【カオ転三次】『俺たち』閑話集   作:塵塚怪翁

72 / 78
今回は姫路支部で破魔ネキが支部長になった後のお話

時系列としては、彼女が支部長になりしばらく経った頃です。



 とある姫路支部での騒動の顛末

 

「はいはい。あたしの負けね、お嬢ちゃん。

 日本のガイア連合の黒札にこんなメシア教の悪魔以上の相手がいるとは思わなかったわ」

 

「いえ、市井のダークサマナーにまだこんなとんでもない人がいるとはこちらも予想外でした。

 では、捕まって事情の説明をしてもらいますね」

 

「ええ。

 契約主の女神も事ここに至ってはこれ以上立場を悪く出来ないでしょうしね」

 

 

 半終末になる前の姫路市の一角にて、激しい戦闘というか蹂躙ともいうべき争いが起きていた。

 

 戦闘の舞台となったのは、姫路市内のとある雑居ビルの3~5階を占めていた【自然派ママの会】という子育て支援を標榜するNPO団体の事務所であった。相対していたのは最近新しくガイア連合の姫路支部の支部長となった『破魔ネキ』と呼ばれる美少女にしか見えない巫女服姿の黒札で、もう一方が髪を後ろにまとめた髪型のスーツ姿で一見には平凡な保険勧誘でもしていそうなおばさんにしか見えない中年女性の【太田公子(おおたきみこ)】と名乗っていた女性であった。

 

 太田公子が自分の持つCOMPから喚び出した【妖獣カトブレパス】も【妖鳥セイレーン】もレベル20を超える悪魔であるにも関わらず、破魔ネキと呼ばれる彼女によって鎧袖一触で屠られそれを見た太田公子は手に持っていた拳銃と携帯型COMPを床に投げ出して降参の意を示すために両手を上げているのが現在の状況であった。

 

 その投げ出された装備を破魔ネキの専用シキガミである青と赤の髪色の少女が拾い、後ろ手に太田公子を結束バンドで拘束していく。

 

 

「さて、あたしはこれからどうなるのかしら?

 と言うか、そもそもどうしてあたしの事がバレたのか聞いてもいいかい?」

 

「ここで倒して後腐れもないようにするのもありでしたが、あなたにはあの前支部長だった男の事もあるので支部で話を聞きます。

 バレた理由は簡単で、あの男が全部自供したからですよ。

 それでも、ここまで割り出して誘き出すのには時間がかかりましたけどね」

 

「あの男、金で動くから与しやすかったんだけどねぇ。

 目立たないようにやり取りしていたのに、本当についていない」

 

「さあ、それじゃ一緒に来てください。リュール、連れてきて」

 

 

 リュールと呼ばれた少女により太田公子が表に停めていた護送用の車に連れて行かれ、破魔ネキと入れ替わるようにして後始末のために来た姫路支部の面々がビルへと踏み込んで行く。その様子を見ていた破魔ネキはため息をついて一人呟いた。

 

 

「……本当、あの男は碌でもない事しかしませんでしたね。さっさとこの件も片付けないと」

 

 

 そう言った彼女であったが、今回の話の中心人物となる“太田公子”を名乗る女性の語る話に振り回される事となるのであった。

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 

「……それで用があって訪ねてきた俺に同行を依頼したのは何故だ、破魔ネキ?」

 

「最初は山梨に相談したんですけど、セツニキやショタオジはあいにく手の離せない用事があるので頼れません。

 それなら近場に相談できる黒札がいると言われてました。

 長年、関西で裏の事情もよく知っているというウシジマニキなら、と」

 

「佐川の親父の下で15年ばかし闇召喚師や名家相手の闇金していた俺に、か?」

 

「はい。それにお金を貸していた、だけではないのでしょう?

 私は実力でならそこらの相手には負けない自信はありますけど、政治や経営に関しては本当に素人なので」

 

「……詳しい内容はメシア教のやらかしに匹敵するエグさだから聞かない方がいい。

 まあ、確かにうちの支部長のレスラーニキより遥かに強い修羅勢よりの実力だな。

 見た目はこんなちっこいのにな。……飴ちゃん、食べるか?」

 

「子ども扱いしないでください。飴はいただきます」

 

 

 前述の事件から数日後、姫路支部の支部長室でそうやりとりをしながらウシジマニキから贈答用に持ってきた飴や駄菓子の詰め合わせを貰う破魔ネキの姿があった。

 

 これは処分保留のまま捕縛している太田公子の件で山梨を経由して関西支部で実務を取り仕切っている【ウシジマニキ】に話が行き、新しく支部長も変わり隣接する支部と言う事でちょうど協議したい件もあった彼は姫路支部へと足を運んでいた。前の支部長の頃は基本、支部同士は独立独歩である事もあるがそれ以上にレスラーニキにもウシジマニキにも協力などを持ちかける興味も沸かない人物であったため無視していた。むしろ向こうが集りに来た時にレスラーニキに凄まれて、それ以降は近寄りもしなかったのであるが。

 

 ちなみに、大阪には歴史的にも飴の製造メーカーの本社が多くノーベル製菓、UHA味覚糖、パイン、扇雀飴本舗、黄金糖など全国的にも有名なメーカーも数多く今回ウシジマニキが持ってきたのもそれらのメーカー製品の大阪土産の詰め合わせセットであった。また、都昆布の中野物産、ラムネの島田製菓やコリスなどの有名な駄菓子メーカーの本社も大阪に多いのはわりと知られていない。

 

 貰った菓子の詰め合わせを傍にいたシキガミに持たせて退出させると、破魔ネキは話を続けるように彼に促した。

 

「それでは同行していただく前に、そちらの協議したい内容について教えて下さい」

 

「内容は二つだ。

 まず、そちらが地脈に打ち込んでいるという鉄杭の件。

 こっちの関西では呉のように都市を覆うような大規模の結界を張る予定はないから、各シェルターの結界に影響しないようにだけ注意してやってくれ」

 

「……どういう事です?」

 

「大阪市だけで200万以上の人口があるのに全員を救うなど、リソースの限界からどだい無理な話だ。

 だから、関西支部ではジュネスを中心としたシェルター群により終末を乗り切る予定だ。

 つまり、支部や派出所に個人シェルターなどを含めた甲子園より以東のシェルターの結界には影響が出ないようにしてくれというだけだ」

 

 

 関西の地図を見ていただければ分かることだが姫路と大阪の間に明石と神戸があるのだが、通常関西といえばその神戸の東にある甲子園が存在する西宮市や六甲アイランドのある灘区まで含まれる事が多い。ただ、関西支部としては甲子園支部のある西宮市と劇団保護に邁進する女性黒札達のいる宝塚市あたりまでを西の勢力圏と認識していた。姫路支部の方は西宮市の西、芦屋市から以西が勢力圏と認識していた。

 

 

「ええ。その件は理解しました。

 どちらにしろ、淡路島に繋がるように明石市で一旦南下するつもりでしたので大丈夫だと思います」

 

「2つ目の件だがその関西支部の終末を乗り越える際の計画にも関係あるんだが、神戸のメシアンを殺し過ぎないようにしてくれ」

 

「……私がメシア教を全員殺したいほどに憎んでいるのは常々公言しているので、知っている上での発言でしたら説明をお願います。

 内容によっては考えがありますよ?」

 

 

 真向かいの椅子に座りながらもその小柄な体躯に似つかわしくない漏れ出る殺気に丸眼鏡を掛け直し、ウシジマニキは努めて冷静に話を続ける。

 

 

「話した通り、うちの計画では複数のシェルターで人員を保護するつもりだ。

 その数は終末後の維持を考えても、最大でも数千人がいいところだろう。

 つまり、収容できない大阪の大多数の人間には死んでもらうつもりだ」

 

「それと何の関係が?」

 

「こちらで助けなかった人間は死ぬか難民となって他所に移るかしか選択はない。

 衆生救済の仏教の仏ならいざ知らず、日本の神々は素質のない人間と外国人は助ける気がまるでない。

 大阪から西に逃げた3、もしくは4桁に及ぶかもしれない大量の難民がそちらに雪崩込んだら大変だろう?」

 

「……確かに大変ですね」

 

「神戸には幕末の頃の外国人居留地の関係もあり、兵庫県でも最も教会の数が多く歴史も古い。

 言い換えれば、一神教を乗っ取ったメシア教会のシェルターが多いというわけだ。

 穏健派の看板を掲げ海外の連中とは違うと主張するなら、せいぜいこちらから来た難民の逃げ込む先になってもらおうというだけだ」 

 

「……なるほど」

 

 

 考え込む破魔ネキの前で冷や汗を拭うウシジマニキ。

 

 ウシジマとしては概ね話した内容は事実ではある。だが、彼女には言っていないが日本一多く教会のある大阪を抱える関西支部にとって終末の来訪はそれらを一斉に数を減らす機会でもあるし、神戸には日本最大のモスクや日本最大の広域暴力団の本部もあってそのどちらにもシェルターがあるのは確認済みなので手を出すつもりはなかったというのが本音であった。

 

 

「……心情的には納得はできませんが、連中がやらかさない限りは手を出すのは控えます。

 こちらとしても他の支部と敵対するつもりはありませんから」

 

「そうしてもらえると助かる」

 

「協議したい内容は以上で?」

 

「ああ、こちらはこれくらいだ。それでそちらの用件は?」

 

「……まずはこれを見てください。

 先日、こちらで確保したダークサマナーの証言とその内容です」

 

「拝見させてもらう。…………内容に間違いがないなら、山梨に報告する案件だな。

 それで件のダークサマナーに話を聞くのに俺の同行が必要なのか」

 

「はい。山梨の上に報告を上げるにしてもしっかりとした助言が欲しいのです。

 うちの人たちには国際政治とか海外の裏の社会の暗闘とかの詳しい知識がある人がいないのです」

 

「ああ、やろうか。それでその女は?」

 

「支部の特別室にいます。行きましょう」

 

 

 立ち上がった破魔ネキに続いてウシジマも椅子から立ち上がって執務室を出る。

 行き先は破魔ネキ特製の地下にある牢屋であった。

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 

「おや。やっと処分するつもりにでもなったのかい?」

 

「違いますよ、ダークサマナー。あなたの話が本当かどうか判断できる人を呼んだだけです。

 もう一度、彼に話してください」

 

 

 その地下牢は刑務所のものを模倣した作りで、中にいる薄く笑う女も簡素な作りのジャージ姿でいた。

 もしこの場で魔法や術を行使しようとしても、その牢の内部では一切発動自体ができない特別製であった。

 

 

「こいつがそうか?」

 

「ええ。とんでもない話を持ちかけてきたダークサマナーです。

 実力も相応で、ガイアレベル基準で20を超えていました」

 

「今の市井にそんな強さの現地民がいるとはな。出会った頃の安倍より強いな」

 

「……安倍?」

 

「気にしないでくれ、こっちの話だ。

 それよりこれからは俺が話を聞くから、こいつが何かしないように見張っててくれ」

 

「分かりました」

 

 

 ポツリと呟いた言葉に聞いてくる破魔ネキへそう返すと、ウシジマは牢の中にいる中年女性である太田公子に視線を合わせた。

 

 

「あんたは?」

 

「ウシジマと言う。お前さんの話が本当か確かめに来た」

 

「なるほどね。

 そっちのお嬢ちゃんは強いけどそれだけで、あんたに話せば上に伝わるのかい?」

 

「まあ、それを確かめるために来たってところだな」

 

 

 横で憮然とした表情で黙る破魔ネキを他所に、資料の紙を示しながらウシジマは話を始めた。

 

 

「NPO団体【自然派ママの会】、ねぇ。

 ……改めて聞こうか。なんでこんな物を始めたんだ?」

 

「ああそれは、契約主との約束さ。契約主は子育てに関する女神でね。

 日本で今一番羽振りの良いガイア連合の人間に自分への信仰者を増やしたいって事だった。

 こんなやり方でも一定数の関係者が連れたってのは、日本人は平和ボケしているんだねぇ」

 

「契約した悪魔は?」

 

「……地母神タウエレト。エジプトの家庭と出産を司る女神さ」

 

 

 【地母神タウエレト】。

 

 メガテンでは25レベルのエジプト神話の家庭と出産を司る女神で、直立した牝のカバとして描かれ女神転生においても概ねそのままの姿である。王家とのつながりが弱く今では神殿などは残されていないが民間での信仰は根強く、当時のアテン信仰の元でもまるで揺るがなかったようだ。しかし、ナイル川のアスワンハイダム建設で遺跡のある霊地が水没し信仰の命脈は断たれた。そのため人を見限り、あのエジプト神話勢の魔界撤退を強く勧めた神の一柱でもある。

 

 彼が持つ資料の紙にはこう書かれていた。

 

 まず彼女は姫路支部の前支部長だった男に接触し大金を払うことで支部の関係者の紹介を受け、その中から条件に合致する関係者の中にいる覚醒者の若い母親に言葉巧みに話しかけ団体を設立する主催者に祭り上げた。

 

 団体の名は『自然派ママの会』。

 

 連合支部内の主に非覚醒の母親を中心として広まっている母親たちのNPO団体で、「自然派子育て」を重視しとある覚醒している銅札の母親でもある女性が主催者である団体である。太田公子を名乗るコンサルタントの啓蒙により“目覚めて”その女性は周囲の母親に勧めだした。「自然」「手作り」を重視し工業的な大量生産品をなるべく避ける子育てが目的で、主に粉ミルクを避ける母乳絶対主義や紙おむつを避ける布おむつ優先主義、添加物を忌避し市販のお菓子や加工食品は悪と断じて無農薬野菜にもこだわり、給食、医療、ワクチン、無痛分娩、ピルの使用に否定的な考えを持っている思想としては母性信仰が強く保守的なオーガニック右翼に近い。

 

 しかし、本当の目的は自然派思想を広め地母神である策謀者の女神への信仰を広める計画で、ホメオパシー(自然治癒力任せの治療法)は女神の時代では最先端医療だった。なお、無理に現代風のやり方を取り込んだので子どもが発熱した際、キャベツの葉で頭を包むと毒素が排出されて熱が下がるという「キャベツ枕」や防腐剤の悪影響を避けるために煮沸消毒した容器、水、塩を用いて作るという「手作り目薬」などおかしなやり方もあったが、オカルトの実効性があるこの世界ではこれもプラシボ以上の効果がありそのため時間を掛けての浸透ならば地方の支部なら目的達成の可能性はあった。

 

 それに加え、金に釣られて軽い考えで多数の個人情報を漏洩した前支部長だった男にはこういう女性の活動などにはほぼ無関心であるのもそれに拍車をかけていた。

 

 ただ、中途半端に霊能に覚醒した会員の女性たちが自身達が作った“自然派製品”の購入を強要して金銭トラブルになったり、新生児は血液の凝固因子を生成するために必要なビタミンKが欠乏傾向にあり出血性疾患(脳出血や消化管出血)を防ぐ目的としてビタミンKを摂取させなければいけないのに、会員の助産師がビタミンKの代わりに“レメディ”と呼ばれる非覚醒者には単なる砂糖の塊である薬を与えてそれが新生児の硬膜下血腫による死亡に至った事件が起こり破魔ネキの目に止まったのが原因で全てバレて、主催者の女性経由でコンサルタントとして振る舞っていた太田公子にも手が届き今回の拘束に繋がったというのが顛末である。

 

 

「……そもそも何故そんな事をしたんですか?」

 

「自分を高く売り込むためさ。ここまでの事が出来ますよってね。 

 あの女神と契約していたのだって、それが理由さ。

 あたしらダークサマナーと呼ばれるような連中は言ってしまえば、フリーランスの技術者のようなものさ。

 人は何かを買う時安心できる大企業の保証を求めるが、裏社会の人間があたしらを雇う時に強力な神格の加護があるのはその保証みたいな効果があるのさ。

 天使や神様が保証してくれるメシア教の異能者やサマナーがいい例だろう?」

 

「気分が悪くなるので、連中の事は話に出さないでください。

 それで、あなたが話した助命と雇う代わりに提供するという情報は本当なんですか?」

 

「ああ。

 スイスにあったプライベートバンクの口座と日本の銀行口座の情報だ。

 アメリカから流れ込んだドルのマネーロンダリングで使用されメシア教過激派の資金源になった口座のね」

 

 

 その言葉に不審そうにする破魔ネキと冷徹にその女を見るウシジマニキ。

 しばらくの沈黙の後、日本でした事と助命嘆願の内容が書かれた紙を示しながらウシジマが口を開いた。

 

 

「この紙には確かにそう書いてるが、それを調べられたお前は一体何もんだ?

 アジア系だが日本人の容姿じゃ無いよな?」

 

「まあ、当然の要求だね。

 あたしの本名は【アリア・ハリド】。パレスチナ出身の元ムジャヒディンの異能者さ」

 

 

 彼女が語ったその半生はこうであった。

 

 彼女が生まれた年にイスラエルが建国され、彼女の両親は赤子だった彼女を連れてパレスチナから逃げ出した。それなりの資産家だったハリド家は転々と移動し最後の亡命先にヨーロッパを選び逃げ出していた。その地で残った僅かな資産で小さな雑貨店を開き平穏に暮らし始めた。

 

 彼女が大学で優秀な成績を収め交換留学で日本に行くなど23歳になる頃までは平穏だったという。それに陰を刺したのはメシア教であった。

 

 アメリカで猛威を振るい出していたメシア教は、アメリカを乗っ取ると次は欧州にある自分たちの象徴であったカソリックとプロテスタントの諸々を乗っ取るべく動き出していた。非覚醒者には見えない天使の洗脳と異能者であるメシアンの群れによる浸透はただの人であった現地の宗教家には対抗しきれるものではなく次々に彼らの魔の手に落ちていき、やがて現地の霊能組織であった異教の異能者達の迫害と殲滅も進みその過程で彼女の両親も命を落とし彼女自身は友人の助けを借りて欧州を脱出し故郷のある中東へと舞い戻っていた。

 

 その地で覚醒していた彼女は、反アメリカというかその裏側にいる反メシア教を掲げるムジャヒディンの組織に加わりその優秀な技術者や諜報者としても組織に貢献し幹部となっていった。そして組織のトップが考案した乾坤一擲の計画である“アメリカ同時多発テロ計画”に参加する事となった。

 

 それがすでにメシア教に洗脳されていたトップを使った陰謀だと言うのに。

 

 彼女自身は現地のアメリカに渡り偽造した身分証で活動し、情報の調査やメシアンが当時使い始めていた天使召喚用のCOMPを奪い自分達用に改造して使用するなどバックアップとして行動していた。

 

 その結果は現実の911と同じテロが行われて自国の犠牲を鑑みないメシア教上層部により中東諸国への国民のヘイトを向けさせ、アメリカ軍の中東派遣を実現させて起きた“湾岸戦争”の姿を借りた多神連合との決戦が起きこれにメシア側が勝利するというものになった。テロが行われた直後にアメリカを出国していた彼女はその結果を第三国で見る羽目になった。

 

 当然、彼女が参加していた組織もその決戦で主要人物の全員死亡という壊滅的な被害を受けて四散していた。そのため彼女は今日に至るまで海外で対メシア教の傭兵のような稼業を続け、近年になって件の女神と契約し日本に渡って来ていたという事であった。

 

 

「……と、まあそういうわけさ。

 日本に来たのは女神の意向もあったけど、海外のイスラム教やユダヤ教を含む一神教系列は連中に占拠されていたからね。

 昔来た事があるし、メシア教の影響がガイア連合のお陰で一番薄いというのもあったしね」

 

「口座の情報はいつ調べた?」

 

「アメリカにいた時さ。

 あの頃はまだ国内にメシア教に反発している人間も多く生き残っていたしね。

 今はもうそのほとんどとは、洗脳されているか生きていないかで連絡は取れないけどね」

 

「……なるほどな」

 

 

 話を聞き終わり考え込むウシジマニキに、どうするのかと視線を向ける破魔ネキ。

 その破魔ネキに向けてウシジマは口を開く。

 

 

「この件はそっちには手に余る代物だろう。

 こいつの身柄とこの情報は俺が上に報告する。

 こういう裏の面は俺みたいな奴がするべきで、破魔ネキみたいな光の当たる場にいる子が関わるもんじゃない」

 

「……だから、子ども扱いしないでください」

 

「それでも年上としてはそれくらいやらせてくれ。

 だから今の情報は忘れて身内のために頑張るんだ、破魔ネキ」

 

「……隣り合った支部同士なんですから何かあったなら協力はさせて下さいね。

 そちらだって同じガイア連合の身内なんですから」

 

「ああ。その時は頼むさ」

 

 

 そう言ってニヤリと笑うとウシジマは、護衛で来ていたクローンヤクザ達とそれを率いる蝶の模様の覆面をしたトレンチコートの男にアリア・ハリドの身を拘束させ車に乗せて関西へと引き上げていった。

 

 それを見送った破魔ネキは彼の事を聞いてくる自身のシキガミにも軽く流し、真剣な様子でいつもの業務に戻って行ったのであった。

 

 

 どっとはらい

 




後書きと設定解説


・主人公

名前:ウシジマニキ
性別:男性
識別:転生者(ガイア連合)・30代
職業:金融業「ウシジマファイナンス」社長
ステータス:レベル13・フィジカル型
耐性:破魔無効・呪殺無効(装備)
スキル:突撃(敵単体・小威力の物理攻撃)
    マカジャマ(敵単体・中確率で魔封を付与する)
    パララアイ(敵単体・中確率で麻痺を付与する)
    潜伏(自身・敵から狙われにくくなる)
    交渉術・執り成し
装備:ケブラージャケット(連合製防具)
   見鬼と占術を阻害するガイア連合製護符
   精神耐性のタリスマン
   呪殺無効の腕輪
詳細:
 元々は、霊能組織相手の闇金系派遣仲介業(人身売買含む)業者
 ガイア連合に参加後は、ちゃんと許可を得たガイアグループ所属の金融業社長
 半終末後に支部長代行となるが現在でも事務関係を今の支部長に代わって纏めている
 詳細は明かさないが前世でも裏社会の住人のインテリヤクザであったらしい
 シキガミは、動物型の兎「うーたん」で回復やトラフーリなどのスキル持ち
 今回はこの件に関する助言役と関西支部からの代表としてちひろネキの紹介で来た

・敵対者

名前:太田公子(おおたきみこ)
本名:アリア・ハリド
性別:女性
識別:異能者・40代?
職業:ダークサマナー/コンサルタント
ステータス:レベル25
耐性:破魔無効・呪殺耐性(装備)
スキル:COMP使い
    銃撃(敵単体・小威力の銃属性攻撃)
    コンピューター知識
    無面目(自身・相手の攻撃の対象になりにくい。
        攻撃の回避率が20%上昇する)
    脅迫・言いくるめ・説得
装備:自作COMP(自製アナライズ)
   拳銃(中国製の黒星)
   呪殺耐性の護符(中東一神教製)
詳細:
 40代頃の容姿の女で市井でしぶとく生き残っていた凄腕の闇召喚師
 メシア製COMPを自力で改造して自作のアプリで使っている
 まとめた髪型のスーツ姿で一見には平凡な保険勧誘のおばさんにしか見えない
 スキルにより印象がとても薄く記憶に残りにくい体質であるため
 生き残るためなら手段を選ばない性格でメシアンにはとても冷酷になる
 自然派ママの会のコンサルタントの「太田公子」を名乗る
 正体は元は中東一神教の対メシアテロリストだった現ダークサマナー
 日本語・中東語・英語が話せて経済にも明るい日本の大学卒留学生
 もともとアジア人系だったのを整形で完全に日本人の容姿にしている
 メシア教へのテロを海外でしていたが仲間を殺され日本に逃げた
 カオ転世界での911に関与してアメリカからも指名手配されていた
 こちらではメシア教の影響で911は史実通り行われるも陰謀による結果であった
 このテロが起きた事で政府の反対派への恫喝と中東一神教へのヘイトの扇動が起きた
 中東一神教がメシア教に大敗して以降はエジプトの女神と契約していた
 来日先の関西に潜伏していたが近場にあった姫路支部に潜り込む計画だった
 ホメオパシー(自然治癒力任せの治療法)は契約主の時代では最先端医療だった
 オカルトの実効性があるこの世界ではこれもプラシボ以上の効果がある 
 そのため時間を掛けての浸透ならば地方の支部なら可能性はあった
 容姿のイメージは「蒼穹のファフナー」の「ヘスター・ギャロップ」

【妖獣カトブレパス】
レベル21 耐性:物理耐性・電撃弱点・破魔耐性
スキル:暴れまくり(敵全体・ランダムに1~3回の小威力の物理攻撃)
    突撃(敵単体・小威力の物理攻撃)
    一分の活泉(最大HPが10%増加する)
詳細:
 ダークサマナーのCOMP仲魔
 今回の件で契約主から提供された分霊悪魔
 劣化しているので石化の視線や毒の息は身につけていない
 物理前衛担当で脳筋でものぐさな性格

【妖鳥セイレーン】
レベル23 耐性:銃弱点・衝撃無効・呪殺耐性
スキル:引っかき(敵単体・小威力の物理攻撃)
    ジオンガ(敵単体・中威力の電撃属性攻撃)
    マリンカリン(敵単体・中確率で魅了を付与する)
詳細:
 ダークサマナーのCOMP仲魔
 元は妖鳥ハーピーで成長して進化した
 遊撃担当でダークサマナーの最初の仲魔

【自然派ママの会】
連合支部内の主に非覚醒の母親を中心として広まっている母親たちのNPO団体
「自然派子育て」を重視しとある覚醒している銅札の母親でもある女性が主催者
太田公子を名乗るコンサルタントの啓蒙により“目覚めて”周囲の母親に勧めだした
「自然」「手作り」を重視し工業的な大量生産品をなるべく避ける子育てが目的
主に、粉ミルクを避ける母乳絶対主義や紙おむつを避ける布おむつ優先主義
添加物を忌避し市販のお菓子や加工食品は悪と断じて無農薬野菜にもこだわる
給食、医療、ワクチン、無痛分娩、ピルの使用に否定的な考えを持っている
団体の思想としては母性信仰が強く保守的なオーガニック右翼に近い
本当の目的は自然派思想を広め地母神である策謀者への信仰を広める計画

【地母神タウエレト】
メガテンでは25レベルのエジプト神話の家庭と出産を司る女神
直立した牝のカバとして描かれ、女神転生においても概ねそのままの姿
王家とのつながりが弱く神殿などは残されていないが民間での信仰は根強く、
当時のアテン信仰の元でもまるで揺るがなかったようだ
しかし、ナイル川のアスワンハイダム建設で霊地が水没し信仰の命脈は断たれた
そのため人を見限り、あのエジプト神話勢の魔界撤退を強く進めた神の一柱でもある
今回の画策で信仰の復活とガイア連合への干渉を目的としていた

破魔ネキ・姫路支部:
ディストピアさん著「【カオ転三次】終末が約束された世界で生き抜きたい」より出典

冷戦構造で東側諸国が経済的に没落していた事やアメリカ同時多発テロ陰謀説を見て、アメリカの裏側にメシア教がいるこの世界ならと設定をこねたお話でした。


もし、読んでくださった方がいるならありがとうございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。