【カオ転三次】『俺たち』閑話集   作:塵塚怪翁

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今回は、第28話のその後の伏見派出所代表の藤野のお話

時系列としては、半終末に突入し終末に近くなった頃です。


 半終末における古都京都の情景その3

 

「聞いたか? あの藤野代表がマルコーニキだってよ? ププッ」

 

「笑うのは悪いですよ、カトーニキ。

 実際、藤野さんハガレンのマルコーにそっくりじゃないですか。くくっ」

 

「木っ端テングニキよぉ、確かにそうだけどさぁ」

 

「……楽しそうだな、二人とも?」

 

「「あっ! し、失礼します!」」

 

「しょうがないな、彼らは。

 ゴホン。それでどう思いました? 彼女に実際に会ってみて」

 

「あの年であの実力、末恐ろしいほどよ藤野。

 前に会ったアーッニキや魔王ネキとやら以上の力があるではないか?」

 

「連合の指標レベルでは確実に今の彼らより上でしたね。

 分霊である宮城のウカノミタマ様も、失礼ですが貴方様以上でした」

 

「それだけ今のこの世が乱れているという証左よな、藤野」

 

 

 ーーーーーーーーーー             

 

 

 終末も近くなった半終末のある日、宮城から幼女ネキとその妻となった宮城のウカノミタマ通称“タマ”が宇迦之御魂神に会いに京都伏見の伏見稲荷まで来訪していた。

 

 最近起こった多神連合のとある神との諍いで彼女たちが襲撃した上で落とし前をつけさせた一件で、普段の6桁以上及ぶ数の稲荷神の管理という激務と度重なる彼女らの行動による影響から来る付近の神仏や出雲の神々からの「お前の管轄の稲荷神だろう?何とかしろよ」という突き上げで我慢できなくなった宇迦之御魂神が、商売神らしく前交渉と手続きを踏んで正式に彼女らを招聘したのが来訪の原因であった。

 

 彼女らとの接見を終えて派出所内の最奥にある藤野の居室にて、ここ京都伏見派出所の代表を務める【藤野槇雄(ふじのまきお)】は彼が用意して献上したシキガミ体に入って完全にくつろいでいるウカノミタマに話しかけていた。

 

 

「……お茶、飲みますか? ウカノミタマ様」

 

「おお、冷たい緑茶で頼むぞ藤野。あと、ポテチとDDS端末のスイッチを入れてくれ」

 

「いつもの通り、うすしおでいいですね。……どうぞ(ガサッ」

 

「うむ。(ポリポリズズー」

 

 

 彼女らと接見した時の姿と違いシキガミ体の彼女は、白銀の毛を持つ九尾狐美女の姿で豊満なスタイルは変わらないが着ている服は青いジャージ姿であり、空調の効いた室内でテーブルにその姿で前のめりにつっ伏して完全にだらけていた。このシキガミ体の元は外様神が核ミサイル迎撃時に配布されるものと同じで、それを黒札である藤野が自分の専用シキガミの権利を使ってカスタムしたものになる。

 

 ウカノミタマからするとこのシキガミに入っている時は完全にオフのつもりでおり、今いるこの部屋の隣にはシキガミ体専用の寝室がありそこにはストレス解消用の漫画やゲームといった娯楽品が山のように保管されている。もちろんそこに入って掃除するのは筆頭氏子の藤野だけであり、他の者にこの姿を見せる事は部屋から秘書筆頭のような役割の他の祭神である大宮能売神に引きずり出される時以外はあまり無かった。

 

 

「この時間、あまり面白い動画配信は無いのぅ。……あ奴らは部屋に行ったのか?」

 

「ええ、客人用の一番いい部屋に泊まっていただいています。

 明日以降はこちらで保護していた関係者と面会する予定だそうです。

 しかし、本霊であるウカノミタマ様を越えるとはあちらのウカノミタマ様もすごいですな」

 

「まあ、それだけあの幼女ネキだったか。こちらの胃が痛くなるような大活躍をしているからだろうよ。

 これまでにした事は直接向こうのあやつから聞いたが、ヤマトタケルが平凡に見える活躍に付き合えばそうもなろうよ。ククッ」

 

 

 宇迦御魂神はメガテン的に言えば【神獣ウカノミタマ】となり、デビルサマナーや真4では53レベルの悪魔となっている。ここ伏見稲荷の彼女はガイア連合基準でのそれより少し上の54レベルとなるが、幼女ネキの妻となるタマは60レベルを超え既に稲荷神の中では一番の伏見の彼女以上の強さとなっている。それだけに真っ当な交渉以外でどうにかできる手段は伏見側には無いのだが。

 

 そこまで言ったウカノミタマは何かを思い出したかのように笑い出した。それを不思議に思った藤野はウカノミタマに聞いてみた。

 

 

「何がおかしいのですか、ウカノミタマ様?」

 

「なに、あやつらの活躍も派手でものすごいがお主の半生とてそう負けるようなものではないなと思ってな」

 

「私の半生など、彼女らや安倍君らに比べれば平凡なものですよ。

 それに終末もこれからで、私も隠居するのは相当先になるでしょうな」

 

「そう卑下するものではないわ、藤野。

 こうして苦労はしているが、お主の忠勤にはいつでも報いるつもりだぞ?」

 

「それならば幾久しく、ここの者たちをお見守り下さい。それが私の願いです」

 

「相変わらず欲がないのぅ。どこぞの黒札など女神を抱いている剛の者もおるのに」

 

「お戯れは程々にお願いします、ウカノミタマ様」

 

「若い頃のお主はもっとギラギラとしていたのにのう」

 

 

 こうして親しげにウカノミタマと藤野の間には奇縁とも言える出会いがあったのだ。

 

 藤野槇雄は戦後すぐの頃、京都でのメシア教の蹂躙が終わりしばらくした頃にここ伏見の商家の家に産まれた。その家では代々商売の守り神として稲荷神を祭っており、その霊的才に気づいた当の稲荷神が話しかけたのがウカノミタマと彼の出会いの始まりであった。

 

 その後彼は高度経済成長の波に乗り勢いのあった地元の企業である『里桜酒造株式会社』に就職し、メキメキと頭角を現して出世し重役職にまで若くして上り詰めていた。稲荷を通してのウカノミタマからの夢でのお告げに従ったのもその原因の一つであろう。

 

 職場結婚で子どもにも恵まれ順風満帆だった彼の生も、やがてその半覚醒してた才により酒作りの職人である杜氏の中にいた酒キチの本物の河童と友人になる事で覚醒に至り、前世の記憶も思い出した関係で前世の子どもが遊んでいたゲーム『真・女神転生』の知識も思い出しここが悪魔が本当に存在しあのメシア教もいる世界だという事に愕然とした。

 

 仕事の傍らオカルト方面の調査を行い、関西でブローカーをしていた頃のウシジマニキや京都神社庁の一条氏と知り合いになりウカノミタマの封印解放のためにオカルト方面でも彼らに協力を始めた。この頃、妻が末の娘である『秋葉』の出産と引き換えに後に死霊の仕業とわかるが謎の死を遂げたのもその切っ掛けだろう。

 

 また、母の死と急にオカルト方面に手を出し始めた父の様子を嫌った長男と次男が揃って家を出て関東に上京した後に行方不明になったのもこの頃であった。

 

 その後、秋葉を独力で育てつつ活動中に他の富豪俺達と出会い協力関係を築くに至り、関西支部の設立にも資金提供をして協力しその活動を支えていたところでアーッニキこと『安倍隆和』と出会い、拙作『【求む】カオス転生でダークサマナーが就職する方法』で描いたように末娘の秋葉を彼に嫁がせるまでに肩入れする関係となって現在まで至っている。

 

 長々とウカノミタマに自分の半生を茶飲み話にしみじみと語られ、恥ずかしげに手を振る藤野。

 

 

「やめて下さい、ウカノミタマ様。改めて語られると恥ずかしい思いですよ」

 

「クックッ、そうは言うがな藤野。

 あのメシアの連中の封印から解き放ち、今までしてくれた行ないを妾は絶対に忘れぬぞ。

 少なくともお主は死んでも離さぬから覚悟せよ」

 

「できれば、死後は亡き妻のところに逝きたいのですけどね」

 

「妻のいる冥府には妾が必ず送り届けよう。代わりに、死後もしばらくは妾の元で過ごしてくれ」

 

「それは神主殿とも相談になりますよ?」

 

「無論よ。妾は商売繁盛の神ぞ? 真っ当な契約と交渉事は得意科目よ。ズズー」

 

 

 会話が一旦途切れ時計を見た藤野はウカノミタマに告げた。

 

 

「もうこんな時間になりましたな。私は明日も早いのでこれで失礼します」

 

「うむ。妾はもう少しここで過ごしてから本殿に戻るからの」

 

 

 こうして自身の祭神であるウカノミタマに見送られ彼は自室で眠りにつくのだった。

 

 

 ーーーーーーーーーー             

 

 

 開けて翌日。

 

 

『え? 我主神ぞ? 最高神ぞ? 来るって言ったよね? なんであいつおらんの?』

 

『儂の転生体でないのに儂の名を名乗ってこちらに信仰のマグを送る黒札がいるのだがな。

 出来れば、その人物と会うための紹介というか段取りを付けてくれんか? 宇迦之御魂よ』

 

「日帝36年の謝罪と賠償の証に、俺達にも噂のブラックカードをよこせ!

 わざわざ偉大な韓民族の司祭である俺様が来てやったのだから、さっさと生意気な日本人は誠意を見せろ!」

 

 

 天照大神の突然過ぎる来訪や脳缶二キの件で地元の八坂神社の牛頭天王から来た注文、ウトロ地区にまた入り込んだ半島から来たメシアン系カルトの起こした騒動の処理、関係者と会った幼女ネキが起こす騒動で胃薬の世話になる藤野とウカノミタマの姿がそこにあったという。

 

 

 どっとはらい

 




後書きと設定解説


・主人公

名前:藤野槇雄(ふじのまきお)
性別:男性
識別:転生者(ガイア連合)・66歳
職業:ガイア連合伏見派出所代表
ステータス:レベル10
耐性:破魔無効・呪殺無効(装備)
スキル:ポズムディ(味方単体・毒状態を治療する)
    カリスマ(交渉時、中確率で会話相性を最高にする)
    財力・交渉術・根回し・説得
装備:男性用スーツ(ガイアブランドの霊装)
   呪殺無効の腕時計
   精神無効の護符  
詳細:
 戦後の早い時期に産まれた転生者の中で経済的に成功した【富豪俺たち】の一人
 前世では老年までここ京都の生まれで医療関係の中小企業を経営する社長をしていた
 今世は伏見の地元の生まれで両親はオカルトとは関係のない一般家庭だったに生まれた
 高度経済成長期に蔵元に就職し職場結婚し子どもにも恵まれ普通に生活していた 
 河童をイメージキャラにした蔵元の出身で酒造組合で頭角を現して重役になった
 覚醒の切っ掛けは蔵元の杜氏の中に酒キチの本物の河童が化けていたのがいたため
 彼と友人になり秘密を酒の席で明かされショックで悪魔が見えるようになり覚醒
 この時前世の記憶も覚醒し前世の子が遊んでいたゲームの知識からメガテンを思い出す
 オカルト方面の調査を行い程なくして関西でブローカーをしていたウシジマと知己に
 この際に京都神社庁理事の一条氏とは友人になり、京都内の霊能関係で協力をし始める
 この頃、末娘の秋葉の出産で妻が死亡しオカルトにも手を出した事で息子達と疎遠に
 上の息子二人は父親と折り合いが悪く成人後に家を出て関東で連絡もなく消息は知れず
 秋葉を育てながら重役として活動中に他の富豪・政治家俺達と接触し協力体制になった
 関西支部設立時の大口スポンサーで、淀川水域の霊道建設にもしっかり食い込んでいる 
 末娘の藤野秋葉(ふじのあきは)は、関西の黒札アーッニキの嫁として送り込んでいる
 現在は関西支部と連携を取りながら伏見稲荷を中心とした派出所の代表をしている
 容姿のイメージは、某錬金術師漫画のティム・マルコー
 
・関係者

名前:神獣ウカノミタマ
性別:女性
識別:シキガミ
職業:伏見稲荷主祭神の入った藤野の専用シキガミ
ステータス:レベル10
耐性:物理耐性・氷結弱点・電撃無効・破魔無効・呪殺無効
スキル:メディラマ(味方全体・HPを中回復する)
    テトラカーン
    (味方全体・1度だけ物理攻撃を反射する)
    昂りの歌(味方全体・攻撃力が1段階上昇する)
    ペトラディ(味方単体・石化状態を回復する)
    回復ギガプレロマ(回復魔法の威力が大きく上昇する)    
    道具の知恵・癒
    (回復・補助アイテムが獣の姿でも使用可能になる)
    獣変化(白面九尾の仙狐の姿に変わることが可能)
    呪殺無効(スキルカードによる弱点消去)
    シキガミ契約のため主人以外からの精神状態異常無効
装備:巫女服(ガイア連合製霊装)
詳細:
 稲荷信仰の総元締めにして千三百年続く京都伏見稲荷の主祭神
 肩で切り揃えた白銀の髪と白い肌に白銀色の九尾のある豊満な狐耳美女姿
 着ている服は巫女服と青を基調とした私服を着用している
 この姿は藤野が持つ高級シキガミと同調した時で中身は本神そのもの
 本霊の姿の時は金色の九尾狐か金髪九尾の狐耳の美女の外向け姿をしている
 同調するのは普段の激務の間の休憩時間の時で完全に素の状態になる
 その姿は甘味やゲームや漫画に耽溺する疲れた休日の管理職のOLそのもの
 同調していない時は保存のために派出所内の彼女専用の私室で眠っている
 藤野が外様神に核迎撃に与えられるシキガミ体を購入して献上した
 シキガミ所有の権限として一番の氏子である藤野を指定している
 容姿のイメージは「アズールレーン」の「加賀」にそっくり
 
【伏見稲荷大社】
京都市伏見区深草藪之内町にある稲荷山の上にある枕草子などの古典にも出る神社
創建は708~715年の間で千年以上の歴史を誇る朝廷から正式に認められた式内社
五穀豊穣から時を経て商売と産業隆盛・家内安全・交通安全・芸能上達もご利益になった
全国にある数万はあるという稲荷神社の総元締めで屋敷神や祠も入れると桁は2つ上がる
伏見稲荷の祭神は宇迦之御魂神を含めて以下の4柱の神が祀られている
猿田彦神と同一視され伏見稲荷の中社の祭神である交通安全の神、佐田彦大神
古書の古語拾遺に天照の内向きの侍女とされる上社の宮殿平安の女神、大宮能売大神
由緒がはっきりと分からず土着神的な地主神と思われる下社の田の神、田中大神
田中神以上に由緒不明で1柱か4柱なのかも定かではない中社の摂社祭神、四大神
カオ転世界のここではウカノミタマの秘書的な役割をして常時全国の稲荷神と通信対応中
もしくは他の京都などの近隣の神仏からの神側の干渉への対応も行なう場合もある
トップの裁断が必要な場合、大宮能売神が部屋に籠もった彼女を引きずり出してくる

名前:カトーニキ(加藤哲郎・かとうてつろう)
性別:男性
識別:転生者(ガイア連合)・29歳
職業:ガイア連合伏見派出所所属陰陽師
詳細:
 拙作28話に登場した京都の陰陽師系黒札で藤野の補佐もする幹部
 背が170ちょうどのぽっちゃりとした体の眼鏡をした凡庸な容姿
 元は京都で辻占いで生計を立てるまでに落ちぶれた名家の出身
 両親の圧と仕事上での理由で藤野の斡旋で見合いし現地の女性と交際
 子供が出来てそのまま石清水八幡宮の神職の家へ婿入りになった
 通称が「加糖」になる程、実は大の甘党で糖尿病予備軍の甘味好き
 現地嫁とその妹に加えFGO義経な嫁シキガミにも毎夜搾られて最近痩せた

名前:木っ端テングニキ(伊都奈三郎・いつなさぶろう)
性別:男性
識別:転生者(ガイア連合)・19歳
職業:ガイア連合伏見派出所所属黒札
詳細:
 拙作26話に登場した京都の黒札で若手の戦闘班のリーダー幹部
 実家が密教と仏教が混ざった宗派の家だった転生者
 中肉中背の引き締まった身体だが凡庸な容姿の男性
 幻魔クラマテングへの悪魔変身能力を持つ若手の実力者
 得意のウォッチャーのスキルで使う使い魔は鴉の姿をしている
 山田千歌と深田澪という現地名家の二人とデキ婚している
 痩せたカトーニキを見て専用シキガミは女性でなく錫杖型にした

幼女ネキ:
タマヤ与太郎さん著「【カオ転三次】TS^2ようじょの終末対策」より出典

脳幹ニキ:
ポポァさん著「【カオ転三次】本霊デビルなの バ レ バ レ」より出典

このお話は幼女ネキが京都に来て宇迦之御魂と接見した直後のお話になります。


読んでくださった方がいるならありがとうございます。
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