この世界がTOUGHの世界ではないことに気づいたのは15歳のクリスマスのときであった。
何時も以上に最悪な一日の終りに先生から手渡された東京都高度育成高等学校の願書とパンフレット。人生でターニング・ポイントというものがあるなら、恐らくはこの瞬間であったのだろう。
モンキー・ワールドじゃなくて衣笠ワールドじゃねぇかよ、えーーーっ!!
今までTOUGHの世界に転生していたと思いこんでたのは…俺なんだ!
そうして俺は今、その高度育成高等学校の校門にいる。
「入学出来たことに一番困惑してるのが俺なんだよね」
正攻法で原作に関わることに出来たことに一番困惑してるのが俺なんだよね、すごくない?
入学出来なかったら務所で生活するしかないんだよね、天涯孤独に厳しい世界だと考えられる。
懸念があるとすれば、俺自身の原作知識が殆どないことだと考えられる。
アニメの内容しか覚えてねぇよ、えーーーっ!!
校門をくぐり、学内掲示板に貼られたクラス分けを確認する。
はいっDクラス確定、ぶっ殺します。
Dクラスのいいところはやっぱり顔のいい女キャラがいっぱいいることだよねパパ。
それ以外に褒めるところがあるのかよ、えーーーっ!!
まあ、そもそも学校自体が蛆虫を超えた蛆虫だと言われたら否定できないんやがな、ブヘヘ。
自分のクラスを確認したあと、他のクラスの名簿に視線を映すと出るわ出るわ……。
Aクラス葛城康平、坂柳有栖。
Bクラス一之瀬帆波
Cクラス龍園翔
Dクラス堀北鈴音、櫛田桔梗、そして綾小路清隆。
見事に原作世代です本当にありがとうございました。
不幸中の幸いとも言えるだろう。これで原作メンバーがいないDクラスだったら独自に動いてAクラス移籍権をゲットするぐらいしかやれることがないと考えられる。
原作世代ならば不確定要素も多いが同時に爆発力もある。
しゃあけど、俺原作とかアニメでの知識しかないんやけどな。
◇◆◇◆◇
教室に辿り着くと生徒の数は4、5人程度しかいなかった。
早めに登校したせいか窓際で雑談に興じてたり、机に齧り付いて勉強していたり、或いは支給された端末を弄ってたりと様々である。
「おはようございます」
「……」
つい癖で挨拶をしてみるも返ってくる声はなく、こちらに視線を向けで会釈する程度だった。陰キャを超えた陰キャだと考えられる。
仕方なく席に座り、事態が推移するまで俺もテキストを広げて予習に精を出すのだった。
「──席につけ」
暫らくするとチャイムが鳴り、スーツ姿の女性が教室に入ってくる。
クラス・メイトがいつの間にか集まってて驚いたのが俺なんだよね。
「えー新入生諸君。私はDクラスを担当することになった茶柱佐枝だ」
あなたは"不親切クソ担任"ですか!?
俺の口が悪いのは当然ではあるが、しゃあけど欺瞞に満ちている説明をするのが茶柱先生なんだよね、酷くない?
茶柱先生は挨拶と共に学校についての説明を始める。
その後の説明を纏めると以下となる。
・在学中は特例を除き外部との接触を禁ずる。
・許可なく学校の敷地から出ることも禁ずる。
・校内には数多くの施設が併設され自由に使用可能。
・Sシステムの導入。施設の利用や物品の購入には学生証カードのクレジットカード機能によるポイントで可能。
・学校内においてこのポイントで買えないものはない。
・ポイントは毎月一日に自動的に振り込まれる。
・1ポイント1円
・すでに10万ポイントを支給済み
・三年間同じクラスでありクラス替えは無い。
「ポイントの支給額に驚いたか? この学校は実力で生徒を測る。入学を果たしたお前たちには、それだけの価値と可能性がある」
とか言ってるけど罠選択肢なんスよね。
原作だと毎月10万ポイント貰えると錯覚してたDクラスはやらかして来月ポイントゼロやし、質問されなかったから答えなかっただけです。とか言われるんやろ?
俺は詳しいんだ。というより、原作でまともに覚えてたところここなんだよね。
茶柱先生はクラスからの質問がないと判断したあとはそそくさと教室を出ていった。担任としてそれはどうなのん?
「みんな少し話を聞いてもらってもいいかな?」
而して茶柱先生のショートホームルームがおわりしばらくすると一人の男子生徒が手をあげて声をかける。
「僕らは今日から同じクラスで過ごすことになる。だから今から自発的に自己紹介を行って、一日でも早く皆が友達になれたらと思うんだ」
「賛成ー! 私たち、まだみんなの名前とか、全然分からないし」
男子生徒の提案に女子生徒が口火を切ったことであとに続いて賛成を表明する。
「僕の名前は平田洋介。中学では普通に洋介って呼ばれることが多かったから、気軽に下の名前で呼んでほしい。趣味はスポーツ全般だけど、特にサッカーが好きで、この学校でも、サッカーをするつもりなんだ。よろしく」
この学校に一番向いていない生徒だと考えられる。
だってこの学校、謀略と暴力に彩られ過ぎなんだよね。まともに戦おうとするだけ泣きを見るとかモンキー・ワールド並の治安だと考えられる。
助けてやってくれ朝霧海斗。
その後不良生徒が自己紹介を拒否したり一悶着あったが、その後は滞りなく自己紹介が進んでいった。
「じゃあ、次は君かな?」
「猿渡哲也」
俺? 残ったほうがメリットあるから残るよ。クラス・メイトに名前を売らないと一ヶ月後に大変な思いをするのが、この作品なんだ!
「えっ、と…猿渡くんは趣味とか特技はなにかな?」
やや困惑して問を投げる平田洋介。なんで俺が問題児みたいな扱い受けてるんだよ、えーーーっ!!
「……趣味は、特にないなぁ」
「特技は?」
「特技……暴力かな?」
人を殴ったり壊したりすることが得意です。TOUGHじゃ必須技能なんでね。
「いやいやいや、こえ〜よ!! どこの修羅の国の人間だよ!」
戯けるように声を出すのは池某とかいう男だった。ふんっ、おもしれー男。
「えっと、暴力は良くないかなぁ」
「安心しろ平田某。俺もそう思う」
どうして鳩が豆鉄砲食らったかのような表情をするんだよ、えーーーっ!!
法治国家では暴力を振るうのは短期的に見れば得をするが長期的に見るとデメリットしかない。
俺は学習したのだ。この世界はモンキー・ワールド並に治安が乱れてる部分があるが一応司法と警察はちゃんと仕事をしてくれるのだ。
衣笠ワールドは捨てたものじゃない。
「えっ、なにやばい奴?」
「もしかして不良?」
俺、なにかやっちゃいました?
入学初日、俺に友人はまだ一人もできない。