戦神一刀 “唯1つ、刀を極めた侍が往く”   作:夕陽に影落ち

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唐突な供給。はいドーン





遭遇に和装に依頼受注

 

 

 

 

さて、TWOの世界を渡り歩くにあたって、某とてもちろん無策でこちらに来たわけではない。仮想世界にダイブする前に、βでの繋がりを頼りに情報はある程度集めている。

某、初心者(笑)ゆえに求めるものは装備品関連のものばかりであるが。

 

その内の1人からもたらされた伝手では、始まりの街にしては破格の性能を持つ装備を作製できる中堅クラス並の職人系NPCが、知る人ぞ知るとでも言いたげなようにひっそりとした店で実装されている、とのこと。

 

今の某の中で必要であるのは、初心者の布服以上の防具…できるのであれば軽装の甲冑などが望ましいが、それは流石に高望みが過ぎるというものか。

 

まぁ無ければ無いで仕方がないが、ある程度は拘らんでも和装は欲しい。

サムライロールプレイといえば刀と和装であるし。

βだってプレイヤーメイドではあったが和装の類や和風の小物も実在しておったし。

 

……そういえば地味に煙管が有用であったな。

 

ともかく、始まりの街は中心の大広場を起点に4つの小広場に噴水……某らTWOプレイヤーがスポーンする起点が置かれ、東西南北へと十字を切るようにストリートが通っている。

これらはβ時代とは違い、街そのものが拡張されてマップの大きさは大分異なるが、基本的な構造は似通っている。

 

噴水広場から西のメインストリートを外れて、案内板から3番通り突き当たりの服飾屋。

 

彼の者より送られてきた情報を元にぱっと確認した限り、デザインの要望と性能を満たせるのはここが良いと判断した。

いざ行かん。某のロールプレイのため!

 

「失礼する。この店に、服を仕立てていただけると聞いて参った───」

 

無論、旧友とえいど世話になっているばかりでは申し訳が立たぬし、TWOの中でまた出会えば、今度は礼のひとつでもす

 

 

「はぁ〜い!いらっしゃぁ……」

「────……」

 

 

 

 

 

「あ、ら、ヤ、ダぁ ♡!

いいオトコ♡じゃぁなぁ〜い!」

 

 

 

 

 

ぱたむ。

 

……いかんな寝不足か?悪い幻覚が見えた気がする。

開けメニュー。紐付けしたデータと貼り付けたログを表示である。

位置座標、よし。

店の名前……服飾店ミルキィ&シルク、よし。

看板、マフラーを巻いた服を模したミルク色の木製、胸のロゴにSILK、よし。

 

──ガチャリ。そろぉ〜……

 

 

「アラ、おかえりなさぁい♡もーぅ、いけずなコねぇ♡急に扉閉めちゃうんだもの……あら?今度は恥ずかしがり屋さんかしらぁ?」

 

カチャン。

 

 

 

 

ッスーーーーーーーーーーーーー(吸)

 

 

 

よぉし、彼奴め今度会ったら絶対に斬ってやる。

なぁに少々某の名前が赤くなるだけよ。ただし染まる赤はあ奴の血の色だがな。これはもう運営だって見かねて情状酌量してくれるに違いない。きっとそうだむしろそうであれ。

 

まぁそれはどうでもいい……いや良くはないが、もしここで撤退を選べば、しばらく先まで和装が手に入らなくなるやもしれんのだ。

 

製作者の腕次第でピンからキリのデザインと性能になるプレイヤーメイドならばいざ知らず、いざその時になって性能と外観、某の求める両方の要望を満たす装備を依頼して実用レベルまでもっていくとなれば、法外な値段を吹っかけられても文句は言えん。

 

それにいずれ低性能となるだろうとしても、初期のうちに一時の忍耐で某のロールプレイの一助に手がとどく足がかりとなるのである。ならばむしろ堂々と、あの中性的な御仁に依頼として呉服を要請、仕立ててもらえばいい。

 

 

 

ハァーーーーーーーーーーーーー(吐)

 

 

 

よし、覚悟完了。

多少変わっておるからとなんのその。その程度であれば個性で済むっ!いざ!

 

「頼もう!」

 

「ばぁ♡」

 

 

おわぁぁぁぁぁあ!?」ドンガラガッシャーン ゴッ

 

某の、初めての、ダメージとなるのは、後頭部の強打による自傷であった。

 

……安全エリア圏内でもダメージ入るようになったんだなぁ。

 

 

 

■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪

 

 

 

「あっははは!ごめんなさいねぇ〜お客さん、とってもいいリアクションするから、オネェさんも頑張っちゃったのよぉ♡」

 

「お人が悪いぞ店主……ズズッ」

 

店先での一件、そのあと何がこのご店主の琴線に触れたのか、店に引き入れられて茶をくみ交わしている仲になったのである。

何故か出された茶が緑茶であった。めっちゃ落ち着く味でござる。その手前、侮り難しといったところか。

 

「だってこんなイイ子がワタシの店に来てくれるなんて、ちょっとテンション上がっちゃっても仕方ないじゃなぁい?」

 

話していてそれなりにこの店主の人なりが分かってきたが、存外お茶目な性格であるなこの店主。

 

ま、少々個性的な人物であるが、某の目で店の品を見る限り、事実として腕は良い。

仕立て屋NPCの性能がどの程度かの指標として貼られていたスクショ画像には、普通にβでも中堅クラスの性能、もしくは成って日の浅い前線組あたりの求めそうな具合の装備ステータスが貼られていた。

 

………ククク、見逃さなかったぞ装備者のプレイヤーネーム。覚えておれ。

 

そんな店主の手掛けた服飾が評価されて客の目を引き、その店主本人の被害者は「お前らも同じ目をみろ」とでも言わんばかりに口をつぐむ。

 

それゆえ、何も知らぬ子羊がまた……と被害が芋づる式に加速していく。腕も確かであるため依頼を受けることも多く、ゆえに被害者もまた多いと。

なんだこの負のスパイラル。

 

閑話休題。

 

「で、某の要望は受け入れてもらえるのか?」

「んん〜……受けてあげてもいいんだけどぉ、ワタシとしてもちょ〜っと複雑なところがあるのよねぇ」

 

なんと。

低レベルでもデザインと構造がしっかりしてさえいれば新規品のアイテム製作は可能と聞いているが……難しいか?

 

「おおよその服の作りと話を聞いてて思い出したのだけど、多分あなたの依頼してきた”わそう”って服は、北側の国にある民族衣装に近いのよねぇ。あなたが腰に差しているソレも”カタナ”でしょう?」

「む、北の方角に和の文化があると?」

「東の街道に逸れるから、北東って言い方が正しいんだろうけどねぇ。この街にも1人、その国から流れてきた鍛冶師さんがいるわよぉ?」

 

和の国(暫定)の情報が思ったより早く出てきた。

その北国からの流れ者から見聞が引き出せれば、おそらく和の文化、もしくはそれに近しいものの実装は確定。

そしてなによりそれが鍛冶師とは……良い情報を聞けた。

 

今しばらくこそ問題なく使える初期武器『心得の刀』であるが、この武器はレベルが5に到達するまでであれば耐久値∞という効果はあるものの、裏を返してみれば、レベルが5を過ぎると耐久値が低く早々に乗り換えなければいけなくなる武器でもある。

 

無論のこと防具は言わずもがな、だ。いつまでも初期装備など縛りでもしているわけでもなかろうしな。

 

(そういえば……プレイヤー商人で初心者装備のまま延々と見習いのフリして数百万単位で荒稼ぎしていた変態もいたな。言わずが花、か)

 

んんッ……

その為にはやはり鍛治系のスキルを取った生産職の伝手を得るか、ある程度ゲームを進めてから職人NPC巡りで鍛冶師を見繕い、刀を入手するほかない。

 

なんとも微妙なことにβからの伝手には鍛治系の生産職が居なかったのも痛い。痒いところに手が届かんなぁ……

 

「ふーむ、では戦鎧の仕立てはその鍛冶師を頼るか。あと刀も打ってもらえれば言うこと無しなのだがなぁ……」

「布や革ならともかく、武器とか鎧を作るならそうした方がいいわねぇ。それに私も、仙の国には行ったことがなくてね? 近くに寄った際にそういう衣装があるって、そのときの実物を見た分しか知らないのよ。本場と違って見た目だけの服になっちゃうけど大丈夫?」

 

ほう、和の国の名称は仙というのか。

和服に似た民族衣装、店主が知っていた初期装備とプレイヤー作成以外の”カタナ”なる武器、その仙の国からの流れ鍛冶師……ふむ、結構な情報がポロポロと出てくる。

 

にしても見た目のみ、であるか……まぁ悪くは無い。

 

「いや、某は異邦の流れ者……いまだ世に馴染まず弱いゆえ、性能はそれほど求めてはいないでござる。

というより、求められるほど懐が暖かくないでな」

 

ログインして初スポーンの初っ端からやらかしたゆえに結構な時間が経ったように感じるが、まだやらかして数時間程しか経っておらん赤子のようなプレイヤーである。

当然ながら資金など初期配布の最低額しか持っていないのだ。

 

「……あら?服の仕立てって前提で話を聞いてたんだけど違ったかしら?」

「うむ。服を仕立てて貰えるか、ではなくこういった服を仕立てられるかと聞きに来ただけでござる。某の懐具合も心許ない故、依頼を頼むのはしばらく先になりそうであるためにな」

 

伝手から得た装備の情報を見る限り、そこそこの値は張るもののはず。6〜8万も行かなければ安い方といったくらいか。それを稼ぐまで……というより、支払い切れる金を持っていなければそもそも依頼はできぬからな。

さらに上澄みの攻略組が使うようなオーダーメイド品では1000万単位の取引なんてものもざらにある。

 

「あらぁ……そう、だったの……残念ねぇ。いいお手伝いさんが出来たと思ったんだけど、無理強いは良くないしぃ……」

「ご店主、どうかされたか?」

 

何やら困り顔で唸る店主。

話を聞くに、どうやら急ぎの依頼が転がり込んだのはいいものの、店主の本店で使う材料の仕入れ周期と被ってしまったがゆえに依頼を受けて仕事を始めれば店の在庫が心許なくなってしまうらしい。

これから依頼のために奔走するとなると、店の品を疎かにしてしまうという。

 

「せめて材料さえあれば並行してお店の仕事も出来るんだけどねぇ……流石に依頼とこっちとを並行して、さらに材料集めもやるだなんて無理があるのよぉ」

 

ふむ……これは天啓か。

チュートリアルにて得た情報より、全NPCに高度AIが実装されているのは知りえている。よって好感度システムも全てのNPCに適応されるようになったのならば、ここで店主の好感度を稼いでいれば何かしら得する可能性も大いにある。

ならば思い立ったが吉日。

 

「であれば、某が多少手伝うとしよう」

「……あら、いいのかしら?」

「うむ。期間にもよるが、ご店主の依頼が終わるまで持たせば良いのであれば集める材料も比較的少なく済むはず。未熟な某といえど猫の手ほどは足しになると見た。それに……」

「それに?」

「取らぬ狸の皮算用。ここで恩を売っておければ、多少なり値引きしてくれるかと期待しているからの」

 

からからと笑って打算を暴露してみせる某に、毒気を抜かれたかしばし呆然とする店主。やがて笑みを浮かべ、こちらの手を借りさせてもらうと快諾してくれた。

 

「そこまで言われちゃ、コキ使うしか無いわねぇ」

「お手柔らかに頼むぞ、店主」

「…………マルコー」

「む?」

「マルコーよ、ワタシの名前。服飾職人マルコー=シルク。何となくだけど、それなりに長い付き合いになりそうだから教えておくわ。これからよろしくねぇ」

「某は八千流と名乗っている。遥か異邦より来た、流れ者のしがない侍だ。よろしく頼むぞマルコー殿」

 

差し出された手と固い握手を交わす。

 

これからは楽しくなりそうであるな?

 

 

 

 

 

 

 




亀以下の速度ですが更新はします。
筆が乗ればポイポイと話進められるんですがねぇ……
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