原文【ネタ思いついたけど俺には処理できないから気が向いたら短編とかにして供養してほしい】
気が向いた。
1Kマンションのちょっとだけ重めな扉の開く音。
ため息と、荷物を放り投げる音。
椅子に座っていた男が、女に向かっておかえりと言う声。
「マジで最悪!キスマは見えないとこにしてって言ったじゃん!」
「ホントごめん!」
それは、カップルのどこにでもある日常。
「同僚に言い訳するの本当に大変だったんだから!」
「ごめんって!」
「腕にびっしり蕁麻疹出てるけど大丈夫って心配されたんだけど、お前何箇所キスマ付けた!?」
「……88箇所」
「皮膚科勧められたんだけど!!」
やっぱカップルのどこにもない筈の日常。
「しかも最近流行ってるし、蕁麻疹の次は梅毒かと思われたんだけど!」
「性行為が原因ではあるから点と点が線で繋がったみたいなところあるね」
「点と点どころか体は点だらけだけど!?」
「まあまあ、点と線で言えば見てよここの……いや背中のこの辺のキスマークを」
「背中は見えないけど!?」
「線で繋ぐとほら!乙女座だよ…君の可愛いところを思いながら付けたんだ」
「寝てる間にタトゥー入れたのと同じぐらい怖い!しかも見えないからなおのこと怖い!」
「しかもほら、太腿のとこのキスマはね、面白半分で作ったオリオン座」
「他の男を彼女の体にキスマで作るな!線で繋ぐな!」
「あぁ…セックスしながら作るのは大変だった」
「セックス中に神話の男の顔を思い浮かべるな!せめて現実の女にしろ!馬鹿野郎!違うだろ私の顔を見てろ!!」
「でも神話の男と脳内で並べられたら嬉しくない?」
「正直そこはちょっと悩む」
「あ、悩むんだね」
「で、何考えてこんなキスマしたわけ?内出血しすぎて皮膚の下はほぼ血みどろみたいなもんよ?」
「実はその、ヒョウ柄に性的興奮を覚えるんだ」
「は?」
「ほら、ヒョウ柄ってあるだろう?斑点の」
「まああるけど」
「人体にヒョウ柄があったら素晴らしいなと思ってね」
「映画のキャッツに人生歪められた人みたいな発想」
「よく知ってるね。あれを見てからだよ」
「本当に映画のキャッツに人生歪められた人だった。いるんだそんな人」
「一応ね、衣服も試したんだよ」
「あぁ、あのゴテゴテのヒョウ柄の服を時々渡してきた時期はそういうのだったってこと」
「間に挟むようにしたら抵抗なく着てくれるかなって」
「こっちはサブリミナルヒョウ柄でファッショセンスを大阪のおばちゃんにさせようとしてるのか不安だったんだけど」
「でも数回着てくれたよね」
「一周回ってアリかと思ってしまった時期はたしかにあった」
「でもやっぱり駄目だったんだ」
「私のファッションセンスを返してくれ」
「で、全身キスマとかいう行為に及んだと」
「言わなきゃバレないかなって」
「正直なんで職場まで気が付かなかったのか自分でも怖い」
「自分でやっといてアレだけど、朝弱いとはいえボケーっと着替えて朝支度して仕事行ってから気付くの本当にヤバいと思う」
「常人は腕に88箇所のキスマを付ける狂人が隣りにいることを想定してないわけよ」
「普通に家出ていったときはマジで怖かった」
「犯人が意図的な己の行いに恐怖するな」
「キスマって消すの結構大変なんだからね」
「わかるよ。君にキスマで背中に虎の入れ墨もどきを描かれた時に痛感した」
「ほら、私って点描が得意でさ」
「うーん反応が常人と違うんだよな」
「その時は思いつきでキスマで絵が書けるんじゃないかなって思っちゃったわけよ」
「行動力の化け物を超えて人間社会に理解のないただの化け物なんだよな」
「で、実際に書けちゃったわけよ」
「起きてなんか背中痛いなって鏡見たら、知らないうちに入れ墨が彫られてた人の気分を初めて体感したよね」
「じゃあこれはその意趣返しってこと!?」
「いや、それとは別に、普通にキャッツに人生観歪められたから君をヒョウ柄にしたかった」
「あくまで主義主張は真っ直ぐ曲げないんだ」
「だからお腹のあたりにはキスマが少ないだろ?」
「毛皮の再現ってことだったんだこれ」
「ヒョウっぽくない?」
「お腹だけ白いキャラクターだとドラえもんが浮かぶけどね」
「斑点のドラえもんは病気じゃないかな」
「その病気の姿にさせたのはお前なんだよな」
「まあまあ、でもちょっといたずらごころが湧いてね、下腹部のキスマを見てほしい」
「うわ、こんなとこにも若干付いてる」
「それは水瓶座とポンプ座」
「星座をそんなとこにつけるな」
「ハート型にうっすらキスマで囲ってあったりもする」
「星座でとんでもない淫紋を作るな」
「いや、本当にごめんね。これからは見えないところに付けるよ」
「見えないところがヒョウ柄になる運命は定まっているのか」
「そもそもそんな日焼け跡があるのに見えないところをわざわざ見せることないでしょ」
日に焼けた小麦色の肌に対し、亀甲縛りの形で日に焼けていない白い肌。
常人に見せれば間違いなく二度見されるであろう肌を指でなぞりながら、女は確かにと頷いた。
内出血で出来た星空、血流は実質流星群。