雪が降る夜、人形の悪魔――サンタクロースはあの悪魔塗れデパート前通りで燃えていた。
人形と言うにはあまりに歪んだその姿。プレゼントを配る奴なのに、その全てを奪おうとした愚かなサンタクロース。
そしてそんな光景を目の前で立ち会っていたのは僕、黒チェンソーマンだ。
「……此処だけしか、雪が降ってないんですよね。つまり……」
僕の想定なら何が原因か不明だが、あの子が何故か現世に帰って来た事になる。
「生き返らせる悪魔が居るなら……出てきて欲しい。頼むから」
僕は激しい戦いの末、いつの間にか頭部に無くなっていた竹とんぼに思いを馳せる。
しかしそんな僕の行く末を邪魔するのは――、電鋸人間。
「此処にいたんですか、デンジさん。……思ってた展開と違いますけど、まあ深本さんの夢は叶えて……やらないとな」
「あー……誰だテメェ」
「オレは黒チェンソーマン。今度は……ちゃんと覚えてくれよ?」
――人形が燃ゆる雪降る夜に、赤と黒はよく映える。
そんな訳で、真剣ならぬ真鋸勝負はいきなり幕を開ける。
早速、僕はチェーン付きの丸鋸を排出する様に両手から全速展開。
「黒チェンソー? へっ……パチモンマンの間違いじゃねえのかよ!」
しかし奴は慣れた手付きで、そのチェーンを両腕電鋸で切断しようと動き出す。
だが僕はそれを予測しており、丸鋸の軌道をあえて一気に下の方へ修正する。
すると僕の方の鋸が地面に突き刺さった状態で、アスファルトを大きく削り始める。
その結果、道路から視界を塞ぐ様に大量の砂煙や瓦礫がよく吐いてくれる。
「……まあ、小手先は無駄か」
しかし奴はチェンソーを勢いよく振り回して、その煙ごとなんてことも無く両断。
さらに振り払う動作を続けたまま、僕の元まで荒々しく駆け動く。
「オラァ!」
それでも僕はさらなる対処として、アスファルトを削る鋸の回転を停止。
そして、右鋸のみを僕の方へ素早く回収。
一方の左鋸はあえて地面に突き刺しておき、今度はその左鋸へ吸い寄せられる様に回収を開始。
するとどうなるか。
第一にデンジに向かって、高速移動が出来る。
第二にあいつの首を狩る様に、右鋸でラリアットをかます事が出来る。
そして、結果は――一切怯まないデンジと正面衝突。
「「ぎゃあああああああああああ!!!」」
よってデンジのはらわたは見事に抉れ、僕の右丸鋸は粉々と化してしまった。
「ああああアアアア……! ゲホッ……腹切りって痛ェんだなあ」
「……チェーンから、血が」
だが互いに次の隙を与えないが如く、勢いよく両手と片手で鍔迫り合いする。
当然、片手しか使えない僕の方が圧倒的に劣勢だ。
しかしそれを逆に利用。
使えない右手を鞭代わりにして、デンジの顔面チェンソーにクリーンヒットさせる。
「ははっ、こんな攻撃まともに喰らうなんて馬鹿じゃねえのお前」
「あー……折角、あのキモ悪魔殺してマキマさんと旅行行けると思ってたのによォ!」
「……けっ、お前にゃ大した志も因縁も無さそうだな。チェンソーマン」
僕は奴を一頻り見下した後、その場で一回転。
カッコつけた裏拳のつもりで、左丸鋸をデンジの首の元へ狙う。
しかしそれに奴は、チェンソーで出来た足で僕の見事な丸鋸攻撃を跳ね除けさせてしまう。
「おーおー、そんなに回ってたいならよお……! 俺が手伝ってやるぜ、オラア!!!」
さらに何か思いついた様で、急に武器を仕舞った綺麗な手で僕の右チェーンを掴み始める。
続けて大車輪が如く、僕の全身をチェーンでぐるぐるぐるぐる完全なる勢いでぶん回していく。
「な、長い。回す時間が長い……!」
平衡感覚を失いながらも僕は何とか、地面に刃を突き立てて何とか踏み止まる。
しかしデンジのぐるぐるタイムの影響で、意識が非常に不安定と化す。
そしてこの時を狙っていたのか、デンジは再びチェンソーを生やした手を交差させて、クロスチョップを僕の胴体へお見舞いする。
「……お前に、奥の手を使うなんてな」
倒れ込む僕の身体からはとめどなく血しぶきやら何やらが飛び出るが、同時に僕の頭部にある丸鋸も射出。
そのヤケクソにも見える丸鋸は、デンジの左腕部分に直撃。
「「ぎゃあああああああああああ!!!」」
本日二度目の痛み分け絶叫ハモリ。
「……」
「……」
そして僕とデンジは二人とも片腕を紛失した状態で、意識を失う様に眠りについてしまう。
今までの連戦の疲れがあったからか、何なのかはさっぱり分からない。
だが分かった事は……一番最初に起き上がったのは、僕でもデンジでも無い事。
それは体の一部が凍り付き始めていた、人形の悪魔の姿。
いや、それに乗り移った雪の魔人。
「……」
僕等が呑気に眠る合間に、最終決戦は始まろうとしていた――。