某日某所
?「君の担当している娘、頑張ったじゃないか」
トレーナー「ありがとうございます」
トレーナー「ですが、まだまだです」
トレーナー「彼女の夢は、私の償いでもあります」
?「・・・どうしても、やるというのか?」
トレーナー「・・・これは、私の心に刺さった、棘のようなものです」
トレーナー「いつかは、抜かないといけません」
?「・・・そうか」
トレーナー「学園に誘っていただき、感謝しています」
?「・・・あまり、重くとらえるでないぞ?」
トレーナー「わかっています」
?「・・・不器用、実に不器用」
トレーナー「そういう生き方しか、出来ないのです」
トレーナー「理事長殿」
□月○日 晴れ
あれからウララさんは順調に成績を上げていった。
数週間前に行われたレースでは3着
その次のレースはハナ差で2着
そして、今
2バ身差をつけて、ウララさんがゴール板を駆け抜けた。
ウララさんの1着。
初めての、1着。
観客席にいる私にも聞こえるくらい
ウララさんは喜んでいた。
インタビューでトレーナーさんとウララさんが話している。
2人の対応の温度差があって、少し笑ってしまうけれど
良いコンビだと思うわ!
え、私はですって?
おーっほっほっほ!
このキングも順調に勝ち進んでいるわ!
なんせ、私はい、ち、りゅ、う!
一流ですからね!
おーっほっほっほ!!
□月△日 曇り
今日は久々にウララさんとお出かけ。
キングヘイロー「はい、ウララさん」
ハルウララ「えー!いいの!?キングちゃん」
キングヘイロー「この前のレースの1着のお祝いよ」
キングヘイロー「この一流のキングがにんじんパンを買ってあげるなんて、めったにないことよ!」
ハルウララ「うん!ありがとう。キングちゃん!」
ハルウララ「いただきまーす!」
ハルウララ「うーん!おいしー!!」
にんじんパンを一番好きな物を食べているかのように食べ進める、ウララさん。
学園から少し離れたカフェで、ウララさんは新作のにんじんパンとケーキドリンクのセット、私は紅茶を飲んでいる。
あのくじさえ当たれば、もっとおいしい物を買ってあげられたのだけど・・・。
キングヘイロー「明日はトレーナーさんと練習?」
ハルウララ「ううん。明日はよーじがあるから自主練だって」
キングヘイロー「自主練こそ大事な練習よ」
キングヘイロー「見られていない努力こそが、一流には欠かせないのよ」
ハルウララ「わかった!」
キングヘイロー「本当に?今日もスマホを枕の下敷きにしてたじゃない・・・って、また口が汚れてる」
ハルウララ「えへへ~」
もうすぐ夏合宿が始まる。
ウララさんのファンも既に多く、商店街の方々が応援団のようなものを作って、応援してくれている。
その広報活動もあってか、ファンも右肩上がりに増えている。
十分にG1レースに参加できる。
勝負も、きっとできるはず。
この合宿が勝負よ。
頑張りましょうね。ウララさん。
ハルウララ「あれ?」
ハルウララ「あそこにいるのってトレーナーじゃない?」
ウララさんが指した方向を見ると
花屋で店員さんと話しているトレーナーさんがいた。
邪魔してはいけないと思い、駆け寄るのはやめておいた。
なんせ、私は一流!気遣いもできるのよ!
ハルウララ「白いお花買ってたね~」
キングヘイロー「トレーナー室に飾るのかしら」
キングヘイロー「男の人なのに、少し意外ね」
ハルウララ「うーん」
ハルウララ「トレーナーの部屋、花瓶なんてないよ?」
□月□日 晴れ
夏合宿が始まって、あっという間に時間が過ぎる。
トレーナーさんとウララさんは朝から晩までトレーニングをしている。
私も負けずに、負けずに…。
あーー!
どうしても砂場、ダートは慣れないわ!
なんというか、こう、上品さがね~…。
ウララさんは関係なく楽しそうに走っている。
走って、走って、止まって、トレーナーさんとタイムを見て、また、走って…
…ふー。私ももう一本走ろうかしら。
トレーナー「うん。良いタイムだ」
ハルウララ「ほんとう?やったー!」
トレーナー「そろそろ昼ご飯にしようか」
ハルウララ「わかった!」
トレーナー「2時間後にまた柔軟から始めよう」
ハルウララ「わかった!」
トレーナー「…」
トレーナー「私も行くか…」
合宿場近くの一軒家
トレーナー「…ご無沙汰しております」
?「…」
?「今更、なんの用ですか?」
トレーナー「近くに寄ったから、好きな花を」
?「帰ってください」
トレーナー「……」
?「あなたは、私の人生を台無しにして」
?「よくも、よくも…」
トレーナー「…すまない」
しばしの沈黙
?「テレビで見たわ」
?「あの子、すごい頑張ってるじゃない」
トレーナー「ああ、あの子はすごい」
トレーナー「あの子の夢はね」
?「有馬記念の、1着」
?「そうでしょう?」
トレーナー「……」
トレーナー「あの子が、自分から言ってくれた」
トレーナー「君の事も話した」
トレーナー「私は」
トレーナー「何十人も、何百人も、人生を台無しにした人間だとも言った」
?「……」
トレーナー「君の足の調子さえ、良ければ」
トレーナー「有馬記念を見に来てほしい」
トレーナー「必ず、勝たせてみせる」
?「……」
?「……お医者さんが来る時間」
?「本当に、帰って」
トレーナー「ああ…。失礼するよ」
合宿場 海岸
ハルウララ「トレーナー遅いなー」
ハルウララ「……」
ハルウララ「私、有馬記念勝てるかなー」
ハルウララ「勝てたらいいなー」
ハルウララ「勝てたら、どうしようかなー」
ハルウララ「商店街のみんなと、キングちゃんと、トレーナーと、あといっぱいの人たちでー」
ハルウララ「みんなでパーティーやりたいなー!」
ハルウララ「えへへ~楽しみ!」
ハルウララ「あとはー」
ハルウララ「トレーナーのおしえごさん?に会ってー」
ハルウララ「トレーナーはわるいひとじゃないよって」
ハルウララ「ちゃんと、言ってあげるんだ」
ハルウララ「そうすれば、きっとなかなおりできるはず!」
ハルウララ「あと、もうひとつ」
ハルウララ「夢があるんだー」
ハルウララ「それはー」
キングヘイロー「いたいた!ウララさん!」
キングヘイロー「集合場所はそこじゃないでしょう!」
キングヘイロー「トレーナーさん汗だくで待ってるわよ!」
ハルウララ「えー!ごめんなさーい!」
最終回 「ウララさんの有馬記念」
ここまでのお付き合い、ありがとうございます。
果たして、この物語はどこに落ち着くのか。
作者の私もわかりません。
次回は最終回です。なるべく早めに書けるように頑張ります。