【カオ転三次】『俺たち』閑話集   作:塵塚怪翁

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今回は、拘置所で裁判中の転生者のお話。

時系列としては、全国に19箇所の支部が作られてしばらくした頃です。


 とあるガイア企業弁護士の録音記録

 

「…………………………」

 

 

 よう、あんたが新しい俺の弁護士か? ガイア弁護士事務所? 聞いたことがないな。

 それでそっちの男は誰だ? 弁護士じゃないようだが。

 ウシジマ? 消費者金融の社長? 金は借りていないぞ、俺に何の用だ?

 

 

「…………………………」 

 

 

 俺がぶちのめした悪党の中に金を借りた奴がいた?

 …………ああ、嘘は言っていないようだな。観る限り、俺が殺すに値する悪党じゃないようだ。

 俺に話が聞きたいってことか。いいぞ、何が聞きたい?

 ……俺の事だと? 聞いても面白い話なぞ無いが、物好きな男だな。

 

 

「…………………………」 

 

 

 ああ、そのとおりだ。

 書類上では【鍛冶屋軍治(かじやぐんじ)】、35歳。

 生まれは関西で、父親は不明で母親は家に男を連れ込む淫売の女だった。

 飯も貰えず、放置されていたな。

 山に入って山菜や果実に蛙に蛇、食えるものは何でも食っていた。

 6歳の時にまだ餓鬼だった俺は、客を取っている母親に甘えようとして折檻を受けて俺が出した悲鳴で通報されて警察に保護された。

 学校にも行かず戸籍すら無かった事が分かり、母親はブタ箱へ俺は児童施設に保護された。

 

 

「…………………………」 

 

 

 なぜ大人に助けを求めなかったのか、だと?

 俺の周りにいた大人は皆、クズだった。

 信用なんて出来ないクズに助けを求めてどうするんだって話だ。

 その頃の俺に、そんな考えなんてなかったさ。

 同時に、盗みや奪いもしなかった。

 金をくすねたり、物をタダで貰おうとするアイツラと俺も完全に同じになるって思ったのさ。

 

 

「…………………………」 

 

 

 ああ、それからの10年が俺の一番幸せな頃だったな。

 16で施設を出て工場で働き俺は真っ当に生きて、あんな連中にはならないと決めていたさ。

 その頃、母親だった淫売が客に刺されて死んだと聞いたが何も思わなかったさ。

 ただ、“クズが世の中から減った”なくらいさ。

 それから3年間、幸せな時間が続いたさ。

 

 

「…………………………」 

 

 

 そうだ。その事件が俺の全ての始まりだった。

 俺の住むアパートの近くにその少女は両親と住んでいてな。

 工場長の娘さんで、大学に行って就職して親孝行するという真面目な子だった。

 俺も含めたその頃工場に詰めていた工員の男共には、その子はマドンナだったさ。

 でもな、その子をあの男は強姦と強盗目的で何回も刺して殺した。

 しかも、そいつは闇召喚士で悪魔に人払いをさせていた。

 だが、俺だけはそれに気が付き助けようとしたさ。

 悪魔が見えて無我夢中で悪魔を殴り殺し、男も叩きのめした。

 急いで付近の住家に大声で叫んて通報したが、彼女は助からなかった。

 

 

「…………………………」 

 

 

 そうだ。俺はその時、覚醒していたんだろう。

 信じないだろうが、前世の記憶って奴が思い出せたのもこの時だった。

 同時に、絶望し怒りが湧き上がって来ていた。

 俺は地下鉄で仕事に行く最中に毒ガスを吸って苦しみながら死んだ。

 復讐の怒りだ。

 ただの一般人を勝手な理由で理不尽に殺すクズどもへのな。

 悪魔や魔法を使えば犯罪が立証されるのは難しいし、悪魔共も大抵は人間を餌にしか見ないクズだ。

 闇召喚士もそいつらに使われる悪魔も同様な制裁されるべきクズだ。

 自分勝手な理由で大勢の他人を死なせる行為をする犯罪者もクズだ。

 それから俺は仕事を辞めて、そいつらに裁きを下す名も無い復讐者になった。

 

 

「…………………………」 

 

 

 そうしようと思った理由に俺には観た相手の“罪”が見えるようになったからだ。

 そして、前世で起きた大量殺人事件の詳細の記憶もだ。

 ……ああ。だから、弁護士さんもウシジマさんも“観える”ぜ。

 証拠なら、彼女を殺した男がいい例だ。

 その後その男は逮捕されたが、他にも容疑があったにも関わらず薬物をやり精神の病気を偽って7年でシャバに出てきたさ。

 こいつは出てきてから俺が殺した。

 また同じ様に、悪魔を喚び出して繰り返そうとしていたからだ。

 そうだ。弁護してくれる予定の事件の一つだな。

 

 

「…………………………」

 

 

 活動資金?

 クズ共が貯めこんでいた金だよ。

 薬物や詐欺に強盗に横領にと多岐に渡るがな。

 被害者がいるならそのままにして別だが、薬物などの金なら薬は燃やして現金は頂いていた。

 ああ、悪党相手でも強盗と言えば強盗になるな。

 だからどうしたというだけだが。

 

 

「…………………………」

 

 

 そうだ。もう一つ、俺には人生が変わった事件があった。

 資料より詳しく知りたいのか?

 

 

「…………………………」

 

 

 いいだろう、教えてやる。

 覚醒した最初の事件から数年後だ。

 あの頃の俺はまだ若く、犯罪者のクズどもにも拘束して警察に引き渡すだけと色々と甘かった。

 俺は正義の味方気取りのなんていうか甘っちょろい考えで行動していた。

 俺はその時、その市内で起こった連続強姦魔の事件を調査していた。

 関係していたクズ共の腕や指を折り、連中から聞き出して犯人のアジトを見つけた。

 そこは、メシア教系新興宗教の教会だった。

 俺は裏から忍び込み、一般の信者がミサをしているのを確認し裏側の部分を調べた。

 生活している部分を探し、俺は神父の部屋のベッドの下の地下への秘密通路を見つけた。

 そこには行方不明になっていた少女の遺体を嬲る人に似た姿のクズ鳥がいた。

 

 

「…………………………」

 

 

 ああ、そうだ。

 “天の御遣い”を名乗る悪魔共だ。

 俺はそいつを背後から殴り、羽を毟り取り動かなくなって消えるまで殴り続けた。

 そして俺は物陰に隠れ神父が来るのを待った。

 2時間ほど後か、外が暗くなった頃に鼻歌を歌いながらそいつは降りてきた。

 俺はクズ鳥がいない事に驚き慌てて室内の遺体の側に神父が駆け寄ったのを確認し、背後から殴りつけて倒し手錠で少女を拘束していた壁の金具に動けなくした。

 覆面をした俺の姿を見てあいつはなんて言ったと思う?

 

 

「…………………………」

 

 

 ……『主の教えに逆らうのか?』、違う。

 最初は、『何もやっていない』と言った。

 部屋の片隅にあった彼女の持ち物を指さした。

 今度は、『あれは見つけただけだ。自分が殺した証拠でもあるのか?』と言った。

 少女の遺体を指差し、地面に転がる拷問用の道具を指さした。

 次には、『分かった、白状する。信者の家族だった彼女を連れ込んで殺した』と言った。

 そして、『自分は神父だ。警察に連れて行け』と言った。

 さらに、『ストレスでおかしくなっていたのかもしれない。治療が必要だ』だと言った。

 

 

「…………………………」

 

 

 そうだ。

 俺は床に落ちていた大型の包丁でそいつの頭を叩き割ると、隠し部屋の入口を開けたまま火を付けて教会を燃やした。

 ただの人間の犯罪者なら、警察が逮捕するべきだろう。

 だが、悪魔や人の姿をした外道なら? これから大量に人を殺すと分かっている獣なら?

 答えは違う。即刻、殺すか動けなくするべきだろう。

 教会の神父という人の良心を代弁するべき人間がこんな行動を平気ですると理解した時、俺の中の“鍛冶屋軍治”という男はあの教会の炎の中で死んで俺は名前もないただの“処刑人”になった。

 

 

「…………………………」

 

 

 ああ。俺が殺していたのは、警察では裁けないクズ共だけだ。

 だから1984年に愛知の三島ビルに放火した男も、同じ1984年に保険金目的に7人を殺した夕張の夫婦も、1990年に兵庫の長崎屋に放火した男も、1994年に盗みを誤魔化すために作業員宿舎に火を付けた神奈川の少年も、2000年に宇都宮で宝石店に強盗放火した栃木の男も、逮捕されるきっかけになった2001年の小学校に刃物を持ち込んだ兵庫の男も全員利き腕と片足を折り砕いて使えなくさせるだけに留めた。

 こいつらは大量の殺人をする可能性があっただけの犯罪者だが、悪魔使いの人殺しは違う。

 そのクズ共は俺が殺すべき対象だ。

 

 

「…………………………」

 

 

 やけに細かく憶えているのは何故かだと?

 俺はいつも細かく記録を取ってメモに残しているからだ。

 殺したクズ共の事も、動けなくしてムショに放り込んだ犯罪者の事も忘れないようにだ。

 刑務所に服役して真人間になるクズの犯罪者なんてほとんどいない。

 工場長の娘さんを殺した男を始めとして何人もいた。

 闇召喚士になり甘い汁をすすった連中は信用なんてするもんじゃない。

 そいつらは人間を餌にしか見ない悪魔共と同じだからな。

 

 

「…………………………」

 

 

 ……なんだ、ウシジマさんとやら。これを読んでみろ?

 ガイア出版の漫画『ウオッチメン』?

 分かった。そこまで言うなら読んでみよう。

 接見の時間は良いのか? 大丈夫? そうか。

 ………………………………………………………………………………。

 ………………………………………………………………………………。

 …………………………ハハッ、ハハハハッ!

 何だ、こいつは! 何だ、このロールシャッハという男は!

 まるで俺、いや【まるで俺の方が似ているだけの偽物】じゃないか?!

 

 

「…………………………」

 

 

 それがガイア連合に多くいる転生者の証拠だ?

 ウシジマさんも漫画の金貸しそっくりに生まれて、俺と同じ様に漫画のキャラと同じような経緯で金貸しになったと言うのか。

 他にもそんな奴が数十人単位で見つかっている?

 だから、一人でも多く仲間を見つけて連れて行くのが仕事だと?

 なんでそんな風に集める必要がある?

 

 

「…………………………」

 

 

 ……真・女神転生、信仰のためなら何でもする狂信者の群れのメシア教、天使を名乗る狂信者の群れを統括する悪魔、世界の終わりである終末、GHQによる日本最強の霊能力者ライドウの抹殺、日本の霊能の血筋の根絶やし、見つかった転生者達によるガイア連合の設立、終末を生き残るための準備と戦い。

 ……ゲームかおとぎ話かと思いたいがそうじゃないんだな。

 俺の中の何かも叫んでいる。

 踏み躙られた者の復讐を! 大罪を犯し裁かれぬ外道を殺せ! 

 神の名のもとに大勢の人間を殺し続ける者達と悪魔に死の報いを、と!

 

 

「…………………………」

 

 

 この衝動も“俺たち”には持っている者が多くいるのか。

 分かった、ここから出られたら俺も力を貸す。

 この漫画のロールシャッハも言っている。

 『神があの子を殺した訳でもない。

  運命があの子を死なせた訳でもない。

  神はあの子の事など気にも留めていない。

  俺はあの時分かった。

  この世界を作ったのは神ではない。人間だ』と。

 しかし、俺はこう思う。

 『この世界を作ったのが神でも悪魔でもないならば、人間の善意と悪意が世界を作った』と。

 それなら出来るだけ善意を信じられるようになりたい。

 ロールシャッハのように脱獄ではなく、正当にここから出してくれ。

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 

 この後、自分の弁護による裁判の結果は主に殺人未遂と傷害致死で審議が行われ、彼は裁判期間と懲役刑を含めて約7年後に釈放された。

 

 その後の彼は弁護の対象から外れた事もあり、あの時見たコミックのキャラの姿となってあのキャラのように夜の闇の中を歩いて回っているらしいと噂に聞くだけになった。ガイア連合の関西支部で幹部を務めるウシジマ氏にも時々会うが、尋ねても彼については黙して語らない。

 

 彼があのコミックのキャラのように自身の思想の先で死を選ぶ事がないと願いたい。

 

 

 ガイア弁護士事務所 所属弁護士 成歩堂記す

 




後書きと設定解説


・主人公

名前:鍛冶屋軍治(かじやぐんじ)
性別:男性
識別:転生者(ガイア連合)・35歳
職業:ガイア連合関西支部所属黒札
ステータス:レベル19・アタック型(力・速)
耐性:破魔無効・呪殺無効(装備)
スキル:ハードヒット(敵単体・中威力の物理攻撃。
           クリティカル時、威力が上昇する)
    回し蹴り(敵複数・1~3回の小威力の物理攻撃)
    不吉な言葉(敵単体・高確率で絶望状態を付与する)
(絶望:行動不能になり、ターンが来るたびにMPが5%減少し、
    3ターン後には絶望に沈み戦闘不能になる)
    トラフーリ(ボス以外の戦闘から逃亡できる)
    ハイ・アナライズ
    (通常の結果の他に対象が人間なら罪状も見通せる)
    物理ブースタ(物理攻撃の威力が上昇する)
    コロシの愉悦(物理攻撃のクリティカル率が上昇する)
    奈落のマスク
    (状態異常になる、即死する確率を大きく減少させる)
    スクライング(幻視による追跡術)
    脅迫(相手から効率的に情報を得る技術)
装備:ロールシャッハマスク(黒い模様の変わる白地の覆面)
   トレンチコート(ガイア連合製霊装防具)
   ワイヤーガン(離れた場所への移動が出来るアイテム)
   手帳(今までの事を全て記録した手帳)
詳細:
 関西支部の設立後しばらくしてウシジマニキが接触した転生者
 警察が把握しているだけでも7件の闇召喚士の殺人に関与している
 前世は地下鉄宗教テロにより死亡している50代の男性
 今世は父親不明で風俗で働く母親に6歳まで虐待を受けながら育てられる
 自宅で売春時の酔っていた母の客の男に殴られ近所の通報で保護された
 16歳で保護施設を出て母は既に死んでいたので下町の工場で働く
 3年後、闇召喚士により初恋の女性が死亡しその際の争いで死にかけ覚醒
 前世を思い出した事で犯罪者への強烈な義憤が自分の全てになり工場を退職
 前世で起きた大量殺人の事件も鮮明に思い出し覆面をして自警行動を開始
 以後、数年間闇召喚士や犯罪者を見つけては拘束し警察に引き渡していた
 ある時、他の事件の調査中に偶然見つけたメシア教神父の強姦誘拐を潰した
 自分は病気だ逮捕しろと言う神父を憤怒から殺害し教会に火を付けた
 それ以降は甘さを完全に捨てて闇召喚士は引き渡すのは止めて私刑を下している
 ガイア連合が各地に支部を作る頃、昼間の小学校で大量殺人に及ぶ男を殴り倒す
 警察に逮捕され拘置所にいる時にウシジマニキと出会う

・関係者

名前:ウシジマニキ
性別:男性
識別:転生者(ガイア連合)・30代
職業:金融業「ウシジマファイナンス」社長
ステータス:レベル13・フィジカル型
耐性:破魔無効・呪殺無効(装備)
スキル:突撃(敵単体・小威力の物理攻撃)
    マカジャマ(敵単体・中確率で魔封を付与する)
    パララアイ(敵単体・中確率で麻痺を付与する)
    潜伏(自身・敵から狙われにくくなる)
    交渉術・執り成し
装備:見鬼と占術を阻害するガイア連合製護符
   精神耐性のタリスマン
   呪殺無効の腕輪
詳細:
 元々は、霊能組織相手の闇金系派遣仲介業(人身売買含む)業者
 ガイア連合に参加後は、ちゃんと許可を得たガイアグループ所属の金融業社長
 シキガミは、動物型の兎「うーたん」で回復やトラフーリなどのスキル持ち
 アーッニキが手元から居なくなり腕の立つ異能者を探していて彼を見つけた

「ウオッチメン」はコミックが面倒なら映画がおすすめ。
この作品の「Mr.マンハッタン」の結末は、もしかしたらショタおじがこうなっていたかもしれないキャラクターだと思う。 


もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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