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やってきました週末、土曜日。
午前中はお父さんと『仕事』、午後はネコ&セイナと『合コン』というハードスケジュールな日だ。でも、予定が詰まってるのは充実してる証拠だよね。うんうん、今を生きてるって感じで、最高にJKっぽい!
そんな訳であたしは今ーー
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「ここが……ヤミ金!!」
「百合、声量に注意しようね」
都内にあるビルを見上げて、あたしは声をあげて、お父さんに怒られちゃう。しまった、ヤミ金なんて見たのドラマ以外だと初めてだったから、ついつい。
ともかくあたしはお父さんと一緒に『仕事』現場に来ていた。でも、なんでヤミ金?
「この金融会社を隠れ蓑にして活動している呪詛師がいるみたいだね。こんな会社に金を借りに来る人間には、後ろ暗い感情をもつ人も多い。金貸しついでに話を聞き出し、上手くいけば呪詛師としての仕事にもありつく……そういう構図なんだろう」
「おぉ、なるほど!」
流石はお父さん。あたしがいまいち今回の『仕事』内容を理解していないのを見抜いていたようで、補足説明してくれた。
「……まったく、いい商売だ」
呆れ、嫌悪感。お父さんの言葉にはそんな感情を感じ取れた。
……そっかそっか。今回の人達もやっぱり『悪者』なんだね。それじゃあ、皆殺しだぁ!
「じゃ、早速いこー!!」
「百合」
意気込んでビルへ突入しようとしたあたしをお父さんは呼び止めた。
お父さん曰く、今回のあたしはビルの外で待機だそう。ビルから逃げてきた人を捕まえておくのが、あたしの役割だって。
ふーん、そっかぁ。
「わかった!」
「……うん、いい子だ」
「ふへへ」
頭を撫でられた! 嬉しい!
「ここは任せたよ、百合」
「うん!」
優しく微笑むお父さんの言葉に頷く。お父さんに任されたんだ。絶対にこのビルからは逃がさないぞぉ!
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今回の任務は、あくまで調査だ。
ならば、接触の仕方は穏便でなくてはならない。つまり、一番簡単なのは、この金融会社に金を借りに来た客を装うこと。そこからここを隠れ蓑にする呪詛師を炙り出し、聞き出す。それが最短ルートだ。
そのためには、以前と同じ轍は踏む訳にはいかない。百合は呪力を抑えるのが下手だ……というよりも、呪力量が多くて抑えきれない。抹消ならともかく、特級呪物『両面宿儺の指』を扱おうとするレベル相手に調査とくれば、百合は連れていけない。
百合を置いていくことも考えたが、もし戦闘になってしまった場合、僕だけの実力では手に余る可能性がある。だから、百合を外に待たせておくという判断に至ったのだ。
「…………」
結果から言えば、僕の判断は正しかった。部屋に通されて、言われた通り椅子に座った途端に、僕の周りを囲む黒服の人間数人。そして、対面に座るのは、ストライプの灰色スーツの男。糸目でなぜか右側だけ長い前髪。とにかく胡散臭い風貌だった。
「それで? 呪術師やろ、アンタ」
「…………」
「沈黙は金雄弁は銀言うけどな、今の状況ならそりゃ肯定にしかならんよ。ウソのつけん男やね」
「はぁ」
ため息を返し、僕は話を切り出した。
「『両面宿儺の指』。それだけ言えば分かるだろう」
「……なるほどな、呪術高専の人間か。その件なら……はぁ、こっちも迷惑してるんよ」
「迷惑?」
「そや、そのせいで商売あがったりや」
ん? なんだか話が噛み合わない。この男が件の『両面宿儺の指』を蒐集しているという呪詛師じゃないのか?
「……少し、話を聞かせてほしいんだけれど」
「はあ? いやいや、勘違いすんなや。質問するのはこっちや」
にこやかに、だが、呪力を僕に向ける男。同時に、周りの男たちも再度、僕の頭に銃口を突き付けてきた。
……この男たちからは呪力は感じられない。ただ持っている銃……呪具の類いか。なら、まずは銃に付与された術式を『解体』してーー
ーーバギィッーー
僕が術式を発動しようとしたちょうどそのタイミングで、部屋の扉が弾け飛んだ。全員の視線がそちらへ向く。そこにいたのは百合だ。
「なに、してるの……」
ぼそっと独り言のように呟きながら、百合はこちらへ近づいてくる。あぁ、本当にまずい。これでは百合が僕以外の全員を殺してしまう。それは困る。
「なんだこのガキっ!」
ーージャカッーー
黒服の1人が銃を百合へ向ける。
……この1人は仕方がない。必要な犠牲、だね。
「お父さんに、なにしてるッッ!!」
ーーパァァァァンッーー
百合の叫び声と共に、何かが破裂した音。拳銃の音では決してない。百合に拳銃を向けた男の右腕が、拳銃ごと破裂した音だった。
「う、腕、うでがぁぁぁっ!?!?」
騒ぎ出す黒服。本当は穏便に済ませたかったけれど、ここまで事が進んでしまったのだ。1人だけ、しかも腕だけならまだいい方かな。むしろこれで話が進めやすそうだ。
「百合、大丈夫だよ」
興奮状態の百合の頭を一撫でしてやると、百合はすぐに落ち着き、笑顔を見せてくれる。隣に座るように言うと、素直に近くにあったパイプ椅子を引き寄せ、僕の横に座った。
百合のおかげで交渉の場は整った。
「さて、話を進めてもいいかな」
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「いやぁ、お兄さんも人が悪い。こんなに強いんならはよ言ってくれんと! そっちの嬢ちゃんも、ほら、飴ちゃんや。これで機嫌直してや!」
急に態度を変える灰スーツの男。胡散臭さはそのままに小物感が増している。ちなみに、百合の術式で腕が爆ぜた男の腕は、一応僕の反転術式で止血だけはした。勿論、腕は戻らないが、勉強料ということで収めてもらった。
「……のどかわいた」
「おい、オマエら! 嬢ちゃんに茶、出さんかい!」
「へ、へい!」
「アメはいらないからケーキが食べたーい」
「おい! ケーキや! ケーキ買ってこい!」
「へ、へい!」
「チョコがいい」
「チョコや! ショートケーキ買ってきたらしばくぞ、ごら!」
「わっかりました」
百合に振り回され、黒服たちがバタバタと慌ただしくなる。まったく落ち着いて、話をしたいんだけれど。
「百合、あまり我儘を言ってはダメだよ」
「はーい」
軽く百合に注意をして、改めて彼と向き直る。
「申し訳ない。娘が我儘を言ったね」
「いやいや、失礼な態度を取ったんはこちらやし、このくらいはさせてもらいます」
「そう言ってくれると助かるよ」
閑話休題。本題に入ろう。
彼の名は
「多少強引な取り立てはしても、殺しはしてません。その点ではお兄さんらの方がよっぽど、やろなぁ」
否定はしない。
「……それで殺しをしないヤミ金呪詛師のあなたが、なぜ『両面宿儺』で迷惑を被ってると?」
「同業者におるんですわ」
「同業者? それは呪詛師の?」
「違います。金貸しの方や。呪詛師を用心棒代わりに雇ってるとこがあるんです。それの雇われ呪詛師が『指』を手に入れたとかで、こっちのお客をごーっそりやられましてなぁ。あ、殺す方のやるやで。その客が総じて身寄りが一切ないもんだから、そのせいでこっちは貸し損や」
「……なるほどね」
その用心棒の呪詛師が、佐木さんの言う妙な動きをしている呪詛師ということだ。泥場さんに聞いても、それ以上は情報がないようで。ならば、僕がやるべきことはまずその人物に接触すること。そして、話を聞くことだ。
「泥場さん」
「泥場と呼んでくださいな」
「……泥場くん」
「はいな、漣の兄さん」
「その同業者のところに案内してもらえるかな? 例の呪詛師と話がしたいんだ」
「そら……ええですけど、殺しはせんといてくださいよ」
「………………善処するよ」
交渉成立。あとはこのまま彼らの同業者の事務所に連れていってもらえばーー
「あーーーっ!!!」
『仕事』は終わり。安堵の息を吐いていた僕の隣で百合は突然、大声をあげた。人前で大声を出すのは、はしたないと嗜め、百合は素直に謝る。どうかしたのかと訊ねると、
「時間! ネコとセイナとの約束の時間だぁ!?」
そう言って急に立ち上がる百合。確かに時計を見れば、12時を過ぎていた。待ち合わせの場所は聞いていないが、午後からという話だったからそろそろ出なければまずいだろう。チラチラとこちらの様子を見る百合。そんな彼女に笑いかける。
「いいよ。いってらっしゃい」
「でも、『仕事』が……」
「大丈夫。こっちは僕に任せて。百合が普通の高校生活を送るのが僕の希望でもあるんだから」
「っ、ありがと、お父さん! 大好き♡」
抱きついてくる百合の頭を撫で、そのまま走って事務所を出ていった。入れ違いに黒服が入ってくる。手にはケーキの箱。百合のために買ってきてくれたようで……悪いことしたな。
「って、これ、ショートケーキやないか! ぼけ!!」
「す、すいやせんっ!?」
怒号と共に泥場くんは部下の頭を叩く。すると、
「あ、そや!」
泥場くんが声をあげた。なにやら件の呪詛師について思い出した情報があるとのこと。
「そうそう。そいつの名前、呪詛師に似合わない名字だって噂を聞いたんですわ」
「似合わない?」
「ショートケーキ見てたら思い出してなぁ! そいつの名前なんやけどなぁーー」
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「ユリ、おそーい!」
「ごめんっ!」
約束の時間にどうにか間に合ったあたし。ギリギリだったから店の外で待っててくれたネコに謝って、ふたりで店内へ。
「結局、カラオケか~」
「あたしは好きだよ、普通のJKぽくて」
合コンって言っても、まだあたしたちは高校生。おとなーな店には入れないから、やってきたのはカラオケ店。
個室に入ると、セイナとネコの友達ふたり。そして、男子側はネコが秘密裏に繋がっているという男子校の男の子たち。
あたしたちが座ると、自己紹介が始まる。あたしも乗り気ではないけど、当たり障りのない自己紹介をして。
最後のひとり。ネコ曰く、今回の大本命、大当たり枠の男の子。軽くウェーブのかかった茶髪。ピアスと不快感のない程度に着崩してる。遊び慣れてそうなその彼が口を開いた。
「はじめまして、俺は
「バイトで『呪い』ばらまいてまーす☆」
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