【カオ転三次】『俺たち』閑話集   作:塵塚怪翁

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今回は、兵庫県西宮市の甲子園球場にまつわるお話

時系列としては、半終末に突入ししばらくした頃です。


 とある社畜転生者と甲子園球場の顛末

 

「代表。またスサノオ様と毘沙門天様が口論を為さっています」

 

「……またかい! 今度の理由は何や!?」

 

「献上品のたこ焼きの具材とトッピングの好みの違いです」

 

「はあ、わかった。ワイが直接行って話してくるわ」

 

 

 兵庫県西宮市にある『ガイア甲子園球場』、その球場の地下にあるガイア連合の『甲子園派出所』の執務室で二人の黒札の男性が話し合っていた。

 

 一人は【たこ焼きニキ】こと阿畑やすし(あばたやすし)。

 

 この無精髭と額に巻いたタオルが特徴的な親父のような男性は、今はここの派出所の代表で元は関西支部のあるジュネスでたこ焼き屋「茜」を経営していた黒札の男性である。関西支部内の過激な虎ファン達の面倒を長く見ている内に、甲子園球場とタイガースを終末後も保存する計画に巻き込まれウシジマニキから直々に派出所の代表に推薦され治まった人物である。

 

 もう一人は【田中誠(たなかまこと)】。

 

 七三分けの髪型で黒メガネを掛けた影の薄いサラリーマン風の男性は、貴重なペルソナ使いにも関わらずそのあり方自体が問題視されてペルソナ異界派遣から戻され、地元のここ西宮市の派出所で事務作業を中心に熟している黒札の男性である。

 

 

「それでは書類の整理の方は終わらせておくので、終わりましたら球場内の陳情の確認に出ます」

 

「すまんな、田中はん。あまり働き詰めなのはあかんで?」

 

「我々の代表のショタおじも分身を過労死させているそうですし、たとえ自分が死んでも蘇生アイテムがあるので大丈夫です」

 

「いや、全然アカンからな! 死んだらアカン!」

 

 

 今回はこの社畜気味のペルソナ使いの彼が話の主人公である。

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 

 関西支部直近の派出所である『甲子園派出所』は、関西方面にいる全ての虎ファンと高校野球好き達の聖地であるこの球場を護る目的で設立された派出所である。

 

 この派出所は『ここをシェルター化しタイガースのチーム関係者を終末から護る』という目的の元、野球ファンの連合関係者達が各々勝手に暴走気味に推し進めた結果の産物である。黒札や現地民関係なくそれぞれの欲望を果たすべく関西支部が出来た頃から動き始め、富豪俺達の虎ファンもいた為に球団ごとガイアグループで買収し建設された関西支部直近では最初に出来た大型派出所であった。

 

 球場の東にある売店基地棟と西側にある屋内練習場とクラブハウス、「甲子園神社」「タイガース神社」とも言われている素戔嗚神社、球場内広場のミズノスクエアに建設された毘沙門天と白虎の祠が地上部分に当たり、球場の地下に大型のシェルターを備えた下手な地方の支部より立派な施設のある派出所である。

 

 ちなみにもともと甲子園には素戔嗚神社があり祭神はこの方だけで充分だったのだが、他の黒札が守護させるために自薦で勝手に虎が神使の毘沙門天と白虎を敷地内に祠を作って祀ったせいで、たこ焼き二キの代表としての普段の主な仕事が諍いを起こす彼らにたこ焼きを焼いて献上し鎮める事である。

 

 その派出所を実質回しているのが、面倒見の良さと人柄で代表を務めるたこ焼きニキと事務のまとめ役の処理能力がピカ一の田中誠の黒札二人を中心とした人員であった。

 

 献上のためのたこ焼きをおかわりも含めて多数焼いて戻って来たたこ焼き二キに、田中はいつもの表情のない顔のままいつもの感情のない冷静な声で告げた。

 

 

「代表。陳情内容をまとめたものはそこにありますので確認をお願いします。 

 自分はこれから外回りに出てきます」

 

「外回り? 何や、田中はんが行かんとアカン事でもあったんかいな?」

 

「報告の一つに市内で怪しげなセミナーを開いている団体があるそうです。

 現地組織の人間が何人かセミナーに参加して戻って来た様子がおかしいそうで。

 場所がここのすぐ近くのビルなので確かめに行こうかと」

 

「怪しいセミナーやて? カルトでも出たんか?」

 

「何でもそこに行くと幸せな気分になれるとかで、問い詰めても中の事は言いませんし無理にでも向かおうとするので拘束して閉じ込めているそうです」

 

「うわ。こないな時期にうちの関係者が巻き込まれるのは勘弁やで」

 

「関西支部の占術担当にも連絡済みですが、その点も調べてきます。

 終わり次第、直帰しますので失礼します」

 

「おう、それじゃこれは田中はんに任せるわ。気いつけてな」

 

 

 そう言って見送るたこ焼き二キに一礼すると、肩がけのカバンを持つと田中は事務室を出るとエレベーターに乗り地上に出て行った。球場から徒歩で約30分ほど歩き、彼は目的の場所に着いた。

 

 4階建てのそのビルには看板がありこう書かれていた。

 

『あなたの人生が変わる! 人生の相談も無料で受け付けています。〇〇セミナー』

 

 

「ここですね。さて、何がいるのでしょうか?」

 

 

 そう呟くと田中はこの団体のビラを持って、ビルの中に踏み込んで行った。

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 

「お集まりの皆さん、それでは始めさせていただきます」

 

 

 一人の講師役らしい中年の男が3階にあるワンフロア全体が部屋になっている講習室に入って来ると、平日なのにそこに集まった数十人の人々は口々に叫びだした。

 

 

「夢を、夢を早く見せてくれ! 幸せな夢をっ!」

 

「こんな現実は嫌よ!

 年収800万て妥協しているのに何で誰も結婚してくれないのよっ!」

 

「ふざけるな、何でこんなに税金が高いんだよ!

 現実じゃなく、給料が上がってまだ綺麗だった頃の嫁に愚痴られない夢を見してくれっ!」

 

「俺が30を超えて魔法使いとか嘘だ!

 まどマギみたいな美少女達に囲まれてモテるはずなんだ!」

 

「あたしの会社にあんなセクハラ上司はいないんだ! お局のババアもいなくなれ!」

 

「消しゴムを拾ってあげたら汚いとか泣き出すクラスの女子なんか嫌だ!

 キモいとか抜かしていじめてくる不良も学校にはいないんだ!」

 

「わたしは優遇されるべき老人で女性なのよ!

 なんで、ちょっと車で人にぶつけただけで色々言われなきゃならないよっ!」

 

 

 そう言い出す彼らにニッコリと笑みを浮かべた彼はこう告げる。

 

 

「さあ、皆さん。そこに座り目を瞑って座禅を組みましょう。

 そうしているうちに、あなたの望む夢が見えてくるでしょう」

 

 

 セミナーに参加した彼らが言われた通りに座って目を瞑って座禅を組むと、講師の男は馬の頭をした悪魔の姿に変わりスキルを使った。

 

 

『【ナイトメアショー】。さあ、幸せな夢を見なさい』

 

 

 講師役だった悪魔【夜魔ナイトメア】の持つそのスキルは、敵全体を高確率で眠らせるもので耐性・スキル・アイテムの効果を無視する強力なものであった。さらに【睡眠成功率UP】と【状態異常強化】のスキルでもって、覚醒者でも深い眠りに長時間そのままにするこの悪魔の強力な武器となっていた。

 

 

『それではいつものように、マグネタイトを頂きましょうか。

 それと、参加料の10万円もね』

 

 

 ナイトメアがいつものように【エナジードレイン】で眠っている人々からマグを吸い出そうとした所で、部屋の中にいつの間にか参加者ではない男が立っていのに気がついた。

 

 

『お前は誰だっ!?』

 

「突然の訪問、失礼致します。私、ガイア連合の田中という者です。

 失礼ですが、あなたがここの元凶でよろしいでしょうか?」

 

『バカな! ガイア連合がこんな些末な事に首を突っ込むはずが……!?』

 

「些末かどうかはこちらが判断することなので」

 

 

 ぎょっとした顔でいる職員に化けていたマクラガエシを見て、ナイトメアは舌打ちするとこいつも眠らせてやるとスキルを放った。

 

 

『【ナイトメアショー】! さあ、お前も眠れ!』

 

『『【ドルミナー】!』』

 

「ペルソナ」

 

 

 ナイトメアとマクラガエシの放つ睡眠を付与するスキルに田中は自分のペルソナを出す事で対抗する。

 そして田中の背後には、昭和のブリキ玩具のロボットの頭をしたサラリーマンの姿のペルソナ【刑死者ワーカホリック】が出現した。

 

 

『……何で眠らない!? どんな高位の悪魔だって眠らせてきたのに!』

 

「徹夜には慣れていますので我慢できるだけです。

 こちらからも行きます。【暴れまくり】」

 

『ノルマハギムダーッ!』

 

 

 田中がそう言うとペルソナは目を光らせて叫ぶとナイトメア達に殴りかかり、2体いたマクラガエシを殴り倒し物理弱点のナイトメアにも怪我を負わせた。殴られたナイトメアは、ジリジリと後ろに下がりながら床に転がるセミナー参加者達を指差して田中に叫んだ。

 

 

『くそぉ! 何でこんな連中を助けようとするんだ!?

 こんな奴ら、いくら死のうが関係ないだろう!?』

 

「それが業務内容の仕事ですので。上から指示は絶対なのです」

 

『……お前、悪魔より変じゃないか?』

 

「あなたも休日出勤やサービス残業を月に200時間ほどすれば理解できるでしょう。

 お覚悟を、【暴れまくり】」

 

『シャカイノハグルマーッ!』

 

『こんな所で死にたくない―ッ!』

 

 

 目を光らせて迫る田中のペルソナにボコボコにされ、ナイトメアが倒されると異界と化していたビルは普通の雑居ビルへと変わるのだった。

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 

 関西支部と警察と救急に連絡し自宅に帰宅した田中は翌日いつものように出社し、書類の整理をしながらたこ焼き二キと話をしていた。

 

 

「……それで昨日の件は片付いたんやな?」

 

「はい。全て終わりました」

 

「なんや報告だと、耐性やスキルにアイテムも無視する強力な眠らせる能力だったちゅう話やけど田中はん、体に異常は無いんやろか?」

 

「問題ありません。

 昨晩はいつもより熟睡が出来て返って体調がいいくらいです」

 

「……普段、どのくらい眠っているんや田中はん?」

 

「平均して4時間ほどです。前は5徹とか当たり前でしたが」

 

 

 そう答える田中にたこ焼き二キは頭を抱えた。

 

 

「うちはそんなブラックじゃなくホワイトな職場なんやから、ちゃんと寝てや田中はん」

 

「私のペルソナももっと強くなったら、24時間戦えるようになるんでしょうかね?」

 

「お願いやからそれは止めてな、田中はん」

 

「黄色と黒は自分達サラリーマンの味方と聞きますし、タイガースファンの皆さんもそうなるといいかもしれませんね?」

 

「……それにええことは無いで、田中はん」

 

 

 こうして甲子園派出所の二人のいつもの日常は過ぎていくのであった。

 

 どっとはらい。

 




後書きと設定解説


・主人公

名前:田中誠(たなかまこと)
性別:男性
識別:転生者(ガイア連合)・24歳
職業:ガイア連合関西支部所属黒札
ステータス:レベル21・マジック型(魔・速)
耐性:破魔無効・呪殺無効(装備)
スキル:ペルソナ(刑死者ワーカホリック)
    事務知識(事務作業の効率的な技術)
    潜伏(自身・敵に攻撃され難くなる)
装備:草臥れたサラリーマンスーツ(ガイア連合製霊装)
   呪殺無効のペンダント
   アナライズの付与された特製黒縁眼鏡
   アイテムの入った肩がけの黒い革鞄
   COMP(折りたたみ携帯型)
詳細:
 半終末後に合流し覚醒時にペルソナ能力者になった転生者
 七三分けの髪型にメガネを掛けた冴えない容姿の影の薄い男性
 前世は残業徹夜当たり前の企業で働き40手前で突然死した社畜
 前世では勉強と仕事のみの生活でメガテンの知識は皆無だった
 今世は一般家庭に育ち大学を卒業するまで一般人の出身
 仕事人間で放置気味の両親に育ち前世と同じで感情の振れ幅が低い
 地元のガイア系企業に面接に行き転生者だと判り合流した
 山梨で今の能力に覚醒し今の世界の詳細をいろいろと知った
 オカルトを信じない家族には断られ支部シェルターに一人で引っ越した
 現在はシキガミを含めて諸々の物を揃えるために活動中

ペルソナ:【刑死者ワーカホリック】
レベル21 耐性:火炎弱点・電撃耐性・衝撃耐性・破魔無効
         呪殺無効・神経無効・精神耐性
スキル:突撃(敵単体・小威力の物理攻撃)
    暴れまくり(敵複数・1~3回の小威力の物理攻撃)
    スクンダ(敵全体・命中、回避率を1段階低下させる)
    一分の活泉(最大HPが10%上昇する)
    小治癒促進
    (戦闘中行動順になる度に、HPが2%回復する)
    食いしばり
    (HPが0になった時、1度だけHP1で復活する)
    社畜魂(精神状態異常遅延)
    (業務に関係する状態異常は貫通も無効化。
     HPを消費し続け我慢し0になった時、状態異常の効果を受ける)
    破魔無効(弱点補強のためのスキルカード付与)
詳細:
 日本語で仕事中毒や仕事依存症を意味する名のペルソナ
 転じて日本における会社に滅私奉公をするサラリーマンの代名詞となった
 姿は草臥れたサラリーマンの服装をしたブリキ玩具のような頭部のロボット
 前世の社畜の経験と今世の前と同じ人生状況への諦観が具現化したもの 
 「社畜魂」は状態異常を我慢し先送りにして無効化する前世の具現化スキル
 
・関係者

名前:たこ焼きニキ(阿畑やすし・あばたやすし)
性別:男性
識別:転生者(ガイア連合)・33歳
職業:ガイア連合関西支部甲子園派出所代表
ステータス:レベル27
耐性:破魔無効・呪殺無効(装備)
スキル:アバタボール(九十九針)
    (敵単体・中威力の銃撃属性攻撃)
    熱血アバタボール(火龍撃)
    (敵単体・力依存の中威力の火炎属性攻撃)
    分裂アバタボール(八百万針)
    (敵全体・小威力の銃撃属性攻撃)
    銃撃ブースタ(銃撃属性攻撃の威力が上昇する)
    調理(主にたこ焼きなどの鉄板物)
    野球知識(主に阪神関連の知識)
    交渉術(仕事上で覚えた技術)
装備:粉砕バット(金属製の霊装バット)
   ケブラージャケット(背中に阪神のマーク入り霊装)
   首掛けお守り(呪殺無効付与されたお守り)
詳細: 
 半終末の少し前の頃に合流し山梨で覚醒している転生者
 頭に巻いたタオルと無精髭が特徴的なたこ焼き屋の親父の風貌
 ジュネスにたこ焼き屋を出していたが甲子園派出所の代表にされた
 前世は大のタイガースファンであった普通のサラリーマン男性
 今世は一般家庭出身で元高校球児のたこ焼き屋アカネの店主だった
 虎ファン過激派黒札達の世話をするうちに代表に持ち上げられた
 幼馴染の「茜」という嫁さんと「たかし」という息子がいる
 専用シキガミは男性で普段は店舗の管理をしている「阿畑きよし」
 基本的に関西弁で1人称は「ワイ」

・敵対者

【夜魔マクラガエシ】
レベル5 耐性:破魔弱点・呪殺耐性・睡眠無効
スキル:ドルミナー(敵単体・中確率で睡眠を付与する)
    シバブー(敵単体・中確率で緊縛を付与する)
    吸魔(敵単体・小威力の万能属性MP吸収攻撃)
詳細:
 ここの表向きの職員に化けている悪魔の「妖怪枕返し」
 寝ている間に枕を動かし夢の世界に囚われたままにするらしい
 人間を眠らせ悪夢を見せる事で得るMAGが好物
 ここのボスのナイトメアに従ってMAGを得ている

【夜魔ナイトメア】(ボス)
レベル24 耐性:物理弱点・破魔無効・呪殺無効・睡眠無効
スキル:ナイトメアショー
    (敵全体・高確率で睡眠を付与する。
     この効果は耐性・スキル・アイテムの効果を無視する)
    エナジードレイン
    (敵単体・小威力の万能属性HPMP吸収攻撃)
    睡眠成功率UP
    (睡眠の付着成功率が1.25倍になる)
    状態異常強化
    (状態異常が術者のレベルに等しい強度を得る。
     状態異常の回復の必要ターンが強度分倍必要になる)
    眷属召喚(眷属の夜魔を召喚する)
詳細:
 元はただの人間の闇召喚士が覚醒し悪魔と化したボス悪魔
 悪魔の姿は馬の頭と体毛をした人間の男性の容姿になる
 自己啓発セミナーを開催し幸せな夢を見られると宣うカルト代表
 拠点ビル内を自分の異界とする事で出入りが出来ないようにしている
 眠らせた相手達から生命力を元にしたMAGと金銭を集めていた
 根暗で他者を見下し他人は利用する為の道具と考える性格をしている
 奪われる弱者の側から奪う強者の側になるために続けていた

田中のテーマ曲は「牛若丸三郎太 勇気のしるし~リゲインのテーマ~」
     

読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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