望まなかった最強   作:アートレータ

6 / 7

 読み返してみたら、原作キャラで唯一出てきたのがパパ黒だけということに気付いてしまった。


師弟

 

 目を覚ますと、何となく見覚えのある天井が目に入る。

 確か、最近滞在している村で取ってる宿屋のそれだ。

 起きあがろうとするも何となく体が重く感じる。そこでようやく先程の記憶が蘇る。

 生まれて初めて窮地に立たされ、術師にとっての極地領域展開を成功させた。にも関わらず、道満には逃げられてしまって自分も気を失った。

 しかしそこまで卑屈な気持ちは湧いてこなかった。多分、あいつらに生きろって励まされてそれを守ることが出来たからだ。

 

 意識がしっかりしてきたことで疑問が浮かび上がる。自分は気を失ってその場に倒れた筈だ。ならばここまで運んできたのはいったい…。

 コンコンとドアがノックされ、1人の少年が入ってきた。少年は桜下を見ると安堵した様子で駆け寄ってきて手を握った。

 

「良かった!目を覚ましたんですね!」

 

 見た目から5、6歳の少年と思っていた桜下は、歳不相応のしっかりさに呆気に取られるも少年に見覚えがあることに気付く。

 

「お前は確か道満に殺されかけてた、」

 

「あ、はい!仙堂雷斗と言います!おうかさん?出会ってますよね?あの、助けてくれてありがとうございました!」

 

「別に助けたつもりはない。」

 

 これは何も謙虚で言っているわけではなく、事実である。桜下は道満を祓った後、少年、雷斗も殺すつもりでいた。

 桜下にとっては術師である以上、大人も子供も関係なく抹殺対象となる。目も前にいる今も出来ることなら殺してしまいたいとすら思っていた。

 しかし、あのままだったら命が危なかったのは事実であり、雷斗に命を救われたと言っても過言ではない状況だ。

 そんな相手を殺すほど桜下は人間として落ちぶれてはいない。

 

「それでも!ホントに……ありがとうございました…」

 

 頭を深く下げながら桜下に感謝を示す。慣れない状況に居た堪れなくなった桜下は話題を変えた。

 

「…これからどうするんだ?」

 

 無意識に地雷を踏んだことに桜下は気付かない。雷斗は何度か言葉を発そうとするも、言い淀んで口をぱくぱくと何度か開閉する。

 数秒後決意を固めた雷斗は正面から桜下の目を見て話し始めた。

 

「……あの道満という怪物に、お父さんとお母さんが…殺されました。だから、僕にはいく場所がありません。……それでもやりたい事は、あります。あの怪物を、僕の手で殺し、たいです。だからお願いします。どうか、僕を強くしてください。あの怪物を、僕の手で殺せるくらい!」

 

 呪霊に家族を殺される。呪術界に身を置くものには、よくある話だ。しかし桜下は無碍にすることができなかった。

 それは恐らく、覚悟を決めたその目がまるでブラックハウスを出た時の自分を見ているような気がしたからだ。

 

 初めて雷斗を森で見た時も感じたことだが、雷斗は強くなる。呪力量も申し分ない。センスも無意識に術式を制御してしまうほどなのだ問題があるわけがない。

 しかし、自分は術師を滅ぼす身。わざわざ殺すべき対象を強くする必要はないのだ。

 

「俺はいずれ、お前も殺すかもしれないぞ?」

 

「構いません。あの怪物を倒したのなら、この命がどうなろうとも。」

 

 ノータイムで帰ってきた返答に、らしくなく一瞬気圧される。

 それは以前自分も思っていたことだ。しかし、今は違う。はっきりと生きたいと言える今はその雷斗の答えには不満を覚えてしまった。

 

「復讐は過程であり目標ではない。復讐が終わったら人生も同時に終わるのか?違うだろ?道満を殺したお前は何をする?」

 

「………まだ分かりません。でも、分かりました。もしあなたに殺されそうになった時は、必死に抗います。」

 

 それが数秒考えた末に出した雷斗の答え。分からない、当然だろう。今は復讐という檻に囚われている。しかし確かに口にした決意。死に抗うと。ならば自分も答えねばならない。

 

「…分かった。俺がお前を強くしよう。」

 

「あ、ありがとうございます!よろしくお願いします!」

 

 こうして桜下に、最初で最後の弟子が誕生した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まずは呪術界のこと。呪力、術式についての説明から始まった。今までは呪力とは無関係の日常で生きていたようで、両親を殺され自分も殺されそうになった時の募りに募った負の感情が爆発した結果呪術師へとなったようだ。

 その結果があの纏っていた黄色い閃光である。

 

 ブラックハウスの座学で学んだことがこんなところで役にやつとは、と長い顔をしながらもそれを元に教えることで雷斗は基礎知識をどんどん吸収していった。

 

 そして本題、術式についてだ。

 どうやらあの黄色い閃光は電気否、雷のようで名を『雷電術式』と名付けた。雷を体に纏ったり、それを相手に放ったり出来るようだった。が、桜下の勘はそれが本来の使い方ではないと囁いてくる。

 試行錯誤を繰り返して完成した形が、体を雷に変えるというものだった。術式を行使した状態では実体がなく、体の形をした雷の集合体となる。

 また、雷と化した体の一部を飛ばすことで遠距離攻撃を可能としたり、雷の集合体である体での移動は雷速での移動が可能となった。

 

 しかしその雷は呪力で生成されてあるゆえ、呪力を纏った攻撃によって損傷を受けてしまう。雷斗の呪力を持ってして損傷は復元されるが、呪力が尽きると復元できなくなり体も実体に戻ってしまう。

 まるで呪霊の雷版のような身体構造となるわけだ。

 

 しかし何度も言うが、雷斗の総呪力量は並大抵のもの(桜下には到底及ばないまでも)ではない。

 攻撃も一撃一撃が強力なものであるため、同等以上の呪力持つ敵との戦い以外でもそうそう先に呪力切れはあり得ない。

 

 戦いとはルール次第、制限次第、やる気次第、やり方次第、相性次第、戦い方次第、モチベーション次第、コンディション次第、幾つもの要素を掛け合わせ、そこから様々な手段や術式を行使して初めて勝利に手が届く。

 それでも、地力の差とは必ず存在している。呪力量も術式も相手よりも遥かに上に位置する場合、それらの要素すら覆してしまうこともある。

 

「こっ、こんな子供に俺が!」

 

 雷斗の初めての実戦は桜下の予想通り、一方的な展開となっていた。

 雷斗に遠距離攻撃は意味をなさない。常に体に雷を流し続けている雷斗はその応用で、神経系も雷速となっている。そんな雷斗に視認できない速度はまずなく、遠距離攻撃を視認した雷斗はその攻撃が当たる箇所を術式操作で体に空洞を作り透過させているからだ。

 近距離攻撃も生半可な攻撃では却って、触れただけで雷撃を受けてしまい、相応の呪力をこめて攻撃しても雷斗の呪力が続く限り即座に再生される。

 

 いくらこれまで呪術師を殺してきたとしても、たかが一級呪詛師が相手どれるような子供ではなかった。

 その上、才能の塊である雷斗に指導しているのは、最強の死神桜下である。むしろ相手どれる人数など指折りで数えられるほどしか存在しないのではなかろうか。

 

 故にこの結果は、必然であり相対した時点で桜下には手に取るように分かっていた光景だった。

 

 雷斗の雷撃によって右脚と左腕は半ば焼け焦げ、満身創痍の状態で殺されるのをただ待つだけの人形へと成り下がっていた。

 そんな相手にとどめを刺そうと近付く雷斗に待ったをかけたのは桜下だった。

 

「殺す感覚には慣れないといけない。だが殺すことに慣れてしまえば、それは狂人と変わらない。それを忘れるな。」

 

 それはこれまで数えきれないほどの殺人を冒してきた死神でも、常に心に置いている教訓。

 いくら怪物だ、死神だと呼ばれようとも、所詮は呪術という特殊な力を持った人であり心臓一つの人間1人。その感覚を無くした時は人間を捨てたと同義だ。

 まだ6歳の雷斗にとっては難しいだろうが、伝えなければならない。

 それは雷斗の師となった時から決めていたことだった。

 

 その言葉の重みを全て理解したわけではないだろうが、桜下の自分を射抜くかのような視線に気圧されながらしっかりと頷いた。

 そして雷斗は初めて人というものをその手にかけた。

 

 こうして生まれた化け物に育てられた化け物。

 白い死神は雷神を生み出したのだった。

 

 





 雷電術式
 ぶっちゃけキルアとエネルのハイブリット。
 今作一番のチートキャラです。
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