日本国召喚 蘇る帝国   作:光翼人

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今作の主人公は魔帝ではありません


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神聖ミリシアル帝国、帝都ルーンポリス。

地球におけるゴシック様式のような意匠が施された石造りの高層建造物が林立し、魔導列車やハイウェイ網によって帝国全土と結ばれた中央大陸最大の大都市は、色とりどりの魔力式自動照明が照らし出す夜景もあってか、眠らない魔都と称される。

黎明期から景観と合理化を両立した国家機能の集結点として設計された都市構造は放射状に広がり、最外縁から徐々に高層建造物が増えていくよう建設が進められる。そしてその中心部には、帝国の絶対的指導者が座す巨大城アルビオンが聳え立っていた。その周囲には帝国軍最高司令部や外務省、内務省などの省庁が立ち並び、国家の権力中枢が集っている。

 

「して、状況を報告せよ」

 

つい十分前に招集された緊急帝前会議の開かれる天の間において、司会進行役の言葉も待たずに皇帝が全員に向けて言葉を発する。

 

「はっ。1時間程前、我が国が保有する7つの魔帝遺物を観測していた装置が史上最大級の反応を検出いたしました。同時に各地の僕の星監視台が大規模な魔力放射を観測し、状況を照らし合わせた結果、古の魔法帝国が復活したと判断を下しました」

 

魔帝対策省長官のメフィアが赤いケースに入った報告書を見ながら答える。ここに集まったものは既に全員そのことを聞いていたが、それでも魔帝の復活という事実を改めて聞き、室内に緊張感が走る。

 

「次に情報局からご報告致します。全世界に設置された大使館の収集した情報及び航空偵察、魔信・電信傍受から得られた情報を総合しますと、現時点で次の事が判明しています」

 

そこまで言い、情報局長のアルネウスは一度言葉を区切る。ここからは皇帝を含め閣僚の大部分が初めて目にする情報である為、覚悟を決めてもらう為だ。出席者を軽く見渡して自分も息を整え、壁面に設置された大型投影装置の表示を切り替える。

 

「まず第一に、魔法帝国の復活位置は第三文明圏より南東に凡そ1000kmの海上であることが信号強度から判明しました」

 

表示されている世界地図の中で、ロデニウス大陸の東にある黒く塗られた領域をポインタで指す。

 

「帝国の大きさは不明ですが、過去の文献などから推察するにロデニウス大陸程の大きさかと思われます」

 

「第二に、確実に魔帝のものであると思われる複数のパル・キマイラ級空中戦艦が第二第三文明圏の各都市に出現。暫く滞空した後に未知の手段で地上を攻撃し、大打撃を与えました。パーパルディア等の第三は元よりムーも夥しい量の犠牲者が出ている様で、我が国へも救援要請が来ています」

 

世界地図の中にあるフィルアデス大陸とムー大陸、さらにはイルネティアに代表されるいくつかの島国に三角形のアイコンが表示される。数十個のアイコンは全て大都市や首都、王都がある位置に表示されており、攻撃された地点を表している。

 

「以上で報告を終わります」

 

一礼して着席し、他の出席者が今の報告を理解して思考するのを待つ。

予想していたとはいえやはり圧倒的な力に、報告を聞いた閣僚は皆顔を俯かせた。会議室が沈黙に包まれる中、何事かを考えていた皇帝が口を開く。

 

「アルネウス、報告ご苦労」

 

国名と同じ名前を受け継ぐ皇帝ミリシアルは小さく頷き、アルネウスを労うと閣僚全体を見る。

 

「長きに渡る研究で力を知り、遺物から技術を得る事で彼らに近づいた思っていたが...これが魔法帝国の力か。復活早々言い伝えに違わぬ暴虐ぶりを見せつけてくれたな」

 

独り言のように呟くと、意味ありげな視線をこちらへ向けるメフィアに向かって頷き、威厳のある声色で閣僚達へ向かって宣言する。

 

「かの魔法帝国に虐げられてきたものたちによって、我が神聖ミリシアル帝国は建国された。不壊の石板を発見して以来、我が国はいつか訪れる魔帝の復活に備えてひたすら国力の成長と軍事力の育成に励んできた...その成果を見せる時がとうとう訪れたのだ!」

 

声を張り上げ、士気を鼓舞するかのごとく言葉を紡ぐ。

 

「アグラ、全軍に総動員を命じよ。この時を以って帝国は戦時体制に突入する。ペクラス、全世界の大使館を通じ、世界連合軍の組織を開始せよ。どのような手段を用いても良い。ベレイグ、全力をもって軍事生産に注力せよ。長い戦いになるぞ」

 

国防長官、外務長官、内務長官へ矢継ぎ早に指示を出す。普段は超然とした態度をとる皇帝がこうまで感情を出すことが珍しいのか、閣僚達は驚きつつもすぐに命令を遂行する準備を始める。

 

「アルネウス、全ての魔帝対策兵器の起動を許可する。...コア魔法もな」

 

コア魔法。嘗て魔法帝国が開発し古の戦いで用いたとされる破壊の魔法の名前が飛び出し、室内が俄に騒然となる。

 

「はっ...畏まりました。直ちに」

 

魔帝対策省の発足以来、国内各所の極秘施設へ格納され目覚めの時を待っていた対策兵器群。それらがとうとう解き放たれる時が来たと、緊張とわずかな喜びが混じりいる声で答える。

 

「見ていろ、光翼人め...我々はもはや貴様らに支配される存在ではないぞ」

 

玉座から立ち上がった皇帝は、防爆措置の施された巨大な窓から眼下に広がる帝都を見て呟く。アルビオン城の前では地対空誘導魔光弾発射機を搭載した大型トレーラーの群れが交通統制の始まったハイウェイを走り、帝都近郊の防空陣地へ向かっていた。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

第二文明圏、ムー大陸西部。レイフォル地区総督府レイフォリア。

かつて列強と呼ばれたレイフォル王国の政治的中枢であった王都レイフォリアは、日本やムー同様に転移国家であるグラ・バルカス帝国の巨大戦艦による艦砲射撃を受け、王城を含む市街地の大半が瓦礫の山と化した。その跡地には帝国本土から多数の人員が派遣され、植民都市と大規模軍事基地の建設が急ピッチで進められていた

 

中でも最大のものはムー大陸に展開するグラ・バルカス全軍の司令部が置かれるラルス・フィルマイナで、大規模な対空レーダー網や高射砲塔、飛行場に加えて弾薬や補修部品の生産を行う軍需工場まで併設される計画が立てられ、実際その通りに建設は進行した。

駐機可能な作戦機は最大一千機、帝国本土最大の空軍基地にすら匹敵する巨大飛行場の建設には膨大な資材と工兵能力が必要だったが、現地人を肉体労働用に動員し本国からも全力で工兵部隊と機材を送ってもらった結果、1940年1月時点では建設開始から約3ヶ月で既に2割程が完成し、一部の防空網は運用を開始できるまでになっている。

 

この要塞が完成した暁にはムー大陸全土を帝国の領土にすることも容易い。多くの帝国軍将兵にとって、日々出来上がっていく巨大要塞の姿はその思いを沸き起こさせるには十分すぎるものだった。

そして、中央暦1640年1月18日。要塞は最初にして最後の実戦を経験することとなった。

 

「ここは...俺は、一体...?」

 

激しい頭痛と全身の痛みを感じながら、グラ・バルカス帝国軍に所属するスペイアはゆっくりと身体を起こした。

何が起きたのだろう。自分は何故こんな場所で倒れていたのだろう。

そうした疑問が矢継ぎ早に頭の中に沸き、ひとまず状況を確かめる為に周囲を見渡す。

 

「...なっ、これは...!」

 

そうしてようやく、ここが何処で自分がなぜ倒れていたのかに気が付く。

自分はラルス・フォルマイナ要塞の建設に当たっていた独立工兵第七連隊の将兵で、建設資材を乗せたトラックに乗って港から要塞まで向かっていたのだ。道中いくつかの検問を通過し、鉄道連隊が建設した軽便鉄道を横目で見ながら高射砲塔の建設現場前にトラックを停め...そして、突然影が落ちたのに気がつき空を見上げた所で記憶が途切れている。

 

「何が、あったんだ...?」

 

ようやく安定してきた視界で改めて周囲を見渡し、そのありようもない光景に呆然とする。

あちこちで建設用の足場や工事車両が炎上し、横倒しになったトラックから資材が溢れ出している。少し遠くにある既に完成していた高射砲塔の上半分は完全に無くなり、切断面は融解しているようだった。

 

「とにかく、野戦病院を探さないと...」

 

全身の痛みを押さえつけて立ち上がり、重い足取りで野戦病院のある場所を目指す。レイフォリア駐留の第92師団に付属していた野戦病院の一つが、工事中に出た怪我人の治療用にこの付近に展開していた筈だ。

 

「誰がこんな...ムーか、それとも魔法なのか...?」

 

暫く歩いているが、先ほどから誰も見かけない。それどころか車両音も戦闘音も何も聞こえてこない。

何者がこの惨状を引き起こしたにせよ、これだけ大規模な攻撃を行ったのなら地上部隊が侵攻してくる筈だ。であれば発砲音の一つや二つ聞こえてもいい筈であるし、そうでなければ航空隊付属の消防車が火災を消し止めている筈。そのどちらも一切見えないなどおかしな話だ。

 

道中では見たくないものも見た。炎上するベガ型双発爆撃機、砲塔がないハウンド戦車、そして真っ二つになった兵士の死体。

まさか、生き残りは自分だけなのだろうか。もしそうだとしたら、自分はどうすれば。

不安が不安を呼び、不吉な考えが頭の中をぐるぐると回る。

 

「っ!あった...確かこの先が野戦病院...だった、が」

 

建設中の要塞から少し離れた平地に設置されている天幕。機銃掃射を受けたかのように穴だらけとなった内部には、無数の死体が放置されていた。

不思議と血は流れておらず、むしろ焦げた肉のような匂いが充満している。死体は皆突然殺されたかのように椅子に座っているものや車両に乗り込んでいるものもあり、つい先ほどまで生きていたかのようだった。

 

「はは...お終いだ。何もかも、皆...」

 

異世界に転移しながらも、その圧倒的な軍事力で次々と国家を平定したグラ・バルカス帝国。その栄えある帝国陸軍に所属する兵士達がゴミを処理するかのように殺され地面に転がっている様を見て、スペイアは呆然とその場に立ち尽くす。

次の瞬間。山間部での掃討を終えて再びラルス・フォルマイナ上空に戻ってきた天の浮船、正式名称をXVI型対地掃討機と呼ばれる魔科学兵器の一つが、スペイアの脳と心臓を極めて出力の絞られた収束魔科学レーザーによって貫いた。

 

 




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