地獄でコベニと踊ろうぜ!   作:砂漠谷

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連続投稿じゃ(息絶え絶え)

地獄の轟くん家2が放映されるということで、乗るしかないこのビッグウェーブに。


狙ったあの娘とチクチクチークタイム

「と、とりあえず、その二人……あとこの三人は、どうするんですか」

 

「ああ、俺と一緒にお前を追ってきた三人は口を封じなきゃならねぇから焼き殺した。この二人は……どうする?女の方は死に体だが、すぐに救急車を呼べば間に合うかもしれねぇ。だが……この二人、確実にお前に恨みを持ってるし、生かしとくと後々厄介そうだ」

 

 荼毘は顔色を変えずに言ってきた。

 

「そ、そうですね……確かに殺した方が……いや、でも」

 

 何か、違和感がある。ここまで簡単に私は人を殺せただろうか。

 前世では、追い詰められないと手を汚せなかった。今世でも、小学生の頃は人を殺すという選択肢は違法風俗に沈められるのを逃れるためでないと取れなかった。

 でも、今は人を洗脳して自殺させて、気絶して殺さなくても良い相手を殺そうとしている。私はここまで冷血になったのだろうか。その切っ掛けは?元から冷酷でその本性が露わになっただけだろうか。

 

「やっぱ、やめときます」

「そうか、そこらへんの判断はお前に任せる。それで商談についてだが……ここから少し離れるか」

 

 救急車だけ呼んだ。救急車を呼ぶのに使った携帯はその場で破棄し、その後ヒューマライズの本部から10キロほど離れた町の、隠れ家的なカフェに入った。私が拠点から出てくるのを待つ間の暇つぶしに、荼毘がよく使ってたようだ。

 

「身の上話から始めようか。ああ、お前の人生についてはざっくりとだが知ってるから、俺が一方的に話すだけだ。俺は、ある個性婚をしたヒーローの元に生まれ……」

 

 そこからかなり長い話が荼毘の口から垂れ流された。おおよそ30分ほど、私は傾聴を要求された。

 要約すると、彼は個性婚の失敗作として、父親から軽んじられ、訓練中に山火事で瀕死状態になった。瀕死状態の彼を助け、攫い、蘇生させたのが()()()()、というか魔王と、その部下の医師だったようだ。治療の際に私の皮膚を使ったようで、私と同じ場所にほくろがある。その後、3年間の昏睡の末に復活し、医師の運営する孤児院を炎で焼いて逃げ出し、父の元に帰ったが、そこには成功作を虐待する父の姿があった。父に失望どころか深い憎悪を抱き、魔王に表面上は下ることにした。魔王からの最初の指令が、コベニを連れて帰れ、というものだった。

 

「は、はぁ……それで、なんで私を連れて帰らずにこんなところで茶をしばいているんですか?」

 

 荼毘はぐいと椅子から立ち、私に顔を近づける。まぶたガン開きの笑顔が怖い。

 

「そう、そこが商談という訳だ!」

「ひぃ、はひ」

「ぶっちゃけて言うと、俺は魔王を裏切った。俺は親父に復讐したい。だけど、あいつは『ああ、あれね。まあ、十年以内には処分する予定だから安心して欲しい。それまで手は出さないでくれるかな』と言った。十年だ、最大で十年もかかるんだ!俺の寿命は残り少ない、あと何年か分かるか!?」

「ひゃ、ひゃい!二年、とか……?」

()()()!!火傷の後遺症でずるずる皮が剥けていくらしい。お前の皮膚で二か月から一年半にまで延ばしたらしいが、それでも短すぎる。あの魔王の時間感覚に合わせちゃいられねぇんだよ」

 

 荼毘の顔が憎悪に歪む。父への憎悪か、魔王への憎悪か。

 ん?皮が剥けていく?つまり……そういうこと?

 

「あの……私を捕まえに来た目的って……」

「そう、最初はお前の皮を剥いで、魔王の医師に移植させて寿命を延ばすつもりだった。だけど、そんなだらだら生き長らえても俺がこの憎悪でイカレちまう。一年。一年で親父を地獄のどん底に叩き落す。その後はどうなっても良い。協力しろ」

「あの、それ私にメリットって」

「魔王に身柄を渡さない。日本に戻るのを協力してやる」

 

 そんな……魔王を裏切りその追手を殺したという設定に私はなっている。実際に殺したのは目の前の男だが。

 その状況で日本に戻ったらどうなるのか。魔王に捕まり、一生目を覚まさずに皮膚鉱山となり果ててしまうだろう。事実上の死だ。

 

「いや、日本には戻らなくても……」

「お前、日本に恩人や友人がいるだろ?魔王を裏切って逃げたことになったお前の、大切な人だ。魔王がそいつらに手を出さないと思うのか?」

「う、裏切ったということにしたのはお前でッ、私は裏切ってない!」

「いや、それはない。半年も魔王と連絡を取らずに外国の宗教団体に保護してもらってるというのは、完全に任務の放棄だ。定期連絡くらい普通するだろ」

「あ、あれ?」

 

 定期報告って、しなきゃいけないんだっけ。

 そうだ。潜入してから最初のころは、ちゃんと報告しようと思っていたはずだ。だが地獄からの脱出の儀式を思いついてからそれどころではなかった。大して重要ではない事柄として後回しにしていくうちに忘れてしまったんだ。

 

「報告・連絡・相談。海外に行ってからコレをお前は一切やっていない。それでも魔王の情報網が有る日本にいる内は裏切っていない可能性の方が強いとされるが、情報網が無い海外で報連相を怠っているスパイというのは、非常に強固な、裏切っている状況証拠になる。俺はその限りなく黒に近い疑惑を完璧な黒にしただけだ。ともかく、お前に逃げ道はない。俺に協力するしかないんだ。わかったな?」

 

 義爛さん、赤黒君、もしかしたら岳山ちゃんも狙われているかもしれない。義爛さんはタルタロスにいるから安全だろうけど、赤黒君と岳山ちゃんが心配だ。

 疑いを晴らすことは不可能だ。彼ら彼女らを守るためには、海外に行ってもらうしかない。説得できなければ、無理やりにでも。

 自分と大切な人たちの命を守るため、私はもう、頷くしかなかった。

 




報連相が出来ない娘だからデビルハンターか風俗か、という選択肢になった訳なんですよね。
商談というワードはハイパーインフレーション(最近読んだ)の影響を受けてます。
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