Fate/GrandOrder ーSailing Lostbeltー 作:藤渚
「うおおおおぉ喰らえっ‼ムジーク家直伝錬金術により生み出された我が必殺技、
腕の組成を金属へと組み替え、ゴルドルフは硬質化した己の拳を正面の
「おお~すっげえ!ゴルフのオッサンも
「ぶ、ぶそうしょくのはき?いいやこれはだな、我が生まれであるムジーク家に代々伝わる錬金術を応用したもので───」
「ぃよっし!俺も負けてらんねえな、見てろよぉ!」
ルフィは自身の右手親指に歯を立て、噛みついたと同時に空気を吹き込む動作を行う。
すると彼の右腕はみるみるうちに膨張し、やがてその体積が彼の身体の三倍以上に到達した時、ルフィは
「す、凄い……!」
「ルフィさんの腕が、まるで風船のように大きく膨らんで……!」
「成程ねえ、これもゴム人間のルフィ君だからこそ成せる技ってところかな?」
目の前で起こった光景に目を丸くする藤丸とマシュ、そして舌を巻いて何度も頷くダヴィンチに、ルフィはニカッと得意げな笑顔を見せる。
「まだまだ、驚くのはこっからだぜ───ゴムゴムのぉ、『
漆黒の集団目掛け、巨大化した右腕が勢いのままに振り下ろされる。圧倒的なパワーと発生した衝撃波により、彼を取り囲んでいた複数体の殺戮猟兵は次々と吹き飛ばされていく。
銃弾の類が効かないルフィ目掛け、斧を構え突進する他の殺戮猟兵。だが彼らが振り上げたそれらの武器はまるで意思を宿したかのように、するりと彼らの握った手の内から離れていく。
「───⁉」
一体何が起きたのか?殺戮猟兵らは困惑しながら、宙を飛んでいく己の得物の行方を凝視する………銃や斧そしてボウガンなど、彼らの得物を始めとした金属の類々。それらはとある箇所──紫電を
「わっ、わわわっ!」
「おおっ⁉こらバーサーカー、シールダーの盾まで引き寄せてどうする⁉」
「あぁ?磁力に反応しちまうモンはどうしようもねえだろ。悪ぃなマシュ、少しだけ踏ん張って耐えてくれ。」
「はっ、はい!分かりました!」
言われるままに、マシュは自身の下半身に力を込めて耐えようとするも、キッドの生み出す強い電磁力は
「ハハッ、返してほしいか?ほら受け取りな───『
不敵な笑みと共に、キッドの腕から鉄塊が勢いを伴って発射される。固定されていた磁力を失ったそれらはバラバラに飛散し、反応の遅れた殺戮猟兵は斧の刃や鋭い金属片、弾みで誤射された銃弾などの餌食となっていった。
「おおっやるではないかバーサーカー!流石はこの私が見込んだサーヴァント───ってオォイ‼こっちにも飛んできてないかネ⁉」
無作為に飛び散った鉄塊の一部がこちら側へと飛来し、ゴルドルフは悲鳴を上げる。
「ゴルドルフさん‼」
「いけない!ムジークさ──」
藤丸が叫んだと同時に直ぐ様マシュも反応し、ゴルドルフの元へと向かおうとした、その時だった。
「『
ローの能力によって展開された、彼の『
「『タクト』!」
すると鉄塊はゴルドルフに衝突する一歩手前でピタリと動きを止め、やがてそれらはサークルの消滅と共に重力に従って床へと落下した。
「ふ、ふぅ~……助かった。」
「よかったぁ………凄いよロー、ありがとう!」
「ローさん、本当にありがとうございます!」
「気にするな。それより……おいユースタス屋!
「あ゛ぁ⁉飛ばした
「お前のそういうところが日頃からガサツなんだ!危うく軽傷患者が死人になるところだったんだぞ!」
「がっ⁉ガサツだと………テメェ、この俺に説教垂れてンじゃねえっ‼」
火花を散らし、睨み合うローとキッド。そんな一触即発状態の両者の頭上を、「お先ぃっ!」と軽快な声と共にルフィが軽々と跳躍していく。
「しししっ!お前ら、喧嘩してんなら俺が全部倒しちまうからな~!」
「なっ……待て麦わらァ!抜け駆けしてんじゃねえぞ!」
「あっ、そうだ。この中で一番倒した数少ない奴、格下な!」
「はあ?またお前はこんな時に、そういう下らないことを───ってオイ!麦わら屋もユースタス屋も勝手におっ始めるんじゃねえ‼」
キッドに続いてローも駆け出し、三人の船長達は怒涛の勢いで殺戮猟兵を蹴散らしていく。そんな彼らの後ろ姿を、ゴルドルフを始めカルデアの面々も唖然とした様子で眺めていた。
「全く連中は……同じ敵を前にしているというのに、協力し合おうという気が1ミリたりとて感じられん!あの面子の中で唯一冷静沈着だと思っていたアサシンまでもが、三人揃った途端に
「まあまあムジーク氏、『似た者同士は張り合う』って
「いいえ……いいえ!ダヴィンチちゃんの言う通り、これはとても素晴らしい奇跡です!マスター、どうか私に指示を。ルフィさん達のご活躍で敵の数が減少している今、私も戦闘に参加を────」
高鳴る胸の中に、燃え上がる闘志。力強い言葉と共に後方に立つ藤丸へと振り返ったマシュは───
「…………え?」
己が目を疑い、言葉を失った。
「(………この状況、まずいわね。)」
三人の船長達によって次々と倒されていく殺戮猟兵を、氷の皇女の隣に立つコヤンスカヤは苦々しい面持ちで睨み、心中で呟く。
「(あの三騎の英霊、憎たらしいけどかなり手強い。出自が不明だからと
口許を不快に歪ませ、コヤンスカヤの眉間に険しい皺が寄る。するとその時、無言を貫いていた皇女の薄い唇が
「……苛立っているようね、コヤンスカヤ。
「皇女様……大変申し訳ございません。まさか鼠駆除ごときにこれほど時間を要するとは、とんだ誤算でしたわ。」
「いいえ、これも
淡々と、それでいてどこか威圧のこもった皇女の言葉に、コヤンスカヤの額を冷や汗が伝う。
───分かっている。コヤンスカヤとて、端からカルデアを甘く見ていたわけではない。だからこそ今日に至るまでに、攻め落とすために充分な数の
「(……この戦況を変えるには、皇女様の
胸中をざわかせる忌々しい焦燥を溜め息に変え、コヤンスカヤは重い空気を吐く。開かれた
「────‼」
不意に見開き、そして細められる山吹色の瞳。緩やかに弧を描いていく口元から覗く犬歯が、点滅を繰り返す灯りの下で怪しく光る。
「ご心配なく、皇女様………貴女のお手を
先程とは打って変わり、上機嫌なコヤンスカヤの声。その妖艶な
「ゴムゴムのォっ!『
「『
「喰らえっ!『
熱を放ち伸ばされたルフィの足が殺戮猟兵らを吹き飛ばし、ローの指の動きに合わせて操作された瓦礫が対象に直撃し、キッドの磁気によって作られたミサイルランチャーに似た武器から複数本の槍が放たれる。
三人の船長達の猛攻により、戦闘不能となった殺戮猟兵が次々と床に倒れ、それらを蹴り飛ばすようにして新たに武器を携えた殺戮猟兵が奥から現れる。
「ハァ、ハァ………だ~もうっ!どんだけいるんだよコイツら!いくら殴ってもキリがねえっ‼」
「ハッ……どうした麦わらァ、へばったンなら後ろに下がっててもいいんだぜ?」
肩を上下させるルフィを
「(まただ、この異様な
ローの中に浮かびつつある、一つの可能性。だがそんな彼の思考を突として
「確かにこれじゃ
「おおっ!とっておきって何だぁギザ男っ⁉」
「な……っ⁉おい待てユースタス屋!その技は───」
キラキラと目を輝かせるルフィと対照に、ローは慌てて制止の声を上げる。しかしそんな彼の言葉が届く前に、前方に並んだ殺戮猟兵達がこちらに向けて一斉に銃やボウガンを構え始めた。
「せっかちな連中だ………ほらよ、テメエらに『
高らかに叫んだキッドの手から放たれる紫電。するとそれは前方にいる複数体の殺戮猟兵らにも表れ、まるで全身を這うような紫の稲妻に彼らは喫驚する。
「────⁉」
その驚愕は、一瞬にして狼狽へと変化した………黒い仮面の穴の開いた眼が捉えたもの、それは鉄の瓦礫片や鉄骨、そして周囲の殺戮猟兵らが持っていた武器の類。それらが
「『
ドオオォォォォンッ‼‼
空間内に響き渡る轟音と、立ち煙る砂埃。
吹き荒れる吹雪によって、早々に晴れていく視界……その向こうにあったのは、一体残らずして床や瓦礫の上や下敷きとなり倒れ伏した、殺戮猟兵らの姿。
「ひゃ~スッゲェ!アイツら皆磁石みたいになっちまった!」
「ハッ!どうだ、ざまあみやが、れ………ぐぅっ‼」
はしゃぐルフィの横で快勝に
「お、おいギザ男!大丈夫か⁉」
「ったく、だから言っただろユースタス屋!
キッドの状態を診ようと、ローは足を向ける。その一歩を踏み出したその時、突如彼の視界はぐらりと揺れた。
「えっ……と、トラ男⁉」
ルフィの声で我に返り、ローは咄嗟に握っていた鬼哭の刃先を床に突き立てバランスを取る。何とか転倒は
「トラファルガー……⁉そのザマ、テメエまでどうしたってんだ?」
「ハァッ……分からねえ、突然体が重くなりやがった………麦わら屋、お前は今どうだ?」
「俺か?言われてみりゃあ確かに、さっきからずっと体がだりぃ感じするけど……どうかしたのか?」
キッドとローを交互に見やりながら、不安げに答えるルフィ。その返答によって、ローの中に
「(やはり
顔を持ち上げ、
彼の視線を
「………トラ男、ギザ男、ここで休んでてくれ。」
凍えそうな風を正面から受けても、ルフィは震える素振り一つ見せずに一歩、また一歩と足を進めていく………彼がこれから何をしようとしているのかを、ローとキッドは直ぐ様察した。
「はぁ⁉おい麦わら、まさかテメエ一人でイイとこ持ってく気じゃ───」
「
苛立つキッドを突として
「(ギザ男があの黒い奴らをまとめて片付けてくれた、アイツらを倒せるチャンスは………今しかねえ‼)」
ルフィは対象から目を逸らさぬまま、右手の親指に噛みつき空気を吹き込む。
自身の体以上に膨らませた右腕、固く拳を握ったその腕が黒く硬質化し、更には孕んだ熱が紅蓮の炎となって彼の腕に
「まあ………これはこれは。」
上空を覆い尽くす程の炎を見上げ、コヤンスカヤは小さく呟く。
巨大な拳から発せられる熱気によって吹雪が打ち消されていくと、始めて皇女の表情に僅かな変化が表れる。
「…………熱い、熱いわ。まるで灼熱の太陽みたい。」
「ええ、確かに凄まじい魔力ですわ………正直に申し上げますと、私達只今大変ピンチでございます。戦力を大きく削がれてしまった上に、防ぐ
眼下でコヤンスカヤの一人茶番劇が繰り広げられていることなど微塵も気に留めることなく、ルフィは
「うおおおおぉ‼‼ゴムゴムのォ‼『
「───ですが、ご安心ください皇女様。」
「彼があの技を放って、私達を倒したその時は」
「───
ドサッ、
「マスター……?マス、ター───先輩っ先輩‼先輩っ‼‼」
ローも、キッドも、そしてルフィも───三騎の英霊は同時に振り返り、そして己の目が映し出したその光景に、彼らは言葉を失った。
瓦礫の散らばる廊下の床に横たわる、細い肢体
鼻から、耳から、口から溢れた血で汚れた白い礼装
激しくなる痙攣と、呼吸が上手く出来ない苦しさに充血した目を細め、青白い顔を歪めた、
瀕死の
「───藤丸?」
【TO BE CONTINUED 】