Blood Platinum   作:超ローマ人

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風の精霊(前編)

「只今戻りました、師匠。」

「一日中何処行ってたんだ?ほら、朝飯だ。」

エクリッセの師匠──ツァイが投げつけたトーストを、エクリッセは咥えル形で受け止める。

「いやぁ、申し訳ないです。フガフガ……海の近くでハイドロスピリットを倒したあと、リアスと友達になって──リアスの家でお泊まりしなきゃならないぐらいに疲れちゃいまして。そのあとのクエスト報告とかで時間取られちゃって。」

「おい、待て。誰の家だって?」

ツァイが突っ込んだ内容にポカンとしたエクリッセであったが、直ぐに返答した。

「リアスの家ですが……?パサ。パサパサ…」

「ほう?」

「リアスは美味しいクッキーと紅茶振る舞ってくれて。なので、彼女とその母親にお礼を行ってそのまま帰りました。」

エクリッセは机に置かれた野菜炒めもパリパリと食べながら、昨日にあった出来事をしゃべる。

ツァイはそれを聞くと何か歯痒そうにしながら紅茶を飲んだ。

「ラッキーボーイめ」

「え?なんか言いました?」

「なんでもねぇ」

 

「おーい、リアス~。」

「!?」

教室に入り、リアスを見つけてから話し掛けるエクリッセを見た生徒一同は驚きを隠せなかった。

皆にとって彼女は最も近付き難い少女だからだ。

「ウソだろ!?」

「ウソ……じゃないみたいだな。」

「ホントのこと……みたいだな。」

皆が唖然とするなか、リアスは自然な笑顔で「おはよう」と返した。

すると、生徒の皆とりわけ男子は天変地異が起きたかのように倒れた。

「そうか、皆にも挨拶してなかった。おはよう。」

「あ、あぁ」

「なんで皆ぎこちないの?」

「私にも分からないわ」

エクリッセとリアスは訳がわからないと言わんばかりに首を傾げた。

そこへウェイバー先生が教室に入ったため、皆着席した。

ウェイバー先生はいつもと変わらずに授業を始めた。

 

「今日は買い物に行かなきゃ。」

「そ、そう。」

「じゃあねっ!」

「うん。」

エクリッセとリアスは授業後に其々の帰路につく。

そんな二人に興味ありげしかし、何処か冷めた視線が刺さる。

「なぁ、あんな『氷の魔女』見たことあるか?」

一人の白髪の少年が仲間である二人の少女に話しかける。

すると、水色の髪を持った少女は鏡を見ながら喋る。

「もう彼女の『氷』は溶け始めてますね。」

「ハハッ、ちげぇねぇや。しかし、あの──エクリッセ……だったか?アレは鍛え甲斐がありそうだ。」

もう一人の背の高い女がニッコリ笑う。求めていた人材を見つけた雇用主みたいに。

「へぇ?アイツに興味あるの?でも、お前が品定めしたヤツらさぁ

──皆半殺しにされたよな?」

 

「アレ?何故か寒気が。」

エクリッセは背中に水を被せられたような気がした。

しかし、後ろには誰もいない。

「買い物も終わったし帰らないと。」

「お客さん!伏せて!」

「おっと!」

エクリッセの頭上に目掛けて何者かが飛びかかった。

それをかわしたエクリッセは買い物袋を庇うようにして伏せた。

そして、彼が見た物は──

「人じゃない……魔物かっ!」

魔物は翼を羽ばたかせると、甲高い声で鳴いた。

その声はまさに鳥そのものと変わりなかった。

しかし、どの鳥とも似ても似つかわない声だ。

「魔物めっ!フレイム…!」

鳥の魔物は再び飛びかかる。

炎の鎧を纏う余裕がないと踏んだエクリッセは、赤い剣から火の玉を出した。

すると、鳥の魔物は火を恐れてか逃げ出した。

「あの鳥……完全に人を食べようとしていたっ!」

 

エクリッセは夕飯の支度を済ませると鳥の魔物について師範代であるツァイに聞いた。

「あぁ、ソイツはバルシャン。人食いのシャンタック鳥といったところだな。」

「人食い……ですか?人に対してあの並々ならぬ殺意はそういう……。」

スパゲッティを食べながらその邪悪なる鳥をどうやって倒すか考えていると、ドアを叩く音が聞こえた。

「アタシが出る。」

ツァイはそう言うと、玄関のドアを開けて「いらっしゃい」と客をあげた。

「エクリッセ…!」

「どうした、リアス?」

リアスはエクリッセに駆け寄ると、ある提案をした。

「彼処の森に何かいるの。とても強い風の気配。どうやらバルシャンに怒っているらしい。」

「どういうことだ?」

「貴方の力に似ている何かがいることだけは確か。」

エクリッセはサラマンダーのことを思い出した。

「つまり、精霊!?力を借りれるかもしれない。」

「明日ここに迎えに来るからよろしく。」

リアスはそれだけ言うと去っていった。

「うん、また明日ね。」

「話は終わったか? エクリッセ、お前に朗報だ。最低でもあと3体の精霊はお前に力を与えるだろう。」

「どういうことですか、師匠?」

「そのまんまの意味だ。火の精霊はお前に宿っている。この火は基本四元素の一つだ。」

「四元素…!」

魔術には種類がある。その基本となる四つの種を四元素と呼んでいる。一つは、破壊力特化の火。二つ目は一点を突き、貫くことを得意とする風。三つ目は堅牢な盾にも鈍器にもなる土。最後は魔に染まりやすくも魔に強い水。以上の四つである。

「こいつら以外にも色々と魔術には種類があるが、ここは省略だ。では何故、お前に四つの元素を操れると確証出来るのか。それはな、兄貴……お前の父ちゃんの言葉を借りるなら『不完全な魔術回路のせい』だ。」

 

次の日───

「エクリッセは居ますか?」

「やぁ。待ってたよ。そんじゃあ、行ってきます師匠。」

「よし、行ってこい。帰ってきたらご馳走を振る舞うからよ。」

エクリッセはリアスと共に森へと向かった。電車に乗り、目的の駅に着く。

「以外と降りる人多いわね。」

「祭日だからかな?」

二人は人々の流れに身を任せるように森に入った。

「なぁ、リアス。この森の中でも何かが来たら分かるか?」

「えぇ、勿論。風は何処でも吹くからね。」

水分補給などをしながら暫く歩いていると、エクリッセは何かの気配を感じ取った。

それは神経を研ぎ澄まし、彼に警告を発しているようであった。

彼はそれを察知しながら相手の特徴を捉える。

「黄色い鳥……?とても大きくて強そうだ。───?」

「!危ない!」

リアスはエクリッセを突き飛ばすと、中距離のアサルトライフルを顕現させ風圧の弾を放つ。

風圧の弾が見えているのか、鳥の魔物──バルシャンはそれを華麗な飛行術でかわす。

「イテテ…どうし───バルシャン!!フレイムアベレージ、施行!!」

エクリッセは漸く気付いた様子で、炎の鎧を身に纏う。

「キィィィっ!!」

怪鳥音を出しながら踵を返す。

「マズイ、人が!!」

「ギャァァァッ!!」

「く、食いやがった……!」

バルシャンは鋭い爪で登山者の男を捕らえると、嘴で貪った。男が捕まってから只の塊に変わるまでの間は僅か3秒である。

それを他の登山者が目撃し、辺りは悲鳴で一杯になった。

「てめぇぇぇ!!!」

エクリッセは炎の翼を生やし、飛び立つ。不意を突き、炎の剣でバルシャンを斬りつける。しかし、バルシャンに深手を追わすことは叶わず逃がしそうになる。

「世話が焼けるわね。エクリッセ、先回りして。」

「了解!」

バルシャンの目の前に仁王立ちしたエクリッセは、炎の網をつくりだしそれを壁のようにして立ち塞がった。

「フレイムネット!」

「良くやったわ。」

リアスはスナイパーライフルで狙いを定めて特大の風圧弾を発射した。

弾はバルシャンの頭部を貫き、その身体を消滅させた。

「決まった!」

二人とも安堵するも束の間、聞いたことのある怪鳥音が鳴り響く。

「もう一体!?」

「!」

リアスは駆け出し、体制を整えようとする。しかし、仲間を殺され怒りに染まった魔物はリアスを殺そうと目論む。

「させるかよっ!!」

エクリッセはリアスに被さるようにして、彼女の身を守る。

直後、緑色の雷がバルシャン目掛けて落ちた。

「!!!???」

「リアス、大丈夫?」

「私は平気。それより見て、あの鳥を。」

彼女が指を指した先には黄色い羽を持ち、バルシャンより一回り大きい鳥がいた。

苛立ちを隠せない黄色い鳥は威嚇の音をあげる。すると、バルシャンは逃げ出した。

縄張りを荒らす敵を追い出した黄色い鳥はエクリッセのほうを凝視する。

「!僕と話をしたいのか?リアス、ここから離れてくれ。」

「何故?」

「あの鳥……サンダーバードは僕と二人きりで話したいようだ。」

「分かったわ。用が済んだら駅に来て。」

リアスは不満そうな顔を浮かべながらもその場を離れるのを確認すると、サンダーバードはエクリッセの元に降りた。

エクリッセを凝視する瞳は未だに疑問に満ちていた。

 

「な、なぁ。僕たちもあの魔物を倒したいんだ。バルシャンは僕たちにとって危険だからさ。だから、協力して欲しいんだけど駄目かな?」

エクリッセが懇願すると、彼の体からオーラが出る。そのオーラはドラゴンの頭部を持つと、サンダーバードに対して吠える。

「サラマンダーも同じ気持ちらしい。頼むよ、サンダーバード。」

しかし、サンダーバードはそれを拒否するかのように鳴く。

「人間は信用出来ない?じゃあ、なんで君はバルシャンの奇襲から僕たちを守ってくれたんだ?」

エクリッセがそのように返すとサンダーバードは一瞬だけ目を反らした。しかし、直ぐにそれを直すと彼に対して威嚇する。

「話が合わない……何?この時期のサンダーバードは卵を守っているから、気が立っているの?」

サラマンダーはサンダーバードの事情を察知し、それをエクリッセに伝えた。

「卵かぁ。卵は難しい問題だよなぁ。あと、サンダーバード。ごめん。ここに長居することになっちゃって。また明日ここに来るから。」

「キィィィッ!」

「ん!」

サンダーバードは待ったをかけるように鳴く。それを聞いて暫くしてからエクリッセは一旦森を抜ける。

 

「……長かったわね。」

「ごめん、待たせちゃって。成果として、条件を満たせば協力してくれるみたい。」

「どんなの?」

「………『雛が産まれるまで卵を守れ』ってさ。」

サンダーバードから課せられた試練の内容にリアスは呆れる。

「相変わらずのお人好しね。利用されそうで危ういわ。」

 

エクリッセとリアスが一時的に離れ数時間が経過した──

「!昨日と様子がおかしい。」

エクリッセはサンダーバードの巣で親の代わりに卵を守りながら、森の様子を探る。火の魔力を熱探知に使用することで外敵がいないかを探っていたのだ。すると、あろうことか多くの熱を感知した。

「そうか、サンダーバードがこの森の主でそれがいなくなったからか。」

すると、巨大な蛇が這いながら卵を食らおうとしている。普通の人間の死角から攻める卑怯な獣。しかし、相手が悪過ぎた。相手は火を操る魔術師。

「危ない危ない。」

炎の壁で蛇を阻みながらも油断をしないように気を張る。しかし、そんなエクリッセの警戒の網を掻い潜ろうと大きな猿が子分を従えながら囲い混む。

「!休憩もさせてくれないってか!!」

試練は続く。

 

 

 

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