○月○日 晴れ
ウララさんにトレーナーがついてくれたみたい。新人トレーナーらしく、少し不安。大丈夫かしら。明日は5時から朝練と言って早めに寝たけれど、起きられるかしら・・・。
いけないいけない。私は一流。私は私のことに集中しないと。
ウララさんったら、また毛布がずれているわ。
○月△日 晴れ
全く。ウララさんには困ったものね。
私が起こさなかったら絶対、遅れていたわ。
アラームを午後5時にセットしていたんだもの。はぁ~。
ハルウララ「キングちゃ~ん。ねむいよ~・・・」
キングヘイロー「私も眠いわよ・・・。でも、今日、トレーナーさんと初めての朝練でしょう?」
キングヘイロー「遅刻するなんて、一流じゃないわよ」
ハルウララ「う~ん・・・。あと3分だけ~」
キングヘイロー「私も一緒に行ってあげるから、起きるのよ!」
・・・。
練習は何とか間に合った。
トレーナーさんはまだ若いと思っていたのに、随分、おでこが広いのね。
トレーナー「おはよう。ウララちゃん」
ハルウララ「おはよ~トレーナー~」
キングヘイロー「おはようございます。同室のキングヘイローです」
トレーナー「知っているよ。よく後輩のウマ娘たちの面倒を見てくれているよね」
キングヘイロー「おーっほっほっほ!よく見ているのね!」
キングヘイロー「なんせ、キングは一流ですからね!」
トレーナー「よし、ウララちゃん。まずは柔軟から始めようか」
ハルウララ「じゅーなん?」
トレーナー「身体を起こしてあげることだよ。怪我したら、大変だからね」
ハルウララ「わかった!」
トレーナー「キングちゃんも良かったら一緒にやっていくかい?」
キングヘイロー「お構いなく。キングにはキング常勝スケジュールがあるから大丈夫よ」
トレーナー「わかったよ」
私はそう言って、学園の外に出て軽く走り出した。
後でウララさんに聞いたら、とても楽しかったらしい。
笑顔で自主練のメニュー、走るときに注意すること、宿題の解説などを見せてくれた。
へぇ~・・・。少しは面倒見がいいみたいね。
まぁ、このキングには及ばないけどね!
△月○日 曇り
ウララさんにトレーナーさんがついて、しばらく経った。
ウララさんの走り方が、格段に良くなっている。
フォームが時々崩れるけれど、走るフォームはとても良い。
彼女なりに、体の使い方、呼吸のタイミング、位置取りを考えているように見える。
でも、1着はまだ遠い。
がむしゃらに走っていたときのクセは、油断すると出てしまい、すぐにスタミナが無くなる。
トレーナーさんは、必ず、目線をウララさんに合わせて、優しく、分かりやすい言葉で話していた。
ウララさんは、お花のような目で元気よく聞いている。
選抜レースまであと少し。
そこで、お手並み拝見と行きましょう。
あら、ウララさんが帰ってきたわ。
ハルウララ「ふぃ~。今日もつかれたよ~」
キングヘイロー「ジャージのままベットに行かないの。まずは着替えを・・・って、まだ寝ないの!」
その時に、ウララさんの鞄から紙が一枚落ちた。
その紙にはこう書いてあった。
「△月□日 選抜レース出場:芝:1300m左:作戦:差し」
△月△日 晴れ
私はウララさんのトレーナーさんに話を聞きに行った。
今のウララさんでは、芝は無理だと。
ウララさんの適性に合っていない。
トレーナーさんは静かに聞いていた。
トレーナー「確かに、キングちゃんの言う通りだ」
トレーナー「あの子がダートが向いているのは分かっている」
キングヘイロー「それなら、どうして」
トレーナー「夢を叶えるため」
キングヘイロー「夢・・・?」
トレーナー「あの子の夢は、とても遠い」
トレーナー「海よりも深く、空よりも高い」
トレーナー「ましてや、お金でもどうにもならない」
キングヘイロー「どういうこと?」
トレーナー「ごめんね。キングちゃんには秘密ねと、ウララちゃんから言われているから」
トレーナー「でもね、私はウララちゃんを勝たせるために」
トレーナー「ここに来たんだ」
キングヘイロー「・・・」
それ以上は聞かなかった。
なぜなら、私は一流だから。
部屋に戻ったら、ウララさんは宿題を進めていた。
今までは私が見てあげないと全く進まなかったのに、トレーナーさんの解説を読んでゆっくりではあるが、ウララさん自身で取り組んでいる。
えらいわ。ウララさん。
キングヘイロー「あら、宿題やっているのね」
ハルウララ「あっ、おかえり!」
ハルウララ「トレーナーの書いてくれた紙がね、とっても分かりやすいから楽しいんだ~」
キングヘイロー「良かったじゃない。でも、明日も朝練でしょう。早めに終わらせるのよ」
キングヘイロー「一流は時間を大事にするものよ」
ハルウララ「わかった!」
△月◇日 雨
いよいよ、明日はウララさんの選抜レース。
ウララさんはトレーナーさんの部屋でビデオ分析をしているみたい。
トレーナーさんの部屋はお菓子がいっぱいあるから楽しみと言っていたけど、食べ過ぎていないかしら・・・。
ウララさんの机は、相変わらず整理されていないわね・・・。
トレーナーさんからもらった解説には、重要そうなところに色をつけたり、所々に落書きがあって、ウララさんらしかった。
まったく…。
トレーナーさんも落書きにハナマルなんてつけているんじゃないわよ。
△月□日 雨 重
いよいよ選抜レース。連日の天候不良でバ場は良くない。
この日も雨が降っていた。おそらく、レース中も降り続けるだろう。
ウララさんは、そわそわしていた。
観客席から見ても、落ち着きが無いのが分かるくらいに。
隣のトレーナーさんは傘も差さずに、ウララさんを見つめていた。
キングヘイロー「大丈夫かしら。ウララさん」
トレーナー「大丈夫」
キングヘイロー「迷いがないのね」
トレーナー「このレースじゃないとだめだった」
キングヘイロー「どういうこと?」
トレーナー「今のウララちゃんに、乾いた芝は逆に不利になる」
キングヘイロー「え?」
あまりに常識外れの事を言うので、聞き返してしまった。
トレーナー「ウララちゃんなら、このバ場も味方にできるさ」
そして、レースが始まった。
後方に位置取り、走りながら出方を見ている。
今までのウララさんには、無かったことだ。
そして、最終コーナー。
外からウララさんが追い上げる。
凄い脚だ。
信じられない。
そのまま先団に向かって走っていく。
周りもそれに焦りを感じ、スパートの姿勢をとる。
しかし、思うように速度が出ずウララさんに抜かれていく。
観客もウララさんの走りに歓声を上げている。
そして・・・
結果は、9人中5着。
もう少しで3着も届いた。非常に惜しかった。
それでも
今まで勝ったことが無いウララさんが
適正じゃない芝で
大健闘じゃない!
ウララさんが観客席に向かって手を振る。
泥だらけのまま、手を振っていた。
トレーナー「・・・」
トレーナー「良かったね。ウララちゃん」
キングヘイロー「・・・あなた」
キングヘイロー「本当に、新人なの・・・?」
トレーナー「・・・そうだよ」
その後。トレーナーさんの部屋でささやかなパーティーをやった。
私は行かないはずだったけど、ウララさんが駄々をこねたので、参加した。
まぁね!
この一流のキングがいないと、パーティーが出来ないって言うんだから、仕方ないわね!
ハルウララ「キングちゃん!わたし、がんばったよ!」
キングヘイロー「ええ。とてもよかったわ」
キングヘイロー「でもね!目標は1着よ!」
ハルウララ「うん!わたし、がんばるね!」
パーティーは楽しかった。
トレーナーさんが甘党だなんて意外だったわ。
ウララさんは、もう少しピザをきれいに食べる作法を身に付けたほうが良いわね。
ハルウララ「トレーナー!次はどんなレースに出るの?」
トレーナー「うーん。まずはウララちゃんをもっとみんなに知ってほしいから、得意なダートのレースを出てみようか」
ハルウララ「わかった!」
トレーナー「慣れてきたら芝のレースも出てみようね」
ハルウララ「うん!・・・はぁ。食べたら眠くなっちゃった」
トレーナー「そろそろおしまいにしようか」
トレーナー「片付けはやっておくから、キングちゃんはウララちゃんをお願いしていいかな」
キングヘイロー「わかったわ」
ウララさんをおんぶして部屋に戻った。
ウララさんをベットに寝かせて、私も身支度をしてから布団に入った。
ウララさんとウララさんのトレーナーの日々が始まる。
私は一流だから、私の事を完璧にこなしつつ
この日記を続けることにするわ!
次回 「ウララさんの夢」
今回も読んで下さりありがとうございます。
予定では3話で完結します。
どうかお付き合いのほどよろしくお願いいたします。