夏、ぼっちな私は奇妙なものに出会った   作:伊笹身

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超久々の投稿です。
ようやく時間が出来ましたが、まだまだ不定期投稿で次も遅くなってしまうと思います。
せめて…二期が始まる前には一期を…いけるかな?


三話 灰からサイコウ潮ライブ

来てしまった……いきなりの事すぎて断れなかったぁぁぁしかもカイムは置いてきちゃったしひとりぼっち…いや虹夏ちゃんが近くにいるからひとりぼっちじゃないけど。それでも今までカイムとはあの時以外ずっと一緒だったしなぁ……

でも引き受けた以上はしょうがない。がんばるしかない……と思いつつも自信が持てない。それにしてもここが下北沢……ガヤガヤした雰囲気はニュー妖魔シティは平気だったのにやっぱ妖怪が近くにいないと緊張する。あれ……もしかして結構妖怪に依存してたりする?

 

「ひとりちゃんは下北よく来る?」

 

「あ……いえっ今回が初めてです」

 

「ライブハウスもう少しだからね」

 

やっぱり話しかけた瞬間に目を逸らしてしまう。しっかり相手を見ようよと思う。別に邪気払いロケットが飛んでくる訳じゃないから。

下北沢はよく来るかって聞かれたけどこんなオシャレで個性豊かで何より人が多いところに私は怖くて行けない……なんか最近私の人間耐性が下がってる。このままだと私は妖怪とだけ触れ合う本当のダメ人間になってしまうぅ……虹夏ちゃんはオシャレだなぁ…でも私はカラカラさんに色々と着せ替えさせられたあたりから少しオシャレがトラウマになってるしそとそも私芋ジャージだしクマすごいし猫背だし……

そ比べて虹夏ちゃんめっちゃいい匂い〜〜これが女子高生の香りか〜

 

「近づきすぎでござるよ」

 

「はうっっていうかカイム⁉︎さっきまでどこいって…」

 

「どうかした?」

 

「イエッナニモ」

 

危ない危ないあやうく私変質者になるとこだった。カイムが教えてくれたから助かったけど……

話によると、私が今から行くライブハウスは虹夏ちゃんのお姉さんが経営しているスターリー?といい、彼女自身は普段はドリンクのバイトをしているらしい。

私がライブハウスで演奏……ネガティブになっちゃだめだ……思い出せ…妖怪相手に演奏したあの時の歓声……

 

 

 

 

「今年の妖怪紅白歌合戦!特別ゲスト!後藤ひとりちゃんの登場ズラー!」

 

「ひとり!」

 

「ひとり!」

 

「ひとり!」

 

「妖魔界のみんなー!盛り上がってるかー‼︎」

 

 

 

 

「うへへへ〜私はスターオブザスター……」

 

「ちょっとひとりどの口に出てますぞ」

 

「あ」

 

「え?」

 

「いえっ」

 

やばいヤバいなんか“頼む相手間違えた”みたいな顔してるよ……いやもう神様仏様あやとり様どうか変な相手だと思われて警察に通報補導されて人生お先真っ暗には……

 

「そういえばさ、その時計良いね!あまり見ない型だけど何処で買ったの?」

 

「えっあのっ…ここここれは…」

 

私が腕に付けている時計は妖怪ウォッチ。今まで何回かバージョンアップを重ねて、名前は確か妖怪ウォッチドリームだ。結構というか相当派手な時計なので目についてしまった。ガシャガシャから出たともヨップル社から貰ったとも言えないし……だからと言ってお店の名前を言わなかったら疑われるかも……なんとか曖昧に答えないと……

 

「その……友だちとの友情の証というか……いやいやそんな大げさなものではなくて……」

 

「そっか!いい友達がいるんだね!」

 

「は…はい」

 

いい友達か。わたしは昔友達いなかったな……でも中学生のあの日から自分の人生は大きく変わったと思う。そのおかげでで今や妖怪の友達は数百人にもなる。

人間では無いけれど妖怪のみんなは自分の大切な友だちだ。その中でもカイムは特に付き合いが長いからその……親友とかにあたるのかな…?そういえばケータ君もイナホちゃんもマック君とは去年からあまり会って無いな。

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく歩いたけど…もう見えるのかな。周りにそれっぽい建物は…

 

「着いた!ここだよ〜!」

 

(ヒェッ)

 

回想に浸っているうちに目的地に着いた。けれど…話に聞いていたライブハウスは、何とも目立たない場所にあった。

いや目立たないというか地下にあったので私はもうムゲン地獄か何かなんじゃないかと錯覚して…うおおあの時のトラウマがぁぁあァァァ!いやだ!大山椒に焼かれるぅぅう!

 

(…本当に大丈夫かなこの人…)

 

 

 

 

 

 

「おっはようございまーす!」

 

「おはようございます…」

 

「お邪魔するでござる」

 

恐る恐る自分もドアを開けて入る。良かった〜思ったより魔境な感じは無い。

この圧迫感、この暗さ、私の家〜〜!

 

バンドって怖そうなイメージあるけど所詮インドアの集まりだから。今まで数々の修羅場を突破してきた私なら……

 

「そこにいるのが、PAさん」

 

「あっ…おはようございます」

 

と思ったのも束の間。私の目はピアスのたくさんついたお姉さんと合ってしまい、その目を見た瞬間本能的に

 

「イキってすみません……」

 

「急にどうした⁉︎っていうかそのこけし何⁉︎」

 

「とにかくしまうでござる!ほら落ち着いて…」

 

恐怖のあまりブラックこけしを捧げて土下座してしまった。どうやらバンドは妖怪よりも恐ろしいものみたいです。どうしよう……このまま私は漢方無しで帰れるのか不安になってきた。そのうち昇天して……また妖怪になって細々と生きていくのかぁ……

 

「やっと帰ってきた」

 

「あっリョウ!この子は後藤ひとりちゃん。公園で奇跡的に出会ったギタリストだよ」

 

多分この人はバンドメンバーかな。なんだか雰囲気が私と似てる…親近感が湧いて……

 

うわあああああ睨まれた気がする!一瞬親近感湧くと思ったけどタイプが違う!

 

「この子がベースの山田リョウ」

 

「ごごご後藤ひとりです!大変申し訳ございません!」

 

「今度はどうした⁉︎大丈夫!大丈夫だから!リョウは表情に出にくいだけ。変人って言ったら喜ぶよ!」

 

「嬉しく無いし」

 

満更では無さそうな表情してる……変人となるとやっぱりさっきから行動が不安定すぎる私のの方がそうな気がするんだよなぁ……

 

「そういえば店長が時間までまで練習しとけって。あと虹夏が勝手にライブハウス抜け出したこと怒りながら買い出し行った」

 

「えっもう早く言ってよばかばかあほ〜!」

 

「ぷっ語彙力なさすぎ」

 

「なんだか思ってたよりアットホームな雰囲気だね(小声)」

 

「さっきまで怯えすぎなだけでござるよ(小声)」

 

仲の良さそうな2人を見て、緊張感も少しずつほぐれてきた気がした。だけど、初めてのライブハウス、初めて見る人たちはまだ怖い。でもここまで来たんだ。

 

「ひとりちゃんも、ほら!」

 

「は、はいっ!」

 

返事はぎこちないけれど、気合いは十分。私はなんとなく頑張れる気に満ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが今日のセットリストとスコア」

 

「あの、他にバンドメンバーは……?」

 

「これで全員だよー今回私たちインストバンドだから」

 

渡された曲に目を通してみる。一通り確認したけど……うん。これなら全然いける!でもボーカルいないから私が頑張って弾かないとだな……でも一緒に演奏するの初めてじゃないし、それに私ネットでもそれなりに人気あるみたいだし妖魔界なら超人気あるし、私のギター聞いたら二人とも驚くかもなぁ〜!

 

「ふふ……私の恐るべきギターテクに2人とも驚くぞぉ。えへへへへ」

 

「なんだかフラグな気がするでござるが……」

 

「まさかそんなフラグなんてある訳が………」

 

 

 

 

 

 

突然だが説明しよう!

 

え?僕が誰だって?僕の名前はギタ男!後藤ひとりのイマジナリーフレンドさ!ちょっとひとりが調子に乗っているけどバンドをする上で彼女には致命的な弱点がある!バンドは他の人と呼吸を合わせるのが重要!原作とは違うルートをたどってひとりは何度か集団で演奏経験があるけれど、それは全て妖怪。どうしても人とは勝手が違ってしまう!それに妖怪依存から原作よりも対人間耐性が上がってる訳でも無いひとりはまともに目を合わせられる筈がなく、突っ走った演奏をする!妖怪相手やソロ弾きでは最強だけど人間相手にはEランク以下!最弱となるのだ!つまり………

 

 

「………うん」

 

「ド下手だ」

 

え゛えぇぇゑえェェェぇぇぇええ!!!???

 

「カカカカカイムわたしネットでも妖魔界でもスターだよ認められてるよ有名だよ上手だよなんでなんでえええええええ⁉︎」

 

「………うむ。なんというか…対人経験が無さすぎたことが仇となったでござる……そしてリョウ殿が言ったこともまぁ………そう捉えても仕方がないというか………」

 

「ぐぶっ‼︎」

 

「ひとりちゃん⁉︎なんか光と一緒に浮き上がってる⁉︎」

 

「どうもプランクトン後藤でーす………」

 

「なんかお笑い芸人みたいな人出てきた!」

 

意識がだんだんと遠のいていく。眩い光が視界を包み込み、思考はだんだん鈍くなる。こうして、後藤ひとりは灰となり、二度とギターを持つことは無かった…

 

 

 

 

 

あー……あったかいぃ……おばあちゃんの懐の中のような………ハッ!

 

「心オバアがいなかったら危ないところでござったよ……」

 

「まったく世話の掛かる子だねぇ」

 

「召喚に応じてくれてかたじけないでござる」

 

あれ?心オバアがなんで……?…それじゃあ

 

「……ということはつまり……」

 

「昇天しかけてたでござる」

 

「えっ」

 

「あ!ひとりちゃん起きた!」

 

「おお、死者蘇生」

 

うう……散々変人行為をして挙げ句の果てには目の前で気絶昇天…やっぱり人と付き合うのは難しいのかな…

人とのバンド活動は前から夢だったけれど、正直今まであった自身がどんどん小さくなってる気がする…ここは申し訳ないけどお断りするしか…

 

「あ…あの……やっぱ無理です私じゃ全然できません…!」

 

「まあまあ。即席バンドだし私だってそこまで上手くないから!」

 

「わたしはうまい」

 

「うぅ…うううう」

 

「とりあえずこっち向いてーっ!現実逃避はしないでー!」

 

だめだ…もう私は終わった気がしちゃうよ…

 

「えっMCでもお役に立てないし…あ…ああ私の命を持って腹切りショーとか!そうしたらバンドの名前ぐらいは覚えてもらえ…」

 

「ロックすぎる!」

 

「大丈夫。ひとりがイジられたら私がポムってするから」

 

「べ…ベースってそんなファンシーな音出るんですか?」

 

「流血沙汰もロックだから」

 

「えっ…ロックって怖いでござるな…」

 

「いやいやそんなことない!そんな免罪符すぎることはない…はず」

 

「それに、うちのバンド見にくるの私の友達だけだし」

 

「私、友達虹夏しかいないから」

 

「それに、普通の女子高生に演奏の良し悪しとか分からないから!」

 

え…炎上しそうな発言…それに友達一人しかいないって…サラッとそんなこと言っちゃって大丈夫なんですか…?

 

「だから安心して!」

 

「…安心していいんでござろうか」

 

「なんか余計に安心できないよ…」

 

「私は良し悪し分かるけど」

 

「リョウは普通じゃ無いから」

 

「へへ」

 

「喜ぶな喜ぶな」

 

「…ごめんなさい」

 

「けど!」

 

「無理強いするもんじゃない」

 

「…だよね。無理なお願いしてごめん」

 

違う

 

別に私はバンドをやりたく無い訳じゃ無い。確かに戸惑ってはいたけど、私はバンドで演奏したい。苦戦ばっかりだったし、うまくいかないけれど、あの言葉が無かったら私はここまで来ていなかったから。間違いなく私にとって救いの手だった。

 

「いえっ…その…本当に嬉しかったんです…声かけられて…」

 

「…ひとりどの…」

 

「人とバンドは組みたいとずっと思ってたんです。でも…メンバー集まらなくて…たがら…普段はカバー曲ネットに上げたりして…」

 

「普段は何弾いてるの」

 

「えっと…再生数稼ぎや友だちに聞かせるのもあって今年の売れ線は大体…」

 

「えっすごっ」

 

確かに、初めは視聴者の目を引くためだった。でも、わざわざ私のギターを聴きに来てくれる妖怪のみんなのためもあって、頑張って色々弾いた。そのうちに妖魔界でバンド組むことになったり、ギターに興味があったら教えてあげたり、色々した。でも。文化祭やライブハウスで人に聴かせてみたかった。いっしょに演奏をしてみたかった。

 

「それでも…私は人とバンド組むなんて…」

 

「売れ線のカバーばっか…なんかギターヒーローさんみたいだね。知ってる?多分私たちね同じ年の人だと思うんだけど…」

 

ギターヒーロー⁉︎

私が動画上げてるアカウント。まさか視聴者の人だったなんて…

 

「後でURL送るよ!もう最高に上手いんだから!友達にも見せてあげて!」

 

さっ最高に?人からそんなこと言われるの中々無いから照れるな〜

 

「うへへへへ〜」

 

「まさか伊知地どのがあのチャンネルを見ていたのでござるか…一応コツコツ投稿した甲斐あったということでござるな…ひとりどの、前見て。前見るでござる」

 

「私もおすすめに何度か上がってきたから見たことある。めっちゃ上手かった」

 

「でしょ〜!でもネーミングセンスはちょっと痛いけど」

 

「ヴッ」

 

「あっそれは…拙者はそんな悪く思わないでござるよ⁉︎」

 

痛い…そんな風に思われてたの…?一生懸命考えたのに…

それでも相談したのに…ヤミキュウビとか…色々な妖怪に…

 

「わたしフォローして動画上がったらいつも見てるよ!いつか一緒に演奏したいんだ〜」

 

「さっきしてたんでござるがな」

 

虹夏ちゃんはキラキラした目でギターヒーローについて語っていた。しかし、途中で「でもね」と続けた。

 

「私が言いたいのは、上手い人でも私たちが見てないところでたっくさんたっくさん練習したってことなんだ。後で見てみて?動画見てると伝わってくるから!」

 

そうだ。そうだった。

最初のうち、私はかなりギターに苦戦していた。

でも、動画を上げたり妖怪のみんなに聞かせるうちに、もっと良いものを聞かせたくなって。教本を色々買ってみたり、動画見て研究したり。

 

 

それでも、現実世界の人なんてみんな私に興味ないかと思っていた。

だけど今目の前にいるんだ。私を見てくれている人が。

 

「色々あるけど、ここでバンド諦めるのは早いよ!私たちがアレなだけかもしれないし…」

 

こんな優しい人が私に声をかけてくれたんだ。ぼっちな私に、声をかけてくれた。

 

「おっ立った」

 

こんな奇跡もう二度と無い。今日、私は今までの私から一歩前進したい。

 

「あっあのっわたし…もっ」

 

「…もしかして出てくれる気になったとか?」

 

「……その」

 

「ひとりどの。今こそ自分から行ってみるでござる」

 

言おうとしても、言葉が出ない。

 

やっぱり怖いんだ

人前に出るのが

 

人の前で演奏してみたいという願望はずっとあった。

でも、実際にやる機会が来ると気分は萎縮してしまう。人のお客さんの目線に耐えられないかもしれない。だけど、他人から何かしてくれるのを待つだけじゃなくて、勇気を出して自分から言いたかった。

 

「…はっ…はいっ!でます!」

 

「大丈夫?怖くないか?」

 

「あっそれならっ…すこし待っててください…その…ちょっちょっとトイレ行ってきます」

 

「…そういうことでござるか」

 

私は、人前に立つことができない。改めて自覚したけれど、私の中の人前に立つことへの恐怖心は大きい。特にバンドなんて注目を集める。

ひとりじゃ無理だ。

 

だから、友だちの力を借りる。

 

「カイム、大辞典あるよね」

 

「何かあると思って持ってきたでござるよ」

 

もはやこの動作も何回やったか分からない。

息がピッタリ合った動作で、カイムの投げたメダルを受け取る。

 

メダルの裏側は陽気を感じる緑の花の紋章

 

 

 

妖怪ウォッチは人と妖怪が絆を結ぶためのもの

 

妖怪を見ること以外にも、もう一つ機能がある。

自分ではどうにもならない時に会うための

 

「私の友だち、出てこいサイコウ蝶!妖怪メダル、セットオン!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひとりちゃん遅いね」

 

「なんか“私の友だち出てこい”とか言ってた」

 

「電話でもしてるのかな?」

 

 

「…お待たせしました‼︎」

 

「あれ、ひとりちゃん⁈ちょっと雰囲気変わった⁉︎」

 

「いっいえ!いつも通りです!」

 

「なんか調子良くなってる」

 

友だち妖怪のサイコウ蝶は、取り憑いた相手を今まで経験したことの無いような最高潮にする。そのため、今取り憑かれている私の気分は最高潮になっていた。

 

やっぱり他人から見られるのは怖い。でも、気分を上げれば、直視はできないけれど人前には立てるはず。

 

「協力かたじけないでござる」

 

「大丈夫よ、ひとりのお願いなら喜んで聞き入れるわ。それに、ちょうど久々にギター弾いてるところ見たかったしネ」

 

 

 

「そういえば、なんて紹介すれば良い?」

 

「本名でいいかな?」

 

「本名はちょっと待ってください…でも!それはそちらが呼びやすいようにどうぞ!」

 

「…ひとりぼっち…ぼっちでいいかな」

 

「またデリケートなところを…」

 

「ぼっち!いいですね!それで行きましょう!テンションサイコウ潮〜!」

 

「やっぱなんか変じゃない?」

 

「あだ名とか初めてなんで!今まで人には“あの”とか“おい”でしか呼ばれなかったので!」

 

「なんか涙出てきた…」

 

 

「…これってアタシのせいだったりする?」

 

「いえ。ひとりどのは少し感性が独特でござるから、たぶん取り憑かれてなくてもあんな感じになるでござる」

 

「そうだ!まだバンド名聞いて無かったですよね!」

 

「結束バンドだよ」

 

「結束バンド!…結束バンド⁉︎」

 

「ふふ…傑作」

 

「寒いし!全然傑作じゃないし!」

 

「可愛いよね」

 

「…はい!なんかいい感じだと思います!」

 

「ああああ〜!…とにかく!バンド名は後回しで!そろそろ出番だよ!」

 

「…はいっ!」

 

「下手でも楽しく引けば大丈夫だよ!音って感情乗りやすいから。技術とかは次からで大丈夫だよ!」

 

確かに。私が今まで弾けたのは楽しんだからだ。誰かに聴かせる。一緒に演奏する。それも全て、楽しかった。その精神を忘れなければ大丈夫だ。今までだって、これからも。

あっでも…次って…

 

「それじゃあ行こう!」

 

「がんばってきてくだされ。応援してるでござる!」

 

「…うんっ!行ってくるね、カイム、サイコウ蝶!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうにか、演奏することができた。気分最高潮になったとしても、やっぱり見つめられるのは慣れなかった。結局目線を合わせられなくて、下を向いてしまい、演奏もズレていってしまった。でも、バンドの中では不安な表情は無く、楽しい表情だったと思う。私も、緊張はして、大変だったけれど楽しいことには変わりなかった。

 

こうして、初めての人に対するライブは終わった。

 

「あ、ぼっちちゃん、お疲れ様!」

 

「ん、どうした?」

 

「私は、今回のライブでまた一歩前進できたと思います!だから…」

 

だからこそ。伝えたかった。また、この体験をしたいから。

 

「次もまた!誘ってください!必ず行きます!」

 

「…うん!もちろん!よーし、それじゃあこれからぼっちちゃん歓迎会兼バンドの反省会だ〜!」

 

「はい!もちろん行き…「それじゃあ私は帰るわ、ライブ楽しかったわよ〜」「あっバイバイでござる」…その…ひ…人と話しすぎて疲れたので帰ります…」

 

「えっ!急にどうした⁉︎」

 

「眠い…」

 

「あっ取り憑き効果が切れてしまったでござるな」

 

「そっそれでは失礼します!」

 

「ひ、ひとりちゃんそっちは出口じゃないよ⁉︎ってあれ…?」

 

 

 

 

 

 

 

「ぺろーん本日は遅かったですね。何かありましたか?」

 

「色々あったでござる。さあ、ひとりどの。ここから家まですぐでござるよ」

 

「うぅ…サイコウ蝶のおかげでライブはそれでも人前に立って出来たのに…これじゃあ最後があんまりだぁぁぁぁ‼︎」

 

 




人物しょーかい

後藤ひとり
気分が上がれば(一人深夜テンション)ならまだそれなりに動ける女。今回はサイコウ蝶の協力も得て、なんとか完熟マンゴーにならずとも演奏できたが、気分が上がってもまだ周りを見たりはできない。移動はポケットうんがいで行う為、交通費にはさほど困っていない。

カイム
毎回ひとりが何かしらやらかした時のカバー役。妖怪の力を借りたとはいえ、自分から人前の舞台に立てたひとりの成長を感慨深く思っている。メダルを渡す動作はかれこれ数年ずーっとやってきた為、多分やろうと思えば両方目をつぶっていてもできる。

伊知地虹夏
ドタキャンした喜多ちゃんの代わりにひとりを連れてきたは良いもの、ある意味原作より別方向にも変人となってるひとりに少し不安を感じていたが、悪い相手では無いとわかっている為しっかり励ます天使。ただ、ひとりがどうやって帰宅したのか、そこが少し心に引っかかっている。

山田リョウ
変人である。ドライに見えて、虹夏への友情は重い。ぼっちが色々な行動をするので、面白く思っている。口に出して言ってはないが、ぼっちのつけてる時計が気になったりする。

心オバア、サイコウ蝶
ひとりの友だち妖怪。心オバアはどうやら昇天しかけたひとりを蘇生することは初めてでは無いらしく…?
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