炎の律者、七国を往く 作:怠惰の律者
いったい何が起こってるんだ…?俺は生きてるのか…
まさか夢とか…
確かめるように人差し指と親指で頬を摘む。
痛いな…やっぱり夢じゃないってことか。つまり、実験は成功したみたいだな。
多分状況から察するにこの女の子が助けてくれたんだろう。礼を言わないとな。
「君が…助けてくれたのか」
「ううん、私はただ治療しただけだから。見つけてくれた人にお礼を言ってあげて。」
「だが、助けてくれたのは事実だろう?ありがとう。」
「そっか、それじゃあそのお礼はありがたく受け取らせてもらうね。」
だがしかし…別の世界に移れたのはいいが、元の世界に戻れるのか?
「少し聞きたい事があるのだが、いいか?」
「うん、何でも聞いて?」
「あぁ、俺が倒れていた近くに鉄で出来た球状の物体はあったか?」
「うーん…そういう事は話してなかったと思うけど…。」
「そうか。」
てなると、元の世界に戻れない事は確定してるわけだ。というか今更だが、話がちゃんと通じて良かった。これがダメだったら生きていくのは厳しかっただろうな。
それにしたってこの世界の常識は知らないし、通貨も無ければ身分もない。それにこの世界の文明のレベルもどんなものがも知らないんだ。
それに加えて俺は人類の天敵。受け入れてくれる人間がそもそもいるかどうかってところか。
やっぱり野宿しか無いか?経験はあるがいざやるとなると大変だな。まぁ、何とかするしか無いだろう。
「すまない、世話になった。俺はもう行く、これ以上迷惑をかけるわけにもいかない。」
「ううん、気にしないで。人を助けるのは当たり前のことだから。あと、かなりの大怪我だったからあまり無理しないでね。」
「ありがとう、では。」
冷静になって周りを見て見るに、俺の居た世界の文明レベルよりはかなり下だろうな。ここは見た感じ教会か聖堂ってところだと思うが…この世界では何が信仰されているんだろうか。
見たところ入り口はあっちみたいだな…行くか。
木でできた荘厳な両扉を両手で開け、外に出ると、そこには前世界では信じられない光景が広がっていた。
まず外に出て最初に目に入ったのは、巨大な像だった。その大きさから、この国の多くの人が信仰していることが伺える。
そして周りを見渡すと目に映るのは、見渡す限りの大自然。前の世界であれば信じられない光景であったことだろう。文明が発展した世界では、必然的に自然は消えていく定めにある。それ故にこの光景は、この世界の文明の発展具合を最も良く示してくれている事だろう。
はは…すごい景色だ。こんなに素晴らしいものなのか…自然は。
こんなもの、見られなかった…見られるはずもなかった。俺は…本当に別世界に来たんだな。
改めてその実感を噛みしめるとともに、すぐに聖堂を出てしまったことに後悔する。せめて何かこの世界で生きる上での知識を聞いておけば良かったな…と。
まぁでも生きてさえいれば何とかなる!そうだよ、人生って言うのは瞬瞬必生だ、行き当たりばったりでも楽しければいい。よっしゃ!いっちょ頑張りますか!
次話からはもう少し長くなる…予定です