地獄でコベニと踊ろうぜ!   作:砂漠谷

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会話メインのドッグファイト回です。
そろそろアクセルを踏んでいきます。


言葉巧みにブギウギDrivin'

「あー、あー、こちら感度良好、どうぞ」

「あの……真後ろにいるんだから有線で話しかけずに直接喋ればいいと思うんですけど……」

「プロペラ音に遮られるからこっちの方がいいだろうが」

「は、はい……」

 今はほとんど滑空状態だからそこまでプロペラ音は激しくないんだけどなぁ、と思いつつ操縦桿を握りしめる。

「作戦は盗聴の危険性が限りなく低い飛行中の機内で説明する、と言ったと思うが、今がそれだ」

「はい」

 荼毘の雰囲気が変わる。

「まず、大目標は魔王の死亡とエンデヴァーの絶望だ。前者がお前の目標で後者が俺の目標だな」

「……ん?復讐対象って、もしかしてエンデヴァー?荼毘ってNo2ヒーロー・エンデヴァーの息子さん?初耳なんだけど」

「ああ、言ってなかったな。まあ相手が誰かなんてのはお前にとっちゃどうでもいいことだ。エンデヴァーをただ絶望させるには足らない。幸福の絶頂から叩き落してやるつもりだ。そのために、魔王とオールマイトをぶつける」

 有線の調子がおかしいのだろうか。個性を与える力を持つあの魔王と、No1ヒーローをぶつけるという風に聞こえた。

「魔王とオールマイトをぶつけて、魔王が倒されれば、少なくともお前は一安心できる。オールマイトが死ねば日本は混沌の渦に巻き込まれるが、エンデヴァーがNo1に繰り上がる。そのあとどっかでエンデヴァーがしくじるのを待って家庭の事情を暴露すれば、あいつを絶望に叩き落せる。魔王とオールマイトが相打ちになるのがベストの結果だ。そうすればどっちの目標も達成できる訳だ」

 聞き間違いではないようだ。

「え、えっ、え……本気?」

 というか、正気?

「本気も本気さ。正気かどうかは怪しいが。んで、その手段だが。()()()()()()()()()()()()()()()()

 …………は?

 言葉が出ない。この飛行機でマイトビル、平和の象徴の住まいに突っ込むと、荼毘は言った。

 そのまま話は続く。

「マイトビルに突っ込む前に飛行機から脱出してその後は自動操縦だ。オールマイトが北海道か沖縄にいる時に、民間飛行機を装ってマイトビル上空に近づき、バレたらアクセル全開で突っ込ませる。そのあと、捏造した『魔王の宣戦布告』を各TV局に送り付ける。そうすれば」

「ま、待って、ちょっと待って。マイトビルに突っ込んだら日本中、いや世界中がその犯人を捜すよ!?私たちの居場所なんて、ど、どこにも無くなる!もし作戦が成功しても……」

「だからイミテーション用の死体を用意した。正真正銘の魔王の元手下三人だ。焼死体だが、それは突っ込んだ時の爆発で焼け焦げたとでも思わせればいいだろう。死体の検証が進めばバレるが、その前に作戦を成功させる」

 三人の焼死体には覚えがあった。私に立ちふさがって荼毘に焼き殺された三人だ。

「でも、その死体ってのはどこに」

「今のところ太平洋を漂流してるはずだ。ボートに死体だけ乗せて自動操縦でな。この飛行機はステルス機じゃないが、そのボートは青くペイントしてあるから衛星写真の精度じゃわからないだろ。東京湾が視界に入る直前で、俺たちとその死体が()()()()()。後は俺たちはそのボートに乗って日本のどこかの陸地に辿り着ければいい。わかったか?」

「は、はい……」

「それで、なんだったか。『魔王の宣戦布告』だったな。魔王を今から起こす事件の主犯ということに仕立て上げれば、警察とヒーローが総動員で魔王の居場所を探す。そしてそこにオールマイトとヒーローたちが乗り込むって寸法さ」

 そんなに上手くいくのだろうか。心配だが、賽は私の知らないうちにとっくに投げられてしまった。もう進むしかないのだ。

 

 しばらく飛行していると、飛行機の無線に通信が入ってきた。

『こちら東京管制塔、そちらの所属を言え』

「ッチ、『こちらはクレイド発の個人飛行機。日本では個人飛行機に特別の航空許可は要らなかった筈だが』」

 まだ日本の接続水域の外だが、なぜか東京管制塔からの通信が来た。荼毘が声色を変えて答える。

『おや、バレてしまったかな?ならば仕方ない。()()()。極東の魔王。オール・フォー・ワンだ。何やらよからぬことを企んでいるみたいだから来ちゃったんだ。君の航路上10km先に、僕がいる。待ってるよ』

 

 といって、無線は切れた。

 

「クソっ、バレてたか!?どこまでバレてた?」

「と、とりあえず、ここっ、航路を変えるよ!?」

 相談もせず、私はとっさに操縦桿を一気に前に倒し、海面まで一直線に突っ込む。

「待て。低空飛行はいいが海面すれすれだと機動の自由度が減る!それと、ジェットエンジンを起動する!」

「え、えええええ!?確かにサブエンジンとしてジェットエンジンはくっつけてあるけど、そんなことしたら燃料がすぐ尽きる!」

 低空飛行に切り替える。

「燃料は俺だ!ぶち込んだ熱量を推力に変換する個性使用前提のジェットエンジン型サポートアイテムに無理やり換装した!こんなこともあろうかとぉ!」

 ええ!?そんなの初耳なんだけど!?パイロットに機体の性能は教えてくれないかなぁ!?

「と、とにかく了解!あ、前方に人影」

 亜音速で近づいてくるその人影を、操縦桿を切って大振りに回避する。その人影は腕を巨大化させてこちらを掴もうとしてきたため、ギリギリで回避しなかったのは正解だったようだ。

 

「回避成功!」

「よし、振り切るぞ!『赫灼熱拳……ジェットバーン』」

 

 荼毘がサポートアイテムを発動したのだろう、一気に体にGがかかり、椅子に体が押し付けられる。

「背後はどう!?」

「こっちとほぼ同じ速度で追ってきてる!こっちは音速飛行に耐えれる機体じゃない、音速を超えないギリギリでドッグファイトするぞ!多分あっちは遠距離攻撃も持ってる!あ、来r」

 

 荼毘がそう口に出した瞬間、背後から爆風が襲い掛かり、機体のコントロールを乱す。私は必死に操縦桿を握り、コントロールを手放さないようにする。

 

『『空気を押し出す』……これで、追い付いた』

「訳でもねぇんだよなぁ!?」

 無線から聞こえてくる声を荼毘のシャウトが無理やりかき消す。さらに荼毘が火力を上げたのか、また体にGがかかる。

「音速だの機体の耐久度だの気にしてる余裕はねぇ!マイトビルに突っ込むまで持てばいい!」

「それじゃ私たち飛行機から脱出する隙が無くなる!」

「うるせぇ、俺がお前に覆いかぶさるからお前の分のダメージは少なく済む。それでいいな。よし、黙って操縦桿握ってろ」

 急に冷たくなった荼毘の声色と、それと相反するような言葉の内容に私は黙りこくった。

「マイトビルまで残り90秒だ」

 

『こちら東京管制塔!未確認飛行機、応答せよ!』

 本当の東京管制塔のレーダーに引っ掛かったようだ。

『こちら個人飛行機!現在飛行するスーパーヴィランから攻撃を受けている!繰り返す、スーパーヴィランから攻撃を受けている!音速飛行可能なヒーローを要請!操縦AIもハックされかけてる!』

 

 荼毘の体が焦げる匂いがするが、それを気にもせず荼毘は本物の東京管制塔の通信に返答した。AIがハックされているというのは嘘だろう、魔王が電子戦を仕掛ける予兆はない。

『はぁ!?音速飛行可能な唯一のヒーロー、オールマイトは今千葉でヴィランの対処中だ、しばらく待ってくれ!』

『うるせぇ、さっさとオールマイトを呼べ!』

 一方的に通信をぶっちぎる荼毘。

「このままあの魔王とオールマイトがかち合えば良し。かち合わなければ、マイトビルに突っ込むだけだ」

 

『オールマイトを呼んだのか……なら仕方ない。ここは引くとしようか』

 魔王、オール・フォー・ワンからの通信が入る。

『待て、今引けば俺たちはマイトビルに突っ込むつもりだ。んでそのテロをお前の仕業としてでっちあげる嘘テロ宣言の準備もしてる。ビルに突っ込む前に俺たちを撃墜できなきゃ全日本がお前の敵だぞ?』

 荼毘がするのはただのネタバラシ。それだけの即興のアドリブで、魔王と対等に踊り合っていた。

『ククク、ハハハハハ!なるほど。君たちを撃墜できたとしても、オールマイトが来たら僕の負け。マイトビルに突っ込ませても僕の負け。唯一の僕の勝利条件はオールマイトが来る前に君を撃墜し、僕は『正体不明のスーパーヴィラン』のままでいること、か。良いだろう!その賭け、乗ろうじゃないか。最近はこういうヒリヒリした勝負をする機会が無くてね!』

 

 再度の爆風。機体のコントロールが崩れる。操縦桿を握り締め、爆風に耐えてから、再度荼毘のジェットで突き放せばいい。

 そう、思っていた。

『君らが二人で、僕が一人というのは不公平だよなぁ?』

 黒い霧が機体前方に現れ、回避しようと右に機体を傾ける。しかし黒い霧の中から一人の男――それこそオール・フォー・ワン――が飛び出し、コクピットの表面、強化ガラスに張り付く。

「やぁ。君にとっては初めましてかな?東山コベニ」

 無線越しではなく直接、語りかけられた。ガラス越しのため音声としては聞こえないが、その口の動きから読み取ってしまった。

「あ、あ、あ……」

 魔王のオーラとでも言おうか。圧倒的、恐怖。股間が暖かくなる感覚を覚える。

「早速だが、僕の個性を返してもらおうか。利子は君本来の個性で良い」

 魔王がガラスをぶち破り、私の額に手を伸ばす。

「させッ!」

 青い炎の噴射がその男に放たれ、男の腕が焦げるが、それを気にする様子もない。

 魔王の手が私の額に触れ。

 その瞬間。

 私は人間ではなくなった。

 




「オリ主」タグを付けました。
勘のいい皆様なら次回の展開を予測できるものと思います。

ぶっちゃけこの展開はプロット外の思い付きの要素も多々含まれます。
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