エクリッセ(イメージCV: 畠中祐):本作の主人公。金髪と緑色の眼が特徴的な子どもだが、幼少期に両親を亡くしており叔母であるツァイに拾われる。幼少期の性格は両親を亡くした精神的ショックからか、直ぐに自分を責めてしまうことが目立っていた。だが、本来は明るい性格である。また、恋愛には疎いところが目立ち周りを呆れさせてしまうことが多い。好きなモノはイタリア料理全般で幼いながらにアペリティーヴォをせがむ程。嫌いなモノは納豆である。アペリティーヴォを頼む癖はツァイの前では出さないがそれ以外では止まらなくなる。
ツァイ(イメージCV:豊口めぐみ)
エクリッセの師匠であり叔母を名乗る謎の女。魔術協会の者で若い見た目をしているが、20年前から容姿が変わっていないなど怪しい噂が絶えない。
UMF:ユナイテッドマジシャンズフロンティアの略称。
様々な国から多くの魔術師や人々が住む新たな合衆国。
ノルウェーとイギリスの間を挟む北海に出来た大きな埋め立て地に近いためか、両者出身の者たちが多く公用語は英語となっている。
「ここがUMFの学校かぁ。」
「エクリッセ、お前の教室まで案内してやる。」
編入試験に合格したエクリッセは魔術協会の生徒となることになった。しかし、彼は自分の道を探すために入った魔術協会で数奇な運命を辿ることを知らない。
巨大な扉からは低い男の声が響いていた。その声は何かを教えているようであった。
ツァイはその空気を蹴飛ばすように扉を開ける。
「頼もーっっ!!」
一瞬にして室内が静寂に包まれた。
黒い髪の男が神経質そうな顔をツァイに向けながら喚いた。
「ここは道場じゃないと何回言えば分かるっっっ!!」
「うるせぇなぁ!」
ツァイがそう返すと、生徒の一人が立ち上がる。
「ウィーン先生!本当は思ってないと思うんですけど、あまり神経質だと男らしくないと思われます!」
「お前、次言ったら単位やらないぞ!?」
「コイツはこう言ってるけどなんたかんだで評価はしてくれるから安心しな。」
「貴様ぁぁ~っっ!!……コホンっ。お前がここに来たということは、編入生か。」
神経質な男は様子を窺っているエクリッセを見ると、冷静さを取り戻しその名を紹介した。
「今日からこのクラスに所属することになった、エクリッセだ。」
「よ、よろしくお願いします。」
「………。」
エクリッセは冷たい視線を感じとっていた。そして、それは指定された席の隣で座る黒髪の少女の隣であった。少女は無関心にも空を見上げていた。
エクリッセは自分の周りを見た。後ろにいる生徒たちは少女からあからさまに視線を遠ざけていた。まるで見てはいけないモノと目を合わせないようにしているかのように。
「では、授業はここまで。エクリッセはこのあと私の後について来なさい。」
教師であるウィーンに従い、様々な手続きを完了させるとその後の授業を受け、家事などを行い一日を終わらせた。
「師匠は……もう出た感じか。僕も朝食食べたら出よう。」
エクリッセは自ら作った朝食を取った。自ら振る舞うメニューはスクランブルエッグに胡椒とケチャップを漬けたモノとトマトスープである。他にもワイン入りジャムを付けたパンを食べ、家を出た。
「今日は学校終わったら依頼を受けて生計立てないと。」
UMFではアルバイト代わりに魔物を狩る依頼を成し遂げることで報酬を貰えるのだ。
金はもちろん、小売店で使えるクーポンなど多種多様だ。
彼は未だに慣れずにいる授業を終え、ある依頼を受けた。
「ハイドロスピリット……?写真だけでも気持ち悪さが伝わる。」
説明文によると、相手の魂を奪ってしまうクラゲの魔物なようだ。
一方、郊外では。
「父ちゃん、その井戸大丈夫かよ?」
「なぁに、昔から飲んでいるし学者からも安全だと言われているからな。」
父親が井戸から水を汲み上げる。既にバケツ二杯が水で一杯であった。
三杯目のバケツに水を入れ、蓋をしてから荷車に乗せて親子はその場から離れた。
すると、井戸から何かがぶつかった音がした。
二人とも気のせいだと思いたかった。しかし、井戸にふさわしくない細い糸が伸びていた。
一本だった糸は徐々に増え、青白い手が見えた。
「あっあっあっ……」
子どもは石のように動かなくなる。
「立て!走れ!逃げろ!!」
しかし、父親の激励を受け子どもは走った。
父親は自信を奮い立たせ、魔物を見た。
魔物は髪変わりの触手を地に垂れ流し、四つん這いから二足歩行の姿勢になった。その姿は水で出来たワンピースを来た女のような出で立ちであった。この世を憎みながら産まれたような殺意を持って父親を睨む。
すると、触手が彼を貫いた。
「うわぁぁぁぁ……っ」
父親の身体はみるみる内に枯れ枝となり、灰塵と化した。
「うぅぅぅ………」
クラゲの化け物は灰の山から浮かんだ火の玉を手につかみ、御馳走のように貪った。
「!」
エクリッセは依頼の現地である郊外まで歩いて着く駅に着くと気配を感じ取った。
それは編入試験の時に似たモノだ。
直ぐに彼は走り、近くのサイクルポートから自転車を借りた。
魔物は民家の方角に居るようだ。
人型のクラゲが民家の中を覗くように立っていた。そして、家の中で子どもが震えていた。
「やめろぉぉぉ!!!」
猪突猛進に自転車で激突する。
普通の自転車ではあるが、魔術によって強度や運動性を向上させたため魔物を怯ませる程度の威力はある。
「!」
ハイドロスピリットは吹っ飛び、家で怯えている子どもの安全を確認したエクリッセは自転車を置いた。
そして、魔物を睨み付けた彼は火の精霊の力をその身に宿した姿となった。
「フレイムアベレージ!!」
赤い剣を携え、ハイドロスピリットに斬りかかる。
しかし、ハイドロスピリットも只ではやられなかった。斬られたところを水に変え、エクリッセの剣によるダメージを抑えたのだ。
「なんだと!?」
エクリッセは相手から距離を取った。そして、今度は炎の剣でハイドロスピリットの腹を切り捨てた。
しかし、彼は手応えを感じなかった。それもその筈、敵の腹部には水の袋が出来ていた。その袋で剣はその威力を殺されたのだ。
「ウゥゥゥ……ッ!」
ハイドロスピリットは反撃だと言わんばかりに、無数の細い触手でエクリッセを絡めとる。
魔力は吸われてしまい、エクリッセも子どもの父親同様に獲物にされようとしていた。
「しまった!」
炎のオーラが小さくなっていく。
「炎を伝わらせてやる!!」
自らの身体を発火させ、触手を焼き落とそうとするが、魔物は触手から水を噴出させる。
エクリッセの目論みは失敗し、彼はただの魔術師となってしまった。
「こんなところでっ!」
魔力を奪ったのを確認したハイドロスピリットは手を水の鎌に変える。触手で捕らえた魔術師に止めを刺そうとしたその時!風の弾丸が触手を切断した。
「!?」
「しょうがないから助けてやったわよ、『お坊っちゃん』。」
「君は?!」
エクリッセの隣の席に座っていた黒髪の少女だ。
上は黒いシャツを着ており、髪は肩までかかっていた。
下も青い長ズボンで足の露出も控えているようだ。
「私の名前はリアス。貴方は赤ん坊のように指を咥えて待っていなさい。」
「……ッ」
リアスは冷たい口調でそういうと、ハイドロスピリットの刃による攻撃を容易くかわした。
そして、その腹に小さな銃弾を撃ち込む。その速さはエクリッセの目に見えない程であった。
魔物は身体を水に変えて応戦しようとするも、弾は肉体を貫き自身の腹に傷を負う。
「……ハイドロスピリット……貴方は何処まで耐えれるかしら?」
再び激しい風の音が鳴り響いた。
そして、エクリッセが見たのは身体中に風穴を覗かせるハイドロスピリットであった。
「すっスゴい……!」