関係ないですが作者もFGOでORTと最終決戦中です。
――荼毘視点――
コベニが、攫われた。
ホームレスのブザーが鳴って、散り散りに逃げた。
あいつの行方は知れない。発信機には反応が無い、発信機を壊された後にAFOに連れ去られたのだ。
再度あそこで集合ということも出来ないだろう、確実にAFOの手下が待っている。
その後、俺は別のホームレスらの住処に隠れ潜んでいた。いつ見つかるか分からないが、どこに逃げればいいのかもわからない。ただ神経を尖らせ潜む。
まともに眠れたのは三日後だった。疲労は極限に達し、ブツリと気絶するように眠り込んだ。
――そして、奇妙な夢を見た。
『ワシの言葉が聞こえるかね?』
身体が動かない。視界は強制的に開かれており、目を瞑ることが出来ない。
『今から君の身体をバラす。今度は麻酔を掛けぬ。ワシの傑作、改人脳無のパーツに使う』
目の前にいるのは、奇妙な眼鏡のまるまる太った達磨のようなハゲ男。白衣を着ており、医師か研究者のようだ。
『部品はあらかた揃ったが、いくつか足りないパーツもあってね。それを『超再生』を与えられた君の身体で補おうという訳だ。これは裏切った罰も兼ねているから、腑分けされる痛みも味わわせろと言われておる』
身体をねじったり、炎を出そうと思っても、指先一つぴくりとも動かない。うなって炎を何とかひり出そうとするが、身体の中に枷があるようだ。
『ああ、抵抗しても無駄じゃぞ?『個性強制発動』持ちの脳無で君の個性因子を活性化させているからな。『人間』の範疇の力しか出せぬ。さ、て、と。個性因子によらぬ異能、いかなるモノかのう』
ガチャガチャと自分の身体に様々な測定機器を付ける医師。ここで自分に乳房の感触があることに何故か気が付く。
『では、眼から抉っていくかの』
眼球部に鋭い痛みを一瞬感じ、そこで意識が途絶えた。
――目が覚める。
「ッ――今のは……?」
幼い頃、本で読んだ記憶がある。
臓器移植をされた人が、臓器提供元の人の記憶を思い出すことがある、と。
しかし、先ほどの夢は、状況から考えて今のコベニの状況としか思えない。
記憶が伝達したのか?それとも、俺の妄想か?その可能性は否定しがたい。
だが、今は藁にも夢にも、縋れるものには何でも縋る。
顔を隠してネットカフェに行く。ここでバレないかすら賭けだ。
PCの前に座り、画像生成AIサイトにアクセス。記憶の中にある医師に似た顔をひたすら大量に生成する。左の小指は炭化しているため、タッチタイピングは出来ない。両の人差し指でキーボードをポチポチしていく。
「違う、違う、違う……これが近いな。これに似せてさらに生成させるか」
一時間ほどで、夢の記憶に限りなく近い顔が出来た。それを研究者一覧で画像検索する。
出てこない。ならば医師の一覧。
……出てきた。殻木球大、蛇腔病院の院長をやっているそうだ。
USBに保存していた例の命乞い動画にアクセス。マイクを起動して編集する。
「……俺は蛇腔病院にいる。助けてくれ」
その音声だけ挿入し、エンデヴァー事務所の仕事依頼メールに一時間後、各種テレビ局に二時間後に送り付ける設定をする。もちろん捨てメアドだ。
同様に、各種SNS、動画投稿サイトにも捨てアカで二時間後に投稿予約。後は野となれ山となれ。
「そして俺はその野を焼いて探し物、か……うし。蛇腔に行くか」
公共交通機関は使えない。フードを深くかぶり、そこらへんにあった自転車の鍵を融解させて乗り、走らせる。
一時間経ち、人々はスマホの画面を眺めている割合が高くなった。
しかし走り続ける。
蛇腔のある京都県に入った頃。顔の形状がやや歪つな男を見かけた。
赤黒血染だ。隣にいる女は黒髪だが、顔つきは岳山優によく似ている。ウィッグだとすれば本人だろう。
「おい、お前ら!」
声を掛けて二人を呼び止め顔を見せる。一瞬二人は逃走の姿勢を見せるが、俺の顔を見て息を吐いた。
「あ、ああ。荼毘か……なあ、コベニはどこだ?お前の動画で世間は大騒ぎだぞ。どうするんだよ」
動画の内容は、エンデヴァーの個性婚の事実の暴露を最初にぶちかます。そして自主訓練中に火事に巻き込まれた、と思われた時に誘拐され、とあるヴィランの人体実験の被験者になっている、というものだ。人体実験の部分は当然嘘だが、このツギハギ皮膚を説明するのとエンデヴァーに緊急の救出を迫る二つの理由がある。
「ああ。多分だがコベニは蛇腔病院にいる。ヒーローもそこに集結してるんじゃないか?行こうぜ」
「ね、ねぇ、ちょっと。本当にコベニちゃんはその病院にいるの?何か情報を手に入れたなら教えてくれる?」
岳山が疑問を呈する。それには当然答えなければなるまい。
「ああ。
その回答に困惑する二人。
「は、はぁ、夢……?」
「おい、冗談を言っている場合じゃないぞ」
「いや、冗談じゃない。俺のこの皮膚はコベニから移植された皮膚だ。筋肉も一部はコベニのものだ。そして、コベニの個性は形式的には異形型に分類される。この意味が分かるか?」
岳山は困惑の表情を継続するが、赤黒は違った。何か思い当たったことがあったのか、口を開く。
「確か、個性終末論の有名なものに、個性因子は意識を宿す、という説がある。そして、異形型個性の定義は、『個性因子と肉体が融合している』。つまり、その皮膚に……?」
「ああ、俺の皮膚や筋肉に微かにコベニの意識があり、それと本体が共振している、というのはオカルトが過ぎるか?」
「それは……あり得なくはない、かも。可能性としては薄いけど、それでも、可能性がゼロじゃないのなら」
顎に手を当て悩む岳山。それに畳みかけるように俺は断言する。
「ああ、行くべきだ。とはいっても、ヒーロー共が救出してくれたなら後はそれを搔っ攫うだけで良い。問題はヒーローが病院に入る前にあいつが抹殺される可能性だ」
「だけって、随分簡単なこと言うな……まあ、ヒーローならともかく拳銃しか装備してない警察相手なら、俺とお前で何とかなるだろう」
警察を軽視、否実力を正確に見積もった発言をする赤黒。それに岳山も同調する。
「……わ、私も。私もコベニちゃんを助けに行く。行かなきゃ。社会のヒーローである前に、彼女のヒーローでなきゃ、私は私を許せない!」
「お前は裏方でも別に問題ないんだが……確かに『巨大化』は有用だな」
拳銃の弾が太い針を刺された程度のダメージになる『巨大化』は、拳銃しか持たない日本の警察には有効だろう。
「最悪の場合を想定しなくちゃならない。それはもうコベニが死んでる場合だ。だが
岳山が、おそるおそる口を開く。
「コベニちゃんが、その、オール・フォー・ワン無しだと生きられない状態になっている?」
「それだ。特殊な生命維持装置を操作・維持できる人材……まあ、俺らの中にはいない。なら」
「攫うのか?」
赤黒の言葉に頷く俺。
「ああ。医療系ヒーローが何人か待機してくれてるはずだ。俺が人体実験をされているという触れ込みだからな。そいつらの中で一番使えそうな奴を攫う。これは赤黒が頼む」
「了解」
「岳山は変装してヒーローの中に侵入してくれ。近くにコスプレショップがあった筈だ。身長を十数センチだけデカくするとか出来たよな?」
「宴会芸レベルだけど、それでも良いのなら」
「上出来だ。二人に逐次連絡を頼む。バレないようにな。じゃあ……行くか」
「ああ」
「ええ!」
結成二か月足らず。即席というには成熟したパーティで。
コベニを助けるというただ一点に関しては、オールマイトにも劣らないチームだと期待する。ヒーローチームじゃないがな。
「十分だ」
三者三様、歩き出す。
10/14 日間8位ありがとうございます。皆様のお陰です。