恥ずかしがり屋の司書の異世界譚   作:黒蒼嵐華

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テストも終わり、今日から春休みということで、書き上げました。

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24時間目

 のどか達が帰ってきた翌日。のどかはベッドから目覚め、いつもの日常に戻ってきたという実感を得ていた。のどかがベッドから出て着替えていると、タバサも起きてくる。

「修行?」

タバサは小さく寝ぼけ眼でのどかに問いかける。食堂に行くには少し早い時間に着替えているからそう思ったのだろう。その問いにのどかは小さく頭を振る。

「ううん、今日は修行やめておこうかなー。ちょっと疲れてるから」

「そう」

 のどかが着替え終わる頃に、タバサも着替え始めた。タバサも着替え終えた後、背中合わせ朝食の時間になるまで、本を読み始めるのだった。

 

 朝食の時間が近づくと、二人は余裕を持って部屋を出て行く。そして、食堂に着いて、しばらくすると、不思議な光景を目にする。ルイズが才人を貴族の席に座らせたのだ。その後、マリコルヌが抗議をするが、才人が一睨みすると、すぐに自分で自分の椅子を取りに行ったのである。

「ルイズさん、どうしたんだろう?」

 のどかの小さい呟きに答えたのはキュルケだった。

「恋よ、ルイズはダーリンに恋しちゃったのよ」

「えっ!? そ、そうなんですかー!?」

「あら、気づいてなかったの、ノドカはとっくに気づいてるものだと思ってたわ」

「い、いえ、全然ですー」

 キュルケは「なるほど」と言うと、新しいおもちゃを見つけた子供のようにニヤニヤと笑いながらのどかに顔を近づけて言う。

「さては、ノドカも恋したことないわねー」

「わ、わたしは!」

 のどかが何かを言いかけるが、キュルケはそれを両手で制す。

「大丈夫よ、わかってるわ。ノドカみたいな恥ずかしがり屋に恋は少し荷が重いわよね」

「そうじゃないんですー。そうじゃなくて私だって」

「祈り」

 のどかが顔を真っ赤にして、慌てながら一生懸命説明しようとしていたところで、タバサに止められる。キュルケも「わかったわよ」とタバサに言う。どうやらタバサはのどかを助けたらしかった。のどかは説明しようとするのに必死で気づいていなかったが。

 

 朝食を終え、授業が始まる前、のどかとキュルケ、タバサから休んでいた理由を聞いていた。しかし、タバサはそもそも話すようなことはしないし、キュルケもお喋りではあるが、重要なことなので、話さないと決めている。のどかも普段の様子とは打って変わって、頑なに教えようとはしない。そこに新しく現れたのが、ルイズたちであった。そこで、モンモランシーが席についたルイズたちに近づいて、授業を休んだ理由を尋ねる。お調子者のギーシュがそれに答えようとすると、「姫さまに嫌われるわよ」というルイズの鶴の一声でギーシュは押し黙り、下を向いている。そんな二人の様子を見たクラスメイトたちは、やはり何かあったのではないか、と勘ぐり始め、ルイズたちに迫る。

「別に、なんでもないわよ。オスマン氏に頼まれて、王宮までおつかいに行っただけよ。そうよね、ギーシュ、キュルケ、ノドカ、タバサ」

 キュルケは笑みを浮かべながら、磨いた爪のカスをフッと吹き飛ばし、ギーシュは頷く。のどかもギーシュと同じように頷き、タバサは本をジッと読んでいる。生徒たちはつまらなくなったのか、自分の席に戻っていく。全員で隠し事をするために、生徒たちは口々に負け惜しみを言う。

「どうせ、たいしたことじゃないよ」

「そうよね、ゼロのルイズだもの。魔法が使えないあの子に大きな手柄が立てられるわけないわ。きっとフーケを捕まえたのだって、偶然とかでしょう? たまたま、破壊の杖の力を引き出しただけなんだわ」

 そう言いながら、モンモランシーも自分の席に戻ろうとする。その途中、才人はルイズを馬鹿にされたことが頭にきたようで、モンモランシーの足を引っ掛ける。

「きゃあ!」

 そのまま床にビターンと転んだ。そして、起き上がり才人をキッと睨む。

「何するのよ! 平民のくせに貴族を転ばせるなんて!」

「ちゃんと見てない貴方が悪いんじゃない」

 ルイズがモンモランシーに言う。

「何よ! あなた、平民の肩を持つつもり? ゼロのルイズ!」

「平民でも、サイトはわたしの使い魔なの。その使い魔を侮辱することは、わたしを侮辱することと同じよ、洪水のモンモランシー。文句があるならわたしに直接言いなさい」

 ルイズの言葉にフン、と鼻を鳴らしてスタスタと戻っていく。気づけば、才人がルイズを暖かい目で見ている。それに気づいたルイズが「何見てんのよ!」というと、才人はハッとした顔になり、「ごめんなしゃい」と言う。ルイズと才人がそんなやり取りをしていると、コルベールが入ってきた。

 

「コホン、それでは授業を始めていきますぞ。それではこれを」

 そう言うと、コルベールは何かを机の上にドンっと置いた。

「先生、それはなんですか?」

 生徒の一人が質問した。

 生徒が質問するのもよくわかる。長い円筒状の金属の筒に、これもまた金属のパイプが伸びている。パイプはふいごのようなものに繋がり、円筒の頂上には、クランクがついている。そして、クランクは円筒の脇に建てられた車輪に繋がっている。

 一体何が始まるのだろうか、と生徒たちは興味深そうにその装置を見ている。

「え、この装置を使う前に『火』系統の特徴を誰かこの私に開帳してくれないかね?」

 コルベールはその言葉と同時に、教室を見渡す。そして、コルベールと生徒たちの目線が集まったのは『火』系統として有名なゲルマニア貴族のキュルケであった。キュルケは手入れしている爪から目を外さず、気だるそうに答えた。

「情熱と破壊が『火』の本領ですわ」

「そうとも!」

 自身も『炎蛇』の二つ名を持つ、『火』のトライアングルメイジであるコルベールはにっこりと笑って言った。

「だがしかし、情熱はともかくとして、『火』が司るものが破壊だけでは寂しいと、このコルベールは考えます。諸君、『火』は使いようですぞ。使いようによっては、いろんな楽しいことができるのです。いいかね? ミス・ツェルプストー。破壊や戦いだけが『火』の見せ場ではない」

「トリステインの貴族に『火』の講釈を承る道理がございませんわ」

 キュルケは自信たっぷりに言い放つ。先程まで爪を手入れしたのに、その手を止めていることが何よりの証拠だ。コルベールはキュルケの嫌味にも動じず、ニコニコとしている。

「でも、その妙なカラクリはなんですの?」

 キュルケは心底不思議そうに机の上の装置を指差す。

「ふふ、ふふふ、よくぞ聞いてくれました! これは私が発明した装置ですぞ。油と、火の魔法を使って、動力を得る装置ですぞ」

 生徒たちはぽかんとしていたが、才人とのどかはそのどこかで見たことあるような装置に見入っている。

「まずこの『ふいご』で油を気化させる」

 コルベールはふいごを踏む。

「すると、この円筒の中に気化した油が放り込まれるのですぞ」

 慎重な顔で、コルベールは円筒の横に空いた小さな穴に、杖の先端を差し込んだ。

 呪文を唱える。すると、断続的な発火音が聞こえ、発火音は気化した油に引火し、爆発音に変わった。

「ほら! 見てごらんなさい! この金属の中では、気化した油が爆発する力で上下にピストンが動いておる!」

 すると、円筒の上にくっついたクランクが動き出し、車輪を回転させた。回転した車輪は箱についた扉を開く。すると中から、ピョコっとヘビの人形が顔を出した。

「動力はクランクに伝わり車輪を回す! ほら! するとヘビくんが! ほら! ぴょこっ! ぴょこっ! 顔を出してご挨拶! 面白いですぞ!」

 生徒たちは反応が薄く、コルベールがなぜ興奮しているかわかっていないようだった。その様子を熱心に見ているのは才人とのどかだけであった。

 誰かが心底どうでもいいというように、とぼけた声で感想を言った。

「で? それがどうしたって言うんですか?」

 コルベールは自分の発明品がほとんど無視されているので、少し悲しくなった。冷めている生徒たちを見てオホン、と咳を吐き、説明を始めた。

「えー、今は愉快なヘビくんが顔を出すだけですが、この装置を乗せれば、車輪を回転させる。すると馬がいなくても、荷車は動くのですぞ! 他にも、船に取り付けて、大きな水車を取り付けて、この装置を回せばなんと帆がいらないのですぞ!」

「そんなの、魔法で動かせばいいじゃないですか。なにもそんな変な装置を使わなくても」

 生徒たちは、みんなうんうん、と頷きあった。

「諸君! よく見なさい! もっと改良すれば、この装置は魔法がなくても動かすことが可能になるのですぞ! 今は点火に『火』の魔法に頼っていますが、断続的に点火ができる方法が見つかれば……」

 コルベールは必死にこの装置について伝えようと、興奮した様子であったが、生徒たちの「それがどうしたんだ?」という表情で、生徒たちには伝わっていなかった。コルベールの発明のすごさに気づいているのは才人とのどかだけであった。

「先生! それすごいですよ! それは『エンジン』です!」

「えんじん? それは一体?」

 コルベールは才人をキョトンとして見つめた。

「はい! 俺たちの世界じゃ先生が今言ったことを、実際にやっているんです! なあ!のどか!」

「はい、実際に私たちの世界では『エンジン』を使って色々なことをしていますー」

「な、なんと! やはり気づく人は気づいておる! ミス・ミヤザキにミス・ヴァリエールの使い魔の少年だったな! ミス・ミヤザキと同じ世界ということは君も別せか……ゴホン! 失礼、東方(ロバ・アル・カリイエ)から来たのかね?」

 コルベールは才人が『ガンダールヴ』の紋章を手に浮かび上がらせた少年であることを思い出した。更に、のどかの同郷と知り、改めて強い興味を持ったのだった。

「良かったわね、サイト。ノドカがいて」

 ルイズの小声での言葉に才人は頷きで返す。

「はい、そうです。俺はのどかと同じ所の出身です」

 ここで、生徒たちがザワザワする。のどかが東方の出身だと知っていたのはほんの一部だけで、ましてや才人も同じだとは思っていなかったからだ。なぜ、生徒たちがここまでざわついているかというと、東方からハルケギニアに来るには、エルフの管理する土地を超えてこなければならないからである。才人は召喚されたからともかくとして、のどかが超えてきたとなると、それは驚くべきことであるからだ。

「あー、諸君、少し補足しておくと、ミス・ミヤザキはエルフの土地を超えてきたわけではない」

 コルベールの言葉に生徒たちは耳を傾ける。

「彼女は偶発的に現れたゲートのようなものに巻き込まれてここに来たとのことです。戻る手段が見つかるまで、ここで預かっているというわけですな」

 生徒たちも納得したようで、静かになった。

「それでは、気を取り直して……ミス・ミヤザキ。この装置を動かしてはくれんかね?」

「わ、私がですかー?」

「うむ、他の人にもやってもらうから大丈夫ですぞ」

「わ、わかりましたー」

 のどかは教壇まで行くと、昔使っていた星などの装飾がついた初心者用の杖ではなく、小さな、木の杖を懐から取り出す。コルベールだけでなく、タバサやキュルケ、ルイズ、才人ものどかが、身体強化以外の魔法を使うところは初めてなので、他の生徒と同じように、見守っている。のどかは緊張しながらも、落ち着いていた。

「プラクテ ビギ・ナル火よ灯れ(アールデスカット)

その呪文と詠唱しながら、手首をクルッと一周させる。すると、杖の先から小さな赤い火が灯る。弱々しい炎だが、安定はしているようだった。のどかはふぅ、と息を吐く。コルベールはほう、とその炎を見る。教室の誰もが、聞いたこともない魔法をジッと見つめている。その杖を装置に向け、先端についた炎を装置の中に入れる。すると、先ほどと同じことが起きた。ヘビの人形がピョコっと顔を出し、挨拶をする。

「ミス・ミヤザキ、ありがとうございまいした。席に戻ってもらって大丈夫ですぞ。それでは、次は誰にやってもらうかな……」

 コルベールに言われ、席に戻るとのどかは緊張から解放されたようで、ホッとしていると、タバサとキュルケに問い詰められる。

「魔法」

「え? アレくらいしかできないんだ。本当に実用的じゃなくてー」

「へー、ノドカって意外とちゃんとした魔法も使えるのねー。なんか自分で頑張るだけしかないのかと思ってたわー」

「そんなことないですよー、そんなに成功率良くなくてー」

 そう言っている間に次に挑戦する人が決まったようで、教壇を見てみる。そこには、コルベールとルイズの姿があった。どうやら、モンモランシーがルイズを挑発したようである。

 キュルケはため息を吐きながら、「何やってんのよ」とひとりごちる。タバサはのどかを引っ張ってそそくさと机の下に隠れる。

「おい、モンモン!」

「なっ! 誰がモンモンよ! 私はモンモランシーっていう名前が」

 モンモランシーが反論しようとするが、才人がその言葉を途中で遮って、言う。

「あんまルイズを挑発すんなよ! また教室が爆発するだろうが!」

 そこまで言って才人は失敗に気づく。コルベールも同様に失敗に気づいたらしく、慌てて、顔を赤くしたルイズをなだめるが、意味がなく、ますます赤に染まっていく。そして、魔法を行使する。しかし、当然ながら教室は音の衝撃で揺れた。そして、静まり返った教室の中で、ボロボロになった装置を見て、ルイズが一言。

「ミスタ、これ壊れやすいです」

 その言葉を契機として、今まで黙っていた生徒たちが口々に「お前が壊したんだろ!」と罵声が飛ぶ。しかも、コルベールは爆発の衝撃で気絶していた。

「おい、燃えてるぞ! 早く消せ!」

 モンモランシーが『水』の魔法を使って火を消して事なきを得た。その後、モンモランシーがルイズに勝ち誇ったように言う。

「あら、余計なお世話だったかしら? あなたは優秀なメイジだもんね。あのくらいの火簡単に消せたわよね?」

 ルイズは悔しそうに唇を噛み締めた。のどかはルイズに声をかけようとしたが、キュルケに「今はやめておきなさい」と言われ、タバサとキュルケとともに教室を出ていった。ルイズが落ち込んでいるだろうというキュルケなりの気遣いであった。




後2話くらいで、トレジャーハンターのどかが書けるかなぁ。書けるといいなぁ
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