1月8日 10時半 日間ランキング8位です。アニメがやってるor丁度終わった頃というタイミングが良かったんでしょうね。
私はヒューマライズの創設者にして代表、フレクト・ターンだ。
私は幼い頃より、自らの個性という不治の病によって長く苦しんできた。
何度も自死を試して失敗した時に出会ったのがこの書、「個性終末論」だ。元を辿れば、個性特異点というとある個性科学者が提唱した理論に基づいて、個性持ちが世代を重ねれば世界が滅ぶと説いている。
私はこの書に一縷の希望を見出した。個性は病であり、個性因子を摘出して人々を無個性に治すことが出来れば、人類を救えるのだ。そう思い、自らの財産全てを投げ打って、個性摘出技術の開発に投資した。
しかし、その研究は違法であると、当局によって弾圧され、私も一年ほど牢屋にぶち込まれた。個性とは個人のアイデンティティであり、その個性を奪う技術を開発することは、重大な憎悪犯罪に他ならない、として。
牢屋にぶち込まれた時には視聴覚を維持するサポートアイテムも剥奪され、何も聞こえない暗闇の中で発狂しなかったのは、個性終末論を一心に暗唱していたからだろう。
そうして、当局から解放された私は同志と共に、国を移し、地下に潜り、政府から隠れて違法な研究を続けている。未だ逮捕されている同志の代わりに、研究者を拉致して連れてくることや、潜入調査員を殺害することもある。前者は目標達成に必要な犠牲だし、後者は正当防衛だ。何も問題は無い。
その表の顔が、思想団体「ヒューマライズ」だということだ。
「ベロス、東山コベニの実力のほどはどうだろうか」
ベロスは、ヒューマライズの設立当初から私とその思想に賛同してくれている忠実な同志だ。傭兵として、我が団体の財布係を担っている。
「はい。『人間っぽいことを人間以上に出来る』という個性の名に恥じず、その身体能力は野生の肉食獣を優に超え、その戦闘技術はあらゆる面から見ても達人級です。特に『前に避ける』タイミングと技術に関しては、達人を越え神業の域に入っているかと」
「ほう、前に避ける?」
「はい。中遠距離タイプの敵に対して、回避しながら懐に入り、刃を振るう技術です。回避する時に引くのではなく出ることにはかなりの覚悟が必要です。しかし東山はそれを平然と、僅かも顔色を変えることなくやってのけている。きっとある種天性の才能があるのでしょう」
「ほう、それは……銃で自衛した一般人を攫うのには有用な技術だな、是非戦闘員に教え込むように言って欲しい」
自らの個性が地味であるからこそ、それを鍛え上げて窮めた、というタイプなのだろう。あの年でその境地に至るまでには、どれだけ血のにじむ努力をしたのだろうか。
そんな達人が我が団体に加入してくれたことは非常に喜ばしい。ヒューマライズは栄光と発展の道を歩み始めたばかりだ。
東山コベニがヒューマライズに加入して3ヵ月。戦闘訓練を受けている構成員の様子が何かおかしい。
通路ですれ違った時などは、普段は最敬礼をしてくれるのだが、ここ最近は放心しているようで、声を掛けてようやく返事が返ってくる。
かなり疲労しているようだ。よほど厳しい訓練をやっているのだろう、コベニの訓練を少し見学させてもらうことにした。
訓練場は地下のだだっぴろい空洞だ。無個性の戦闘員による訓練のため、これで十分だとコベニは入団当初に言った。
「あ、えっと……はい。これが、普段の訓練風景です。今は乱取りの最中で、体に重りを付けながらナイフ戦闘術の訓練をしています」
だが、戦闘員は極度の疲労でふらふらとナイフを振り回すだけのように見えた。
「コベニ君、これでは訓練にならないのでは?それに、
「いえ、これで合ってます。極度の疲労に耐える訓練も兼ねてるので。それでは訓練の邪魔になるのでお帰り下さい」
と言って、見学は半ば強制的に終了させられた。教え子以外に訓練をあまり見せたくはないのだろうか。
何か怪しいような気がする……が、ここは、しばらくはコベニ君を信頼するとしようか。
それから更に数か月が経ったある日、ベロスが私の自室に駆け込んできた。
「フレクト様!東山コベニが訓練場に立てこもっているようです!」
「なんだと……?すぐに行く」
きっと何かの誤報だ、そうに違いない……そう思い訓練場へと走る。
訓練場の扉は内側から堅く閉ざされており、電子ロックも壊されたようで外からは開けられない。
「フレクト様、もうすぐで扉をこじ開けられる増強型個性の構成員が到着します!少々お待ちを!」
「ああ……いや、少し待て」
扉の向こうから、啜り泣く声がする。耳を扉に付け、補聴器型サポートアイテムの精度を上げて聞き耳を立てる。
泣いているのはコベニだ。
「ぐすっ……どうして出てこないの……もう一回!『地獄の悪魔よ、この部屋にいる私以外の全ての生物の命を捧げます。なのでどうか、私を元の世界にお帰し下さい』……やっぱり、何も起こらない……」
何かが。彼女に感じた違和感。何かが致命的に狂っていたのだ。根本的な世界観の違いに基づくソレを、私は当局に不当に追い回された同志としての同情で塗り潰してしまった。そこから間違えたのかもしれない。
拳を扉に叩きつける。私の拳にも当然衝撃が響くが、それはタイムラグを以て扉に反射される。個性「リフレクト」の反射には、一瞬のタイムラグがある。それを可能な限り引き延ばし、自らに蓄える。体に負担の掛かる個性の応用技だ。
扉をひたすら殴打、殴打、殴打。私の少し鍛えている程度の筋力では凹みもしない。それでいい。反射された衝撃を蓄え続け、一斉に放つ。百発ほど殴ったところで、それを一撃に込めて解放する。
「『延滞量禁・リフレクトバースト』、開けろォオオオ!」
扉の物理鍵の部分が砕かれ、開いた。
私の目の前に広がっていたのは、八人のヒューマライズの団服を着た戦闘員が血まみれで横たわっている景色だ。
そして八人に囲まれた中心部に座っているのは、血で描かれた五芒星の中で泣きじゃくっている子供。東山コベニだ。
「悪魔……」
私は慄いた。そして、ベロスが弓を構えると同時に、拳を構える。
あの悪魔を、斃さなければ。
コベニちゃんは高校受験の時に英語勉強したので英語普通に喋れます。
コベニちゃんの学力は中学時点ではヤオモモよりちょっと上(普通に優秀な旧帝大学生レベル)だけど氏子や校長の足元にも及ばない程度です。
不定の狂気どころか、完全にSAN値0の狂信者状態だったコベニちゃん。
一体、どぉなっちゃうんだ~!?(トムブラウン)