その日、幾つかの質問を終えると俺は真っ先に教室を飛び出した。
ゴングを鳴らせっ! 行動開始だっ!!
5月1日。その日クラスに振り込まれたプライベートポイントは0ポイントであったからだ。
思い出すのは不親切を超えた不親切である我らが担任のセリフだった。
「お前たちは本当に愚かだな」
貴様ーっ! Dクラスを愚弄するかあっ!!
と、切れ散らかすのは簡単ではあるが。単なる事実なんだよね。すごくない?
遅刻欠席、授業中の居眠りや内職、私語を踏まえDクラスはメチャクチャポイントを減点されたんや。──そのポイント数500億ポイント。
「この学校ではクラスの成績評価は毎月振り込まれるポイントに反映される。その結果、お前たちは当初持っていたポイントをすべて失った」
ククク……酷い言われようだな。まあ、事実だからしょうがないけど。
「しかし感心もした。一ヶ月ですべてのポイントを吐き出したのは歴代のDクラスでも初めてだ」
その後、平田洋介からポイントの内訳などの質問が飛ぶが茶柱先生ははぐらかす。
人生の悲哀を感じますね。
「あの…ポイントが増える機会はあるんですか?」
「あるぞ。結果としてCクラス以上のポイントを得ればお前達はCに昇格、CクラスがDに降格する」
なにっ。
「直近で言えば次の中間テスト。成績次第では最大100のクラスポイントが加算される」
ふぅん、加点式ということか。
まあ、元々0ポイントやから減点もクソもないんやけどなブヘヘ。
「しゃあけど、中間以前に教室が無法地帯になってもそれに対する減点はない……ってコト!?」
「……正しくは減点のしようがないということだ」
と、ポイントに関する発言はこの俺の質問を最後に止みクラス全体に暗い雰囲気が漂う。
悔しいだろうが仕方ないんだ。
と言うわけで俺は今Cクラスに来ている。
「我が名は哲也」
「あーーーっ! 何言ってるかわかんねーよ!!」
実家のような安心感を感じる。
ワシ…この展開に心当たりがあるんや、TOUGHや!
「席につくんだタフくん」
「タフって誰だよ」
俺はこいつが好きになった。Dクラスなら荼毘に付したよ。
「あのぉ、Dクラスの方ですよね?」
仮称タフくんの背後から淡い髪色をした小柄な少女が戸惑いがちに声をかける。
はーっオメコしたいのう! トモセシュンサクは神絵師だからね。
「猿渡哲也だ」
「椎名ひよりです。図書館でよく会いますよね?」
おそらくモブ・キャラだと考えられる。
龍園くんとアルベルトしか覚えていないのは、俺なんだ!
「Cクラスに何か用がお有りですか?」
「ああ、授業を受けに来た」
「あーっ、なにいってんだお前!!」
椎名ひよりは首を傾げ、タフくんは語録を使い始める。
やっはこの世界ってタフの世界なんじゃ……。
「ここはCクラスですよ?」
「Cクラスの授業を受けに来た。というより一日このクラスで暮らそうと思っている」
「あーっ、何言ってるかわかんねぇよ!! なめてんじゃねぇぞゴラァ!!」
ふぅんそういうことか。おそらくこの男は転生者だと考えられるが……。
「ところで君はようこそ実力至上主義の教室へという作品を知ってるかな?」
「はぁ、なにいってんだ?」
原作知らないタイプの転生者らしい。
孤独だ孤独に満ちている。
「それは小説でしょうか?」
「……俺の心の中にあるライト・ノベルかな」
なんかぐいぐい来るなこの子。
「自作なさってるのですか? 宜しければ読ませていただいても? いつもは法令集や哲学書を読んでいらっしゃるみたいですが純文学もお読みになるのでしょう? タイトルに『教室』がつくということは学校を舞台にした作品でしょうか? そうなりますと──」
あーっなにいってるかわかんねぇよ!!
突然の言葉の圧力に戸惑ってるのは俺なんだよね。
タフくんも戸惑ってるんだよね、すごくない?
「あっ……! す、すみません。つい」
異常小説愛者。
モブ…キャラ? 自信が無くなってきたのは俺なんだよね。
「ひより、石崎。その辺にしとけ」
龍
園
!
タフって言葉は龍園のためにある。と呼ばれた人気原作キャラクターである。
主人公が怪物を超えた怪物で相対的に主人公に見えるんだよね。すごくない?
胸元を大きく開けたセクシーな黒いワイ・シャツは下手したら総合格闘技してるレイパーに清丸されると考えられる。
やっぱりモンキー・ワールドはクソっスね。忌憚ない意見ってやつっス。
「龍園翔。Cクラスの王だ」
Cクラス……ここもまた血と腐臭に満ちている。
「Dクラスの不良品がここになんのようだ?」
「Cクラスで授業を受けたいですね。……生でね」
「気持ち悪い言い回しはやめろ」
貴様ーっ!! 語録を愚弄する気かあっ!!
「狙いはなんだ? 協力か敵対か。受けて立つぜ、勝つのは俺だ」
どこぞの迷惑な伯父さんを彷彿させるかのようなビック・マウスで笑っちゃいそうになるんですよね。
ふぅん、やつもまた龍を継ぐ男というわけか……。
「ククク、俺はDクラス。歴代でも類を見ない不良品を超えた不良品なんだよね、やばくない?」
「ひより、こいつはどういう男だ?」
「真面目な方ですよ。言動は頓珍漢ですが、物静かで熱心に勉強なさってますし。よく会釈をしてくださる礼儀ただしい方です」
やめろォメスブタっ!!
俺をいい人っぽくするんじゃない!!
やっぱり人間舐められてるぐらいのほうがちょうどいいんだよねパパ。警戒されるより油断してくれる方がこの学校での長生きの秘訣だと考えられる。
「その体格だ。勉強のできるバカって訳でもねぇだろ。アルベルト! 伊吹!」
龍園くんの背後からヌッと出てきた黒人の大男。
紹介しよう山田アルベルトだ。
「この男とタイマンで勝てるか?」
「あたしは多分勝てない。体格が違うし、体幹のブレがない。相当デキるよ」
アルベルトは首を横に振り、伊吹と呼ばれた少女は明確に答える。あーーっ、やってみなきゃわかんねーだろーがよぉ!!
「やりますか龍園さん」
「辞めとけ、こっちにメリットがねぇよ」
拳を固く握りしめるタフくんこと石崎くんは龍園の号令一つで襲いかかる様子を見せるが、龍園はそれを静止する。
「猿渡、お前が来た理由は察しがついてる。クラスポイントがゼロってことは、俺らが拘束されてる時間を自由に動くことができるって訳だ」
本来なら授業をボイ・コットしたら減点されるんだよね。悔しいだろうが仕方ないんだ。
だがこのデメリットをガン無視して動ける期間がある。それが5月の初めから特別試験のある中間テストまでの期間である。
「今日一日はCクラスで過ごすつもりなんだよね、楽しみじゃない?」
「ククッ、その次はBクラスとAクラスってことか。おい猿渡」
龍園くんはポケットから学生証端末を取り出す。
「BクラスとAクラスの情報を買ってやるよ。1万でどうだ?」
「龍園ってやつは結構ケチなんだな」
「あ?」
「ひとクラス一万五千ポイント。それなら請負うって言ったんですよ。龍園くん」
瞬間、顔面目掛けて拳が飛来する。
「
「テメェ……」
龍園くんの腕を掴み、睨み合う。
「暴力はルールで禁止スよね」
「チッ……一万五千ポイントの価値があるか疑問だがな。そっちのほうがよほどボッてんだろ」
「駒になってやろうって言ってんですよ、龍園くん。その価値がわからないなんてハッキリ言って龍園くんはメチャクチャ情弱。話になんねーよ」
龍園くんのメリットはもちろんメチャクチャ多い。俺が他クラスを偵察することで龍園くんはクラス内の統制に尽力出来るんだよね。適材適所だと考えられる。
「信用も信頼も実績も今の俺たちを結びつけるものはなにもないんだよね。悲しくない?」
しゃあからこれは試金石なんスよね。
「先にAクラスの情報を寄越せ。情報次第ではBクラスの情報も買う。これでいいだろう?」
「あざーっす」
ムフッお小遣いおいしいのん。