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チームW戦のハーフタイム。俺たちは後半戦へ向けての守備の修正と後半の攻撃についてミーティングを始めていた。今回はお互いの攻撃力が完全に守備を上回っているが、それは限定的なものだ。
「鰐間兄弟の攻撃は、スペースがないから、サイドアタックに限定されてる。あとは、西岡を抑えれば…となるが、西岡の個人技はマンマークじゃ抑えきれんな」
「…守備はフォーメーションを変更しよう。西岡には、雷市と今村をつける。西岡は前半戦、鰐間兄弟を囮に使ってきたけど、あの三人に上下関係はあっても、信頼関係はないから西岡から鰐間兄弟へのパスは限定的になると思う」
前半戦、西岡をマークした雷市に意見を求めると、ドリブルとパスの二択を常に考えさせるために後手に回ったという回答だった。ドリブルに限定すれば雷市に抑えられるかを確認する。
「あの多彩なフェイントは脅威だが、距離を一定に保って抜かれないようにすればいいんだろう?余裕だ」
「心強いね。あとはシュートだけど、シュートコースを限定さえすれば我牙丸なら抑えられる」
我牙丸に目を向けると、これ以上は点を取らせないという目をして、同意してくる。後半の守備は問題ないだろう。
あとは後半の攻撃だけど、これが難しい問題だった。何せ攻撃のキーマンである俺と蜂楽には、二人掛かりでのマークがついているのである。前半戦は蜂楽がボランチに移動すると、スペースを作ることを避けるために、マークは上がってこなかったけど、後半戦はどうだろう…最悪を考えるべきだな。
個人のスキルでチームWの守備を切り裂けるのは、俺と蜂楽、そして千切だけだ。そして戦略的に雷市と今村が攻撃に参加できない状況になる。そうなると攻撃の手札でキーマンになるのは、潔と國神だ。ただし、前半戦に國神のオーバーラップとミドルは見せてるから警戒されてるだろう。そうなると…
「後半戦のキーマン…いや、この試合勝つためには、潔のゴールが必要だ」
後半戦の立ち上がりはチームZのボールポゼッションからスタートした。後ろでボールを回しながら、それぞれのマークを確認していく。
俺のマークは、なんと鰐間兄弟だった。前線から中盤にポジションを変更した二人が絶妙な距離感で、俺をマークしてくる。その上で、地味に足を削ったり、見えない位置で肘を入れてくるのは、よほど俺を危険視してるんだろう。国際大会で慣れてるとは言え、痛いものは痛いので、前線を細かく移動して、なるべくダイレクトパスで接触を最低限にする。蜂楽には、マンマーク気味に一人ついているが、ボールを持つとすぐさま二人目が距離を詰めて、西岡がドリブル突破をカバーできる位置に移動する。そして、千切には、マンマークをつけてこなかったが、千切にボールが渡ると、リトリートで一気にスペースを消す動きを見せる。國神、雷市、今村にボールが渡ると、ポジションの関係から、西岡がすぐさまにプレスに飛んでくる状況だ。DFラインでボールを回すと、相手の背番号8がすぐさまプレスして、単純なロングパスや縦パスを入れさせない動きを見せる。
ここまでくると、相手の守備時の戦術が見えてくる。フォーメーションは4-4-1-1で、スペースを消しながら、こちらの攻撃のキーマンを簡単には、フリーにさせない作戦。
おそらく攻撃は、鰐間兄弟がボールを運ぶ役で、背番号8がDFラインと駆け引きしながら作ったスペースに西岡が飛び込んだところでボールを要求して、決定的な仕事をするというものだろう。
後半10分すぎ、相手の分析が終わった俺は全体にコーチングしながら、それぞれのポジションをハーフタイムで決めたとおりに移動させていく。
「蜂楽、サイドに開いて!千切、10m前に出て!潔と國神は蜂楽のサポート!」
そして、常に中盤からの縦パスを受けれるように動き回りながら、ポジショニングが整った所で、一気にDFラインを押し上げるように合図を出す。
最初に異変に気がついたのは、やはり西岡だった。
「来るぞ!鰐間、吉良から離れるな!志村、岡山、蜂楽と千切のサイドアタックあるぞ!」
そして、國神にボールが入った瞬間、千切がその俊足で一気にサイドを駆け上がる。そして、俺は、急加速しながらポジションを下げて、國神からボールを受けれるポジションに移動する。そして、國神からの速いパスをダイレクトで、千切がDFラインに捕まらないギリギリのところに強く速いパスを出す。
この強くて速いパスに、ボールがサイドラインを割ると思ったDFの詰める動きが緩むが、ワンバウンド目で急激に減速、サイドラインギリギリの所で、停止する。そしてこのボールを千切が回収すると、カットインの動きを見せる。この動きに前線から戻ってきた西岡がコーチングしながら、プレス。
「俺がつく!シュートあるぞ、コースを消せ!吉良から目を離すな!」
西岡がマークにつくのと、ほぼ同時に千切は、大きくサイドチェンジパス。
「サイドチェンジ!?吉良も蜂楽もこちらのサイドにいるのに誰が??」
このパスを受けたのは…なんとイガグリ。
「ははは!ようやく吉良も俺の凄さを理解したか!」
そして、ボールをトラップしたイガグリはカットイン、シュートコースが見えたからだろう?なんとシュート体勢に入ったのである。これには敵味方全員が予想外だった!
「なぁに、やってんだ!?予定と違うだろうが!!」
雷市が叫ぶのとイガグリのシュートは同時だったが…相手の左SBが渾身のシュートブロック。
「あぁ!?」
「あぁ!?じゃねぇ、ザコが!!」
急遽、シュートのこぼれ球を詰めるために動きなおしてた吉良もボールの予測落下点を察すると、慌ててコーチングしながら、全速で落下地点に移動する。
「國神!頼む!!絶対に競り勝ってくれ!!!」
なんと落下点は、國神と西岡の中間地点付近だったのである。両SBがオーバーラップしてる上、ラインを高く設定している。その状態で、西岡が競り勝って、チームWがボールをキープするような展開になれば、一気に西岡のカウンターアタックが炸裂する危険な状況。
先に落下点に到達したのは…西岡だったが、國神も負けじと落下点に到達。國神と西岡の熾烈なポジション争いが始まった。体格とフィジカルに勝る國神が押し込んで少しでも有利な体勢でヘディングしようとするのと、腰を落として手で有利な体勢は渡さんとする西岡。ヘディング争いに勝利したのは…西岡だった。しかし、十分な体勢じゃなかったために、キープや味方にパスすることはできなかったために、ボールがこぼれる。
このこぼれ球を回収したのは…雷市だった。吉良のコーチングという名の嘆願が聞こえた瞬間に落下点付近に移動していたのである。ボールがこぼれると持ち前のスピードを生かしたスライディングでボールに飛びつき、近くまで来ていた吉良にダイレクトパス。
「イガグリ!!あとでコロス!!!」
雷市からのダイレクトパスを吉良は、鰐間を左手で抑え込みながら、身体を軽くぶつけることで近づけないようにしながら、完璧に右足のインサイドでコントロールする。そして、右足のつま先でボールを浮かせて、ボールが自分の身体で隠れるようにすると、反転。右手で鰐間を逆方向に軽く押しこみながら、左足のアウトサイドドリブル。最後の悪あがきに鰐間がスライディングしてくるが、ボールを浮かせてかわす。足に接触してバランスを崩すが、持ち前のバランス感覚で必死に体勢を立て直す。
そして、視界の端で前線のポジショニングを確認しながら、一気にスピードアップして、ドリブルを選択。あえて混沌とする左サイドに突撃する。そこにゴールへのビジョンを見出したから…
後半戦におけるモチベーションが誰よりも高かったのは、自分だと、潔は自信をもって言えるだろう。何せ他の誰でもない、自分のゴールが、この試合の命運を分けると言われたのだ。
ハーフタイム中に、チームZは、一つ作戦を立てていた。それは、西岡の頭の中にない伏兵を使った奇襲。イガグリのオーバーラップだ。チームY戦でも、使用した相手の注意を片側に寄せてのサイドチェンジアタック。唯一の違いは、本気で左サイドアタックで点を取りに行くが、それが完全に対処された場合にのみ発動するというところだった。
イガグリがボールを持った瞬間、タイミングを図って、マーカーを引き連れた吉良くんが前線に飛び込むことで、DFラインと中盤の間にスペースを作り、そこに俺がポジショニングしたところに、イガグリがパスをするというのが第一案。もし、スペースができなかった場合、イガグリが吉良くんもしくは俺にセンタリングし、シュートを狙う。最悪のケースの場合、組み立てなおすか、強引にシュートで終わるというのもあった。その時にならないと状態がわからないので、イガグリに選択は任されていた…いたのである。
作戦が決まった後半戦開始から潔はゴールを決めるために、息をひそめることになる。周りを見渡しながらゴールへの匂いを探すように、ポジショニングを細かく移動させながら、その時を待つことになった。
そして、千切の左サイドアタックを西岡に防がれた瞬間、イガグリのオーバーラップ。そして、千切がイガグリへサイドチェンジパス。イガグリにボールが入った瞬間、強烈なゴールの匂いを嗅ぎ取った潔は、その匂いに導かれるように吉良くんがDFラインにマークを引き連れて、突っ込んだことで生まれたスペースに走り出す。ここまでは、作戦通りだった。しかし、そこで待っていたのは、イガグリのシュートという爆弾だった。
イガグリがシュート体勢に入った瞬間、潔は逆の意味で、強烈なゴールの匂いを感じ取り、ゴールを背に走り出していた。
そして、クリアボールの落下点付近に到着した時には、國神と西岡の二人が熾烈なポジション争いを行っていた。文字通り、西岡がボールをキープもしくは、チームWの誰かがボールを拾うことになるようなら危険なシチュエーションだった。そして、熾烈なポジション争いの末にヘディング勝負に勝利したのは…西岡だった。しかし、十分な体勢じゃなかったのだろう。キープや味方にパスすることはできず、ボールがこぼれる。フィールドを転々と転がるボールを見ながら、懸命に足を動かす。
しかし、無情にもボールは、ボールはチームWの背番号7がいる方向に転がっていく。
嫌だ…!!
負ける…!!
もう…負けるのは…嫌だ!!
それは敗北への恐怖であり、勝利への渇望だった。
そして、ボールは…雷市がスライディングカット。そして、吉良くんにダイレクトパス。
この瞬間、あれほど濃密だった危険なゴールの匂いが拡散していく。そして雷市の怒号。
「攻めろ!俺様がDFやってるんだ!引き分けや負けなんて許さねぇ!!死ぬ気で攻め続けろ!!点を取ってこい!!!お前ら、ストライカーだろうがぁ!!!!」
そうだ…
俺は…ストライカーだ!
俺は走り出していた。自分自身のゴールで勝つために!
そして、この時、この混沌としたフィールドの中で、唯一ゴールの匂いの持ち主である吉良くんに目を向けると、一瞬目が合う。そして、叩きつけられる強烈なメッセージ。
<俺という
…それは幻聴だったのかもしれない。だが無意識に一言呟くと吉良くんに並走するようにフィールドを駆け上がっていた。
斜め後ろを並走しながら吉良くんのプレーをよく観察し、少しでも吉良くんのプレーを盗む。
まず最初の相手をスピードの緩急と裏街道で突破。
俺もマークにつこうとする選手を緩急と死角に入る動きでかわす。
次の相手には、単純な横パスだった。ただし、まるで歩幅を図ったように右足のインサイドでのキックを要求されていた。
それに応えるように、右足のインサイドキックで、リターンパス。
ここで、西岡が吉良くんに追いつくが、吉良くんの選択はストップ&ゴーとマシューズフェイントからのカットイン。しかし、西岡が武器のアジリティを生かして簡単には抜かせない。
しかし、この時、俺は吉良くんと目が合った瞬間に、吉良くんが描き出そうとしてるゴールのビジョンを見た。
それに引っ張られるように、一気にファーサイドへ走り出す。
「鰐間、11番マーク!」
鰐間兄弟が俺のマークにつくけど、俺は鰐間兄弟が吉良くんの方を見た瞬間に死角に入る動き。一瞬フリーになる。
このタイミングで、吉良くんのトゥーキックでのフライスルーパス。
PA内にギリギリ入ってるため、西岡はハンドを警戒して、反射的に手を後ろに回して、足でカットしようとするが、ギリギリ届かない。
…次の瞬間、吉良くんが崩れ落ちる。
「吉良!?」
その声に、一瞬の動揺と膠着。そして鰐間兄弟が俺に追いつく。見えないようにユニフォームに手をかけられるが手で振りほどく。しかし、トラップする時間が無くなる。
俺には、吉良くんや蜂楽みたいに狙ったところに正確にトラップする技術はない…
それを自覚した途端、ボールに込められたメッセージが消えていく…
嫌だ…!!
ゴールビジョンが消えていく…
嫌だ…!!
ゴールの匂いが消えていく…
嫌だ…!!
俺は…ストライカーだ!
俺は…俺のゴールで!勝ちたいんだ!!!
その瞬間、俺が今まで決めてきたゴールが脳裏にかすめていく。
チームX戦の馬狼相手に決めたダイレクトシュート。
チームY戦の先制となるダイレクトボレーシュート。
それらの共通点を認識した途端、俺は、鰐間に身体を預けながらシュート体勢に入っていた。
そして、落ちてくるボールに導かれるように右足を一閃していた。
俺の空間認識能力っていう武器を突出させるための最後のピース。それは…ダイレクトシュートだ!!!
見たか!チームの勝利を至上とする
これが…
後半32分、渾身の勝ち越しゴールだった。
チームWの試合再開の前に治療時間がとられる。何人かが俺の削られた足を見て、顔色を変えるが、国際試合で慣れてるから気にするなと伝え、鰐間のスライディングをかわした際にひねった足をコールドスプレーで冷やし、ガチガチにテーピングする。
「大丈夫なのか?」
「ああ。足の痛みはそこまでひどくない」
俺がそう答えるとポジションにつくと、西岡が強い目線を送ってくる。一瞬、足に目を向けたことから心配しているのを察して、首肯して大丈夫であることを示す。西岡が一回大きく息を吐いたところで、試合再開。
チームWが後ろにボールを回していくのに合わせて、俺と潔、蜂楽の三人で、前線からプレスをかけていく。この状況に、鰐間兄弟が得意のパス&ゴーが攻め上がろうとするが、コーチングでトライアングルを作りつつ、攻める方向を誘導していく。
そして、左サイドに追いやったところで千切のプレス。これに鰐間が慌ててほかのパスコースを探すが、完全に孤立させるほうが早い!そこに西岡がコーチング。
「雑でいい!前方に出せ!!」
西岡がトップスピードで左サイドに乱入。そしてそれを認識した鰐間がボールを蹴りだす。無理やりだったから早く雑なパスだったが、これを西岡はワントラップで完全にコントロールして見せた。しかし、雷市が逃がさんと言わんばかりのプレス。身体を当てて前に向かせない。鰐間兄弟には、俺たち三人がついてるし、もうすぐ今村がやってくる。それを認識した西岡は大人しくバックパス。攻撃を組み立てなおす。
こちらもボールを奪えばチャンスな状態に、俺を先頭にハイプレスに移行。ラインを上げさせる。こうなるとチームWはノーチャンスだった。後半40過ぎまで、ボールは保持されたが、今度は鰐間兄弟を右サイドに追いやったところでイガグリが汚名返上のパスカット。こちらのカウンターに移行しようとしたところだが、ユニフォームを引っ張られて、イガグリが倒されたことでFK。残り時間は残り時間はわずかだったため、冷静にボールを支配してゲームセット。
チームZ VS チームWの試合を4-3で勝利し、一次
ライバルリーバトルの最後の相棒
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蟻生十兵衛
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時光青志
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黒名蘭世
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剣城斬鉄
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氷織羊
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西岡初
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二子一揮
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その他(活動報告へ)