回は、我らが新田美波お姉さんが淫魔について語るお話

時系列としては、半終末に突入してしばらくした頃です。


 ミナミィネキの特別淫魔講座

 

『ねえ、マスター。“淫魔”って何?』

 

「……当の本人である貴女達が聞いてくるの?」

 

『ボク達は“夜魔”であって、“淫魔”ではないし』

 

『そうそう。

 エッチな事は好きだから召喚されたし契約もしたけど、来る人皆んな私達を淫魔って呼ぶからいったい何なのか知りたいんだけど』

 

 

 とある半終末のある日、悪魔娼館『邪教の館』の館主であるミナミィネキこと新田美波は自分の経営する館の執務室で書類を処理している所に、先日召喚した新人娼婦の【夜魔“メスガキの”リリム】とその指導役の【夜魔“性別自在の”アルプ】が来てこんな質問をしてきた。

 

 

「……そうか、リリムは発生したばかりだったっけ。

 書類は後でやればいいし、教えてあげるわ」

 

『やった! いい加減、暇だったのもウンザリしていた所だったし』

 

『それでいつもの部屋でいいの、マスター?』

 

「準備してからいくから、いつもの部屋で待っていてね」

 

『『は~い♥』』

 

 

 彼女らにそう答え出ていくのを見送るとミナミネキは、『農業部畜産班のライナスニキとファリンネキが開発したフォルマサーチ改造の【フードサーチ】体験会のお誘い』と書かれたちらしをそのままテーブルに置くと授業の準備のために部屋を出ていった。

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 

 場所は移って娼館内の一室、大きめに作られたその部屋は普段はプレイルームに使用される学校の教室を完全に再現した部屋だった。そこにいつもの娼婦教育の授業のように、リリムとアルプの二人は並んで座って待っていた。

 

 

「来たわよ♥」

 

『『相変わらず、マスターきれいだね~』』

 

「ありがとう。それじゃ始めるわね」

 

 

 そう言ってミナミィネキは教師風の女性用スーツをビシッと決めて、伊達メガネをくいっと指で上げるとニコッと笑った。このためにわざわざ用意した資料を二人に配ると説明を始める。

 

 

「では、授業を始めます。まず最初に“淫魔”とは何か。

 簡単に言えば、【性行為もしくはそれに準ずる誘惑で相手の精気を吸い取る悪魔】です。

 主な代表格としては、『サキュバス』が有名ね」

 

『私達とは違うんですよね?』

 

「そうね。

 リリムは最古の淫魔と言われるリリスの娘ですし、アルプはドイツで伝承されている夢魔の一種ですので厳密には違うわ。

 もっとも、悪魔は進化して上位種になる事があるので貴女達もなるかも?」

 

『へー、そうなんだ』

 

「それではまず、一般的な淫魔について触れていくわね」

 

『『は~い』』

 

 

 その二人の返事を聞き、ミナミィネキは通路から助手のサキュバスを呼ぶと側に立たせてフリップを持たせると話を続ける。

 

 

「それでは『普遍的な意味での“淫魔”がどのようにして生まれたか』、から話しましょうか。

 その主な原因と言われているのは、【金縛り】と【夢精】よ。

 この二つの起こる理由を説明する際に考え出されたのが、夢魔と呼ばれる淫魔ね」

 

『ボクなんかがそれになるんだね』

 

「そうよ、アルプ。

 この二つが淫魔を作り出した主な現象だけど、より注目するべきなのは金縛りの方よ。

 心霊現象や魔法とかによる状態異常の【緊縛】でなく、人間の生理反応によるものね。

 医学的にはこれを【睡眠麻痺】と言うらしいわ」

 

 

 睡眠麻痺(しんみんまひ)は、入眠時や睡眠からの覚醒時に数秒から数分間、体幹と手足を自由に動かすことができなくなる現象である。日本では「金縛り」とも呼ばれている。睡眠中、意識ははっきりしているのに体が動かず体の上に誰かいる胸の圧迫感を感じたり、他にも他人が部屋に入って来たり身体を触られている幻覚症状を感じたりするらしい。

 しかしこの世界では、本当に心霊や悪魔の仕業だったりもするので注意が必要なのであるが。

 

 

「一般的にはこういう現象の原因として、主にサキュバス、アルプ、ナイトメアなどが欧州キリスト教圏では考えれられたの。

 他にも、ハンガリーのリデルク、ネパールのキャク、ニューギニアのスク・ニンミヨとかが上げられるわ」

 

『それじゃ他の場所の淫魔も召喚できるの、マスター?』

 

「今あげたこれらは、現地のマイナーな悪魔過ぎて召喚は出来ないわ。

 海外からの難民の中に呼び出せる術者がいれば別だけど」

 

『な~んだ、残念』

 

「ほんとに残念よね。

 世界中の淫魔がいますよって、個人的にも興味あるし格好の宣伝材料になるのに♥」

 

 

 リリムとアルプ、それに助手のサキュバスも(私達以上にスケベだなぁ、マスター)とそう考えていたが口に出すつもりはなく黙っていた。周囲の微妙な空気を感じ取り、コホンと咳をするとミナミィネキは次の説明に入った。

 

 

「それじゃ、貴女達の代表格であるサキュバスとインキュバスについて触れていきましょうか。

 その前に、サキュバスが生まれた原因にキリスト教が関わりますが、メシア教の事はひとまず忘れて下さい」

 

『は~い』

 

『個人的にはずっと忘れたいです』

 

 

 ぼそっとそう言ったサキュバスに、そこにいる全員が頷きながらミナミィネキの説明は続く。

 

 

「まず、伝承上のインキュバスとサキュバスの簡単な特徴からおさらいしましょう。

 主に睡眠中の人間を相手に性行為を行い、相手に合わせて男女の性別を入れ替て、肉体がないのでそのため壁をすり抜けて侵入する事が出来るとなっているわ」

 

『ふんふん』

 

「ただし、ガイア連合の術式で召喚される多くは性別が固定され、マグネタイトによる実体があるために一部を除いて壁抜けの出来る個体はいないわ。

 さらに、性別を変える目的は自分の体を媒介に男性から精液を採取し、女性に自分の子供を産ませるのだと教会では考えられていたわ」

 

『へ~、そうなの?』

 

『少なくともオーナーに召喚された私は、契約もあるので性別も固定されてそういう事も出来ません』

 

『『なるほど~』』

 

 

 リリムに質問されそう答えるサキュバスをちらりと見ながら、ミナミィネキは資料をめくり次の内容に移った。

 

 

「さて、次ですが『サキュバス達淫魔との性行為は気持ちいいのか?』に移ります。

 リリムとアルプはどう思う?」

 

『『気持ちいいに決まっているよ~。だから、ここに召喚されたんだし』』

 

「そうね。それが大前提で私もここを開いたのだしね。

 だけど、中世の教会関係者の記録にはそうとも言い切れない事が残されているの。

 しかも面白いのは、サキュバスとした記録よりインキュバスとした事の記録が多いのよ」

 

 

 主に中世の欧州の教会や学者関係者の記録によると、サキュバスに関する記録は単に気持ちいいか良くないかの結果だけが書かれているものが多かった。逆に、インキュバスに襲われた女性の記録の方が描写が詳しく多いのは当時の教義が「男性より女性の方が淫らである」と信じられていたかららしい。

 なお、夢精がサキュバスに襲われた証拠だとされたのもこの頃のキリスト教の記録からである。

 

 

「その記録によるとインキュバスとの性行為は、圧倒的に否定的な意見が多かったの。

 要するに、当時のインキュバスは下手くそだったみたい」

 

『『『アハハハハハ』』』

 

 

 ミナミィネキのその言葉にその場にいた女性は皆、笑い出してしまった。

 

 記録によると、14世紀頃のイタリアに集中していた肯定的な意見では『夢のような一時で、あまリの気持ちよさに数日の間動けなかった』などがあったが、他の時代と場所の否定的な意見では『大きすぎて痛い』『冷たくて気持ち悪い』『男性のアレに鱗があり痛い』『男性のアレが変な形であれでされるの嫌』とはっきりと記録に証言として残されていた。

 また、イタリアにおいても15世紀頃から後では否定的な意見が多数を占めている。

 

 “インキュバスは淫らな女性を誘惑する悪魔だ”という男性の認識が一般的であった当時のインキュバスの男性のアレは、記録では巨大だったり、鉄のように硬かったり、鱗があったり尖っていた形状だったとされていた。一部には二又三又になっていたり、複数の触手になっていたり、尾が男性のアレだったりと変態的な形状のインキュバスもいたとされていたらしい。

 

 現代のインキュバスや拙作のブラウニキが抗議する内容ではあるが当時ではそうであったし、変態的な方はむしろ現代の方が日本のHENTAI文化の影響で進化しているかもしれない。

 

 

「当時じゃなくて今のインキュバスにも下手くそなのがいて、魅了魔法で誤魔化しているのもいるかもしれないけれどね?

 次に淫魔がいつ頃から生まれたかになるけど、記録にはこう残っているわ」

 

 

 淫魔がいつ頃生まれたかを示す資料はないが、欧州ではキリスト教誕生から約200年後の3世紀頃にいた修行者の聖アントニウスがサキュバスに誘惑されたが自らの信仰心で撃退したという記録があり、これがキリスト教では最初の淫魔の遭遇記録となっている。

 

 ちなみに、この聖アントニウスと言う人物は『修道士』の先駆け的人物であり、『修道院』という仕組みを作り上げた人物である。

 

 

「この人が作った修道院という仕組みが、淫魔という存在を成長させる結果になったのだけどね」

 

『修道院てあれですよね。

 大勢が集団で生活してて、たいてい淫魔が現れるって人間の作品ではされている場所!』

 

「そうよ。

 修道院で性的なトラブルが起こると、隠す時の言い訳が『これは淫魔の仕業だ』ってよく言われていたの。

 キリスト教というかカトリックが、婚前性交はもちろん避妊・自慰行為・性的妄想・性的快楽の全部が駄目って厳しいものだったのが原因でしょうけど」

 

 

 実際、当時のキリスト教の教義では婚前の性交渉はタブーとされていたため、女性が望まぬ子供を孕んだときには“インキュバスの仕業だ”とされて不義密通の言い訳として大変役立っていた。何しろ、14世紀頃のルネサンス時代には生活環境の変化によって人々が性に奔放になり、都市部の若い(時には少女とも呼べるほどの年齢の)女性が父親不明の私生児を抱える例が多く「インキュバスは実際に女性を妊娠させるのか?」という議論が真面目に行われていたのだ。

 

 その頃のイタリアで書かれた説話集『デカメロン』でも、100話ある小話の約1割が修道院や修道士の風刺話で一般的な修道院への印象は堕落していると見られていた。

 

 

「そのように後に宗教改革やプロテスタントが出来た影響で改善され今でも生き残っている修道院だけど、そこでどのような事が起きて淫魔の仕業にされたのかは事例が多すぎて話すと長くなるからまた別の機会にね」

 

『『は~い』』

 

「リリム、“淫魔”がどういう意味なのかはこれで解ったかしら?」

 

『だいたい分かりました』

 

「アルプもいいかしら?」

 

『ボクもだいたい飲み込めました。修道院のお話は是非聞きたいですけど』

 

「人間側の話でもいいけど、その辺は当時のことを知る夜魔に聞きなさい。

 あの夜魔リリスも悪魔全書には記録してあるからね。

 はい、それじゃそろそろ時間だからお店の準備を始めて」

 

『『分かりました、マスター』』

 

 

 二人がバタバタと走り去ると、ミナミィネキもサキュバスに片付けを命じると教室風のプレイルームを後にして自分の部屋へと戻っていった。

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 

 それからしばらく後、たまたま来訪していた探求ネキに話を聞きながらライナスニキとファリンネキのちらしを渡して帰した後に珍しいお客を迎えていた。応接室で待っていたその客であるアーチャーニキに、ミナミィネキはわざと蠱惑的な笑みを浮かべてみた。

 

 

「アーチャーニキいらっしゃい♥

 ここに来てシキガミのお嫁さん達に怒られても知らないわよ?」

 

「……いや、今日来たのはそっちの話じゃないんだ」

 

「あら、何かしら?」

 

「友人に刀を贈りたくてね。【剣合体】に興味はないか、ミナミィネキ?」

 




後書きと設定解説


・主人公

名前:ミナミィネキ(新田美波)
性別:女性
識別:転生者(ガイア連合)・??歳
職業:ガイア連合スケベ部技術者/邪教の館館主
詳細:
 ご存知、皆んなの知ってるスケベに真面目な女性技術者
 悪魔と安全にエッチな事をしたい為にその専用の術式を編み出した
 ガイア連合で一番性的な技術の第一人者で悪魔娼館の娼館主
 ショタオジの高弟にして悪魔合体も行える凄腕の術師でもある
 エロ関係であちこちに顔が広くスケベ部関連を主催する幹部でもある
 自作の夜魔素材収集用のエロ異界と対魔忍な関係組織が群馬県にある
 今回は新しく召喚した悪魔娼館で働く悪魔への講義を行なう
 本家様AAスレ「小ネタ 悪魔しょうかん」より出典

・関係者

名前:“メスガキの”リリム
性別:女性
識別:夜魔リリム
職業:悪魔娼館の新人悪魔
ステータス:レベル8
耐性:氷結弱点・電撃耐性
スキル:セクシーアイ(敵単体・中確率で魅了を付与する)
    ラクンダ(敵全体・防御力が1段階低下する)
詳細:
 ミナミィネキの悪魔娼館で新人として召喚された悪魔
 ミニスカメイド服を着た蝙蝠の羽根を背中に生やした黒髪の少女姿
 誕生したばかりで自分のことも朧げにしか理解していない
 メスガキな言動はお客さん相手のキャラ作りのため普段は普通
 褐色肌ロリ巨乳メスガキミニスカメイド性癖の顧客担当

名前:“性別自在の”アルプ
性別:両性
識別:夜魔アルプ
職業:悪魔娼館の悪魔娼婦
ステータス:レベル9
耐性:電撃弱点・破魔無効・呪殺耐性
スキル:シバブー(敵単体・中確率で緊縛を付与する)
    ドルミナー(敵単体・中確率で睡眠を付与する)
    ポズムディ(味方単体・毒状態を回復する)
詳細:
 ミナミィネキの悪魔娼館で娼婦として召喚された悪魔
 黒い長い先の尖った尾を持つ黒ビキニを身に着けた女性の容姿
 それなりの年季があり新人の指導役をしているが基本気まま
 両方ある黒髪ボーイッシュ男の娘性癖の顧客担当

説話集「デカメロン」は個人的に面白いので、日本語版を読まれるのをオススメします。
中には院長と美女を共有して処罰を逃れた修道士や、障碍者のふりをして修道院に入り込んだけど8人のシスターに代わる代わる性的に食われて逃げ出した男の話などがありましたよ。


読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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