Fate/GrandOrder ーSailing Lostbeltー 作:藤渚
────ドォンッ、と遠くから聞こえた爆発の音。それに続いて数秒後、倉庫の中が微かに揺れる。
騒がしい外とは正反対に静まり返った倉庫の中に、藤丸の困惑した声が小さく響く。
「えっと…………え?」
パチパチと何度も目を
「(モンキー、D………ルフィ?それに海賊王って……?)」
初めて聞く名前に、聞いたことの無い単語。決死の思いで行った召喚が何とか成功したのはよかったのだが、眼前にいる麦わら帽子の青年が一体何者なのかが分からない。しかもあの強固な
「なあっお前、名前なんてぇんだ?『ますたー』って呼びづれェし堅っ苦しいからさ、名前教えてくれよ!」
「えっ?えっと………藤丸、立香。」
「フジマルリツカかぁ、おもしれー名前だな。フジマル、リツカ………うん、そんじゃ藤丸って呼んでもいいか?」
「う、うん……俺も堅いのはあまり好きじゃないし、呼びやすい方でいいよ。」
「おう!ありがとな、藤丸!」
まるで自由に吹き遊ぶ風のような
だがその時、ドォンッ‼と先程よりも近くで聞こえた爆発音が、藤丸の意識を現実へと引き戻した。
「っそうだ、マシュ……ダヴィンチちゃ───っつ⁉」
立ち上がろうと力を込めた直後、まるで電流が走ったかのように全身を襲う激痛。突然顔を歪め、苦悶に
「お、おい!どうしたんだよ藤丸、どっか痛ェのか⁉ってかお前、すっげえ血ィ出てんじゃねえかっ‼早く医者呼んでこねえと‼チョッパーどこだ───ってそうだ、チョッパーこっちにいねえんだったぁ!」
わたわたと慌てふためくルフィに、心配をかけてはいけないと藤丸は重い頭を
大丈夫───言い掛けたその言葉は、いつの間にかルフィの背後に立ち、こちらに斧を振りかぶる殺戮猟兵の姿を目撃してしまったことにより、ひゅっと吸い込んだ息と共に喉へと消えていった。
「(あ─────)」
ペストマスクのような白い仮面の奥から凝視する冷たい眼………そこに映っているのはルフィではなく、
狙いは俺だ。そう気づいた時には既に遅く、殺戮猟兵の斧は藤丸へと振り下ろされ────
「おい───何やってんだ。」
先刻の朗らかさがまるで嘘だったかのように低く、怒気を孕んだルフィの声。
同時に頭上で発生した、ガァンッ‼と金属同士が激しくぶつかる音に、藤丸は思わず目を
「っ…………あれ?」
訪れるであろう筈だった、斬られた痛みも血飛沫が
「お前………俺の
力を込めた左腕が、殺戮猟兵の斧を弾き飛ばす。突然得物を失い丸腰になった殺戮猟兵が驚愕する
食い込む鉄拳の下で、
「……す、凄い………。」
目の前で起きた光景にただ呆然としていた藤丸の頭上で、腕を組んだルフィ(左腕はもう元に戻っている)は唇を尖らせ吐き捨てるように呟く。
「全く、怪我してるヤツから狙うなんざサイテーな野郎だな………っと、こうしちゃいらんねえ。藤丸、立てるか?」
ルフィは身を
「頑張れ藤丸!お前の怪我治せるヤツがいねえか、急いで探してやっから!」
なるべく負担を掛けないよう、一歩ずつ倉庫の入り口へと歩いていくルフィ。本当は藤丸を安静にしておきたいが、またいつ先程の連中が戻ってくるか分からないため、一人になどできるわけがない………焦りと苛立ちに歯を食いしばりながら、二人がやっと廊下へと出られた、その時だった。
「カルデアのマスター、及びそのサーヴァントを発見────これより排除する。」
ルフィと藤丸の目に飛び込んできたもの。それは
「なっ────⁉」
あまりの数に驚愕するのも束の間、最前線の殺戮猟兵達が一斉にこちらへ銃を構えているのを目撃した時、ルフィは咄嗟に瓦礫の壁の方へと藤丸を放る。
「い、っづ………ルフィ⁉」
二度目となる背中と臀部の強打に顔を歪めながらも、藤丸はルフィを案じて名を叫ぶ。
「悪ィ、ブン投げちまったな………大丈夫だ藤丸。もうお前にゃ絶対、傷一つつけさせねえからよ。」
ポキポキと指の関節を鳴らし、麦わら帽子を深く被るルフィ。僅かな隙間から覗いた彼の口角が、心なしか少しだけ上がっているように見えた。
「排除───排除せよ。」
ダァンッ‼と一斉に発砲した音が鳴り響き、銃口から煙が昇る。
放たれた鉛の弾の群れは雨となり、藤丸を
「──────⁉」
「え………えぇっ⁉」
藤丸も、殺戮猟兵も、全く同じ言葉を頭に浮かべている────
それもその筈、銃弾はルフィの身体を貫くどころか、各々放たれた勢いを殺さぬまま四方八方に肉が伸びている─────それはまるで彼の全身が、伸び縮みする
「効か~~~~~んっ‼‼」
ルフィは叫ぶと同時に腕を伸ばし、全身に力を込める。すると銃弾は放たれた勢いのままに跳ね返り、弾を受けた前方の殺戮猟兵達は次々と仰け反り倒れていった。
「ルフィ………君って一体……?」
「驚いただろ?俺さ、
驚きのあまり空いた口が塞がらない藤丸に対し、振り向いたルフィは自身の頬をビヨ~ンと腕の長さ程に伸ばしてみせながら、明るい調子で説明をする。
ゴム人間と言われても、ハイそうですかとすぐに理解し受け入れられる人間は数少ないことだろう。頭上に『?』をいくつも浮かべた藤丸に再び背を向け、ルフィは殺戮猟兵の集団へと向き直る。
一方あちらも、ルフィに対しては銃器は無効だとすぐに察したようで、各々得物を斧やら手鎌に持ち替えて戦闘に臨もうとしていた。
「さ~て、こっちも急いでんだ。さっさと片付けさせてもらうぜ!」
不敵に笑みを浮かべ、拳を構えるルフィ。そんな彼に向かい、一斉に殺戮猟兵達が襲い掛かる。
「『ギア───‘‘
構えたルフィの拳から、腕から、全身から蒸気の煙が上がり、同時に肌が赤く変化し光沢を放つ。
「ゴムゴムのぉ───『
伸ばされた腕を目にも止まらぬ速さで動かし、その技名の如くまるでガトリング砲のように打ち出された拳が殺戮猟兵達へと打ち出される。
正面からまともに拳を受けた者、武器を破壊された者、吹き飛ばされた者の巻き添えになった者など、ルフィの拳の雨は多数の殺戮猟兵達を戦闘不能に追いやっていった。
「(す、凄い……って、ボーっとしてる場合じゃない!俺も出来る限り、ルフィをサポートしな────あ、れ?)」
ぐらりと揺れる視界、突然起こった
「藤丸⁉オイ、大丈夫か⁉」
「大、丈夫………でも、あれ……何で……?」
眩暈は酷くなる一方で、徐々に激しくなる頭痛と耳鳴りまでもが藤丸を
「(何だこれ……前より
体に起きた変化を察したルフィは拳を打つのを
「藤丸、藤丸っ‼オイッ、しっかりしろって‼」
上半身を支える力も残っていないのか、そのまま床に倒れ伏す藤丸の肩をルフィが必死に呼びかけながら揺する。その傍らで倒れ動けなくなった者達を蹴りとばし、奥から現れた更なる殺戮猟兵達が冷たく彼らを見下ろしながら、獲物を追い詰めるかのように一歩ずつ近づいてくる。
「(どうする、どうする……⁉アイツらどんどん増えてくし、何か知らねえけど俺も上手く戦えねえ……それにもし俺が倒れちまったら、そん時は藤丸が………っくそ‼どうする⁉どうすりゃいいんだ⁉)」
悔しさと苛立ちに震えるも、疲労感で思うように体が動かない。こちらに迫りくる殺戮猟兵達に対し、ルフィは藤丸を守るように覆い被さったまま睨みつけることしか出来ない。
「畜生、ちっくしょう‼藤丸が大変だってのに………‼医者は────医者はどこだああァァァァ⁉」
胸中に渦巻くもどかしさに耐え切れず、ルフィの叫んだ声が広い廊下に響く。
────ブゥー………ン‼
突如、廊下の空間内に訪れた変化。
壊れかかった白色灯の色が薄みがかった『青』へと変わったことに、殺戮猟兵達もルフィも泡を食う。
「な、何だぁ?」
困惑するのも束の間……次の瞬間、ルフィの視界はぐるりと回転する。
「うわあぁっ────痛っ、くはねえ!ゴムだから!」
驚く間も状況を把握する間も与えられぬまま、直後に尻から派手に着地したルフィ。でも痛くない、ゴムだから。
「なんだぁ?どうなってんだ一体?」
キョロキョロと辺りを見回していた時、不意に頭上から「先輩!」と聞き慣れない声が降ってくる。
ルフィが顔を上げた先には、大きな盾を持った少女と派手な装飾の杖を片手にした女性が、揃ってこちらを見下ろしていた。
「先輩、藤丸立香先輩っ‼」
少女の悲痛な声が呼ぶ名で我に返り、ルフィは自身の手が彼の衣服を掴んでいることを思い出し、咄嗟に彼を見る。
顔色は相変わらず悪いものの、呼吸はしっかりとしていることに安堵し、少女達へと向き直る。
「大丈夫だ。怪我はしてっけど、ちゃんと息してるぜ。」
「そう、ですか………よかった……!」
目元に浮かんだ涙を拭う少女。そんな彼女の頭を撫でながら、今度は隣の女性が口を開く。
「もしかしなくても、君
「いやあ、俺は別に……………ん?君
女性の発言が引っかかり、首を傾げるルフィ。
するとそんな彼の前に、少女達の奥から姿を現した者がいた。
「んあ?お前………ああぁ~っ‼お前は────」
【TO BE CONTINUED】