久遠を中心に、チームWのスカウティングを開始した俺たちが、真っ先にマークすることになった選手は三人だった。
「次の対戦相手のチームWの要注意人物は三人。鰐間兄弟と青森のメッシこと、西岡初だ」
「全国常連の羅古捨実業でツートップを形成する鰐間兄弟の武器は、双子ならではのコンビネーションプレー。二人の距離感・動き出しのタイミングを生かしたパス&ゴーは注意してても簡単には防げない」
映像の中で、鰐間兄弟が武器であるコンビプレーでチームXの守備陣を突破していきゴールを奪う。その姿を見て、警戒心を上げていく俺たちに、チームメイトの千切が補足を入れる。
「確かに二人のコンビプレーはやばいけど、個々の身体能力やテクニックは平均レベルだ。それぞれを孤立させたら、そこまで危険な選手じゃないよ」
その言葉を証明するかのようにチームXが、二得点を上げた鰐間兄弟にマンマークを着け、スペースを消す動きをするようになると、徐々に試合の中からその姿を消していく。
鰐間兄弟が封じられ、停滞したチームWの悪い雰囲気を打開したのは…西岡だった。鰐間兄弟が高いポジションを取っているために、中盤とDFラインの間にスペースができたのを見逃さずボールを要求。そして、青森のメッシとまで評されたアジリティとテクニックを生かしてドリブル突破。そして射程圏内に侵入した所で迷わず右足を振りぬき、ゴールを奪って見せたのだ。
こうなるとチームWには、二つの選択肢が生まれる。すなわち、鰐間兄弟を抑えれば、西岡が。西岡を抑えれば、鰐間兄弟というパターンだ。実際にチームWは鰐間兄弟が抑えられた後半に、西岡がハットトリックの大活躍。馬狼がハットトリックで意地を見せたが、前半戦の貯金を生かして5-3でチームWがこの試合、勝利している。
チームV VS チームWの試合を見る限り、フォーメーションは4-3-1-2。鰐間兄弟が前線で自由に連携して動き回ることで生まれるスペースを西岡が有効利用するのがチームWの基本戦術。
「チームYの二子や田中みたいな隠れた実力者はいなそうだ…全体のレベルが平均的に高い」
「鰐間兄弟は、プライドが高いけど、実力で黙らすことができるから西岡がチームWの支配者だと思う」
「西岡の実力は、個人技でチームVから二得点を奪うぐらい高いから間違いないだろうね」
しかし、青森県大会得点王の西岡がチームWとなると、チームVはどれだけの実力者が集まるのだろうと思う。映像を見る限り、チームVで西岡と同等かそれ以上と言えるのは三人というところに違和感を覚える。…いや、目の前のチームW戦に集中するべきだな。
「明日勝てばグループリーグの突破は確実だ!絶対に勝とう!!」
「「「「「「「「「「おう!!!」」」」」」」」」」
チームWとの決戦まで時間は残り12時間
試合開始前、吉良は強い視線を感じていた。視線の主は…西岡と鰐間兄弟だった。鰐間兄弟はランキング下位を見下すものだったが、西岡のそれは…強烈な敵意だった。西岡が強い視線を向けたまま話しかけてくる。
「吉良…お前がなんで最底辺のチームZにいるのかわからないけど、今日の試合、勝つのは俺だ」
「西岡と試合するのは県大会の決勝以来か…今日の試合も俺たちが勝つよ」
「…お前のそういうところ俺は大嫌いだぜ」
それだけ言うと、西岡は強い視線で鰐間兄弟を黙らせ、ポジションにつく。
試合がチームWボールで開始されると、鰐間兄弟が早速と言わんばかりに突っ込んでくる。しかし、うちがリトリートで、スペースを消す動きをすると次第に単純な横パスが増えてくる。そして、この状況に痺れを切らした西岡がボールを要求する。
「寄越せ!」
マークしていた雷市を持ち前のアジリティとオフザボールの動きで振り切ったところで、鰐間弟が素直にパス。そして、西岡の単独ドリブル突破。そのスピードとテクニックは馬狼以上だった。多彩なフェイントでカバーに入った國神を突破して一気にPA手前まで侵入してくる。
一度振り切られた雷市がここで西岡に追いつくが、目線の動きやパスを匂わされて迂闊に飛び込めない。そして、鰐間弟が西岡のパスを受けられる位置に来ると素早いワンツーで、雷市を突破してPA内に侵入する。キックフェイントで我牙丸を牽制した次の瞬間には、右足を一閃していた。
先制点はチームW。
試合再開後、チームWはよほど俺たちのことをスカウティングしてきたのか、俺と蜂楽にマークを二人つけてきた。蜂楽には二人がほぼ密着マーク。俺のマークは一人が密着気味で、一人が抜かれてもカバーできる位置についてくる。
こうなると攻撃のキーマンは…雷市と千切だった。雷市がフィールドを縦横無尽に動き回りパスを回してリズムを作っていく。そして、中央に絞り気味にポジショニングするようにコーチングした潔にボールが入った段階で、千切が猛然とタッチライン際をオーバーラップ。潔から千切へのスルーパス。
そして、千切がカットインの姿勢を見せた段階で、俺は緩急と相手の死角に移動する動きでマークを完全に外してPAに侵入。そこを逃さずに千切がセンタリング。これにスピードを落とさずに冷静にヘディングシュート。
すぐさま、相手に追いつく同点ゴール。
完全にお互いがお互いの守備力を攻撃力が上回っている状態だった。先に攻撃のキーマンを無力化するか、集中力を維持した方が勝つ。
再開後のチームWは西岡を中心にボールを回しながらDFラインを高く設定すると、鰐間兄弟をサイドに走らせてきた。鰐間弟にボールを預けると自分も一気に加速して前線に走りこんでくる。鰐間兄弟が武器のコンビプレーで、イガグリを突破すると、すぐさまセンタリング。これにステップワークで伊右衛門、久遠を抜き去った西岡が合わせてボレーシュート。
こちらも負けじとすぐさまに攻撃に転じる。蜂楽をボランチの位置に移動させ、俺がトップ下の位置にポジション変更すると、流石に蜂楽が自由に攻撃できるようになる。そして蜂楽と雷市のパス交換してる間に両サイドをワイドに開かせ、俺がスペースメイク。そこに國神がオーバーラップしたところに俺がポストプレーでボールを落とすと、國神がダイレクトで左足を一閃。
「やっぱり試合は、こうじゃなければ面白くね!」
西岡の叫びとともに鰐間兄弟が得意のコンビプレーで攻め込んでくる。これに西岡が常にパスを受けれる位置にポジショニング。雷市が西岡を密着マークするが、そうすると西岡を囮に使って、鰐間兄弟が止まらなかった。先ほどと同じように右サイドに突っ込んでくる。しかし、イガグリがパスを出した鰐間兄を離さずにマーク。
こうなると鰐間弟の単独突破に攻撃が限定されるが…西岡が雷市を引き連れてダイゴナルランしながら、ボールを要求。これにすぐさま鰐間弟が反応し、パス。雷市がボールを奪おうとするが、手で間合いを制すると、反転トラップ。蜂楽がカバーに走るが、西岡のスルーパスのほうが早かった。これに鰐間兄が反応するが、イガグリがブロック。だが、本命は鰐間弟だった。ステップワークで久遠を翻弄した鰐間弟がフリーの状態で、シュート体勢に入るが、我牙丸が野性的な勘で飛び出して、ボールを抱え込む。
そして、左サイドの千切にロングスロー。そして千切はこれを大きめにトラップすると、一気に加速。左サイド際を自身の武器である俊足で猛烈な勢いで、駆け上がる。
「潔、千切のサポート!國神、オーバーラップ!」
俺は自身のマーカー相手を引き離そうと、駆け引きするが先程とは違い、完全に俺しか見ていなかった。こうなると死角に入る動きでマークを外すことができないし、スピードで振り切ろうとすると、もう一人のマーカーが、ファール覚悟でユニフォームを掴んで行かせまいとする。こうなるとスペースメイクしながら、一瞬に賭けるしかなくなる。
千切が、一点目と違いカットインしてくる。DFがマークに着こうとするが、千切の選択は、相手DFを置き去りにする、一人スルーパスだった。それを見た鰐間が懸命に戻りながら、叫ぶ。
「ファールで良い!!GK飛び出せ!死んでも止めろ!!」
千切が一人スルーパスをトラップした瞬間、千切は迷わず右足を一閃。ボールはゴール右上隅に吸い込まれていった。
このゴールに鰐間兄弟は意気消沈するが、西岡はむしろ燃えていた。試合再開後、西岡は鰐間兄弟を一喝すると、今度は左サイドに走らせてくる。鰐間兄弟に千切と國神がマークにつくが、西岡の選択は単独突破だった。まずは雷市を多彩なフェイントで翻弄すると、一気に加速して振り切る。蜂楽がカバーに入るが、目線とキックフェイントで、パスを匂わせ、蜂楽がパスを警戒した瞬間に身体をねじ込み突破。そして、伊右衛門が前に出るより先にPA手前に侵入すると右足を一閃していた。
西岡、渾身の同点ゴール。そして、前半戦終了のホイッスル。
前半戦のスコアは3-3。試合は点取りゲームの様子を催していた。
次話が本命
ライバルリーバトルの最後の相棒
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蟻生十兵衛
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時光青志
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黒名蘭世
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剣城斬鉄
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氷織羊
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西岡初
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二子一揮
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