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突如現れたゴーレムに真っ先に反応したのは見張りを勤めていたルイズだった。ルイズは杖を振り下ろし、ありったけの魔力を込めて魔法を放つ。
「『ファイヤーボール』!」
ルイズの魔法は常に失敗する。どんなに頑張っても起こるのは爆発だけ。今回はそれが功を奏した。ルイズの放った魔法は、ゴーレムの肩に飛来し、吹き飛ばした。肩を吹き飛ばされたため、そこから先の腕は崩れ落ちる。
「やった!」
ルイズはゴーレムの一部を破壊したことで、軽くガッツポーズを取っていた。しかし、片腕が崩れたゴーレムならばバランスを崩してもおかしくはない。しかし、ゴーレムがバランスを崩すことはなかったのである。なぜならば、破壊された腕が再生を始めたのである。それを見たタバサはシルフィードを呼び、背中に乗った。近くにいたキュルケとのどかを乗せ、才人も拾おうとしたところで、ルイズと才人が何やら言い合いをしている。そして、ゴーレムの巨大な足がルイズに迫っていた。それを見た才人の行動は速かった。ルイズを救おうと走りだした。彼が背中に背負った剣――デルフリンガーを握っており、そのスピードは凄まじかった。瞬動のように一瞬で移動するわけではないので、一気に近づくことは出来ないが、それでも速かった。ゴーレムの足を目前にしたルイズは絶望感に打ちひしがれているようだったが、間一髪で才人の助けが入った。そして、そこでシルフィードが一気に近づいた。ルイズと才人を乗せて、退却するためだ。
「乗って!」
タバサが叫んだ。彼女が少し焦っているのがわかる。ルイズはすぐにシルフィードの背中に乗ったが、才人は乗ろうとしなかった。
「俺は大丈夫だ!」
才人はこれ以上人は乗れない、と判断して一番すばしっこい自分が地上で戦おうと考えたのだ。更にもう一つ彼には考えがあった。しかし、ルイズはそれを是としなかった。
「何言ってるのよ! 今のはギリギリ避けれたけど、今度もまたうまく行くかわかんないのよ!」
「わかってる!」
「わかってない!」
タバサはこれ以上ここに留まるのは危険だと判断し、シルフィードに飛び上がらせた。飛び上がる瞬間、のどかがシルフィードの背中から飛び降りた。キュルケとルイズの声が重なる。
「ノドカ!? 何やってるのよ!」
「ノドカ! ダメ、戻ってきなさい! あなたがいなくなったら一番悲しむのはタバサなのよ! あなたはタバサの……」
ルイズとキュルケの悲痛な叫び。声は届いたらしく、地上に降りたのどかは飛び上がっていくシルフィードの方に目を向け、ニコッと微笑んだ。大丈夫です、そんな言葉が浮かんでくるような笑顔だった。ルイズとキュルケはそれでもなお心配だったようだが、タバサはのどかのその笑顔を見て、胸をなでおろした。
「タバサ!? 大丈夫なわけないでしょ! のどかがダーリンと一緒に死んじゃうかもしれないのよ!」
「大丈夫。あの子がそう言うなら問題ない。それに、あるものを受け取っている。作戦も聞いた」
「タバサ……のどかのこと信頼してるのね。ちょっとのどかが羨ましいわ」
「あるもの? あるものって何?」
ルイズはタバサがのどかから受け取ったモノに対して、疑問を持ち上げたが、タバサの答えはまた意外なモノだった。
「秘密」
「なっ! 作戦くらい教えなさいよ!」
「私とあの子の約束」
「何よ!」
「それよりいいかしらルイズ? ダーリンが潰されそうよー」
「ウソッ!? ってホントにウソじゃない! ふざけないでよ!」
「悪かったわよ」
ルイズの癇癪でいつもの調子を取り戻したキュルケがいつも通りルイズをからかう。それでルイズも少しは落ち着きを取り戻したらしい。ルイズは、そっぽを向いてありがと、と短く小さな声でお礼を言った。キュルケもこの事はからかわず、ルイズに対し、微笑みで返した。
飛び降りたのどかに驚いたのは才人も同じであった。
「のどか!? 何やってるんだ! まだ間に合うから急いで戻れ!」
「大丈夫です、これでも魔法で出来たゴーレムとは何回も対峙してますからー」
「へ? いやだって、のどかも俺と同じ世界出身なんだろ!? なんでそんなものと戦うみたいなことがあるんだよ…………のわっ!」
才人はのどかの言葉に驚き、つい問いただそうとしてしまっていた。当然、ゴーレムには敵だと認識されているので、待ってはくれない。ゴーレムの足が2人に迫っていることに、才人は気づかなかったのである。のどかはいつの間にか光を纏っており、瞬動を使ってゴーレムの足を回避した。当然、才人を抱きかかえて、である。才人は自分の景色が一瞬で別のものになったため、変な声を出してしまったのである。
「才人さん、時間がありませんので、すぐに準備をしてください。私はあまり戦闘は得意じゃありませんけど、あなたの考えならわかりますからー」
「お、おう。俺は『破壊の杖』を使えれば、って思ってるんだけど……」
「私は『破壊の杖』を見てませんけど……そういうことですか。わかりました」
「え? のどか何がわかったんだよ」
「なんでもないです、それよりゴーレムが来てます!」
のどかの言うとおりゴーレムが迫っていた。ゴーレムは先程妙な動きをしたのどかに狙いを定めているようだった。しかし、ことごとく躱されてしまう。単調な動きのため、回避しながらのどかは思考する。
『破壊の杖』がロケットランチャーだったなんて……つまり、私たちのモノがこっちに流れ込んできているとしたら、必ず帰る方法はある。それよりも今は……ゴーレムが私を狙ってきている、ということは術者が近くにいるということ。犯人はあの人だと思うけど……何か理由があるのかな。今は『破壊の杖』であのゴーレムを倒さないと。
「タバサさん! 今から『破壊の杖』を使ってあのゴーレムを破壊します! 『破壊の杖』を才人さんに!」
のどかが声を上げると、タバサは『破壊の杖』を才人めがけて投げた。才人はなんとか受け取ると、構えた。しかし、ここで才人は自分でもわからないことが浮かんできて焦っていた。
「(え? なんだこれ、俺はこれの使い方なんて知らないのに、どうして使えるんだ。わかるんだ。せいぜいトリガーを引くだけだと思っていたのに……いろんな使い方がわかる。……そういえばさっきも、ギーシュの時も……剣の扱い方がわかった。しかも、体が軽くなった)」
才人は自分の変化に驚いて、トリガーを引くのに戸惑った。そのせいで、才人はゴーレムの拳に反応することができなかった。ロケットランチャーの威力は高い。今撃てば自分も爆発に巻き込まれてしまう危険性があった。だから、才人は回避行動を取ったのだが、間に合わなかった。
「(やべえ、避けれねえ。クソ、ルイズを見返したかったのによ。こんなんじゃあカッコ悪いぜ)」
のどかは才人が決めると思っていたのにも関わらず、才人が撃たなかったことに対して反応が遅れることはなかった。なぜなら、飛び降りる少し前に才人の名前で彼女のアーティファクト
「……え? 助けられちまったな。サンキュー、そういえば、イヤリングいつの間にしたんだ? って今はどうでもいいな。それよりも今ので『破壊の杖』を落としちまった! 悪い……」
「大丈夫です、才人さん。それよりも今はアレの安全な使い方を教えてください。出来るなら、図を使って詳しくお願いします」
「な、何言ってるんだ? 図? そんなことより大切なことがあるだろ!?」
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なんだ? 急にどうしたんだ? 使い方? それは……さっき浮かんできた使い方……肩に担いで、腰を落とすだろ。そして、片膝をつく。あ、この時膝をつく方は担いだ方と同じな。そして、反対側の足は膝をつかずに立てておけばいいかな。後は敵に狙いを定めてトリガーを引くだけだ。違う! 今はそういうことを言うんじゃなくて! ロケラン回収して、倒さないと! タバサはさっき使い方がわからないって言ってたから、俺とのどかのどっちかしかあいつを倒せないんだ!
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才人はのどかの質問の意図が分からずにいた。しかし、のどかは上手くいったという表情をしているが、才人はますます混乱しているようで、とぼけた顔をしている。すると、シルフィードが急降下し、タバサは才人が落とした『破壊の杖』を回収すると、シルフィードから降りて、『破壊の杖』を構え、ゴーレムに照準を合わせ、撃った。それはゴーレムに命中し、爆発が起き、ゴーレムは跡形もなく、砕け散った。タバサは才人を見て、どうだ、自分も使えるんだ、と誇っているような顔をした後、のどかに駆け寄っていく。
「あ、タバサさん。大丈夫でしたか? 耳とか痛くありませんか?」
「大丈夫、あなたは?」
「大丈夫ですよー。やっぱりタバサさんにお願いして良かったですー」
「そんなことはない」
タバサとのどかがお互いのことを心配して、話し合っていると、才人が納得できないといった表情で近寄ってきた。
「なんでタバサはアレが撃てたんだ? さっき聞いたときは撃てないって言ってたじゃないか。俺が構えたからか? でも、それだけで撃てるもんなのか」
「違う。彼女の能力」
「へ? のどかの能力ってどういう」
「サイト! 何してるのよ! バカバカバカァ! 本当にやられちゃうかと思ったじゃない! ノドカに感謝しなさいよね! もう……本当に心配したんだからね」
才人がそれについて聞こうとしたところで、ルイズに邪魔された。
「ルイズ……悪かったよ。これじゃあカッコつかないな。本当に悪かった。のどかも改めてサンキューな、助かったよ」
「ダーリン、今回はあまり活躍できなかったわねー。でも、ルイズを助けたのはかっこよかったわよ。さすがはあたしのダーリンね」
「何言ってるのよ! これは私の使い魔! ペットよ! あんたになんかあげないんだから!」
「あら、いいじゃない。あたしに渡しなさいよ」
「嫌よ!」
「なんでよー」
「だからさっきも言ったけど……」
キュルケはルイズをからかい、ニコニコとしている。そんな2人を見て、才人は終わったんだな、としみじみ感じていた。すると、森の奥からガサガサと音がしたので、才人は思わず、誰だ! と叫んだ。その正体はロングビルで、ものすごい爆発音を聞きつけて、戻ってきたという。才人とルイズ、キュルケはロングビルだったので、気を緩めた。もし、フーケだったらどうしようかと思っていたのだ。しかし、のどかとタバサは違った。タバサはロングビルの周りを水の攻撃魔法である『ジャベリン』を打ち込んだ。突然のことにルイズたちは動けないでいるようである。ロングビルが目を見開いて、タバサとのどかを見た。のどかは右手の人差し指に、中央に鬼の目を連想させるような装飾が施され、更に左右に鋭く尖った羽のついた指輪のようなものを装着し、ロングビルをにそれを向けてこう言った。
「
のどかが何かすると思っていたロングビルはへ? と間抜けな声を出した。
「イヤですわ、ミス・ミヤザキ。私はロングビルですよ」
のどかの指が勝手に動き始める。それは空中に何か文字を書いているような動作だった。
「マチルダ」
のどかがそう言った時、ロングビルの目が大きく見開かれた。
「マチルダ・オブ・サウスゴータ。これがあなたの名前ですね」
「ち、違います。私はロングビルです。しかも、サウスゴータだなんて……」
ロングビルは平静を装ってはいるが、焦りが見え隠れしている。ルイズたちは急に変わったのどかの様子とロングビルの会話に入り込めないでいる。しかし、タバサは違った。タバサはのどかの意図を察してか自分が預かっていた本を返した。キュルケもその本を見て何か納得したようだった。
「
のどかは本を一度閉じ、呟いたあと、また開いた。タバサとキュルケ以外はその意味がわからないようで、困惑している。そんな中でものどかはロングビルに質問をした。
「マチルダさん、あなたは土くれのフーケで間違いないですね?」
「な、何言ってるんですか。そんなわけないじゃないですか」
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そのとおり、私が国を騒がせているフーケよ。 なんで私の本名を知っているの? まさか、さっきのあなたのお名前なんですかー? って言うのはあたしの本当の名前を暴くための力? そんな馬鹿な! 幾ら何でも強すぎるわよ! それにしてもこいつの声ってテファに似ているのよね。今はそんなことはどうでもいいのよ。この状況をどう打開するかが問題ね。『破壊の杖』を奪ったはいいけど、使い方がわからなかったから、こいつらに使い方を見せてもらって奪おうとしていたのに……
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「やっぱり、あなたがフーケですね。そして、私たちの誰かに『破壊の杖』を使用させ、そして、それを奪い、私たちを亡き者にしようと考えていましたね」
のどかの言葉にロングビルは動揺を隠せなかった。しかし、言葉だけはまだ平静を保っている。
「な、なんでそこまでわかったのかしら? 本当にあなたは賢いわね」
ロングビル――フーケがそう言うと、ルイズと才人はのどかが適当なことを言っていたわけではないとわかったらしい。
「そ、そんな……ミス・ロングビルがフーケだったなんて……」
ルイズの声には絶望感と悔しさが混じっている。ルイズの様子を見たフーケはルイズを馬鹿にした。魔法が使えないメイジだの、平民を呼び出したおかしなメイジと言った。そして、最後は何も知らないお嬢様。その言葉の真意はのどかに伝わってしまった。のどかはフーケが一種の義賊であることを聞いてしまったのだ。
「マチルダさん、あなたは進んで悪事を働いていたわけではないんですね」
「は? 何を言っているの? 私は自分の意思で悪事を行ってきたのよ」
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そう、私はテファのために盗賊になった。あの子が笑ってくれるなら、私は汚れても構わない。あの子が幸せに暮らしてくれれば、それでいい。私はあの子を絶対に守り通す、そう決めたんだ。だから、ここで捕まるわけには……
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「それは、ある人たちのためだったんですね。でも、悪いことをしたなら罪は償わないといけないと思いますー。
そう言うとのどかはアーティファクトをカードに戻した。そして、フーケに笑顔で手を差し伸べた。
「なんで知ってるのよ! あなたはどこでそれを知ったっていうの! 誰にも漏らしてない! その情報を! 手を取れって言うの? まるで人の心を読んでいるみたいなあなたの!」
「それで、合ってます。私はさっきの本で心を読むことができます。だから、あなたの想いも聞いちゃいました。お願いです、その子もこんなこと望んでいないと思います」
「心を読む……ですって。何よ、それ。あの子がこんなこと望んでいない? そんなことわかってるわよ! でも、お金がないのよ! 稼がないといけないのよ! あの子のために! それが分かっているんでしょう! 見逃してくれてもいいじゃない!」
「ゴメンなさい、それはできません」
「そうかい、まあこんな演技に引っかかるわけはないわよね(ゴメンね、テファ……しばらく会えそうにないよ。こいつは優秀だ、恨もうなんて思いもしないくらいにね。善悪がしっかりわかっている。テファがこいつと一緒にいたら強くなれるかもしれないわね)」
フーケは観念したようで、のどかの手を取った。のどかは笑顔でフーケの手を握り返した。
「あの、なんとか罪が軽くなるようにオスマンさんに掛け合ってみます。早くその子にも会いたいと思いますから」
「何言ってるんだか、そんな情けまでかけられるとはね。私がここで暴れるかもしれないわよ(まあ、そんなことするつもりはないんだけどね。甘すぎるわ、テファみたいな声してるせいでこの子も可愛がりたくなっちゃうじゃないの……この声のせいで、こうやって言うこと聞いてるのかもしれないわね)」
「そんなことになるなら、攻撃された時点でもう反撃したと思います」
「敵わないね、まったく(なんか吹っ切れた気がするわ。出所したら傭兵でもやろうかね。なんかこの子の思い通りになってるような気がするのは癪だけど、今の私は何かしようとする気力はないわね。それよりもこの子のことを知りたい)」
「え? これで終わりなのか? あっけない幕切れだな」
才人が思わずそう言ってしまうのも無理はない。それくらいあっさりとカタがついたのだ。帰りの馬車に乗り込んでも、フーケは脱走しようともせず、おとなしくしていた。のどかと喋っているが。
「いつから気づいたの? 私がフーケっていうことにさ」
「実はここに来る前からそうなんじゃないかなー、って思っていました」
「そんなに早くから!? あのエロじじいがあなたを評価しているだけはあるわね」
「エロじじい?」
いつの間にかタバサがのどかの隣に来ていて、フーケとの会話に参加していた。
「そうよ、オールド・オスマンのこと。あいつ、私が秘書やっている間、セクハラばかりしてきたのよ。嫌になっちゃうわよね(それにしても、このタバサっていう子、来る時もこの子の側を離れようとしなかったわね。そんなに大事なのかしら。まあ確かに可愛いけど)。そうだ、あなたのことノドカって呼んでいいかしら? 私もマチルダで構わないから」
「あ、はい。全然構わないですよー。えーっとマチルダさん」
のどかが遠慮しがちに言うと、マチルダはそれがおかしかったようで笑いながら言った。
「はははっ、なんでそんなに遠慮してるのよ。さっきまでキリッとしてマチルダさんって普通に言えてたのに」
「あ、あうー。ゴメンなさい」
「ふふ、別に謝るようなことじゃないよ」
タバサはのどかがマチルダと喋っているのが面白くないらしく、自分も話に混ざろうとしているが、何を喋っていいかわからず、困惑しているようだ。のどかはそれに気づいたらしく、ニコッと微笑んで、タバサの話題にした。
「マチルダさん、実はタバサさんもあなたがフーケじゃないのかって疑っていたんですよー。マチルダさんが馬車の準備をしている間、少し部屋に戻ったんですけど、そこで私の推論を話したらタバサさんも同じことを思っていたようで、その後作戦を立てたんです。今回はそれが見事にはまったので、助かりましたけど」
マチルダはのどかだけでなく、タバサも優秀だったという事実に驚いた。そして、思わず2人の頭を撫でていた。
「本当にすごいわね(って私なにしてるのよ。あー、つい子供たちの頭を撫でるくせが出ちゃったわね。というかこのタバサって子も可愛いじゃない。小さいし、眠そうな顔してるけど中々……私は何考えてるのよ)」
のどかとタバサは頭を撫でられたのに驚いたが、マチルダが笑顔で撫でていたので、そのままにしていた。
学院に着いた時は既に衛士隊がおり、マチルダ護送車に自ら入っていき、乗り込む少し前に、のどかにウインクした。そして、マチルダの姿が見えなくなり、護送車が出発し、のどかたちはそれが見えなくなるまで、見送っていた。ルイズと才人はフーケを逮捕したのは、いいもののこんな形でいいのかとずっと思っていたようだが、キュルケが恨まれて、またゴーレム出されたらたまったもんじゃないでしょ? と言うと2人は潰されかけたことを思い出したらしく、顔を青くして首を横に振っていた。実に単純である。
マチルダさん、あの様子ならきっともう悪いことはしないよね。そうだ、手紙を送ろうかな、ある程度文字は書けるようになってるし、喜んでくれるといいなー
「何を考えているの?」
のどかが護送車が見えなくなってもずっと同じところを見ていたので、タバサが気になったようで、のどかに問いかけた。
「マチルダさんに、お手紙送ろうかなー、って考えていたんです。タバサさんも書きますかー?」
「あなたが書くなら私も」
「はい! それじゃあ一緒に書きましょう。きっとマチルダさんも喜んでくれますよ」
「約束」
「約束ですね、わかりましたー」
その後、のどかたちはオスマンに報告に行き、今夜はフリッグの舞踏会だ、ということを聞かされキュルケは慌てて、ルイズはキュルケに負けるのがなんとなく癪だったらしく、同じように急いで、のどかとタバサは談笑しながらゆっくりと部屋に戻っていった。才人は学院長に話があると残されていたが……
「じゃあ失礼します」
才人がオスマンとコルベールとの話が終わるとそう言って退出した。オスマンは才人がいなくなると、自慢の長いヒゲを弄りながら、困ったような顔をしていた。
「伝説の『ガンダールヴ』か……しかし、そろそろミヤザキくんの能力も把握しておきたいのう。ミス・タバサにうまくはぐらかされてしまったからの。彼女自身は話しても構わない、と言っておったしの」
「そうですな、そろそろ彼女の力を知っておかなければなりませんな。何しろあのフーケを改心させたそうですからな。どうやってのか気になりますな」
「今度彼女と話す場を設けなければならないの」
「ですな。その時は私も是非呼んでください」
「わかっておる、ツルベールくん」
「コルベールです!」
そんなやり取りをしていたオスマンとコルベールの2人も舞踏会に顔を出すために、自室に戻り着替えるのだった。
フーケ戦終了です! なんかフーケがのどかとタバサのお母さんみたいな扱いになってしまった……まあいいか
次回は舞踏会です!