一部の人には不快な表現がありますので見る方は注意してください。
時系列としては、終末に突入してかなり経った頃です。
「こんにちは、係長さん。少しいいかしら?」
「おや珍しい、インセルネキじゃないか。支部の事務に来るなんてどうしたんだい?」
「終末になってから、地方のシェルター経営に失敗して山梨に逃げ帰る黒札が増えたでしょう?
そのうちの一つを購入したいと思って来たのよ」
世界が終末をむかえてからしばらく経った頃、山梨第2支部の受付をまとめている黒札の係長のところに【インセルネキ】と自称している女性が訪ねてきていた。
“インセルネキ”、本名は『桂木初音』と言うが、長い黒髪と垂れ目で清楚な雰囲気の美少女であるがメートル超えの大きさの胸と蠱惑的なボディラインを持つ容姿の、前世が男性である現女性のTS転生者の黒札であった。その容姿はガイア連合の転生者にありがちな前世の創作物にモデルが有り、彼女自身は嫌悪しているそのモデル元はアニメにもなった男性向けの18禁成人作品において相手役の男に身体をひたすら貪られるメインヒロインであった。
彼女にとっては呪わしいその容姿は今世の彼女の人生にも暗い影を落としていた。
母であるよりも女である事を優先し実の娘の容姿に嫉妬する母親、娘の容姿を仕事に利用する事だけを考え誰に差し出そうかと相手を探す父親、その大人しそうな容姿から簡単に関係を持てそうだと迫ってくる学校の男達、彼女に男が群がるのを嫉妬し陰湿ないじめを繰り返す学校の女生徒達とさながら煉獄のような地元での生活であった。地方の旧家の家柄でもある古くからある旅館の経営者の家という事もあり、その年まで差し出されずに純潔のままでいられたのは少なくない幸運であったのだろう。
それに転機が訪れたのは高校2年の時で、出るという噂の心霊スポットにいじめの首謀者達に拘束されて放置され本当に出た死霊に会って逃げ惑ううちに覚醒して男性としての前世の記憶を思い出し、それまでの従順で耐える健気な性格だった今世の性格は消えて逆に低位の幽霊を殴り倒していた際に霊地の巡回していた地元の組織の人間に救助され、その組織はガイア連合の支部の傘下だったのが彼女が転生者として連合に合流出来た経緯であった。
地元の関係者を見限って一人で山梨に移住し、修業を続けてレベルが上って強くなり出来ることの幅が広がり術者としても高位になった彼女は自身の根源を皮肉る意味で『インセルネキ』と自称するようになり、自身の生涯の目的のために若さを保ちつつ行動を続け気がつけば終末を迎えていた。
彼女のその問いに、係長は棚からリストを記した書類の束を持って来るとそれを示しながら答えた。
「確かにそういう人物が増えているのは確かです。
いくつかはご紹介できそうですが、ご希望はありますか?」
「……そうね。
出来るだけ影響が及ばないように大型の支部から離れた場所で、人数は小さな町ほどのが最適ね。
それとこちらから研究資材と機器をいくつか運ぶから輸送が可能な場所がいいわ」
「それですとこの辺やこれなんかが良さそうですが、地方のシェルターとか買い取って経営でもするんですか?
技術部でもかなりの実力者でシキガミのコアの作成も出来る貴女が?」
そう係長に聞かれた彼女はその蠱惑的な唇を歪め意味深に微笑むとこう答えた。
「わたしがこう名乗っているのは前世と今の自分とを自嘲した結果だけど、それに関する事でもあるの。
ちょっとばかり理想の社会の実現のための実験をするためにね」
「……はあ、判りました。
提示された金額でその条件が満たせそうなのはここですがよろしいですか?」
「……ええ、ここでいいわ。手続きをお願いね」
「了解です。
1週間後には諸々が終わると思いますので、無理のないように頑張ってください」
「ありがとう。それじゃ」
そうやって手を振って事務所を出ていく彼女の姿が係長が見た彼女の最後の姿でもあった。
ーーーーーーーーーー
インセルネキが山梨でそんな会話をしてから約百年と少し後。
「田中くん、女性移住者の件はそちらで処理してくれ。
あと今、支部長はどちらにおられる?」
「今日は工場の奥で研究されているのではなく、外に出て周囲の悪魔を間引いておられます」
「いつものように大剣を持ったバカでかい老人と二人の女神様を引き連れていましたよ」
街を結界と頑丈な壁で周囲を覆われる形の地方シェルターの市役所の執務室においてそう部下である男性達と会話していたのは、ここの地元民の代表者をしている【中禅寺雄太郎(ちゅうぜんじゆうたろう)】という名の中年男性であった。
彼の父はもともとはここの地方の与党系に所属するうだつの上がらない二流議員であったが、終末時の混乱で生き残った数少ない覚醒した政治家の一人である彼の父はここのシェルターの基礎を築いた地元出身の若い黒札と協力して地元を守ろうと行動していて代表者にとその黒札の男性に父が選ばれたのが今の地位にいる理由であった。
「炭鉱の方はどうだ、鈴木くん?」
「採掘は順調ですよ、代表。
石油やガスは希少ですし、薪だってこのご時世ではなかなか手に入らないので売上も一定の水準を保っています。
警備隊の覚醒者たちの訓練にもなりますし、手に負えない大物は支部長が潰してくれますしね」
「実際に恐ろしい位の強さですからね、支部長。
何年経ってもむしゃぶりつきたくなるような美少女の姿ですけど」
彼らのシェルターがあるのは、北海道にある留萌(るもい)市と呼ばれる終末前の昭和の頃は炭鉱で栄えていた地域である。 北海道北部の西側にある港町で半終末前までは約2万人の人口があった斜陽の地方都市だった。
1960年代の炭鉱の閉鎖、1970年代の地場産業のニシン漁や数の子とタラコなどの水産加工業が近隣との競争に負けての衰退、80年代の失業者対策のインフラ事業と土木事業者の増大による市の債務の増加、90年代には箱物建設の終了と土建目当ての木材加工・輸入事業者の撤退、海運局の旭川移転と海上保安局の小樽への統合が重なり斜陽の街と化していたのだ。
シェルターの成り立ちはこうである。
半終末前にここが地元の転生者が黒札としてガイア連合に参加し、他の地方出身者で地元に愛着のある者と同様に故郷を守りたいと考えて行動し支部ではなく派出所レベルのシェルターを建設して他の地方の真似をして廃坑になった炭鉱の異界化による復活と採掘の再開を促し、終末後の安価な燃料の供給というシェルター経営のプランも立てる事ができる程度にはその転生者の彼も優秀ではあったのだ。
ただ終末時の混乱で襲撃してきた悪魔の群れが海から上陸して来たクトゥルフ系の水魔であり、撃退は出来たもののSAN値減少による狂気化対策までは手が回っていなかったのが災いし精神に深い傷を負った彼が療養の長期化により山梨へ帰還する際にここを手放したのは仕方がないとも言えるだろう。
そのシェルターをインセルネキが買い取ったのが現在から100年程前の事であった。
「まあ、我々はあの方が建てた工場で生まれてシェルター直轄の育児施設で育ったからな。
12歳の時に父の元の引き取られるか施設で成人まで過ごすかは自由だが、私は父が代表で後継者の私はこうして父のもとで教育を受けたが君等はどうだった?」
「代表みたいに引き取られるのは父親が裕福か実力のある場合だけですよ。
僕らみたいのなのは義務教育を終えたら就職ですよ」
「そうそう、そんなものです。
ちゃんと素質を見極めて希望を聞いてくれるから安心ですし」
100年程前の終末直後にこの地へと大量の資材や覚醒者の建設業者と乗り込んできたインセルネキは、市街の外壁と結界維持のための施設に加え自分の城となる住居兼用の研究施設でもある大型の工場を市街の中心部に建設していた。その工場で主に生み出されるのは人間の男性であった。
導入当初、普通なら反対運動が起きてもおかしくはないが、終末後のシェルターであるという環境と男性が遺伝子提供して男子のみ工場で大量生産されるという形なので生き残った多くの日本人女性からすれば所詮は他人事だった。男性からすればいささか腑に落ちないこともあったが、遺伝子提供は自分の子どもを残したい男性が志願して行うものであったし、生まれた子供はシェルター直轄の施設で育てられるので男性が何の責任も金銭的な負担をかけることなく自分の遺伝子を残せる好都合な事だった。それが嫌ならば女性と結婚すればいい、との回答に生き残るのに必死だった当時のシェルター民は消極的にこの制度を受け入れた。
人間の男性が工場で生み出されるというディストピアにしか見えない事をインセルネキが行なうのは、山梨で係長に語ったように社会実験の実践のためでありその社会実験とは要約するならば“効率の良い社会の実現”である。
「他のシェルターだと、人間の女がたくさんいてその女達が子どもを産んでいるそうですね。
うちでは子どもの大部分は工場に我々が納めた精子を人工卵子と掛け合わせて人工子宮で産まれてきますからね。
それに人間の女はうちだとほとんどいないですし」
「そりゃそうだ。
うちは結婚と出産に育児は工場と施設が代替してくれるし、性処理なら二次元のものか造魔がいますからね。
人間の女とする必要もないでしょう。面倒だし、外から来た奴だと病気を移されるかもしれない」
「おいおい。支部長は何も家庭や自然生殖は否定していないぞ。
数は少ないがまだ人間の夫婦もいるし、自然生殖で生まれてくる子供もいる。
施設で習ったように人間の女との結婚、出産、子育て等に一切のメリットがないだけだよ」
「男性のシェルター民が精子を提供すれば、人工卵子を使って人工授精させる。
更に人工子宮がある工場で男だけの子供を工業製品みたいに大量生産する。
生まれた子供は造魔が多数配置された高度に効率化された施設で育てる。
そうやって育った自分たちが言うのもなんだが、効率的といえば効率的だよな」
インセルネキの考える理想の効率的な社会とは『男性中心の女性を極力排除した社会』であった。
彼女がなぜそのような考えや思想に至って拗らせたかは、前世の男性としての体験から来るトラウマや今世での女性としての体験から来る同じ女性への嫌悪に加え、修行中に確信した自身の本霊の影響によるものだが詳しい内容は不快な物のためここでは割愛する。
このシェルターでは効率的な人口統制と社会秩序の確立として昔ながらの結婚、出産、子育てなどは推奨されていない。その理由は、そのやり方だと効率が悪く人口調整に不確実だからだ。現代日本でも長らく少子高齢化が問題視させて政府は様々な政策を行っているが十分な結果は出せていない。長く続く不況や所得は増えないのに税金が上がる国内の問題もあるが、生殖には女性頼りの効率が悪くて不確実な手段を用いているからだ。
ここの男性達が述べたような技術的な面をクリアして毎年、子供をどれぐらい増やすか調整して大量生産すれば、世代間のギャップによる少子高齢化問題なんて未然に防げてしまうだろう。
故にここのシェルターでは覚醒した者への優遇は他の場所と同様であるが、シェルター内で仕事に従事する普通の市民としては結婚、出産、子育てなんて評価や優遇の対象にはならず人間生産工場や育児施設を賄うための税金を払って貰った方が有益だと上には評価される。また別に禁止はしていないので古典的な結婚や家庭を持つ男も少数ながらいるが、それは妻子を養わないといけないから結婚なんて“贅沢品”となっているため一部の裕福な人物に限られる行為である。
その結果として30年ほど経過した頃には食料の自給も石炭の輸出による経済と財政も上向きになっていたが、逆に30歳以上の女性の半数以上が独身という有様で既婚者の多くが50歳以上で若い女性の既婚者はかなり少ない状況であった。
その原因の一つは結婚を必要とする男性が激減した事だった。
元々、男性にとって結婚は性欲解消と自分の子供を残せるという点以外はリスクとデメリットばかりで旨味が少なかったが、このシェルターでは自分の子供を残したければ工場に遺伝子を提供すればいいのだ。そうして生まれた自分の子供に関しては男性が希望すれば引き取る事ができたので、托卵されるリスクのある結婚よりも確実に自分の子供を得られるというメリットがあった。
加えて、安楽死の制度化にも踏み切ったのが影響していた。つまり、安楽死によって大部分の未覚醒者の孤独死が回避されるようになったので結婚の価値がまた下がるという結果にも繋がった。いうまでもなく、これはシェルター上層部による老人への予算削減の為の政策だった。
人間の女性がごく少数の静かなマイノリティであるのが望ましいインセルネキとしては、こうした状態を維持すれば非効率的な女性を削減できるのは願ったり叶ったりで実際にこのシェルターのみでとはいえその効果は採掘をする炭田の範囲が初期の2倍近くまで増えているのが上手く行っていると示しているだろう。
「そう言えば、代表のところの造魔は元気です? 前はよくお弁当を届けに来ていましたけど」
「私もこんな年だろう?
後継者になるような子どもを二人ほど工場から引き取って彼女が面倒見ているから、ここには姿を見せないんだよ」
「そうだったんですか。
あの造魔って金や大きな功績を上げた銀のカード持ちじゃないと支給されないものですからねぇ。
ブロンズの俺なんかだと手に入りませんよ」
「その代わり、カード持ちは発散したいならDDSネットでその手の物はすぐに手に入るじゃないか。
俺は女の身体は好きだけど現実の女は嫌だから二次元だけでいいよ。
その手の玩具も何故かガイア連合の通販サイトだとよりどりみどりだし」
「そういうの作っているの山梨の本部でしたっけ?
ほんとラ◯ドールといいオ◯ホといい連合の通販は侮れないな。
その手の漫画や動画なんかもすごい実用的なんだよなぁ」
ここで彼らが言う“造魔”とは原作におけるドリーカドモンを使用した特別な悪魔ではなく、インセルネキが簡易シキガミの技術から作り上げた黒札用の高級シキガミを模倣した文字どうり“人造の悪魔”の略語であり人間の女性の代わりである事を期待して作られている新世代の“女性”であった。
正式な名称は“造魔リリム”となり記録上ではその後に登記上の番号が割り振られるのだが、シキガミの肉体としては黒札用の高級シキガミと量産型の簡易シキガミの中間の性能の肉体とコアの部分にはインセルネキだけが召喚する方法を知る【幻魔リリム】がシキガミコアの代わりの基本霊基として使用されている。
リリムと言えば【夜魔リリム】が一般的である。だが、それらのリリムはユダヤ伝承の一説に従えば人類最古の女性リリスがアダムと離縁された後で悪魔と交わって無数に産んだ娘であり、インセルネキが召喚する『幻魔リリム』はリリスがアダムと復縁して産んだ人間としてのリリムである。“リリム”とは『リリスの娘たち』という意味でもあるので父親違いのリリムが2種類存在する事となり、より悪魔に近い方が夜魔でより人間に近い方が幻魔となる傾向が見られた。
その証拠に、原作において幻魔の種族の悪魔とされる者達はそのほとんどが神話の英雄や半神半人と伝えられる者達である。
それに加えて造魔のコアになる際の契約内容の文章も従来の高級シキガミに匹敵する門外不出の厳重さであり、女性の裏切りや虚言がトラウマとなっているインセルネキの執拗さが伺い知れる内容となっていた。それ故、ここで作られる造魔の女性達は伴侶となる男性をATM扱いして軽視する事など無く男の思い描く様な理想の美女となっている。
そしてそれらの造魔は愛玩用、性欲処理用、家事などの労働用、重要施設の警備と作業員用などの用途があり、また身分証となる金や銀のカード持ちにだけ配給されるシェルター内の男性にとっては高嶺の花となる存在でもあり、それを傍に置く男は仲間内の通販サイトに夜のお世話になっている男達から尊敬される習慣となっていた。
「そう言えば処理を任された移民の女達はいつものように処理していいんですよね?」
「ああ。
こっちの役に立つ覚醒者やカード持ちだったら周辺区画の警邏隊の一員にしてくれ。
それ以外は反対するやつも外壁外のスラムに放り出せ。無価値な女は必要ない」
「当然の処置ですよね。
支部長やなんかの黒札の方々は除いて、女には近寄らない方がいいと施設で教えられましたからね」
「もともと女は嘘をついて相手を悪者にして自分を被害者ぶる連中だったからな。
知人の女に付き合っていた彼氏の捏造や誇張した悪口を言うのは日常茶飯事で、その女が彼氏の知り合いであってもお構いなしだったらしい。
それに、他所の男と子どもを作って育てさせる“托卵”とかいう裏切り行為もしていたそうだ。
つまり、男の立場なんて考える連中じゃないのさ」
「まったく冗談じゃない。そんな連中とは関わりたくないぞ」
「それが分かっているから、うちのシェルターはこういう処理方法になっているんじゃないか。
大体俺たちは男だけでやっていけるから、外からの女なんて危険分子はいらないよ」
長年の工場での男性生産制度が進んだ結果、シェルター内での男女間の分断が進んでいた。もちろんそうなるように、シェルターの育児施設で育った男子達には女性の負の面を含めて男女間の事を詳しくありのまま教え教育していた。思想的に人間の女性は自分たちには不要であると考えるように。
終末後という環境は女性をひたすら利益のために賛美するメディアも、女性の証言はそのまま採用する推定有罪というふざけた状況の司法も、女性専用車両やレディースディなどの女性への優遇もすべて過去の遺物として失わせるものとなっていた。
基本的に女性の雇用を敬遠するこの時代のこのシェルター内での女性の働き口は、特に未覚醒であると悲惨の一言であった。
覚醒したならば警らや外壁の防衛隊などで一定の働き口はあるが、未覚醒だと悪魔の出没する郊外の農場での作業も危険であるし娼婦は壁外のスラムでしか糊口をしのげず特に工場育ちの男達からは敬遠される存在となっていた。それというのも育児施設内で行われる男性の子供たちへの教育内容が義務教育で女性の悪い部分を具体的に教えられているのも関係しているだろう。
それなので、未覚醒の女性の大部分は無職になるか起業してなんとか働くかが大部分であった。
もしくは結婚して専業主婦になる道を選ぶという茨の選択もあるが、結婚したがる男は少ない上に比較対象が不老で人間よりも美しい造魔や二次元の女性だから経済的に裕福で結婚に積極的なごく少数の男を捕まえないといけないという道が待っていた。
また、他のシェルターへの移住はコネがなければ命がけで自力で行なうのが基本であり、このシェルターにいる未覚醒者の女性にそんな幸運に出会う人物はほぼ皆無であった。
「後は支部長がお戻りになってから裁決してもらう件だけだな。少し休憩に入ろう」
「「はい、代表!」」
100年経って世代交代が進み、インセルネキの思惑が進んだ現在の留萌シェルターではそれが当たり前であった。
ーーーーーーーーーー
彼らがそんな話をしている頃、シェルター外の巡回をしていたインセルネキはこちらに向かって進撃してくる悪魔の群れと遭遇しそれとの戦闘に入っていた。
『【マハタルカジャ】、【銀河烈星拳】!』
『【アローレイン】、【タスラムショット】!』
「おおおっ!【冥界破】【モータルジハード】!」
『『『ギャアアァアッ!!』』』
元気系金髪美少女の姿をした悪魔が夜魔の群れに無数の拳を放つ攻撃を行い、それを受けて散り散りに逃げようとする夜魔達に緑の長髪の美少女が手に持った弓から無数の矢を雨のように天空から降り注がせ、最後に群れを率いていた夜魔のリーダーである【夜魔クイーンメイブ】諸共に長い髪とヒゲをたなびかせた王冠と金属鎧を身につけた偉丈夫の老人がその両手に持つ大剣を振るってそれらの群れにとどめを刺した。
『……あ、あ。……助けて……』
「これがリーダーね。……ふん、夜魔クイーンメイブか。レベルは56と。
サキュバスとかの夜魔ばかりかと思えば、とんだ大物がいたようね。
まあ、経験値の足しにはなるかしら?」
身体を切り裂かれ四つん這いで這って逃げるメイブを踏みつけて、100年経ってもその若さに陰りのないインセルネキはアナライズをして群れのリーダーの正体を確かめた。周囲を警戒する仲魔の女神アルテミスの【アルテ】と地母神ダイアナの【ディアナ】をちらりと見て、メイブの首筋に剣を突きつける専用シキガミの【グウィン】と共に彼女はメイブに話しかけた。
「ここの事はどこで知ったの?
ここはわたしが守るガイア連合のシェルターなんだけど?」
『こんなに強いのがいるなんて聞いてない。……リリス様』
「リリス、ね。あのリリムを召喚している事が気に入らないのかしら?
最上位の夜魔であっても、所詮は女か」
『……た、助け……』
「遊び半分で来た強盗に情けをかける義理はないわ。しかも、悪魔である上に女に!
死になさい、【ウィルビウスの魔弾】」
『ガフッ』
そう言ってインセルネキの翳した右手から放たれた強弓で使われるような矢の形のそれは、勢いよく飛び出しメイブの頭を四散させると地面に深い穴を穿った。マグネタイトの赤い霧になり消えていくメイブを見てため息を付くと、インセルネキは仲魔たちに声をかけた。
「……はあっ。
リリスの事は気になるけどそろそろ戻るわ、グウィン、アルテ、ディアナ」
「承った」
『OK。これが最後みたいね』
『さっさと帰りましょう。シェルターが心配です』
アルテとディアナを取り出した封魔管に戻すと、インセルネキはグウィンのトラポートによる転移でシェルターへと帰還した。
この後、数十年掛けて南の石狩炭田も範囲に加え終末後の安価な燃料である石炭の産地として留萌シェルターは繁栄していくことになる。女性を忌避し男性だけが多く暮らす他にはない独特なシェルターとして。
どっとはらい
後書きと設定解説
・主人公
名前:インセルネキ(桂木初音・かつらぎはつね)
性別:女性
識別:転生者(ガイア連合)・不詳
職業:ガイア連合山梨支部技術部技術者
ステータス:レベル67
耐性:破魔無効・呪殺無効(装備)
スキル:悪魔召喚(封魔管)
ウィルビウスの魔弾(オリジナル)
(敵単体・大威力の銃撃属性攻撃。
対象が女性の場合、以下の効果が連動する
「相性耐性・カーン系・防御力を無視して貫通し、
与えるダメージが2倍に増加する」)
極上の肉体(敵全体・中確率で魅了を付与する)
霊媒体質(気功・中)
(戦闘中、行動順になる度にMPが小回復する)
上げマン(オリジナル)
(自分と恋人関係のある男性の味方単体が何らかの判定を行う際、使用できる。
その判定に+40%の修正を与えると共に判定値の1/4でクリティカルする)
見鬼(アナライズ)
道具知識(オカルト品への深い知識)
アイテム作成(専門のアイテム作成技術)
装備:追儺の弓(特定種族悪魔に特効ダメージのある桃の木製の霊装弓)
ダーククラウン(精神無効を付与した黒い冠霊装)
千早付き巫女服(ガイア連合製防具霊装)
呪殺・石化無効の指輪
頑丈のピアス(毒・麻痺・病気・目眩無効を付与)
スマホ型COMP(アナライズ・エネミーソナー・百太郎)
詳細:
全国に支部が建設された頃に合流した女性の転生者
長い黒髪とメートル超えの爆乳にタレ目の清楚な雰囲気の美少女
前世は男性で結婚相談所勤務の上、中年の年齢の頃痴漢冤罪で全てを失って死んだ
直接の死因は冤罪を仕組んだ女性達を全員殺害後に自首し死刑になったもの
これらの経験から自身を含めた女性に対して深い嫌悪がトラウマと心の奥底にある
そのため今世では母親と仲が悪く学校でも周囲の女性から陰湿ないじめにあっていた
いじめの発端は彼女の美貌への妬みから彼氏を寝取ったという言いがかりが始まり
陰湿ないじめの一環で心霊スポットに拘束され閉じ込められた時に死霊に出会い覚醒した
覚醒した際に前世の記憶も戻り大人しい従順な性格は消えて男らしい感性が復活した
死霊を撃退し脱出後に地元の霊能者と出会いガイア連合に紹介され合流した
合流の際に両親を含めた地元の人間を深い諦観から見限り一人で山梨へと移住した
山梨での修行中、封魔管の技術と仲魔たちを会得し一気に強くなれた
さらに召喚師の才と霊媒体質からシキガミコア作成にもよく参加していた
彼女の名称が示す自分の考える理想の社会の実現のためにいろいろと行動している
「インセル」とは「不本意の禁欲主義者」「非自発的独身者」と訳される女性蔑視思想
彼女の本霊は女神アフロディテの奸計に殺されたギリシャ神話の男性ヒッポリュトス
ヒッポリュトスの死因が馬のため、馬に関する事全部が苦手
【人工子宮と人工卵子】
インセルネキの計画の根幹をなす彼女が作り出した独占技術
メシア教の救世主再誕計画で使われたクローン技術と高級式神作製技術を組み合わせたもの
人工子宮はクローン技術を応用した機械仕掛けの子宮を用いて子どもを産み出す仕様
人工卵子は最初は自身の卵子を加工し後にはそれらを複製した物を使用している
方法としては任意の精子と人工受精させた後、人工子宮に収めて妊娠と出産をさせる
専用のマザーマシンを作製しているので男子と人工卵子の量産は可能となっている
【造魔リリム】
簡易シキガミの技術を使いシキガミの身体と悪魔の魂を持つ人間の女性の代替物
インセルネキの考える理想社会で不要な女性を排除した代わりを務める目的で開発した
基本的にこのシェルターの中で功績のあった男性や工場産の男に与えられる特別なもの
式神が基本OSなので人間の女性のように相手の男性を粗雑にはしない仕様になっている
傲慢で強欲で被害者意識と他責思考が強く嫉妬深く嘘や陰口を言って裏切る女でない女性
女性型造魔のコアの基本霊基は「幻魔リリム」のものを使用する
【幻魔リリム】
リリムとは元はメソポタミア神話において人間を襲う夜の悪霊・悪魔を指す名称
名称の単数形では「リリン」で複数形で「リリム」とされている
伝承や記録においては世界最初の女性「リリス」の娘たちを指す名称ともされている
ユダヤ伝承の一説によるとリリムには2種類おり、父親によってそれぞれ分けられる
一般的な「夜魔リリム」はアダムと離縁されたリリスが悪魔との間に無数に生んだ娘を指す
ここで上げる「幻魔リリム」はリリスがアダムと復縁し彼の子供として産んだリリムを指す
このリリムは本当に希少でインセルネキも資料を漁り幸運にも召喚できたものだった
人としての夫を求める幻魔リリムとシキガミとしての契約の固定により造魔のコアとなった
こうしてインセルネキの考える理想の女性にして現実の女性に替わる新しい「女」が完成した
【ヒッポリュトスの逸話】
父親はミノタウロス退治の英雄にしてアテナイの王テセウス
母親はアマゾネスの王女の一人とされている
幼少の頃、父の女性遍歴を垣間見てそのドロドロな男女関係に嫌気が差す
長じて処女神アルテミスに生涯童貞でいると誓いを立てて女神に仕え出す
その誓いと優秀な戦士である事から男ではあるが女神の傍仕えとして重用される
彼の月女神の自慢を己への侮辱と思ったアフロディーテの怒りを買う羽目になる
女神の呪いにより彼の継母であるパイドラーが彼に惚れて関係を迫るようになる
ヒッポリュトスは当然の事からその求愛を拒否して痛烈な女性批判をしはね退けた
それを恨んだ彼女は彼に性的乱暴されそうになったから自害すると書き置きし自殺
父親のテセウスはその妻の書き置きを真に受けて息子のヒッポリュトスを追放する
さらに、怒りの収まらないテセウスは父神ポセイドンに頼み息子の死を願った
願いは叶えられ、海岸沿いを馬車で走る彼にポセイドンの怪物が襲いかかった
その怪物に驚いた馬が暴れてヒッポリュトスは馬車から落ち暴走馬に轢かれて死亡した
アルテミスに真相を伝えられ驚き後悔したテセウスの腕の中で彼は死亡したという
その後、アルテミスの執拗な要請により医神アスクレピオスによって蘇生された
この蘇生の件によりアスクレピオスはゼウスの怒りの雷により死亡する
蘇生後、ゼウスから逃れるためにヒッポリュトスは老人の姿の森の神へとなったという
・関係者
名前:グウィン
性別:男性
識別:シキガミ
職業:桂木初音の専用シキガミ
ステータス:レベル62
耐性:物理耐性・火炎耐性(装備)・破魔無効・呪殺無効
スキル:モータルジハード(敵単体・大威力の物理攻撃)
火龍撃(敵単体・力依存の中威力の火炎属性攻撃)
冥界破(敵全体・大威力の物理攻撃)
カバー
(味方単体・味方のダメージを代わりに受ける)
トラポート(自身と味方数名・長距離の転移が可能となる)
物理ブースタ(物理攻撃の威力が上昇する)
奈落のマスク
(状態異常になる、即死する確率を大きく減少させる)
エネミーソナー
シキガミ契約のため主人以外からの精神状態異常無効
スキル(汎):会話・食事・剣術・格闘術・性交
装備:クレイモア(中世の両手剣型霊装武器)
大王の鎧(モデル元デザインのプレートメール型防具礼装)
薪の王冠(火炎耐性を付与された王冠型の霊装)
詳細:
桂木初音が初めて手に入れた中世の騎士の姿の専用シキガミ
長く多い白いヒゲと長髪をした眼光の鋭い老人の姿をした偉丈夫の容姿
自身を護り自身に代わり前線で敵をなぎ倒す事だけを求めて作られた
全身を金属鎧で包み両手用の大剣を振るい忠誠を誓う騎士のような性格
主人1人分の血肉が加えられているためか志向や嗜好が主ととても似ている
そのため敵対した女性の姿をした者にはとても冷酷に対応する
容姿のモデルは「ダークソウル」の「薪の王グウィン」
名前:アルテ
性別:女性
識別:女神アルテミス
職業:インセルネキの仲魔
ステータス:レベル55
耐性:火炎弱点・氷結無効・電撃無効・破魔耐性・呪殺耐性
スキル:銀河烈星拳(敵全体・ランダムに15回の小威力の物理攻撃)
脳天割り(敵単体・中威力の物理攻撃。
中確率で混乱を付与する)
サマーソルト(敵単体・中威力の物理攻撃。
3ターンの間、防御力を2段階低下させる)
マハタルカジャ
(味方全体・3ターンの間、攻撃力を1段階上昇させる)
武勇の権化
(自身の物理攻撃のダメージが15%増加し、
最大HPが15%増加する)
鋼鉄の純潔(防御中、相性を無視して貫通する効果を無効化する)
詳細:
ギリシャ神話に登場する月と狩猟と貞淑を司る処女神にしてアポロンの姉
古代ローマ神話のセレーネー、ヘカテー、ダイアナと同一視されている
インセルネキとは本霊の縁でデビオク経由で仲魔になった
ほぼ同一存在のダイアナの事はライバル視している
容姿は真・女神転生5Vのショートカットの元気娘な姿をしている
名前:ディアナ
性別:女性
識別:地母神ダイアナ
職業:インセルネキの仲魔
ステータス:レベル55
耐性:銃反射・衝撃弱点・破魔耐性
スキル:アローレイン(敵全体・中威力の銃撃属性攻撃)
タスラムショット(敵単体・中威力の銃撃属性攻撃)
マリンカリン(敵単体・中確率で魅了を付与する)
リカーム(味方単体・HP半減で死亡から復活させる)
銃ハイブースタ(銃撃属性攻撃の威力が大きく上昇する)
銀の月の加護
(周囲の味方に状態異常耐性を付与する)
詳細:
古代ローマの地母神。狩猟の女神でもありギリシャ神話の女神アルテミスと同一視される
山野の野生動物の女主人で、誕生や多産を司ると共に人間や獣の子の守護者でもある
男嫌いで結婚を拒み美しくありながら純潔を守る誓いを立て妖精ニンフたちを従えている
後にキリスト教の影響で「魔女の女王」とされた
インセルネキとは本霊の縁でデビオク経由で仲魔になった
ほぼ同一存在のアルテミスの事はライバル視している
容姿は遊戯王の「召命の神弓-アポロウーサ」の姿をしている
名前:中禅寺雄太郎(ちゅうぜんじゆうたろう)
性別:男性
職業:留萌シェルター現地民代表・48歳
ステータス:レベル6
耐性:破魔無効・呪殺無効(装備)
スキル:霊視(簡易アナライズ相当)
政治知識(議員をする上での職業知識)
蛇の道は蛇、隠密行動、説得、根回し
装備:男性用オーダーメイドスーツ(連合製霊装)
呪殺無効の腕時計(男性用)
魅了無効の護符
詳細:
インセルネキが購入した黒札が逃亡したシェルターの代表をしている元北海道議会議員の息子
父親はうだつの上がらない与党系の2流議員だったが他の有力者が死亡し繰り上げで就任した
このシェルターの生まれで終末後に育った2世に当たる工場産の男性の一人
シェルター民代表に就任して長く政治感覚は優れているが、父親に似て運が悪い苦労性である
身につけている装備はインセルネキから渡された引退した父からのお下がり
インセルネキそっくりの「初音」と言う名の造魔を信頼の証として下賜されている
名前:草壁係長
性別:男性
識別:転生者(ガイア連合)・30代
職業:ガイア連合山梨第2支部総務部係長
詳細:
山梨第2支部で受け付け事務の取りまとめ担当の係長をしている
田舎の役場にでもいそうな眼鏡をした容姿の平凡な男性転生者
一応覚醒して本名は別にあるが皆には「係長」と呼ばれている
わりと毒舌な部分があるが真面目で善良な性格
妻帯者で娘二人の名前は「皐月」と「芽衣」
・敵対者
【夜魔クイーンメイブ】
レベル56 耐性:火炎耐性・電撃弱点・衝撃無効・毒弱点
スキル:アギダイン(敵単体・大威力の火炎属性攻撃)
マハザン(敵全体・中威力の衝撃属性攻撃)
セクシーダンス(敵全体・中確率で魅了を付与する)
エナジードレイン
(敵単体・小威力の万能属性HPMP吸収攻撃)
無慈悲な一撃
(敵の弱点をついた時、ダメージが20%増加する)
眷属召喚(眷属の下位の夜魔の女性達を召喚する)
詳細:
ケルト神話におけるクー・フリンの逸話の敵役である女王メイブ
豪胆で高慢かつ大変な負けず嫌いで淫乱というトラブルメーカーな性格
この性格が災いしアルスター伝承で最大の戦乱を招く結果になった
今回は人間の男が多く暮らす集落があると聞いて襲うべくここへ来た
取り巻きとして下位の女性型の夜魔の群れを召喚して来襲した
今回の主人公が名乗る「インセル」とは、カナダ発祥の女性嫌いの過激派思想の集団の事を指す。簡単に言えば、非モテの過激派集団で不本意の禁欲主義者、非自発的独身者と訳されることもある。
実際にアメリカやカナダで襲撃事件を起こすくらい過激な思想で、「殺人を厭わない嫉妬マスクの集団」とでも言えばいいのだろうか。
あまり女性にモテないからと言って犯罪を犯すのはどうかと思うが。
あとギリシャ神話のトラブルメーカーって、種馬(ゼウス)オットセイ(ポセイドン)ヤリチン(アポロン)だけじゃないんですねぇ。
もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。