俺にめがけて放たれた潔くんのダイレクトシュートが顔面に着弾する。
スローモーションで迫るボールが確実に大きくなっていく中、そんなことを考えていた。
着弾。
顔面に痛みが広がる中で俺が感じてたのは
終わる。
俺のサッカー人生が終わる。
その焦燥と…怒りだった。
次の瞬間には身体が勝手に動いていた。
衝撃で倒れそうになる身体に力を込めて対抗。
視界の端で呆然と俺を見つめてるターゲットをロックオン。
「おおおおおおおおおおおおおおおお」
全身を投げ出すような不格好なヘディングで打ち返されたボールがターゲットに着弾。
時計が0秒を表示していた。
ボールが転々と床を転がる。
ボールが当たったターゲットの顔が呆然としたものから徐々に絶望に染まっていく中、沈黙が空間を支配していた。
次の瞬間、あまりにも軽い機械音が部屋の中に響き渡った。
プァーーーーーーーーーーーン
すべての始まりは一枚の手紙だった。
| 吉良涼介様 強化指定選手に選出されました。 |
最初に思ったのは疑問だった。
「強化指定選手?」
自慢のように聞こえるかもしれないが、俺はサッカー選手として将来有望らしい。
これまでアンダー世代では常に代表に選ばれてきたし、中学時代には推薦やスカウトもたくさんあった。
「吉良君は日本サッカー界の宝だ!!」
そう言ってくる大人たちに辟易しながら、どこの高校に行こうかと悩んだものである。
そんな中で俺が選んだのは青森の強豪校だった。
そう…今考えると強い違和感を感じる選択だった。
普段の俺だったら、一番熱心に勧誘してくれてた埼玉の松風黒王を選択しそうなのに
松風黒王では、ダメだ!!
松風黒王のサッカーでは、生き残れない!!!
この時は、なぜかそう考えてしまった。
だから、勧誘の中で一番厳しい言葉をかけてくれた青森星蘭に進学した。
進学してからの練習量に最初は後悔したけど、確実に俺は成長した自信がある。
元々の武器だったシュート技術を生かすためのオフザボールの動き、トラップなどの技術面はもちろんスピードやフィジカル、スタミナといった肉体面でも厳しい練習を通して大きく成長を実感したし、1年目からのプレミアリーグやIH、選手権での経験はかけがえのないものだったと自信を持って言える。
だがそれでも脳みそのどこかで誰かが囁くのは止まらなかった。
ダメだ。このままじゃ生き残れない。
まるで呪詛だった。おれがサッカーを続ける限り続く呪詛…そう思っていた。
サッカーの試合映像が表示されている多くのモニターと高々と積まれた書類の中で男女二人が会話をしていた。
「18歳以下のストライカー300名を集めたブルーロックプロジェクトもワールドカップが終わり次第開始されますが、選考は順調ですか、絵心さん?」
「順調かどうかね…まあ順調っていえば順調だよ、アンリちゃん」
「絵心さん!!わかってるんですか!?ブルーロックプロジェクトは日本がワールドカップで優勝するためには絶対に不可欠なプロジェクトなんですよ!!!」
「怒鳴らなくても聞こえてるし、そのために俺が雇われたことは俺が誰よりもよく知ってるよ」
「じゃあ…「アンリちゃんにとってストライカーってどこのポジションを指す言葉?」」
アンリちゃんと呼ばれた女性は質問の意図が分からないという顔をしつつ、一瞬考えこんで回答した。
「それは当然FW(フォワード)だと思います」
「模範的な回答をありがとう。ただ現代のサッカーは戦術が多様化するとともになんとも判断に困るポジションが存在するんだよ…偽9番。すなわちゼロトップのFWだよ」
絵心と呼ばれた男の間入れずの回答にアンリと呼ばれた女性は悩みながら自分の回答を述べた。
「…あれは10番タイプのMFをチーム事情だったりで使うものじゃないんですか?」
「半分正解で半分不正解だね。FCバルチャのラヴィーニョ、スペイン代表のレオナルド・ルナなんかは偽9番をやるけど、彼らの本質はストライカーだし、逆に日本みたいに10番がよりゴールの近くでプレイするためにゼロトップを使うようなケースもある」
「つまり偽9番だから判断に困る選手がいるということですか?」
「正解」
絵心がマウスをいじると一人の選手の映像がモニターに映し出された。
「まあ、見てなよ、アンリちゃん」
モニターに青森星蘭の18番がペナルティエリア下がりながらボールを受けて、サイドに展開するところから映像は始まった。
首を振りながらサイドの選手をサポートするように若干後ろを並走。
後方からセンターハーフがロングスプリントしてくると18番が斜めにゴール前にスプリント。
サイドの選手が18番に出したパスに対して相手ディフェンスを片手で防ぎながら反転トラップ。
目線と多彩なフェイントで相手を抜くとゴールに向かってドリブル突破。
そして射程圏内に入ったところで右足を一閃。
「絵に書いたようなゴールですけど、これが何か?」
「…しっかり見ろ、バカ巨乳め…」
「な!?」
「この試合は昨年のプレミアリーグ最終節のファイナルをかけた試合だ。対戦相手は二位の東京ユナイテッドユース。場面は1点ビハインドで、18番は後半20分からの出場」
「そういう状態だと当然、ゴールを期待されての投入になりますね」
「うん。そして同点のまま時間は後半41分すぎ、東京の攻撃を味方がクリアをしたボールを18番がトラップしたところからの映像だ」
「後半41分…ほぼラストチャンス」
「…まだ試合は終わっていないよ」
絵心に言われて映像をアンリがモニターに視線を戻すとそこには、後半アディショナルタイム5分の表示。そして負けられない東京の選手たちがボールを繋ぎながら懸命に攻める姿と青森星蘭がしっかりとブロックを作って守る姿が映っていた。そして…
「このまま終わりそうですね…あ!?」
絵心の意図が読めないアンリがこのまま終わるのかと思った。そのタイミングで
東京が、来季トップチームの昇格が内定している11番へパス。
これを読んでいたのか青森星蘭の8番がスライディングでパスカット。
そしてカウンターのために残っていた18番がマークを振り切ってダッシュするのと、こぼれ球に誰よりも早く反応した10番のロビング気味のパスはほぼ同時だった。
あとは18番が独走状態に入り、飛び出してきたGKをフェイントで先に動かすと右足を一閃。
「…青森星蘭が勝っちゃいましたね」
「引き分けでも優勝の中、青森星蘭の10番と18番は勝つことを考えてプレイした結果だよ」
「この18番が悩んでいる偽9番だという候補ですか?これだけ見れば文句なしのFWだと思うんですが?」
「そこが困ったところでね。この18番は直近だとチームで偽9番として、紅白戦とかではパスを中心としたプレイを練習中だし、先日の世代別代表ではMF登録なんだよね」
絵心は頭を掻きながらそう言うと、アンリも確かにプロジェクトの趣旨を考えると悩みものだということを理解した。
「…決めた。呼ぼう」
そう言って絵心は特徴的な笑みを浮かべた。
ライバルリーバトルの最後の相棒
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蟻生十兵衛
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時光青志
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黒名蘭世
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剣城斬鉄
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氷織羊
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西岡初
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二子一揮
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その他(活動報告へ)