地獄でコベニと踊ろうぜ!   作:砂漠谷

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1月6日9時半
ハーメルンの日刊ランキング97位に到達しました。
皆さんのおかげです。OVER×OVERと同様に二作品とも日刊ランキングに入るとは思ってもみませんでした。ありがとうございます。

1月6日14時半
日刊ランキング61位に到達しました。
嬉しさのあまり声が出ました。


遊べないなら未来(明日)などない

「コベニィ!マスターを呼べ!こいつは俺が相手をする!」

 その言葉に従って、射線から逃れ、店の人を呼ぼうとする。しかし店の人どころか客も一人もいなくなっていた。

「誰もいない!義、憶田さん!」

「クソ、裏切りやがったかあいつら!」

 懐から拳銃を取り出す義爛、だが拳銃は女の右腕が変形したライフル型の異形が放った銃弾によって弾き飛ばされる。

「……ほう。なぜ拳銃を持っている、この国で。お前もヴィランか?」

「自衛用だ、よォ!」

 義爛さんは左拳を握って殴りかかるが、蹴とばされ、腹部に銃弾がめり込む。

「ぐあっ!テメェ、テレビで見たことあるぞ。公安直属ヒーロー、レディ・ナガン!なんでヒーロー様がなんで将来有望なヒーローの卵を殺しに来てんだよ!」

 義爛さんは腹部を抑えつつ、立ち上がって更に殴りかかる。

 だがみぞおちに拳がめり込み、倒れた義爛さんをレディ・ナガンは組み伏せる。

()()()()()()()だよ。東山コベニという戸籍は捏造されたものだと、入学時の身辺調査で判明した。そして三年前起こった、暴力団構成員連続殺人事件の犯人猿山コベニと、東山コベニは同一人物だということも。母親も殺してるな。そんな奴でもヒーローになれるということが明らかになったら、倫理観は失われ、社会の治安は崩壊する!人殺しでもヒーローになれる、なんて前例を作っちゃダメなんだ」

「あいつは全部正当防衛だって言ってるぜ、それにテメェはヒーローの癖に殺そうとしてんじゃねぇか、俺の娘をよ!」

「第一に、正当防衛だろうが、罪を犯したならすぐ出頭しなければならない。第二に、お前の口を封じれば問題ない。第三に、お前の娘ではない……少し喋りすぎたな」

「クソ。生産性のない正論は人を傷つけるだけって、おばあちゃんに習わなかったのかァ!?」

「そろそろ黙れ」

 

「あああああああああ!」

 義爛さんの頭に異形の銃口が向けられるその直前、私は絶叫しながら、合格祝いに義爛さんがプレゼントしてくれた包丁右手にレディナガンの喉笛めがけて突き出す。後ろに引いて躱すナガンだが、包丁を振り回してナガンを窓の方に追い詰める。

「コベニ……だから逃げろって!」

 義爛さんが何か言っているが、耳に入らない。

「ナイフ戦闘術……この年の子供が使えていい技量じゃないな。親父さんから何を仕込まれた?」

「距離を、取らせない!」

「ッチ、聞いてないな」

 

 レディ・ナガン。個性「ライフル」腕がライフルに変形し、髪の毛で様々な性質の銃弾を作れる。その特性上、こっちに遠距離攻撃の手段はほとんどないため、距離を取られたら一方的に攻撃される。逆に言えば、徒手空拳やナイフ戦闘のような超近接戦闘は、銃身が邪魔になるため苦手である。

 相性は最悪でもあり、最高でもある。

 距離が縮まっている今ここで。

「ここで……殺す!」

「その殺人への心理的距離の短さ。ヒーローになっていい器じゃあ、無い!」

 

 ライフルの銃身を警棒のように振り回すナガン。だが、ライフルとは言っても所詮は骨と肉で構築された有機物。

 誕生日に義爛さんからプレゼントしてもらった、中古車一台分ほどの値段の違法戦闘用料理具、六菱製細胞分離包丁。それで受けると、銃口の先端がするりと切断された。

「ッグゥ!銃撃狙いはやめた方が、いいな!」

 ナガンが腰からコンバットナイフを取り出そうとするその隙を狙って、窓から蹴落とす。

 割れたガラスで作られた窓の縁をナガンは掴むが、それも蹴とばして、地上三階から落下させる。

 おそらくこの高さでは怪我は負っても殺せないだろう。確実に殺すために、自分も地上に降りようとして、義爛さんに肩を掴まれ止められる。

 

「おい、撃退したか……?さすがは俺の娘だ、な。まあ待て。あとは俺とその仲間がやる。お前は逃げろ。おそらく過去の所業もバレてるし、公安ヒーローを撃退したってのもヤバい。すぐに指名手配が掛かる。俺の知り合いに隠密生活が得意な奴がいるから、そいつにほとぼとりが冷めるまで匿ってもらえ。あとは顔を変えるか、それが嫌なら海外に飛ぶかだな。指名手配が掛かる前に俺の通帳使ってATMから上限額まで引き出しとけ、な。さあ行け」

 半ば無理やりフード付きパーカーを着せられ、エレベーターに押し込まれる。

 最後に、何か伝えないと。これが今生の別れになるかも。

「あっ、あっ、あの」

「なんだ?」

「今まで、ありがとう!」

 義爛は、にやけて露悪的に呟く。

「ふん、金のためだよ!さぁ、明日を遊んで過ごせるように、行け!」

 

 夜の街を駆ける。義爛から出来るだけ離れる。近くのATMに駆け込み、50万円を引き出して、通帳は公園の端に埋める。

 その後、パーカーをまさぐると、義爛の走り書いた紙片があった。

 

「赤黒血染23歳童貞 職業:パート・アルバイト。趣味:ヴィジランテ活動(ヴィジランテ名:スタンダール)。住所:東京都〇〇区◇◇-△△」

 

 童貞という情報は無駄な気もするが、その住所を目指して走る。

 

「君!ちょっといいかな。近くでヒーローに対する傷害事件が発生したんだけど、顔、見せてくれるかな?あ、ちょっと!逃げないで!速っ!」

 途中で警察に追われたが、うまく撒いて、目的地にたどり着いた。

 チャイムを鳴らす。

「ぴんぽーん」

 脳が疲れている。聞こえてきた音をそのまま口に発してしまった。

「がちゃり」

 ドアが開く。中から出てきたのは、目つきの異様に鋭いマイトパーカーの青年だった。

「あの、義爛さんに『匿ってもらえ』って言われて来たんですけど」

「うん?なんで俺が……」

「どうしても、ダメですか?」

 上目遣いで媚びていく。パワーちゃんから物乞いをする時はこうすれば良いと教わった。

「……ああ!真の英雄は無力な子供を見捨てない。俺もそれに倣おう」

 何か意図がズレているようだが、匿ってくれるなら問題ない。50万を渡して匿ってもらうことにした。

 その後、未成年としては異例の全国指名手配(とはいってもこの規模の罪状なら当たり前だ)であることが判明し、私を警察に突き出そうとする赤黒を、自分の身の上を語って説得して匿い続けてもらうのには苦労した。

 




高評価、ブクマ、感想が美味しすぎる
脳が溶ける
もっと、もっとぉ…!
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