久々更新です。
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「いない?」
泥場くんに案内されて向かった金貸しの事務所に、件の苺原という呪詛師はいなかった。事務所の人間の話だと、相当の遊び人らしく、今日は合コンに行っていて留守とのことだ。
「連絡はとれないんか? ああ?」
「泥場っ、てめぇ、覚えてろよっ」
「ああん? こっちには漣の兄さんがおるんやぞ? まだボコられ足りんか、おお?」
「っ…………連絡なんてとれねぇよっ」
虎の威を借る狐もとい泥場くんの脅しに屈して、その男は話し出す。苺原との仕事の連絡は基本的に、月に一回事務所に来る苺原に呪う対象のみを伝えるだけで。しかも、決まった日に来るという訳ではないらしい。
「用心棒が聞いて呆れるな、おい」
「こ、こっちだってあんな野郎今すぐ切りてぇよ! だが、一度幹部の1人を通してそれを伝えたが……くそっ」
「…………その幹部はどうなったんだい」
「死んだよ。ダンボール箱に詰められてな」
「…………」
「漣の兄さん、何か引っ掛かることでも?」
「いや、うん……ちょっとね」
話を聞いて、僕の中の何かが騒ぎ出す。虫の知らせ。悪い予感。残念なことに僕のそれは総じて当たる。
今回に関しては、悪い予感の原因は分かっている。僕は百合のスマホへ電話をかけた。
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「ユリはどうー? 気になる人いた~?」
一瞬抜け出したカラオケ店の化粧室で、ネコがそんなことを聞いてきた。
「んー、歌に集中してたからべつに……」
「は~、ユリぃ、この合コンはユリのために開いたといってもカゴンじゃないんだよぉ?」
「そう言われてもなぁ……」
興味がない。いくらイケメンでもお父さんと比べたら塵芥。お付き合いするならお父さん以上の男の人じゃなきゃ嫌だし、第一そんな人がいるとも思えないけど。
強いて言うならば、あの苺原という人かな?
バイトで『呪い』ばらまいてるとか言ってたけど、呪力はないようだし……呪術師関係の情報がどこかから流れてるのかなって思った程度で、大した興味は惹かれなかった。
そんなことをボーッと考えていると、ネコが会話を続ける。話題はセイナの話へ。
「セイナを見なよ~、めちゃくちゃ囲われてたじゃん」
「あれはほら、身体目当てでしょ」
「…………ひていはしない」
セイナはスタイル抜群だからなぁ。あれは男を惑わせる凶器だよ。本人にその自覚がないのがまた悪質だよねぇ。
「ともかくさ、ユリも親離れしよー!」
「はいはい」
ネコの言葉を話半分に聞き流しながら、そろそろ戻ろうと化粧室を出たその瞬間だった。
ーーゾワリッーー
強烈な悪寒が走る。死の気配だ。この感じ……呪力、だよね?
辺りを見渡して警戒するけど、残念ながらこの呪力の主は見当たらなくて。
「ユリ……?」
ネコの声に、あたしは彼女の方を見た。ネコは完全に一般人だけど、その呪力の濃さに当てられているみたいで、顔色も悪い。
「なんか、すごくきもちわるい……なに、これ……」
「ダイジョブだよ。でも、あたしから離れないでねっ」
「う、うん」
とりあえずネコを守りながら、セイナのところへ向かおう。
お父さんがいないところで、『呪い』に遭うのは初めてだ。だから、正直、なにを優先したらいいか分からないけど……でも、相手が何なのかわからないし、助けるのはまずはふたりだけ。その後、余裕があれば他の人たちも助ける、でいいんだよね?
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『呪い』の気配はセイナがいるはずの個室に近づけば近づくほどに濃くなってく。あたしにしがみついてるネコの震えも止まらない。本当にこれでいいの……? あたしの判断は間違ってない、かな……?
「ネコ、平気?」
「つらい。けど、他のみんなも連れてかなきゃ。ここ、なんかおかしい感じする」
「…………うん。そう、だね」
ネコの体を支えながら歩く。その間にも思い出すのは、あの苺原って男の人。呪力は確かに感じなかった。もしかして、呪力を抑えて隠してたってこと?
何も分からないまま、あたしは個室の扉を開けた。
「ひぃっ!?」
「え……?」
ネコは悲鳴をあげ、あたしは絶句した。確かにここはあたしたちがいた普通の個室のはず。なのに、そこに広がっていた光景は、壁一面が真っ赤に染まった異様なもので。
部屋の真ん中にそいつはいた。さっきまでは放っていなかった呪力を纏って。
「お、戻ってきた☆」
苺原ナナ。
明らかに異常な光景の中で、何も変わらない軽薄な笑みを浮かべてるその男。そして、その男に膝枕される形で、セイナが横たわっている。
「中々戻ってこないから心配したよ?」
「っ、セイナっ」
呪力は感じなくても、奴が纏う気配に気づいたみたい。ネコは真っ先に奴の側にいるセイナの身を案じ、名前を呼ぶ。だけど、返事はなかった。
「セ、セイナになにをっ」
「いや、いいカラダしてたから☆ 催眠術~って、眠らせちゃった☆」
「ふざけないでっ」
「ふざけてないよ、ほら☆」
ーーゾワッーー
「! ネコ!」
庇おうとしたけど、遅かった。ネコはあたしの隣で倒れてしまう。ギリギリ抱き止めた。幸い外傷はない。視線は奴から反らさずに、ゆっくりとネコを個室の外へ移動させ、再び対峙する。
「……なに、お前」
「それは俺の台詞だって。百合ちゃんだっけ? 君、何者? なんで起きてられんの?」
「質問してんのは、こっちなんだけど」
「立場分かってる?」
奴はニヤケながら、膝で意識を失ってるセイナの首に手をかける。先に答えろってことだ。仕方ない。
「……呪術師」
「なるほど☆ なに? 俺のこと祓いにきたの?」
「別にそんなつもりはない。偶然、ここに連れて来られて、それでお前がいた。それだけ」
「フフッ、偶然……いや、もしかしたら運命かもよ☆」
気持ち悪い。薄っぺらくて、言葉を交わしたくもない。けれど、相手の目的も出方も分からないままじゃ動きようがない。だから、
今度はこっちが聞く番だと告げ、口を開く。
「……何が目的? 他の人は? セイナとネコに何をしたの?」
「質問が多いと困っちゃうなぁ」
余裕のある笑みと無駄口が不快感をさらに増幅させてくる。小さく舌打ちをして、目的を改めて訊ねる。
「目的なんて合コン以外にないでしょ☆」
一瞬ふざけているのかと思ったけど、こいつ……。
「ほら、この子可愛かったから持ち帰ろうと思ってね。だけど、他の奴らもチョッカイかけてて邪魔だったからさ、殺しちゃっただけだよ」
他の女の子も殺しちゃったのは失敗だったなぁ。
しみじみとそんなことを言ってのける苺原。ふとお父さんの言葉を思い出す。呪術師……特に呪詛師はイカれてるって、そう言ってた。
……うん。なら、いいや。お父さんに教えてもらわなくても、やらなきゃならないこと理解できたよ。
「殺そう」
悪者を殺す。
そして、お父さんにいっぱい誉めてもらうんだ。
「残念だよ。結構好みの顔だったんだけどな」
あたしが構えると同時に、苺原は両手を掲げる。
何をする気か知らないけど一気に距離を詰めて触ればいい。駆けるあたしの目前、30cm先で奴は印を結び、『それ』を口にした。
「『領域展開』」
「『
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