……まあいいか。
――――三人?称――――
その瞬間。東山コベニの体が、その人間としての容貌を崩していく。
血と臓物の塊となり、
プロペラ機は急速に速度を落とし、海面に近づいていく。
「なんだ、これは。個性を奪ったら急に怪物になっただと?」
AFOはその血と臓物の塊を引き剥がそうとするが、それはAFOの体に強くしがみ付き、離れようとしない。
その塊は注射器じみた牙を生成し、AFOの下腹部に刺し込もうとするが、AFOは当然それに抵抗する。
「『槍骨』……クソ、『エアバッグ』」
AFOは『槍骨』を鎧代わりに発動しようとしたが発動できず、空気を防護壁として纏う『エアバッグ』を代わりに発動した。それに阻害される牙。
(個性の発動が制限されている……?しかし『エアバッグ』は発動できた。『人間』範疇外の生命になれない、ということか?これは異形型と変形型の個性は発動できないと思っていいな。僕にとってはとんだ外れ個性だ。あの殻木が絶賛していたから期待していたが、残念だ。殻木にやるか。それにしても、『人間』の個性を奪ったら人間でなくなったこの女。そもそも元から人間では無かったのか?)
AFOの想定は事実である。
彼女は、人間ではない。
転生、という言葉には幾つか定義があるだろう。前世の記憶と経験を引き継ぐこと?それなら彼女は東山コベニで間違いはない。
だが、前世の魂をそのまま引き継ぐことを定義とすれば、彼女は東山コベニではない。
血と臓物の底の底。物理学的なそれではなく哲学的な根底部分。そこに、東山コベニ
(ああ、思い出した……生まれる前。母、猿山〇〇〇の胎の中に宿る前……私は、女王蟻の胎から生まれ出でた。そこから女王蟻は死力を尽くして私をこの世界に転生させた。東山コベニは、私の記憶と経験、人格と感情の核にはなったが、私自身じゃない。女王蟻に喰われ、殺され、そこで終わった。私は誰?私は――)
輪廻の悪魔。彼女は地獄で生まれ出で、この世界にやってきた。この世界を地獄に変える使者。
(違う。そんな訳ない。私は東山コベニ。そうありたい。この世界は悪魔だけで、私だけが人間だと思っていた。違った。私だけが悪魔で、みんなが人間だったんだ。でも、父と母が唯一私にくれた贈り物、個性が『人間』だったおかげで、人間のふりが出来た)
それも今日で終わりだ。まず目の前の魔王を母胎にして、新しく魔王の娘として生まれ出でよう。そして新しき母を喰らい、英雄を喰らい、契約者を喰らい、育ての親を喰らい、同居人を喰らい、幼馴染を喰らう。お前はそのためにこの世界にやってきた。
(違う。私は人間。少なくともこの世界ではずっとそうで、この瞬間を除けば、これからもずっとそう。敵対者や悪党は殺すかもしれないけど、友や恩人を喰らったりはしない)
お前は悪魔で、人殺しだ。その事実は永劫変わることはない。
(だからどうした。私は人間で、人殺しだ。それがどうした。私は――)
お前は――
『
血と臓物の怪物、
「
「化け物が!人間を気取って吠えるなァ!!『空気を押し出す』+『エアバッグ』!」
自分ごと空気の壁を
「良し、これで……」
だが、青い炎を噴射し空を飛ぶ少年が血と臓物の一部を掴み、AFOに再度それを放り投げる。
「飛べたのか、クソガキが!」
「最近飛べるようになったのさ!」
(こうなれば……仕方ない)
放り投げられAFOにへばりついた
落下していく一糸纏わぬ少女。それを慌てて荼毘はその胸で受け止めた。
「黒霧、すぐに私をアジトに」
通信機を使ってAFOは黒い霧の主に連絡を取り、黒い霧がAFOのすぐそばに現れる。
(承知しましッ……)
しかし、その黒い霧は暴風……否、拳圧に吹き飛ばされていた。
「もう大丈夫、私が来た」
現代最強のヒーロー。
オールマイトが現われた。
―――荼毘視点―――
「もう大丈夫、私が来た」
オールマイトは魔王の面前に現れ、そう言った。
俺とコベニを一瞥し、魔王に振り向く。
「スーパーヴィランと聞いて来てみれば……やはり貴様か、オール・フォー・ワン!今度は何を企んでいる!」
「ハハハ、今回ばかりは僕は
「何を言っている……!貴様のような悪魔が子供に責任を押し付けるなど、あってはならない!亡きお師匠のため、そして善き市民のため!貴様をここで討つ!」
「ッチ。毎度毎度こっちの面目を潰されて、こっちは迷惑千万なんだよ。そろそろ一発殴っておかないと、腹の虫が治まらなくてね!よく考えると良い機会じゃないか!君をここで殺そう!」
魔王と英雄。神話が、衝突する。
「『筋骨発条化』+『瞬発力』×7+『膂力増強』×5+『衝撃発電』、オオォオ!」
「DETROIT SMASH!!!」
多重に個性を重ねた一撃を、オールマイトは拳1つで相殺する。だがそれにより生まれた電撃は、オールマイトでも防げなかった。
「ぐぅ、これは……」
「打撃はその分厚い筋肉と強靭な骨で無効化される。なら属性攻撃だろう?ゲームはやったことがないのかい?僕はメガテンのⅦとか好きだよ」
「あいにく、貴様のせいで忙しくてね!CALIFORNIA SMASH!!!」
顎に深い一撃が入った、と思ったが、魔王はギリギリのところで防いでいたようだ。
「『エアバッグ』+『衝撃発電』+『重層甲殻』、まったく、痛いなぁ。君のために個性を収集し直した甲斐があったよ。あいにくだけど、『衝撃発電』はこっちからの打撃もこっちへの打撃も電気に変換する。打撃が効かないのは君だけじゃない」
「痛いというなら、効かないという訳でもあるまい!MICHIGAN SMASH!!!」
拳の連撃。しかし魔王には効果が薄いようだ。逆にオールマイトの拳が痺れる始末。
俺は、神話の激突を見逃すまいと炎を足から噴射して、少し離れたところを宙に浮いていた。気絶したコベニを胸に抱き。
そのまま逃げるべきだと頭では理解している。だが、俺がかつて焦がれたのは
これを見逃す訳にはいかない。
ここは海上、日本の領海のギリギリ内側で、東京都は遠くにしか見えない。マスコミの邪魔はまだ入らないだろうか。
「拳がダメなら、極めるまで!Oklahoma……腕ひしぎ!」
オールマイトは、タックルから流れるように魔王の腕をつかみ、固める。
その時、オールマイトの瞳が一瞬こちらを向いた。
「少年!巻き込んで済まない!断っても恨まない!
その言葉を掛けられた瞬間。
「ああ、そういえば、この時のために俺は生まれたんだっけ」
個性訓練を親父に禁止されたあの時。
山でこっそり個性訓練していたあの頃。
焦凍が訓練で殴られていたのをのぞき見したあの日。
その時にどんな感情を抱いたか。脳裏によぎっていく。
魔王は腕を肥大化させ、腕から生えた槍骨や鋲をオールマイトの体に刺すように暴れるが、オールマイトは固め続ける。
「少年!頼む!私ごとで構わない!この男をどうか!」
今だけ、この瞬間だけは。
「言われなくてもそのつもりだ。……『赫灼熱拳――」
俺が、最高傑作だ。
「――ピュアスパイダー』」
小指から放たれる、青い炎を通り越した、白く、細い熱線。それが魔王の眼を焼き潰した。
『輪廻の悪魔』の生態はキメラアントみたいな感じです。
三人称ニキは今後出てこないかと思います。多分(信用がない)
腕ひしぎAM「私ごとで構わない!」
荼毘(アルカイックスマイル)「言われなくてもそのつもりだ」
腕ひしぎAM「!?」