これ週一投稿難しいっすね テスト期間もあるので
春休みにはドバーっと更新したいと思います(淡い希望)
5話のサブタイトル「目指せいつかの
みんな、BRADIO聞こう!
―――フレクト視点―――
コベニの車が突然飛び出してきた人影に衝突し、止まった。
轢いたのか……?ともかく、ブレーキを踏んでコベニの車から数十メートル離れたところで止まり、降りる。車の通りが少ないところなので問題はない。
車の陰から、一人の少年……それも、皮膚が継ぎはぎになったことが分かる異様な姿の少年が出てきた。
左腕は内出血しており、折れているようだ。両腕でコベニを抱えている。痛みを気にせずに。
コベニは呆けるように、その少年を見つめている。
「少年、その少女を引き渡してくれないか」
私は少年に問いかけ、歩み寄る。だが少年はコベニを地面に下ろし、右手で私を制止する。その手のひらに青い炎を灯して。炎系の個性か。
「それは、無理だ。俺は、彼女を、迎えに、来た」
片言の英語だ。訛りからして日本人だろうか。
「……そいつの仲間か?そいつの犯した所業に関わっているのか?」
「犯した、何を?知らない。俺、魔王の、依頼で、来た」
魔王?噂には聞いている。極東の魔王、世界の闇を統べる君臨者。その魔王の使者も、コベニのやったことは知らない。つまり団員を殺したのはコベニの独断、ということか?
だが、コベニは魔王にとって利用価値があり、奴を手中に収めれば利益が手に入る。
もしかしてコベニは、我々の研究成果を盗んだ、のか?
いや、そんなことはもうどうでもいいことだ。そうであろうとなかろうと。渡すわけにはいかない。
「それなら、無理やりにも引き渡してもらう」
少年は、折れた左手でポケットをまさぐり、喉に何かを付ける。
『あー、あー……。ならこっちも実力行使に出るしかねぇな』
言葉が流暢な機械音声に変化した。「実力行使」というワードが喉の機械から出た瞬間、ベロスが先手を放つ。三つの矢を一度に放ち、弧を描きながら継ぎはぎの少年に迫る。
『俺の名前は
ダビから青い炎がカーテンのように広がり、コベニとダビを覆う。矢がカーテンに触れると、それらは一瞬にして燃え尽きた。しかし炎が矢に集中した隙に、コベニは薄くなった炎のカーテンを突破し、ダビから逃げ出す。
『チィ、油汗さん、鬼爺さん、蓄輝さん、全員コベニの離脱妨害お願いします。俺が後で追います』
ダビは耳に手を当てて誰かと通信している。
「私は奴を対処する。お前はコベニを追え」
「高速で迫る矢を、一瞬で焼き尽くす……フレクト様、危険です!」
「問題ない」
「っ!分かりました」
ベロスでは、コベニを捕獲できるか怪しい。私なら、あの謎の斬撃さえ出なければ捕獲できる。さっさとコイツを倒してコベニのところに向かわなければ。
昔、火炎放射器を自分に向けても、私の体は焦げ目一つ付かなかった。多少温度が高かろうが、忌々しいことに私の「リフレクト」は貫通できない。
ベロスに命じて矢でダビの集中を削がせつつ、私はダビに迫る。
『へぇ!怖い物知らずなんだな、おっさん!』
「私に炎は効かん。大人しくその娘を渡せ!」
しかし、そのセリフを聞いて、ダビはニタリ、と口角を上げた。
『“炎は”な。この国に来て東山コベニを探し回ってるときに、お前の個性についても調べ上げてんだよ』
どういうことだ。炎以外の個性があるとでもいうのか。
そうだ。確か、極東の魔王は個性を奪い与える力の持ち主だと聞いたことがある。個性因子についての研究に出資しており、その困難さを理解していたつもりの当時の私は、そんなのは荒唐無稽なおとぎ話だとそれを一笑に付した。
しかし、それが事実だったなら?ダビが次に出す手札は読み取れない。
「私の「リフレクト」を破れるものなら破ってみるといい!」
この私は死んでも、ベロスが理想を継いでくれる。思い出すだけで苦痛が心に満ちる過去の記憶から解放されるならむしろ望ましい。
だが、我が同志を殺した東山コベニだけは、この手で葬らねばならない。
拳を構え、ダビに叩き込もうとしたその瞬間、私は膝をついた。
「なっ……」
気を失う前に私の目に入ったのは、通訳機を外したダビだった。
「
□■□■
私は、荼毘が矢に熱量を集中させた瞬間に炎の壁が薄まったのを、青炎光の強さで知覚できた。その時とっさに身体が動き、彼から逃げるために逃げ出した。ガラス片による傷と青い炎による火傷は
荼毘は「迎えに来た、魔王の依頼で来た」と言っていた。
フロントガラスが砕け、バンパーがへこんだ車に乗り、全力でアクセルを踏む。
一分ほど道を進んだら、道が合流したところで道を通せんぼしている人が三人いた。
痩せ気味の若者、筋肉質な老人、肥満体の中年。全員男性だ。
「止まれェ!」
日本語で若者が叫び、その瞬間、若者の体は閃光を放った。人間閃光手榴弾。その言葉が脳裏をよぎり、瞼を閉じるが一瞬遅い。視界が数瞬失われることになった。視界が失われる前の記憶を頼りに三人を避けてハンドルを切る。
「勝鬨流対戦車相撲、老いてもなお、健在!」
だが、しわがれた声がしたと思ったら、何かに衝突して止まった。先ほどの反省からシートベルトをしていたので運転席から飛び出すことは無かったが、しかしアクセルをベタ踏みしても車はびくともしない。
「チャーリー、やれェ!」
「ほーい」
間の抜けた返事と共に、べちゃり、べちゃりと車体に何か粘着質なものがぶつかる音がする。
視界が回復する。黄色くぶよぶよとした脂肪のような何かが、車体にへばりつきながら蠢いていた。
「うええぇえぇ」
汚い。そう感じた瞬間、車から飛び出していた。
車を運転したことのある人ならわかるかもしれないが、運転している時というのは、車と自分の肉体が統一されたと錯覚するものだ。車体に触覚がある訳ではないが、つまり、ねばついた
生理的嫌悪感から車を飛び出すと、私本体にねばついた
体から赤い蒸気を吹きだしている、何故か半裸になっていたマッチョ老人がタックルをかましてくるが、それを跳躍して回避。老人の頭を踏みつけてさらに跳躍し、私の車を汚した(と推測される)中年デブの喉笛に切っ先を突き刺す……と思ったが。
「あ、包丁車に忘れた」
咄嗟に拳に変更。疑似的増強型のデブが口からスライムを吐き出そうとするが、顎をアッパーで殴り口を閉ざす。さらに腰の入った右ストレートを鳩尾……は脂肪の鎧が厚そうなので普通に顔面を殴って昏倒させた。顔面を殴った際に拳に僅かに黄色い脂肪が付着した。ばっちい。
ズボンに手を擦りつけて数滴ほどの脂肪を落とし、不快感に耐えつつ拳を握って残り二人に対処しようとする。
しかし、残り二人、そして私が乗っていた車、それらは蒼炎に焼き潰されていた。
『おぉっとぉ!なんて強いんだ東山コベニィ!味方は全てやられた!これは翻訳機が壊れるレベルの火力を出さざるを得ない!』
翻訳機を通してわざとらしい、舞台じみた声量が流れる。その声の方向に振り返ると、黒焦げになった生死不明のベロスらしき女と、無傷で気絶しているフレクトらしき男(だが肌が青くない)の体を引きずりながら、荼毘が翻訳機を踏みつぶしていた。
荼毘はこちらに視線を向ける。
「これで共犯だな。東山コベニ、俺の命の恩人、らしい女。一つ、商談があるんだ」
彼は口角を上げず、じっと視線を合わせてきた。
Q.これからのフレクト君、一体どうなっちゃうんだ~!?
A.plus darkness さらに闇堕ちへ!
通信機が体内に仕込まれていればゲームオーバー……だったのですが、荼毘くんは体内の通信機も熱で破壊できると踏んで凶行に走りました。
とはいっても、いずれバレます。汚らしいAFOには嘘発見個性があるので。
YUKICHI要素は「油」「鬼」「蓄」で補っています。回るというのは、まあ戦闘の隠語ということで。