夏、ぼっちな私は奇妙なものに出会った   作:伊笹身

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ひとり「…ダメだ…接客業は強い…やっぱ私には無理…」
カイム「落ち着くでござる!ほら、飲み物入れるだけでござるから…それに普通に接すれば問題無いでござる!」
ひとり「次のお客さんまだ来てないよね?まだ来てないよね?」
カイム「今のところは大丈夫でござるから、気を鎮めてくだされ…」
ひとり「…こうなったら!私の友だち出てk…」
カイム「前!前!お客さん来てるでござる!」
ひとり「あわあわあわあわああわ」

バイト中の、壮絶な光景である




五話 Can you 勧誘?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「相も変わらず無病息災、健康そのもの…風邪一つ引かないこの体…そんな時でも月曜日はまたやってくる…」

 

「じゃあおねえちゃん風邪で何日も学校行けないほうがよかった?」

 

「全然良くないよ…私みたいな人は数日行かないだけでクラスのみんなから存在を忘れられるんだよ…?…そろそろマトモにクラスメイトと関わらないとマズい気がする…」

 

「とにかく最初の一歩が肝心でござる。こちらから話しかけさえできれば可能性は…」

 

「その一歩目が踏み出せなくて苦労してるの…本当に人相手だと全然うまく話せないし…」

 

「そんな悲観的にならなくても大丈夫でござる。きっと話し始めれば軌道に乗ってなんとかなるでござる」

 

「うーん…頑張ってみる…」

 

「あーっおねえちゃんまた誰もいないところに話しかけてるー」

 

「「あ」」

 

(本人にとって)波瀾万丈のバイトを終え、何日か経った。

それでも最初よりはマシになってきたものの、苦手なことには変わりなく未だ苦労している。

それでも休日を迎え、束の間の休息を謳歌していた。

が、本日は月曜日である。

 

即ち、平日

 

学校で人と会わなければならない。

 

「あっいやっこれは…なんでもない!なんでもないから!」

 

「いやでもさっきむぐ」

 

「何も見てない!聞いてない!いいね?」

 

「うーん…まあでもおねえちゃん変人なのはいつものことだもんね。あ、お母さん呼んでるから。じゃあね!」

 

「ヴッ」

 

「ひとりどのーッ⁉︎」

 

朝早くから、瀕死である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は…今日こそ絶対こっちから“自力”で話しかけてみようと思うんだ」

 

「今までなんやかんや妖怪頼りでござったもんなあ……」

 

ひとりは基本人と話すことはない。コミュ障故話しかけられない、という理由もあるが、話相手としてカイムをはじめとした妖怪と話すことが大きいだろう。

勇気を出さなくても話し相手が近くにいるため、余計に人と話す機会が少なくなっているのである。

それでも人とまったく話さないのはどうかと思ったのか、そんな現実を解消しようと、様々な工夫をした。

時には妖怪の力を頼りすることもあった。

が、妖怪の力といってもあくまで一時的なもの。ずっと取り憑いてもらうわけにもいかず、効果が切れれば元に戻ってしまう。所詮その場しのぎになってしまう。

 

だからこそ、なんとか自力で話しかけてみたい。会話に加わりたい。

ひとりの悩みである。

 

「せめてバンドの話とかしてくれてたらな…」

 

「まさかそんな都合よく…」

 

 

 

「〇〇の曲サブスク解禁されたね〜」

 

「最近聞きすぎてずっとループしてる〜」

 

 

 

「「してた⁉︎」」

 

まさかのタイミング

都合良く、誰かバンドの話をしてくれないかと思っていた時に、自分の知っているバンドの名前で、近くの席で話しが聞こえたのだ。

 

「何はともあれ千載一遇のチャンスでござる!」

 

「だよね…!行く…行こう!」

 

(バンドの話!バンドならいくらでも話せる!まさに救いの糸だよここで話しかけて絶対話題に加わって…ぶっつけ本番だけどきっとなんとか…)

 

この機会を逃すわけにはいかない。思い立って相手に話しかけようと、席を立ち、少しずつ相手の方に歩く。

 

一歩一歩近づき、

 

勇気を出して、話しかけてみた。

 

 

「え…えっと…今…」

 

「あれ?後藤さん話しかけてくるなんて珍し〜」

 

「どうしたの?」

 

しかし、言葉は思ったようには出ない。それでも相手側はこちらに反応し、会話をしてくれそうな雰囲気になった。

 

だが

 

 

(マズい…ちゃんと目を見て…いやでも人相手ってどう話せばいいんだっけ…いやいつまでも黙って謎の間ができたら余計怪しまれるし…変なこと言っちゃったらきっと…ダメだ…まったく何話せばいいか思いつかないよぉ…)

 

 

相手の事を意識しすぎるあまり、思考は混濁。

頭の中では話題の振り方もし話しかけてしまったらだとかがこんがらがり、目の前の景色に集中できなくなってくる。言葉を出そうとしても、頭には思い浮かばない。

 

よって、結局

 

「忘れました…」

 

「「この一瞬で⁉︎」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「またできなかったよ…もう…」

 

「いい機会だと思ったのでござるがなぁ…」

 

何か悪いことがあった時、ひとりはよく階段下に来る。本人曰く、薄暗くてジメジメしているところが落ち着くらしい。

 

「また黒歴史作っちゃったし…」

 

「いえいえ。別に相手もそんな気にしてないから大丈夫でござる」

 

「そうかな…きっと話しかけても身分を弁えない発言で…」

 

「じがじいさんのメダルはもう用意してあるでござるが」

 

「…取り憑いてもらった時の様子を次の日クラスメイトに話題にされた時の話、する?」

 

「失礼したでござる…」

 

妖怪の力は便利だ。しかし、あまりにも極端に出力をされるものが多い。例えば話題にあがったじがじいさんであるが…取り憑かれた時に自画自賛してメンタルを保ったはいいものの、どんなことも自画自賛しすぎて周りに若干引かれかけたことがある。その後ひとりがわすれん帽を召喚したのは言うまでもない。

 

「そういえば虹夏ちゃんが新しいバンドメンバー探してるって言ってたよね」

 

「そうでござるな。確か、ギターボーカルができる人が欲しかったはずで…まさか」

 

ひとりは、妙案を思いついた顔でカイムを見つめる。

 

「もしもだけどさ…私がその新メンバーを連れて来れたら…すごくバンドに貢献できるんじゃないかな!虹夏ちゃんには色々助けてもらったし!」

 

バンドミーティングでもバンドメンバー募集は話題に上がっていた。ひとりも様々なバンドの曲を聴いたり、妖怪と演奏してきた経験からボーカルギターが加われば選択肢が広がることは理解している。

虹夏自身もバンドメンバーを探しているが、未だ目星がついたという話は聞かない。

だからこそ、ここで自分が見つければかなりバンドに良い仕事をできるのではないかと考えているのだ。

 

それに、虹夏にはバンドに入れてもらった恩がある。(ひとり本人は)バンドに少し迷惑をかけてしまっていると感じているため、ここで恩返しをしたいと感じていたのだ。

 

「でもどう探すつもりでござるか?」

 

「あっそうか…そうだね…こういう時に便利な妖怪は…ん?」

 

少し上の階だろうか。

人の話し声が聞こえてきた。

別に話し声が聞こえたとしても、普段なら特段気にすることでは無い。

が、会話の内容がひとりの気を引いた。

 

「喜多ちゃんやっぱめっちゃ歌上手いよね〜」

 

「やめちゃったらしいけどバンドでギターボーカルやってたらしいよ〜」

 

 

(ギターボーカル!喜多さんって人バンドやってたの⁉︎)

 

「これって…」

 

「確かに、もし勧誘できたらかなり良いでござる」

 

バンドで欲しいのはギターボーカルだ。

それに良さそうな情報が、つい先程までバンドメンバーについて話していたタイミングで。

本日二度目千載一遇のチャンスである。

 

「それじゃあ今度、喜多さんに声かけて…でも初対面の人に話しかけるなんて…」

 

「そうでござるな。ただ…」

 

「どうした?」

 

「その体勢もっとなんとかならなかったでござるか…?」

 

現在ひとりは机を踊り場に積み上げ、その上から会話を聞いている。

会話を又聞き…というより覗き見に近い構図であった。

 

 

 

カイムに言われ、渋々、ひとりは机の上から降りる。

 

「あっ喜多ちゃーん!」

 

話題に出ていた、喜多なる人物が現れたようだ。

 

「それなら…ちょっとカイムお願い」

 

「わかったでござる」

 

ひとりは、カイムに取り憑いてもらい会話をしている方へ近づく。

取り憑き効果により存在感が皆無になるため、どんなに近づいても気づかれる事はない。

それを利用して、会話をより近くで聞く。

 

「それで〇〇がさ〜」

 

「わかる〜いいよね〜それ」

 

同級生とは話が弾んでおり、周りに友達は多いようだ。

会話の内容を聞けば、歌の上手さに加え、運動部の助っ人、イソスタ投稿、流行りの話題。あらゆる事に精通しているらしい。

また、容姿は整っており、表情も明るい。

 

「か、かわいい子だ!かわいくて人望もあって運動できてギターまで弾けるなんて…こんな子私に勧誘できるかな…」

 

「まぁ…こちらが怖気付きさえしなければ、ああいう方は基本話を聞いてくれるはずでござる。大丈夫。1人じゃないでござるよ」

 

「でもさ…こんな個性モリモリだったら…私のアイデンティティが…アイデンティティが崩れる…!」

 

「えっちょっ」

 

「あれ…何か音がした?」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、放課後

 

(なんか…なんか見られてるよね?)

 

 

喜多自身、ひとりに見られていることに気づいている。

見ている本人たちは気づかれていないと思っているが、ドアの隙間からじーっと見つめられるこの状況。

気まずく、話しかけるタイミングがわからない。

 

ひとりは一応喜多の周りを見回す。

教室内で他に人は見当たらない。話しかけるにはグッドタイミングである。

 

「おお、ちゃんと机にギター掛けてあるでござる」

 

「にしても今日は話しかけるには都合のいいタイミングが二回も…これって妖怪の仕業?」

 

「まあまあ、そう疑心暗鬼にならずに、今度こそGOでござるよ」

 

教室のドアの前で息を整え、一応身だしなみが変になっていないか確認する。少し周りを見まわし誰か来ていないか確認。念のためもう一度深呼吸して、ついにドアに手をかけ…ようとしてやっぱやめてもう一度深呼吸して…

 

(よしっ)

 

意を決してドアを開ける。

 

「…あのっ」

 

「…2組の後藤さんだよね?」

 

(わ…私の名前知ってる⁉︎)

 

驚くべき事実である。それもそのはず。ひとりは自分が他人に認識されるなど微塵も思っていなかったため、予想外の反応に表情が緩んだ。

 

「…誰かに用事でもあるの?」

 

「え…エト…その…」

 

「…どうかした?」

 

全身が緊張し、顎は震え、中々言葉が出せない、

間に気まずい雰囲気が流れる。

だが、それでも根性で前を向き、伝えようと口を開いた。

 

「バ…パン……の…ボー…」

 

(言葉が…いや…でも言う!言わなきゃ!)

 

 

 

 

 

「バンドのターーカルに…

 

「ひとりどのーッ⁉︎」

 

ただ、“バンドのギターボーカル探してて、うちのバンドに興味はありませんか”と言おうとしただけだった。だが、運命の悪戯か。極限まで緊張した体からは一部分の音のみ出力され、「バ ギ ボ」と。

さながらヒューマンビートボックスのような印象を与えることになってしまったのだ。

 

「え…えーと」

 

「あなや…」

 

 

 

「ビーチクバーツク…ずんずん…ち、違うかな?」

 

(まずいまずいまずいまずいしっかり発音できなかったし喜多さん驚いてるし第一印象があばばばばばどうしようどうしようどうしよう)

 

「カイムーっ‼︎」

 

「たっただいま!」

 

「…後藤さん…⁉︎でもさっきまで…」

 

もう耐えられない。

カイムに取り憑いてもらい、ひとりはその場を走り去ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、また同じ階段下まで戻ってきてしまったのであった。

 

「…ダメだった…今回こそはうまく行かせたかったのに…」

 

「本当にあと少しでしたのになあ…」

 

「うぅ…また黒歴史創造しちゃったよ…」

 

ひとりの気持ちは重い。コミュニケーションが思うように行かないのもこれが初めてではないが、それでも今回こそはうまく行くと。そう思っていた。

 

「でもこうやって話せる友だちがいるだけありがたいよ…もし妖怪ウォッチつけてなかったらって思うと…」

 

それでも、ひとりは完全に孤独ではない。妖怪と関わることによって、かなり心労を軽減できている。まあ、それによって余計人と話さなくなったこともまた事実である。

 

「私のことだし、ギターのイマジナリーフレンドでも作ってたのかなぁ…」

 

「…その件はノーコメントにしておくでござる」

 

「いつまでもへこたれててもどうしようもないけど…でもなぁ…」

 

どんよりとした空気が辺りを覆う。納得しようにも、もっとうまくできたのではという考えが頭の中を回り続ける。

それでも、少し落ち着いたのか、背後のケースから楽器を取り出し始めた。

 

「それでは聞いてください。新曲、ダブル黒歴史第二…」

 

「どういう心境で聴けばいいんでござるか…?」

 

暗い表情のまま、奏でる。

楽器は感情が出やすいと言われている。

ギターから流れる音は、悲しみの感情が乗っていたかもしれない。

ひとりは目に少し涙を浮かべながら、半分ヤケクソで弾いていた。

 

そうして弾き終えたひとり。

一応カイムはぱちぱちと拍手を送り、ひとりはため息をつく、

だがその時、

 

「えーすごい!感動〜後藤さんギター上手いのね!」

 

「ひぃっ!」

 

いきなり背後から声がかかる。恐る恐る振り向くと、意外な人物がいた、

 

「き…きききき喜多さん⁉︎」

 

声をかけてきたのは、先程バンドに勧誘しようとした人物、喜多であった。

突然の出来事に驚いているひとりをよそに、興味津々といった様子でギターを眺めている。

 

「驚いたでござる…しかし、どうしてここに?」

 

「さっき突然いなくなっちゃったから気になって探したの〜にしても演奏上手いわね!探してたら聞こえてきて、そのまま引き込まれちゃった!ていうかその時計かわいいね!見たことない型だけど、どこのブランド?もしよかったら紹介してくれない?」

 

「えっあっ…はい…」

 

オドオドしているひとりとは正反対に、にこやかな表情で話しかけてくる。

あたかも光を放っているような。陰のひとりとしては眩しすぎた。

 

「まさしくこれが陽キャというものでござるか…」

 

「ギター弾けるってことは、もしかしてバンドやってるの?」

 

「あっ…まあ…はい…一応」

 

(陽!圧倒的人の陽キャオーラ!距離の詰め方がすごい!眩しすぎて直視できない)

 

ただでさえ人と話さないのに、目の前にいるのは学内屈指の陽キャである。だが、もう一度話せるチャンス。戸惑いながらも、ひとりは言葉を出す。

 

「そうだ!後藤さんもしかして私に何か用事あった?」

 

「エットソノ…自分今入っているバンドがあるんですけどギターボーカルがいなくてそしたら喜多さんギター弾けるって話を聞いてそれでもし良かったらバンドに入ってからないかなって…」

 

早口になりながらも要件を伝え切ったひとり。後ろでカイムがサムズアップしているのを見て、安堵した表情を浮かべた。

 

しかし、返答は望ましいものではなかった。

 

「…ごめんなさい。後藤さん、私そのバンドに入れない」

 

「あっいや…でも!私は暗いけど他のメンバーは明るくて!」

 

「いや、後藤さんのせいじゃなくて…」

 

「しゅ、週末はバーベキュー!年に一度の球技大会!年末の打ち上げはリムジンだし…」

 

「そんなパリピバンド嫌だって…」

 

なんとか興味を持ってもらおうと、思いつく限りの言葉を出す。しかし、喜多の表情はあまり変わらなかった。

 

「…あのね、実はわたしギター弾けないんだ」

 

「えっ…」

 

「前いたバンドもね、先輩目当てで入ったんだけど、ギター弾けるってウソついちゃったというか…でも何一つ分からなくて…結局ライブ直前で逃げちゃった…」

 

「なんと…」

 

衝撃の事実に驚きを隠せないひとり達。

喜多はおもむろにひとりの持つギターを手に取る。

 

「ギターって、ここをジャンジャンやるだけじゃないのね。ここの木の棒も、ただの飾りだと思ってた。初心者がやるには難しすぎるよね…メジャー?とかマイナー?とか全く分からないし…」

 

「分からないの次元が違う…」

 

「ちょっと予想以上でござるな…」

 

バンドに入ろうとしていたなら、勝手に少しは知っているのかと思っていたが、想像よりも初心者だったらしい。

 

二人とも顔を見合わせる。

 

「後藤さんは誰かに教えてもらったりしたの?」

 

「あっいっいや…ほとんど独学で…」

 

ひとりは始めてからこれまで、ギターは自分で学んできた。まれに弾ける妖怪からアドバイスを貰うこともあったが、基本は分からなかったら自分で調べ、取り組んでいた。

 

「えっ!すごーい!」

 

「いや〜全然〜」

 

(すごいって言われた〜久々に人に褒めてもらった〜)

 

「あっそうだ!後藤さん、私にギターを教えてくれない?私の先生になって!」

 

「え゛ゔえ゛⁉︎」

 

のほほんとした表情が崩れる。

 

「こんなに上手い後藤さんに教えてもらえるならきっと大丈夫だよ!今度こそちゃんとギター弾きたいんだ!」

 

「あっえへへ〜」

 

 

(チョロいでござる…)

 

ひとりは一瞬驚くも、“上手い”、“すごい”という言葉を聞けばすぐに表情が緩んだ。チョロい。

 

「ギター弾けるようになって、前のバンドの先輩に謝りたい!だから協力して!いつ教えてくれる?放課後とか?」

 

「ほっ放課後はライブハウスでバイトが…」

 

「それならその後でもいいから!隣にスタジオとかない?」

 

「ええと…」

 

「お願い!」

 

距離を詰められ、完全に相手の雰囲気に押されている。

 

(よ、妖怪!誰か呼び出し…って両手がっちり掴まれてる!マズい!どうしたら…)

 

相手に詰められるこの状況。

ひとりはこういう状況に非常に弱い。

 

それでもカイムに助けての意の視線を向けた。

しかし、諦めろという表情で見つめ返してきた。

 

どうしたらいい。

必死に考え続けた。しかし答えは浮かばない。

そして結局、

 

「はい…」

 

「ありがとう後藤さん!早速バンドについていってもいい?」

 

(ばかばか!なんで断れないんだわたし…)

 

「一応時間帯によってはあの方の予定とブッキングするでござるが…まあなんとかなるでござるよ」

 

そういうことになってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、下北沢に着いたひとり。

途中、虹夏達に「エナドリ片手に踊り狂いながらバイトしててください」などと怪文書を送ったり。色々あったが、相変わらず、人の多い下北沢という環境は辛そうである。

 

「下北沢ってやっぱ落ち着かないよなぁ…」

 

「もう何度も来たでござるが、この雰囲気に中々慣れないでござるな」

 

「…後藤さんの入っているバンドって下北沢にあるんだ…」

 

「はい、一応…来たことあるんですか」

 

「うん…辞めたバンドも下北系だったから…」

 

今現在、ひとり達はSTARRYへ向かって歩いている。だが、行く前と比べて喜多の表情は暗い。学校では明るい表情をしていたが、下北沢に着いてからはだんだんと不安な顔になっていった。

 

「そういえば、喜多どのが前にいたバンドは、いかようなものであったのか」

 

「確かに…でも気になるけど直接尋ねるのは気まずいしハードル高いし…」

 

どうやら、そのバンドは結束バンドと同じく下北沢で活動していたらしいのだが、一口に下北沢で活動するバンドと言っても数は計り知れない。他人の問題にあまり首を突っ込む訳にはいかないが、それでも気になる。どうしたものかと思いながら歩き続けていた。

 

「でもやっぱ下北沢って落ち着かない…あっちょっといいですか」

 

「もしかしてライブハウスってそっち?」

 

「いや…ちょっと人多くて疲れたんで…ちょっと待っててください」

 

「え…うん」

 

そう言い残し、そそくさとその場を離れる。そのまま近くの路地裏に入っていき、見まわして誰をいないことを確認した。

 

「カイム…メダルお願い…」

 

「そういえば今回は忘れていたでござる。どうぞ」

 

「…よし。私の友だち!出てこいウキウキビ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひとりは下北沢の雰囲気が苦手だ。いかにもガヤガヤしていて、その中で自分が浮いてしまっていると感じてしまうためだ。

だからこそ、妖怪の力を借りなければマトモに歩くことはできない。

 

つい先程路地裏に消えたひとりは、ウキウキした表情で戻ってきた。まるで辛いことなんてない、という表情である。

 

「おまたせ喜多さん〜それじゃあライブハウスまであと少しだから行きましょ〜」

 

「あっ後藤さん…?さっきまで少ししんどそうだったけど…」

 

不自然に思うのも当然である。下北沢に来てからの怯えた表情とは一転、まるで別人のように振る舞い始めた

 

「なんくるないさ〜心ウキウキしてるから大丈夫です〜」

 

「さっきまで呼べなかったみたいだけど、もう大丈夫さー!」

 

「なんかキャラ変わってない⁉︎」

 

このように、ひとりは下北沢を歩くときはいつもウキウキビに取り憑いてもらっていた。だが今回は1人ではなかったため、呼び出すタイミングがなかったのだ。喜多は少し不審に思ったが、気にしないようにして歩き出した。

そうして順調にライブハウスへ向かっていたと思っていた。

 

「場所はSTARRYって所で〜先輩の虹夏ちゃんとリョウさんがいる筈です〜」

 

だが、ひとりの発言を聞いた瞬間に、喜多は足を止めた。

 

「あれ、急に止まってどうかしたのでござろうか」

 

「…ごめん。私やっぱ帰らなきゃ…」

 

「えっ…どうかしたんですか?ってムガッ」

 

「とにかく理由は言えないけどそのバンドには入れないの!だから私…とにかくごめんなさい。私帰らなきゃ!」

 

頬を掴み、深刻な表情でひとりを見つめる喜多。

そうして、駅の方向へ走っていってしまった。

 

「ま、待ってください!どどどどうしたんですか⁉︎」

 

なんとか追いかけるも、ひとりは体を動かすことが苦手である。

運動部の助っ人もこなせる喜多を捕まえるのは困難であった。

 

「はぁ…はぁ…もう…無理…でもなんくる…ならない…」

 

気付けばウキウキビの取り憑き効果は切れている。

疲労を溜まり、万事休すか、と思われたが、大辞典を抱えたカイムがひとりのそばへ駆けつけた。

 

(どうして喜多さんが結束バンドから逃げるの⁉︎私の対応がいけなかった⁉︎いやでも…もしかして)

 

「ひとりどの!とにかく捕まえて聞くしかないでござる! これを!」

 

カイムの手の中には、一枚の妖怪メダルが握られていた。ひとりは疲労しながらも、手早くメダルを受け取った。

 

「うん…!そうだね…」

 

(きっと、喜多さんが逃げた理由は多分…)

 

少し息を整え、目を開ける。そして、妖怪ウォッチを構えた。

 

「私の友だち、出てこいバクロ婆!』

 

メダルには、紫の紋章。中には呼び出す妖怪の姿が描かれている。

 

 

 

『妖怪メダル、セットオン!」

 

メダルを、挿入する

 

 

 

『It’s a フシギータイム!自販機・ルーレット!』

 

 

 

 

軽快な音声と共に、ウォッチから紫色の光が溢れ出す。

 

 

 

『当たりが出たよ!もう一本!』

 

 

 

「バクロ婆!」

 

 

 

 

「お願いバクロ婆…あの人に取り憑いて!」

 

「ババァーン!(まかせてとけ!)」

 

バクロ婆は軽快に跳びまわり、喜多に追いつく。

その長い両手で顎にぶら下がって、取り憑いた。

 

 

一瞬、紫色の妖気が喜多を覆う。

 

表情は呆然としたもの変わり。

 

走るのをやめ、立ち止まった。

 

 

 

カイムの肩を借りつつ、なんとか追いついたひとりは、立ち止まった喜多に尋ねた。

 

「喜多さん…どうして…その…STARRYに入らないのか…ぜぇ…ぜぇ…教えて…ください…」

 

質問を聞いた瞬間

 

ドクン

 

と体が揺れた。

喜多は口を開き、流れるように語り始める。

 

「うん…それはね、私の辞めたバンドが、そのライブハウスで活動したからなの…」

 

妖怪バクロ婆は、取り憑いた相手のあらゆる知識を暴露させる。例えそれが、本人が秘密にしたいことであっても。

 

「喜多さん…」

 

「まさかあの時の逃げたギターメンバーとは喜多どののことでござったか…」

 

喜多は、言葉を続ける。

 

「やっぱり先輩たち怒ってると思うんだ。ギター弾けないのに入って、あげくの果てには直前に逃げ出しちゃうし…ごめんなさい。リョウ先輩…」

 

「憧れの先輩ってリョウどのでござるか⁉︎」

 

「だから私は…ちゃんとギター弾けるようになってから謝りに行こうと思ったのに……あれ?どうして私こんなこと…」

 

途中でバクロ婆は顎から離れ、ひとりの元へ戻っていく。

しばらく黙って話を聞いていたひとりだったが、喜多に向かって少しずつ歩み出した。

 

(やっぱり、そうだったんだ。あの時逃げたギターが、喜多さん。でも…でも)

 

「…喜多さん」

 

「ごめんなさい…私が連れてってって言ったのに、身勝手に帰ろうとしちゃって…」

 

「…行きましょう。STARRYに」

 

ひとりは、落ち着いた調子で言葉をかける。

 

「…後藤さん?」

 

「私なんかがじゃ心細いかもしれません…でも、私も一緒に言います。だから、一緒に」

 

(喜多さんが逃げちゃった理由は痛いほどわかる。でも、このままにしちゃいけない気がする。いつも苦手なことから逃げてる私だけど…でも)

 

近づいて、ひとりは手を握った。

 

「確かに、喜多さんは一度逃げちゃいました。でも、それは今ここから逃げる理由にはならないと思います。このことは、このまま逃げちゃいけないことだと思うんです」

 

「…うん」

 

「大丈夫です。言いましたよね?私も一緒だって。悩み事があったら聞きます。辛いことがあったらできる限り付き添います。まだあって一日ですけど…私と喜多さん、“友だち”になれる気がしますから」

 

「友だち…」

 

そう言い、目を見つめる。

喜多は一瞬目を瞑ったが、再び開け、ひとりを見た。

 

「…うん。私、もう逃げない。行くわ。行って、先輩達に謝らないと!」

 

その言葉を聞いて、ひとりは表情を和ませた。

 

「…なんだからしくないこと言っちゃったなぁ…」

 

「その判断は間違っていないでござるよ。拙者は、そう思うでござる」

 

そっか、と言い、ひとりは苦笑した。

しかし

 

「いやでも、私と喜多さんが友だちだなんで会ってから一日も経っていないのに月とスッポンどころかおぼんレベルの不釣り合いじゃない…?なんか調子乗って説教くさいこと言っちゃったし…そもそもいきなり相手の秘密にしたいこと聞き出そうとしてるなんて…」

 

「いやさっきまでの感動返してくだされ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、STARRYまであと少し、となった時に店側から走る影があった。

 

「あーぼっちゃーん。頼まれてたエナドリとりあえず買っといたよー」

 

「あ、虹夏ちゃん」

 

缶の詰まったレジ袋を抱え、近づいてきたのは虹夏だった。

 

「その子が新しいバンドメン…ってあーっ!逃げたギター‼︎」

 

虹夏の姿を見た瞬間、喜多は駆け出し頭を下げた。

 

「…先輩!あの時は…本当に申し訳ありませんでした!」

 

「えっえっ…どうなってるのこれ…」

 

謝る喜多と、予想外の出来事で若干の困惑する虹夏。

 

「とっとにかく、詳しいことは説明しますので…」

 

そんな2人を不慣れながらも、なだめるひとりであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさかぼっちゃんが連れてきたのが喜多ちゃんだったとは…でもギター弾けなかったんだ。なるほどだから合わせの練習も来なかったんだね」

 

「これまでのご無礼をお許しください!どうぞ私をめちゃくちゃにしてください!」

 

「誤解を生みそうな発言やめて⁉︎」

 

「突然音信不通になったから心配してた」

 

なんとかライブハウスの中に連れ込み、リョウも交えて状況説明が始まった。だが、二人とも特に怒る様子はなく、むしろ落ち着いた様子で話を聞いていた。

 

「でもなんか喜多さん気まずそう…ここは私が何か場を良くする発言を…」

 

「別に大丈夫でござるよ。ほら、なんだかんだ話を続いてるでござる」

 

「死んだと思って毎日お線香あげてた。アーメン」

 

「いや勝手に殺さないで!」

 

申し訳ない表情を喜多とは対照的に、二人は平常運転であり、会話の中でも冗談が飛ばしている。

 

「あの…怒らないんですか?」

 

恐る恐る、聞いてみる。だが、2人とも別に様子を変えることもなく、いつも通りの調子で話を続けていた。

 

「別に?気がつかなかった私たちにも問題あるし。それにあの日はなんとかなったし!」

 

そう言い、ひとりを見る虹夏。だが、軽く流したがあの時内心は本当に困っていたのだろう。それでも今は気にしている様子はなく、虹夏自身の器の大きさを感じられた。

 

「でも!それじゃあ私の気が治りません!何か罪滅ぼしさせてください!」

 

「と言ってもなぁ…」

 

そう虹夏は困った顔をするが、後ろから姉である星歌がパソコンを声をかけてきた。

 

「じゃあ今日一日ライブハウスの手伝いしてくれない。今日忙しくなるし」

 

「…でもそれだけじゃ!」

 

「十分助かるよ!大丈夫だよそんな謙遜しなくても」

 

様子を見て、どうやらうまくいきそうである。そう考え、ひとりとカイムは顔を見合わせ、互いに笑った。

 

「じゃあちょっと着替えてもらえない」

 

「着替え…ですか?」

 

そうして、服を着替えて手伝いを始めたのだが…

 

 

 

 

「〜♪」

 

「…ここ、ライブハウスだよね?」

 

「どうして店長どのがあんな服を…?」

 

どうしてか、メイド服を着て作業をしている。困惑するひとりをよそに、何故か星歌は内心嬉しそうに眺めていた。

 

「あいつ、臨時なのに使えるな」

 

「喜多ちゃん要領いいね〜」

 

 

 

「くんくん、喜多さんいい匂いしますね〜」

 

「ありがとうございます!」

 

「私まだ名前呼ばれたことないのに…」

 

「喜多ちゃん愛想いいねー受付もやってみる?」

 

「私がやったことない仕事まで⁉︎」

 

「なんだか…すごいでござるな喜多どの」

 

「ああ…ああ…」

 

あまりにも手際良く仕事をこなし、ひとりの一歩二歩先を行く喜多。来て数分で自分よりもバンドの役に立っている。その様子を見て、ひとりは再びアイデンティティの崩壊を感じていた。

 

「匂い出る妖怪…仕事できる妖怪…」

 

「ひとりどの…とりあえずそこから出てきてくだされ…」

 

「ぼっち、何してるの」

 

死んだ表情で部屋の端に寄り、大辞典をめくり続けていた。

 

「へ…へこ鬼神…」

 

「それはマズいでござる!」

 

ひとりはうつろになりながら、正常な判断を失いかけていた。

 

「ぼっちちゃんぼっちゃーん。喜多ちゃんにドリンク教えてあげてよ!」

 

「はいっ!」

 

そんな中訪れた名誉挽回のチャンス。ドリンクならばやったことがあるから教えられる。そう思い意気揚々とドリンクの作業をするひとりだったが…

 

(すごい見られてる…ダメだ…見られると緊張する…)

 

「溢れてるでござるよ!」

 

「後藤さん⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、もう大丈夫。仕事もある程度分かったから、後藤さんはもう休んでていいよ?」

 

案の定溢れたコーヒーで手を火傷してしまった。しかしその手当を受ける途中、何かを感じた。

 

(あれ…この指先…)

 

「どうかしたでござるか?」

 

「うん…」

 

「そういえば後藤さんってなんでバンド始めようと思ったの?」

 

「えっそ、それは…」

 

(インドア系でも人気者になれるし。何より妖怪以外の人にも注目されるし。いやでも、人以外ぐらいしか友だちがいなくて、それでも人に注目されたいからなんて絶対言えないし…不純な動機だし…)

 

「せ…世界平和を…色々な方に伝えたくて…」

 

「絶対そんなことないでござる」

 

 

色々あったがライブハウスがオープンし、仕事が始まった。

喜多は受付やドリンクも練習通りこなし、特にトラブルも起こらなかった。

そうしてバンドの演奏が始まり、仕事がひと段落した時、喜多がなぜバンドを始めようとしたのか、その理由を聞いていた。

 

「バンドってもう一つの家族って感じしない?私も部活とか今までやってこなかったからそういうのにあこがれちゃって!」

 

(もう一つの家族…私にとってはカイムたち妖怪は友だちだけど、それに近いものを感じる気がする。でも確かに。私もバンドのそういうところに憧れてたし)

 

「だから私はリョウ先輩と同じバンドに入って、先輩の娘になりたいの!」

 

「もしかして喜多どのって…」

 

「なんかヤバい人…?」

 

発言の中に一部変な部分があったが、喜多の考えるバンド観には共感する部分もあった。

 

「…そう思うから、私もうバンドには入らないけどね」

 

「えっ…」

 

「一度逃げ出しちゃった私みたいな無責任な人間は、バンドなんか続けちゃダメなの…」

 

「喜多どの…」

 

(本当に…そうなのかな)

 

その発言に、ひとりは納得ができなかった。

 

 

 

 

 

「それじゃあ今日の仕事は終わったから。もう帰っていいよ」

 

「あの、今日はありがとうございました。これからも、バンド活動頑張ってください!陰ながら応援させていただきます!

 

そう言い残し、帰ろうとする喜多。だが

 

「あ、あのっ!」

 

それを見て、ひとりは突然走り出した。

 

が、

 

「あっえっ」

 

途中で足を滑らし倒れる、

 

しかし、

 

「ぐっ…間一髪でござったな…」

 

「あ、ありがとうカイム…」

 

なんとかカイムが入り、床に当たる直前に受け止めることができた。

 

「えっ…だ…大丈夫…?…もしかしてバンドのこと?ごめんなさい。さっきも言った通り私結束バンドには…「待ってください…」えっ?」

 

「ぼっちゃーん。起こすよー?(なんか少し浮いてたような…気のせいかな?)」

 

はっきりした声ではないが、少しずつ、ひとりは言い始めた。

 

「わっ私も…ライブ直前でやらかして逃げようとしました…それに…今までだって怖いことから逃げようとしていました…」

 

脳裏に浮かぶのは、今まで人に関わろうとして、人から逃げてしまったあの時。怖くなって、逃げ出そうと思った時。虹夏、喜多の頼みを断ろうとしてしまったあの時。

 

「それに、その左手…指の皮が硬くなっていましたから…」

 

ひとりは、喜多の指のことを手当てをしてもらった時に気づいていた。左手の指先の皮が厚いものになっていた。これはギターを相当練習しなければ出ないものである。

 

「あの時に気づいたでござるな」

 

「うん…理由やっぱそれかなって」

 

その様子を見ていたリョウと虹夏は向き合い、うなずいて喜多の方を見た。

 

「喜多ちゃんも!これから一緒に結束バンドを盛り上げて欲しいな!」

 

「そんな…でも私一度逃げ出しちゃったし…」

 

「あの時逃げ出してなきゃぼっちちゃんと会えなかったよ?私もずっとバンドやりたかったから、引け目感じちゃうのも、でもまだ憧れちゃうのも、気持ちわかるからね?」

 

「わ、私も分かりますっ!」

 

「リョウも戻ってきたら嬉しいでしょ?」

 

「スタジオ代が4分割」

 

「素直な言い方しなよ…」

 

「せ、先輩に貢げる…⁉︎」

 

「爛れた関係発生しそうなんだけど…」

 

なんだかんだ言いつつも、リョウも笑顔を浮かべている。ここにいるメンバー皆が、喜多にバンドへ加入して欲しいと感じていた。

 

「でも…私ギター弾けないし…」

 

「それならぼっちちゃんが先生やってくれるから大丈夫だよ。ね!ぼっちちゃん」

 

「うん」

 

「えっ」

 

「やっぱりこうなるでござるか…まあ、きっとできるでござるよ」

 

(この状況…絶対断れない…)

 

「はい…」

 

その様子を見て、喜多は口角を上げた。

 

「やっぱりバンドやってみます。私がんばる。結束バンドの、ギターとして!」

 

ひとりも、カイムも、虹夏も、リョウも。皆が結束バンドへ入ることを歓迎していた。

 

「よかった…元通りになった。グダグダしちゃったけど、あの時喜多さんを引き留めてよかった。私…がんばった」

 

「まさしく、目標だった一歩前進でござるよ。本当に、よくやったでござる」

 

「…でも、私いくら練習してもギター上手くならなかったの。いくら練習してもボンボンって音が出て」

 

「えっそれってベースじゃ…」

 

「私そこまで無知じゃないって〜ベースって弦が4本のやつでしょ?ほら!これちゃんと6本でしょ?」

 

「いや、必ずしもそうとは限らないでござるが…」

 

「それ、6弦ベース」

 

「え?」

 

「えっ」

 

空気が、止まる

 

 

「お父さんにお年玉2年分前借りしたのに…」

 

「喜多ちゃーん⁉︎」

 

 

その後、ベースはリョウが買い取り、ギターを貸してもらうことになった




後藤ひとり
普段は陰だが、原作のライブの時のように、決める時は外さない女。本人は学校で誰にも認識されていないと感じているが、側から見ればよく独り言を喋っているように見えたり、たまに怪現象が発生しているため、心霊系に縁があると思われていたりする。最近、妖怪ウォッチの音声がもう少し落ち着いたものにならないかなと思っている。

カイム
ひとりの事は主人であり、大事な友だちと思っているが、それはそれとして少し雑に扱ったりもする関係。そんな対応がひとりのメンタルを結構保っているが、カイム側もひとり以外には妖怪にも基本認識されないため、かなりひとりの存在が支えとなっている。

喜多郁代
原作通り結束バンドに戻ってくることができた。今後、ひとりにギターを教えてもらう事になったのだが…?

伊知地虹夏、山田リョウ
ひとりの怪文書をよくわからないけどエナドリ飲みたいんだなと翻訳。最近ひとりの周りで怪現象を見かける気がしている。

じがじいさん、ウキウキビ、バクロ婆、へこ鬼神
ひとりの友だち妖怪たち。それぞれ色々なタイミングで遭遇し、時には助けてもらうことも。普段はさくらニュータウンにいることが多いため、呼び出された後は近くを観光し、うんがい鏡で帰っている。


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